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第7話 薬草買取

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 第7話 薬草買取

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 薬師ギルドを出た俺は、イヘスの町を歩いた。

 元々色々なところを旅して回るのは好きだった。

 同じイヘスの町でも、明るい場所もあれば暗い場所もある。人が多い場所もあれば、少ない場所もある。工業が盛んな場所もあれば、商業が盛んな場所もある。名所といえるようないい景色の場所も発見した。


「これはいい景色だ」


 やや高台になっている場所に、小さな家が建っている。もう何年も人が住んでいないだろう、朽ち果てたボロ家だ。

 その家の広大な庭から、見渡す景色はなかなかのもので、感動を覚える。夕日とのコラボもまたいい。

 俺はしばらくその光景を見入っていた。


 夕日を見ていたら宿に帰ったのは、真っ暗になってからだ。危うく夕食の時間に間に合わないところだった。あぶねぇ。

 昨夜は腸詰がなかったので肉を頼んだが、今日は腸詰があった。この腸詰は逸品だと俺は思うんだよ。


「美味いねぇ、シュラーちゃん」

「お父さんの腸詰は世界一美味しんだから!」


 シュラーちゃんはフサフサの尻尾をブンブンと揺らし、胸を張った。まだ成長途上の胸だ。お姉さんのような巨乳になるんだぞ。


「カーッ! 冷えたエールと、腸詰は合うな!」


 相変わらず量は多目だ。パンは半分ほどアイテムボックスに放り込んでおく。

 食後、泊まっている部屋でゆっくりとタバコを吸う。


「食後の一服というのも、至福だな」


 吸い終わったら、携帯灰皿を使う。その携帯灰皿の中の吸い殻は、アイテムボックスに放り込んでおく。容量が無限なのでいくらでも入ることから、入れっぱなしでも問題ない。


 そして、ランプの灯りを頼りに自作のタバコを作ってみる。タバコ店で購入した3種類の葉をブレンドし、紙で巻く。フィルターもちゃんとあるぜ。


『[タバコ]3種類の葉をオリジナルブレンドしたタバコ 吸うと精神が安定するかもしれない 作成者:調香師ケンヤ』


 精神が安定するかもしれない、か。それはつまり、気分だということだな。ははは……。

 で、調香師って何よ? 香水じゃないんだから……タバコも香りを楽しむから調香師でいいのか?


「そういえば、薬草を混ぜたらどうなるんだ?」


 余った薬草がアイテムボックスに入っているので、紐で吊るして乾燥させておく。乾燥したらタバコに混ぜてみよう!


 そして、自作タバコを吸う。


「う~ん、微妙? 美味しさでいうと、前の世界のもののほうが洗練されているな」


 さすがに前の世界のクオリティを求めるのは酷か。まあ、初めて作ったのだから、こんなものだろうと考えればいいか。これから調合の比率や他の葉を試していけばいいんだ。

 そいうえば、前の世界のタバコはどういう説明なのか?


『[ラビウス・ライト]タール8ミリグラム ニコチン0.8ミリグラム 常習性があり、口臭がキツくなり、吸い続けると肺活量の低下を引き起し、さらに吸い続けると肺癌など多くの病気の原因となり得る』


「……見なかったことにしよう」


 どうせあと1カートンもないんだ。それに息災無事があるんだ、大丈夫だろう……。大丈夫っだよな、息災無事?





 翌日も朝から草原で薬草採取をする。今回も子供たちに配慮して遠いところで採取する。配慮ができる大人って素晴らしいだろ?

 もちろんモンスターには近寄らない。スマホマップのおかげで採取は順調だ。


「ん? これは初めて見る植物だな」


 稲のような粒が先っぽについている植物だが、稲ではない。麦系にも見えない。


『[グラベント]実を加工するとお酒になる』


 これは採取しなければ!?

 薬草プラスグラベントを採取しまくる! マップ便利!


「おっさん、グラベントなんて採って何するんだ?」


 採取していると、3人の子供グループに声をかけられてしまった。3人とも10歳くらいか。


「《《お兄さん》》は、薬師だから色々試そうと思ってな」

「へー、おっさんは薬師なんかー」

「《《兄さん》》な」

「そんなこと気にするなよ。禿げるぞ」


 うっ……嫌なことを言う餓鬼だ。

 気が強そうでガキ大将っぽい餓鬼だし、他は女の子が2人かよ。まだ10歳くらいなのに、もうハーレムかよ!? 羨ましくなんてないんだからな!?


「お兄さんと言ったら、このパンをあげるぞ」

「わーい、お兄さーん!」


 現金な餓鬼だ。まあいい。約束だ、パンをあげよう。昨日の晩飯に出たのパンの残りを今朝食べたから、このパンは今朝の食事で手に入れた分だ。もちろん、口はつけてない。


「本当にいいのか?」

「ああ、構わん。ところこで、お前たちは薬草を採取しているのか?」

「そうだぞ! 商人ギルドに持っていくと、お金になるからな!」

「へー、いくらになるんだ?」

「フレイク草は5枚で鉄貨1枚だ!」


 安っ!?

 俺は買ったことないけど、薬師ギルドでフレイク草を購入すると、1枚で黄銅貨1枚(10G)だったはずだ。

 いくら中間マージンを取っているからといって、50倍はないだろ!?

 何も知らない子供を騙すような商人ギルドってどうなんよ?


「お前ら、苦労してんだな。お兄さん、目頭が熱いぜ」

「何泣いてるんだ、おっさん?」

「おっさん言うなっつーの!」

「分かったよ。ところでさぁ、薬師なんだから、薬草を買ってくれよー」


 いきなりだな。


「見せてみろ」

「これだよ」


 袋の中に結構な薬草が入っている。

 フレイク草とアチル草だけじゃない。これはなんだ?


『[クリバム]根が解熱剤の素材になる植物』


 ほう、解熱剤か。


「この袋の中のもの全部でいくらだ?」

「お、太っ腹だな、おっさん!」

「おっさんじゃないぞ」

「そうだった、そうだった! 気前のいい兄ちゃんだ!」


 お兄さんから兄ちゃんにクラスチェンジしちゃったよ。


「全部で黄銅貨2枚くらいか?」

「そんなものじゃない?」

「いいんじゃない?」


 3人で相談しているが、フレイク草、アチル草、クリバムが全部で30枚はある。黄銅貨2枚(20G)じゃ安すぎるだろ。


「分かった。青銅貨3枚(300G)で買ってやるよ」


 これが適正かは分からないが、商人ギルドよりはよほどいいだろう。


「「「えっ!?」」」

「ほれ」


 ガキ大将にお金を握らせ、袋の中身を俺のアイテムボックスに放り込む。


「いいのかよ?」

「構わん。それよりせっかく稼いだお金を落とすなよ」

「ありがとよ、あんちゃん」


 今度はあんちゃんですか。お前、俺で遊んでないか? とりま、お兄さんでも、あんちゃんでもいい。

 うむ、お金の力は偉大だ。フフフ。


「明日はいないが、明後日はここにくるから、また薬草を持ってこい」

「いいのか!?」

「構わないぞ。その代わりたくさん採ってきてくれよ。多ければもっと高く買ってやるからな」

「分かったぜ! あんちゃん!」

「「お兄さん、ありがとう!」」

「おう、気をつけて帰れよー」



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