表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

第2話 チャロ衣料店

 +・+・+・+・+・+

 第2話 チャロ衣料店

 +・+・+・+・+・+


 イヘスの町の大通りを歩いていると、見返される。ランニングウェアは目立っているようだ。

 この町の人が着ている服はレトロなデザインだ。こういうの、嫌いじゃない。

 そんなことを考えていると、俺の肩を掴む手があった。


「っ!?」


 ゆっくり振り返ると、猫獣人の女性がいい笑みを浮かべていた。年のころは18歳くらいか、おかっぱの明るい青髪の上にはしっかり猫耳があり、尾骶骨の辺りから細長いしなやかな尻尾が生えている。

 お世辞ではなく、可愛い猫耳少女だ。ただし、俺は熟女好きなので、この年齢の娘にはあまり食指が動かない。


「な、何か?」

「ちょっと一緒にきてニャ!」

「はい?」


 俺の返事を聞くことなく、その猫獣人は俺を引っ張っていく。

 猫獣人で語尾に「ニャ」がつくという異世界ならではのシチュエーションに本来であれば興奮するのだろうが、いきなり引っ張っていかれるとかなり引く。

 建物のドアを開けて、入っていく。俺の不安な気持ちを表しているように、ドアベルがカランコロンと高らかに鳴る。


「脱ぐニャ!」

「え?」


 いきなり服を脱がされそうになる。この猫獣人は盛っているのか!? 若いとは言え、かなり可愛い顔をしているので、ありと言えばありなんだが、さすがに抵抗してしまう。


「早く脱ぐニャ」

「いきなりなんだよ?」

「見せるニャ」


 そんなに俺のものが見たいのか!? 一般的な大きさや形で、誇るほどではないぞ?


「早くニャ」


 飛びかかられ、ランニングウェアをひん剥かれた。

 異世界転移したその日に猫耳娘と合体か!?

 せめて25歳くらいの女性がいいのだが、こうなったらいくところまでいってやる! 据え膳食わぬは男の恥というからな!


「いい手触りニャ」


 猫耳女性は、そういって撫でる。


「思わず頬ずりしたくなるニャ」

「………」


 ランニングウェアに頬ずりしている。どうやら彼女はランニングウェアに興味があるようだ。

 俺の覚悟を返してくれ。


「この服はどこで買ったニャ!?」

「家の近くのショッピングモールだけど?」

「それはどこにあるニャ!?」

「とっても遠いところかな?」


 この世界とは違う世界。多分、いこうと思ってもいけない場所だな。


「どのくらい遠いニャ」

「もう二度と戻れないくらいには遠いかな?」

「ニャニャ!? そんなに遠いのかニャ?」

「うん。遠いと思うぞ?」

「なんでさっきから疑問形ニャ?」

「俺も戻り方を知らないんだよ」

「そうなのニャ? どうやってここまできたニャ?」

「さっぱり分からないんだ。気づいたら、町の外にある草原に立っていたんだよ」

「不思議ニャ」


 え、それを信じるの? 言っている俺でもアホかと思う話だぞ?


「ところで服を返してくれないか」

「嫌ニャ。ウチに売るニャ」

「売るって……それがないと他に着るものがないから困るんだよ」


 下着姿で歩いていたら、さっきの警備兵が飛んできそうだ。


「服なら売るほどあるニャ。好きなものを着ていいニャ」


 そこで気づいたが、ここはどうやら衣料品店のようだ。質の悪いマネキンが服を着ており、ハンガーに色々な服がかかっていて、多くの生地が棚に置いてある。


 ランニングウェアは返してもらえそうにないから、店に並ぶ服を選ぶ。ランニングウェアでは目立っていたから、ありがたいといえばありがたい。

 俺は白いYシャツと茶色の革のベスト、藍色のジャケットに黒色のパンツを選んだ。


「これも持っていくニャ」


 彼女は革袋を押しつけてくる。


「これは?」

「銀貨10枚ニャ」

「銀貨……?」


 袋の中には銀色に鈍く光る硬貨が入っていた。


「今のウチに出せる金額ニャ」

「この銀貨1枚でどれほどの価値があるか教えてもらってもいいかな?」

「銀貨の価値を知らないニャ?」

「遠い国からやってきたんだ」

「いいニャ、教えてあげるニャ」


 この国の通貨単位はギール(以後Gと表記)で、1G鉄貨、10G黄銅貨、100G青銅貨、1000G白銅貨、1万G銀貨、10万G金貨、100万Gミスリル貨がある。

 パン1個が10Gから02Gくらい。安宿が1泊で300Gくらい。服は意外と高く、俺が選んだもの全部で1万5000Gもするらしい。


 あるんだな……ミスリル。

 異世界と言ったらミスリルだもんな! 興奮するぜ。


「つまり銀貨10枚(10万G)はかなり高額だということか」

「大金ニャ」

「こんなにもらっていいのか?」

「いいニャ」


 銀貨10枚を手に入れた。かなりの金額だ。

 ランニングウェア1着でこれだけもらっていいのかと思うが、ありがたくもらっておこう。何せ俺は一文無しだからな。


「俺はケンヤだ」

「ウチはチャロニャ」

「チャロニャだな」

「チャロ、ニャ!」

「チャロ、か?」

「そうニャ」

「それじゃ、ありがたくいただくぜ。チャロ」

「またくるニャ」

「もう服は持ってないぞ」

「いいニャ。こいつのお礼にサービスするニャ」

「それはどうも」

「そうだ、俺はこの町のことを知らないんだけど、少し教えてくれないか」

「いいニャ」


 チャロはランニングウェアに頬擦りしながら、話し始めた。それ、俺の汗がついてるんですけど……。

 そういえば、彼女のステータスはどんな感じなのかな。―――鑑定。


 =・=・=・=・=・=・=

 チャロ 女

 【class 裁縫師】

 【level 70】

 【skill 裁縫】

 ・Lv1:生地裁断

 ・Lv2:生地縫い

 ・Lv3:美的センス向上

 ・Lv4:色彩 目寸

 ・Lv5:未開放

 【skill 刺突剣術 】

 ・Lv1:刺突

 ・Lv2:開放不可

 =・=・=・=・=・=・=

『[チャロ]猫獣人族 服作りが大好きな18歳の女の子 服のためならモンスターの群れにも突っ込む命知らず 身長166cm 体重47Kg B92 W59 H88』


 レベルが高いな。俺のレベル1が赤子のように思えるぞ。それに服のためにモンスターの群れに突っ込むって、いかれてるぜ。だが、嫌いじゃない。しかもいいプロポーションしてるよ。

 俺のスキルたちはunique skillやworld skillとあるが、チャロはただskillなんだ。俺のステータスがおかしいとか、突っ込まないからな!


 てか、ステータス以外にもちゃんと説明が出るんだな。俺はどんな説明なんだ?


『[ケンヤ・クリュウ]異世界からやってきた30歳のオッサン とても器用だが、女には不器用 身長180cm 体重72Kg 体脂肪率13%』


 オッサン言うな! あと、女に不器用は認める! しかし、男はスリーサイズじゃなく、体脂肪率なんだな。男のスリーサイズなんて、需要ないからこっちのほうがありがたい。


 おっと、せっかくチャロが色々説明してくれるんだ、しっかり聞いておかないとな。


「つまり、薬を作って売るには、薬師ギルドに登録しないといけないということかな?」

「そうニャ。変な薬があったら大変ニャ。だから、薬師ギルドが目を光らしているニャ」

「なるほど……。それで薬のレシピも薬師ギルドで購入できるんだな?」


 俺は錬金術で下級魔法薬を錬成できるらしいが、レシピとか要るのかな?


「そうニャ。でもお金かかるニャ」

「この銀貨で足りるかな?」

「知らないニャ」


 それもそうか、チャロは裁縫師だもんな。薬師のことを細かく分からないのは納得だ。


「色々ありがとう、チャロ。それじゃあな」

「ニャ~」


 建物を出て振り返る。


「チャロ衣料店、か……っ!?」


 俺は大事なことを忘れていた。


「この世界の文字が普通に読めるじゃないか? 言葉もなんの違和感もなく喋っているし、聞こえる」


 どうやら言語理解は喋りだけじゃなく、読みも問題ないようだ。読みができるんだから、書きもできるよな?


 警備兵の言うように、商人ギルドがあった。本当に大きな建物だ。俺は商人ギルドの前を通り過ぎ、目的の場所へ向かった。

 チャロからもらった銀貨10枚があるから、薬師ギルドは明日いこう。今日は買い物をしてから宿をとり、ゆっくりしたい。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ