夕食(宿屋にて)
おーい。
幸太郎。
そろそろ起きなさい。
俺の耳元でリナが叫んでる。
うーん。
もうちょっと。
少しベットの上でごねてみる。
いや、起きなさいって。
もう少し
いや、起きろ。
ごつん
ゲンコツだ。
と言うかリナの魔法だ。
いってぇ。
なんだよ。
もうちょっとぐらいいじゃんかよ。
俺が頭を押さえながら、食堂に向かうと、奥からさっきの少女が出てきた。
お兄さんこっち空いてるよ。
夕飯時ともあって、そこそこの人がいた。
おぅ。ありがと。
俺はそう言うと少女の頭をくちゃくちゃっとなぜた。
少女も嬉しかったのか、ニヒヒと笑みを浮かべて奥へと戻っていった。
ちなみにアルガラ国というかここの名産って何かわかる。
リナにそう尋ねてみる。
うーん。
名産か。
この辺りだとローウルフのステーキとかになるのかな?
ただ、最近では村の凶暴化により、捕獲が困難になってた気がするけど、
そうこうしているうちに少女がご飯を運んで来てくれた。
お兄さん。
はい。夕食のハンバーグ定食だよ。
ちなみにご飯のおかわり自由だから足りなかったら声かけてね。
後、アルコールとかを飲みたい場合はベット料金だからその時は呼んでね。
では、ごゆっくり。
そういうと、少女はまた奥へと引っ込んでしまった。
ハンバーグか。
とてもいい匂いとグツグツ焼けている音がした。
美味しそうだな。
では、頂きます。
俺はハンバーグを切り分けて口へ運ぶ。
うん。
うん?
うん?
なんだこれは?
美味しいけど、美味しくない?
味付けはいいんだけどお肉がイマイチなのか?
なんとも言えない味だった。
リナは食べなくて平気なのか?
俺の肩にちょこんと座っていたリナに尋ねる。
うん。私は食べなくても大丈夫のように出来てるから、気にしないで。
それにしても、アルガラの食料事情はちょっと深刻なのかもね。
俺のハンバーグを見ながらリナがそういう。
うん?
なんでこれでそんなことがわかるんだ?
俺は純粋な気持ちで聞いてみた。
うんとね。
食事に使うお肉にはそれぞれランクがあるのね。
その中で、平民は、ローウルフのお肉かビックバードロンのお肉か。どちらかを使うのね。
でも、あなたが今食べてるお肉は、バードのお肉だと思うの。で、バードは食用じゃないから多分食べても淡白で味があんまりしないと思うわ。
リナの言う通りだった。
確かにこのハンバーグには違和感がある。
味付けで少しは誤魔化せるが本質的な味についてほぼ皆無だ。
続けてリナが話す。
多分、ゴブリン討伐はそのための依頼なんだわ。
ここらは、ローウルフの生息地で、そのお肉が使われないなんてまずはないわ。
また、ビックバートロンも。
それをお店で出せないと言うことはほぼ流通がないって事。
早くしないとゴブリンにその2匹を狩りつくされてしまうわ。
リナはそういうと、俺の肩から別のところへ飛びだってしまった。
おっ。おい。
俺は咄嗟のことだったので、追いかけることも帰すこともできなかったので、とりあえずご飯を食べ、部屋へ戻ることにした。