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トリ・トリ・トリ

「だあああああああ」

 まるで、一昔前のテレビに出てくるドッキリのワンシーンのようだ。

 少なく見積もって、150の<ラプター>がこっちに迫ってきている。

 場所は<原宿>。と言っても、宿もホテルもない、一面の原っぱだった。

 <ラプター>はサイズも見た目もダチョウのようだが、恐竜のように厳つく、全体的に鱗に覆われている。見た目こそ、鮮やかだが、牙や翼はその獣が好戦的なことを示している。

「絶対、噛まれると痛い。止まると、噛まれる。」

 <ラプター>の首は振り子のように前後に揺れながら、細い2本の足はとてつもない速さで迫ってくる。黄色い目はこれまた少なく見積もって、300はある。

 全くもって、落ち着かない!

 村田洋大は一生懸命に走った。

 彼は背中に背負ったエクスカリバーを苦々しく思った。

 走る足に絡みつくようにペチペチと当たるからだ。走りにくくて仕方がない。

 こんなことなら、置いてこればよかった。

「誰かああああああ。助けてええええええええ」

 彼の叫びが空に響くや否や、一人の忍者が彼と<ラプター>の間に割って入った。

「まかせるのじゃ」

 囁くようなソプラノボイス。よく通る高い声だった。

「シャンディ! 助かった!」

 思わぬ味方の登場に彼は立ち止まり、来た方向を向いた。

 空から降ってきた少女、シャンディは一言で言えば、忍者だった。黒色の落ち着いた装束が小柄な全身を覆っている。しかし、指先と目元は透き通るような白さで、チラリと見える毛先は銀色だった。

 彼女はクナイを使って、ラプターを殲滅していく。

 どこから取り出すのか、どういう仕組みなのか、皆目見当がつかないが、次々とクナイが投擲される。

「オレもお返しするぜ」

 さっきまで疎ましかったエクスカリバーを構えて空を斬る。

 まるで、BL〇〇CHの月牙◯衝だ。

 斬撃派は<ラプター>を一挙に10匹は屠った。

 こうして二人の戦士によって、ものの10分ほどで<ラプター>の大群は片付けられた。

「ヨウ。どうして、追われていたのだ?」 

「どうもこうもないぜ。あの女の例の予言を回避しようとしたんだ。奴が言うには、オレは今日ミシンザルの大群にあちこちを縫い付けられる目に遭う予定だったらしい。なあに、それさえ聞いてしまえば、絶対にミシンザルどもがいないところに逃げればいいってことだろう。だから、原宿の草原で昼寝しようとしたんだが、どうも繁殖期で気が立っている<ラプター>に遭遇してしまったらしい」

「そうか。お主は相変わらず苦労しているの。今回は宿命とやらから逃れられると良いな」

「やめろ。そういった発言はフラグになる。今はデリケートな気分なんだ。そう言った一挙手一投足が気になる」

「相変わらず、気が小さいのう」

 シャンディは穏やかながらも小馬鹿にした声色で、洋大をおちょくった。

「すげえ、長い付き合いみたいにいうが、せいぜいここ2年くらいだろう?」

「もう、3年半じゃよ。ああ、主は薄情な奴よの」

 シャンディはやれやれと言った様子で横目に洋大を見た。

 エンジンの音が遠くからしていると思うと、猛スピードで彼らの元にジープが向かってきた。

 20メートルほどの距離で車が止まった。

 中から、若い女性が降りてくる。

 髪は茶髪だが、恐らく地毛なのだろう。自然な明るさの色だ。背丈は155センチほど。スラリとした足を惜しげも無く、ミニスカートから覗かせている。腰元は引き締まっており、スニーカーを履いているのにも関わらず、実際の身長以上の背丈であるかのように錯覚させるのは、その抜群のスタイル故なのだろう。

 顔はキリッとした二重。真顔になるだけで凄みが出るのだが、本人はそれを知ってかしらでか、基本的にニコニコしている。そのため、温和な印象を人に与える。

 まあ、美人だ。

 洋大は思った。

 ビジュはいいし、性格も悪くない。

 直ちに、恋だのなんだのと異性として見るなんて、恐れ多くてできないと本能が感じるほどである。

 しかし、常にワンちゃんあるんじゃないかと期待し続けて、胸を高鳴らせたくなるような魅力がある。

 それは認めている。

 だが、洋大は彼女の存在そのものが恐ろしかった。

「あー、洋大さん! 特務室長からの伝言預かってます! いよいよ、<魔石の流星群編>の始まりですね!」

「そういうのやめろって言ってんだろう?」

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