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勘違い野郎には物理こそ正義

作者: 野田あいみ



「――お前こそ、立場をわきまえろ」




『ちょ、それ首を締め上げられている人間の言葉じゃなくない?』


その場にいる誰もがそう思った。



頭二つほどの身長差、横幅は倍と言っていいほどの体格差。




にもかかわらず。


その大きな手で、華奢で可憐な少女の首を持ち上げ、『貴様を愛するつもりなどない』と言い放った青年を、一歩も引かず睨みつけながら、少女は言い返した。



――と。

次の瞬間。



「お゛ぁッ?!」



青年の鳩尾に、少女の膝がキマった。




「「「?!」」」



暴挙を止めようとしていた青年の侍従も、少女の侍女も。

その場に居合わせた者は、皆揃って目を剥いた。




思わず少女の首から手を離し、崩れ落ちた青年の膝を足場にし、すかさず青年のこめか(シャイニング)みに膝蹴り(ウィザード)を放つ少女。


完全に戦意を失った青年の胸ぐらを掴み、あわや唇が触れてしまうのでは……という距離まで顔を寄せ。



「誰が好き好んでテメェみたいな能ナシに嫁ぐかってンだ。テメェが立身出世の叶わねぇ能ナシだから、仕方なく帝国(ウチ)が面倒みてやることになったんだよ。ンな事も忘れたのか?この鶏頭がよぉ。あぁ゛?!」



随所で舌打ちを交えつつ、リズミカルに往復ビンタを食らわせながら、昭和時代のヤのつく自由業もかくやと云わんばかりの巻き舌で言い募る少女。






今更だが。

これは、初夜を迎える場での出来事である。


昼間、結婚式を済ませた二人が、名実ともに夫婦となった証を立てる場面だった。



――そう。

四の五の言わずに、青年がヤる事さえ済ませてしまっていたならば、世界の大半を牛耳っている帝国との縁が恙無く結ばれるはずだったのだ。




少女は帝国の末姫であり、両親だけでなく兄姉からも可愛がられて育っていたため、あらゆる面で青年の能力が足りていなくとも、“貿易の要であるこの国で、少女が快適に過ごせるように”という、帝国からの庇護によって、この国は護られる。


そういう契約であった。




であるからして、仮に好いた者がいたとして、結ばれないのはお互い様である。




望む・望まないにしても、定められた相手と縁を結ぶ。

それが税金で暮らす王公貴族の義務であり、職務なのだ。




だというのに、青年のこの体たらく。



図体ばかり大きくても、中身はガキのそれである。





故に。


少女は、青年のアレコレを徹底的に折ることにした。



シャイニングウィザードからの往復ビンタ。


そこからアイアンクロー、ハイマウントニー、ジャーマンスープレックス、パイルドライバー、キャメルクラッチを経て、みちのくドライバーⅡで締めた。


まさに技のデパートである。




体格差?


そんなもの、帝国式武(道魔)術の前では児戯に等しい。



とはいえ、基本的に秘匿されている技術(御家式)であるため、首吊りにされている最中、侍女に心配をかけてしまった事は悔やまれるが。


まぁ、こうして無事なのだから、“些末な出来事”と言える範疇だろう。





そんなこんなで。


青年のアレコレを折った少女は、今日も元気に楽しく、仕事の後のティータイムを過ごすのでした。




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