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「正義の暴走」をしてる脳内御花畑のデモ隊の若造どもに現実主義ってヤツをわからせてやりました♪

作者: HasumiChouji

 何でだ?

 全ては巧くいっていた筈だ。

 俺達が権力を取り戻してから……俺達は国と国民に奉仕してきた。

 立場からすれば、俺は、この国の最高権力者だろうが、国と国民の(あるじ)ではなく、逆に下僕(しもべ)のつもりだった。

 そして、事実、この国を豊かにしてやった。

 問題は、まだ、無数に有るにせよ、10年後のこの国は、今より、もっと良くなっており、20年後は更に良くなっている筈だ……。

 国民が、そう信じる事が出来る国にしてきた……。


 十数年前の、あの悪夢の日々が脳裏に甦る。

 大戦後に、革命を成し遂げ、この国を再統一し、この国に百年ぶり近い平和をもたらした偉大なる指導者。

 だが、麒麟も老いては駄馬にも劣る。

 彼はいつしか頑迷な老害と化し、俺達の世代が、新なる政治指導者になる時代が来た時、権力を取り戻そうとして、若者達を扇動した。

 そして、それは成功し、俺達は左遷された。

 それが国と国民の為なら、俺も文句は言わない。

 だが、彼が権力を取り戻したせいで国は無茶苦茶になった。

 彼の死後、俺達は権力を取り戻したが、今度は、彼の未亡人を中心にしたグループが、またしても若者達を扇動し……俺は再び、権力を奪われた。

 それから、俺達は、苦労に苦労を重ね、権力を取り戻し、この国を立て直したのだ。


「まるで……あの時のようだな……」

 苦楽を共にしてきた同志の1人は、若者達がやっているデモに関する報告を受けて、そう言った。

「ああ……」

 あの偉大なる指導者の未亡人に扇動された若者達のせいで、俺達が権力を失なった時……。

 あの時のデモと同じ場所で、再び、デモが起きている。

「状況も……あの時に似ているな……」

 今度のデモも……俺達の同志の中で、一番の急進派の死を悼む集会が始まりだった。

 だが、参加者の人数は、どんどん膨れ上がり……やがて、俺達を非難する声が上がり始めていた。

「もう1ヶ月か……」

「まただ……またしても、現実ってモノを知らない……理想主義に取り憑かれた若造どものせいで……俺達は……」

「俺達が権力を失なうのが国の為になるならいい。だが、前回も、俺達が権力を失なった後、国が無茶苦茶になった」

 俺達も年老いたかも知れない。

 あの頃は、中堅どころの政治家だった俺達も、いつしか「八元老」と呼ばれるようになっていた。

「どうする?」

 でも、年老いたとしても、俺達は駄馬には成らない。

 あの偉大なる革命の指導者の見習うべき点は見習うとしても……悪い点まで真似する気は無い。

「仕方ない……戒厳令を発令する。そして、デモ隊への攻撃を許可する方向で、戦車隊に準備を進めさせろ」

 俺達は……ひょっとしたら、とんでもない間違いをしようとしているのかも知れない。だが……。

「将来有る若者の命を奪うのは許されん事だが……あの悪夢の日々を再現するのは、もっと許されん事だ」


 1989年に中国で起きた第2次天安門事件。

 鄧小平をはじめとする当時の中国共産党の最高実力者である通称「八元老」は文化大革命とその後に起きた第1次天安門事件によって権力を奪われた者達だった。

 一説には、第2次天安門事件の惨劇の原因の1つは、彼等「八元老」が文化大革命の再来を恐れた為と言われる。

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