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我の復讐劇  作者: スモークされたサーモン
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第二十六幕 むきぃぃぃぃ! 私のポォォォテェェェチィィィィ! 半ズボンよりもポテチなのぉぉぉぉ! 私が楽しみにしてた『のりしお』を返せぇぇぇぇぇ!



 我はスケルトン。素敵なスケルトン。今日は特別な日だから少しだけおめかししてみたスケルトン。


 城の通路に掛けてあったカーテンを体に巻いてみた。


 なんだか我の価値が上がった気がする。ご立派なカーテンだったので少し重いがマントっぽくも見える。


 全裸スケルトンからスケルトンゴージャスに我は進化したのだ!


 ぐははははは!



 ……さて、こんな王様ごっこで遊んでいる我であるが、ただいまモンドール城を闊歩中である。お城の中をてけてけと歩いているのである。


 今の我はマント装備なスケルトン。わりと骨が丸見えである。なんと男らしいっ!


 ……変な趣味に目覚めないようにしないと。


 さてさて、少し冷静になった我であるが、今はミッションの最中である。


 城内は何故か人が居ないので我は堂々と通路の真ん中を……ワンコが尻尾を振って歩いていた。カーペットの上をてけてけであるな。


 我の前を当然のように尻尾を上げて、てけてけである。まるでこの城の主のような貫禄でもある。我からはお尻の穴が丸見えだけど。


 モンドールの城は後の時代に作られたもので城本来の役割、つまり砦というよりは住まいとしての色が強い城である。つまりただの豪華なお家であるな。

 

 思えば我が第二話で拉致されてモンドールに来た時も豪華な屋敷に飛んだものである。お金ってあるところにはあるのであるなぁ。


 城内は華美な装飾があらゆる所に施されていた。柱も金色の金具で装飾されてるし天井にも絵とかすごい。金色がすごい。我のスケルトンアイもびかびかするくらいに金色のオンパレードである。


 ちょっとやりすぎだと我は思う。どんだけ金色が好きなのであろうか。


 聖女が勇者、つまりこの国の王子を半殺しにして玉座の間に立て籠っているので兵士とかメイドとかはみんなそっちに向かったようである。なので我らの進軍はとても楽であった。


 ちなみに今向かっているのは玉座の間ではなくて『宝物庫』である。


 これは『どさくさに紛れて金目のものを尽く粉砕しときましょう』とドーベル秘書から提案された事による。ちょっと勿体無いと思ったがワンコの言うことは絶対である。


 既に我の後ろには任務を終えて戻ってきた『パグぅ』達が誇らしげに行進しているのだ。


 通路が豪華だから歩いているだけで楽しくなるんだよねー。我も分かるー!


 無駄に胸とか張っちゃうよね。我の胸は肋骨丸見えだけど。みんな尻尾を高々と上げて行進だ!


 なおこの突発イベントは予定にはなかったものである。計画って本当に狂うものであるな。本来ならもっとドラマティックな復讐劇になる予定だったのだ。


 まだ行進は続きそうなので当初の予定を回想してみようと思う。宝物庫は遠いのだ。


 我の『花嫁奪還計画』は一通の手紙から始まる壮大な復讐劇であった。



 夜、監禁されている聖女の元に窓から投げ込まれる一通の手紙。


 そこには『あなたを必ず助け出す。だから希望を失わないで』とだけ書かれていた。差出人の名前はない。


 その手紙を前に聖女は想う。


『ああ、あの愛しい人が私を助けに来てくれるのですね』


 幾夜も枕を涙で濡らしてきた聖女はこの夜、嬉し涙を溢して夜明けを迎えた。そして始まる結婚式。


 着飾った勇者に手を引かれて聖女は大聖堂へと向かう。豪奢なれど空虚なウェディングドレスに身を包まれながらも彼女は絶望に飲まれていなかった。


 そして大聖堂で粛々と儀式は執り行われていく。にやけた勇者とずっと俯いている聖女。そしてついに誓いの儀式へと差し掛かった時、それは訪れた。


『ごばばばば! 我は魔王なるぞ! その花嫁はオデの嫁っこにするだ! 寄越せぇぇぇ!』


 と、大聖堂のステンドグラスを破って黒マントのスケルトンが二人の間に舞い降りて……



 ……いや、ちゃうねん。


 この脚本は全てドーベルワンコ作やねん。


 なんやねん。ごばばばばって。我はそんな笑いを見たことも聞いたこともないわ。それに何処から魔王が出てきたのだ。魔女はいるが魔王なんてこの世界におらんというのに。


 でも脚本に抗議するとパグぅがやって来てつぶらな瞳で見上げてくるのだ。


 それでも抗議すると『ぱかっ』である。


 我も三回は頑張った。でも四回目はパグぅに仲間が増えた。ブルドッグが新たに参戦したのである。


 反則である。間違いなくオフィシャルルール違反である。でも正義はワンコにあったのだ。


 我、陥落す。


 なので今回聖女が結婚式の前日にアクションを起こしたのは、もっけの幸いとも言える。そのまま何事もなく夜になっていたら『ごばばばば』が決行だったのだ。


 よくやったぞ。ペレノール。でも計画は進行中だ。何故にー?


 このままでは『ごばばばば』が別の形で復活である。なんてこったい。


 



 まだワンコ達の行進は続いていた。既にワンコ大行進である。


 ワンコ達も普通に歩くだけではなく、所々にターンを入れてるので……まぁ楽しそうだから良しとしておこう。


 まさかこんな所でワンコ達の練習成果を見ることになるとは……


 あの『ごばばばば』にはまだ続きがある。その演技の練習も……まぁ当然したのである。


 我は当然としてワンコ達も色々と……出番があったのだ。


 ……本当に大変だった。


 毎日が練習の日々でな。


 聖女役で手伝ってくれたおばあちゃんも悶絶しっぱなしだったし、我も発狂するかと思った。


 我の台詞の尽くが気障で甘ったるい台詞ばかりでな。


 魔王ごばばばばの癖に。


 やれ『君の瞳に乾杯しよう』とか。『僕の心は君への想いではち切れんばかりだよ』とか。『この無限の愛を君に誓う』とかな。


 魔王ごばばばば設定は何処に行ったのだ。


 しかもそれを勇者の前でやるのだぞ?


 聖女役のおばあちゃんも早々に真っ赤になって悶絶するのも当然であろう。我もゴロゴロと洞窟の床を転がりながら羞恥に耐えたのである。


 ……ちゃんとやらないと『かぱっ』であったからな。このとき我の発狂指数は限界ギリギリをあっさりと越えていたのだろう。


 あごクイからのチューの練習もおばあちゃんに何度も受けてもらって……


 うむ。我は発狂していたのだ。うきゃー!


 そんなこんなでおばあちゃんは今も寝込んでいる。年寄りは労るのが常であるからな。うんうん。


 我も寝込みたかった。うきゃっ!


 というか本当は寝込んだ。そして「かぱっ」「にょきっ」「ぐわし」とやられたのだ。


 我には倒れる事すら許されなかったようである。うきゃー。


 越えてはならぬ一線を越えると人は強くなれる。我はそれを知った。全くもって知りたくはなかったがな。


 なお、ドーベルワンコ監督の私見ではアゴクイチューで落ちない女はいない、とのことであった。なので見せ場的にも必須だそうで。


 ……ドーベルワンコが何処でそんな知識を得たのか気にはなるが作戦は既に始まってしまったのだ。今更止めることは出来ぬ。


 復讐は止まらぬのだ。


 ……これは復讐かなぁ? とか考えちゃいけないのである。うきゃ。


 まぁ懸念は懸念として我の心のなかにもあるのである。心のなかは自由であるからな。心のなかは。


 ……。

 

 ……今回の着地点がさぁ。おかしいんだよ。壊滅的にさ。


 

 最初の計画ではこの『花嫁奪還計画』は我と聖女がラブラブで終わるという意味不明な結末であった。それは……まぁ良かろう。良くないけど。


 おかしいのはその過程なのである。終盤で何故か踊るのだ。唐突に二人が踊り出すのだ。きゃっきゃっうふふと手を取り合い踊り始めるのだ。

 

 我と聖女がな。ちなみに伴奏はワンコ達である。

 

 ワンコの脚本は意味不明である。


 ……。


 ……。


 ……練習したともさ。クラウザーとくるくる踊ったさ。


 今ならどんな相手とだって踊れるスケルトンになったともさ。


 クラウザーは楽しんでいたので良いのである。うん。ワンコ達も肉球パーカッションが素晴らしかった。


 我は反抗しなかった。監督の指示に素直に従ったさ。パグぅの後ろにはブルドッグ。更にその後ろにドーベルワンコが控えていたからな。なんだその三段構え。


 まぁそれはまだ良いのかも知れぬ。全然良くないけど。


 一番の問題は……あ、行進が止まった。宝物庫であるか? やっと着いたのか。



 モンドール城内を長々と行進した末にたどり着いた宝物庫、そこには……


「むっ! 犬っころが何用だ! ここは立ち入り禁止でぎゃぶぅ!」


 ……ああ。流石に宝物庫の前には兵士がいたのであるな。そんな気はしてた。部屋の前に立っていた兵士は多分犬好きな人なのだろう。パグぅが手加減して排除していた。


 『ぐわし』からの『ぺいっ』で床に転がしていた。あれなら多分死なないだろう。あれで『べしっ!』が追加されると熊も死ぬ。


 まぁ彼が目覚めたとき以前と同じ犬好きでいられるか我にも分からぬがな。特にパグ系。


「わふー!」


「「わっふー!」」


 ……宝物庫の頑丈な扉がワンコによって破壊されていく。我はそれを少し離れた場所で見つめるだけである。一人ぽつんとな。 


 ……何してるんだろうな、我らは。というか何してるんだろう。いやぁ、何をしているんだろうね。なんと何をしてるのかっ! 


 ……。


 ……。


 ……部屋が壁ごと廃墟になっていく。音が暴力的過ぎて……現実味がむしろ無い。


 ……我も何でこうなったのか分かんないや。


 ちょっと休んどこう。そうしよう。骨休めであるな。最近はずっと忙しかったし。


 ああ、こんな日は川でのんびりと釣りをしたいものであるなぁ。釣りは良い。心が穏やかになれる。釣れるのが魚でなくとも釣りは良い。静かな水面に糸を垂れるだけで良いのだ。鳥のさえずりに風が揺らす木の葉の音。それら全てが『釣り』なのだ。


 あー。我の実家……やっべ。鍋にスープを入れっぱだった気がする。保管してた食糧も全滅だろうなぁ。


 ……楽しみにしておいたメロン……腐ってるよなぁ。あれからかなり経ってるし。誰か来て掃除とかしといてくれると助かるんだけどなぁ。


 ぼーっとしていると、とりとめもない事を思い出してしまうものだ。物思いに耽る我。壁に背を付けて腰を下ろしている我はまるで行き倒れのスケルトンに見えただろう。宝物庫の前でやられたホネホネであるな。


 ……盗人か?


 馬鹿な事を考えているとワンコが声を掛けてきた。それは満足げな声であった。


「わふ!」


「うむ。終わったのであるか。何やらホリホリしていたが満足であるか?」


「わふっ」


 ワンコ達は皆満足げであった。とりあえず背中の手は仕舞って欲しい。我は熱烈に希望する。


 ワンコ同士で(`・ω・)人(・ω・´)とかするな。背中の上でそれはするものじゃない。拳骨でゴチンも止めて。


 宝物庫は既に部屋ではなかったが……まぁ良い。床に大穴が開いていて地獄への門にも見えるが……まぁ良いのだ。


「わふー!」


「「わっふー!」」


 あ、作戦は続行なんすね。テンションたけぇなぁ。仕方無いので我はホネホネな軽い腰を上げて鼻息の荒いワンコ達を追いかけるのであった。

 


 ……あ、床に兵士がいるけど……まぁ良いか。殺すに及ばず……であるな。


「わふっ!」


『べしっ!』


 あ……。


 

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