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我の復讐劇  作者: スモークされたサーモン
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第二十五幕 ポテチがっ!? 私のポテチが無いのよ!? 何故!? あ……。このホネホネ野郎ォォォォ! やりやがったなぁぁぁぁ!



 晴天吉日。今日は結婚式日和である。


 ……ついにこの日がやって来てしまった。


 我が勇者から聖女を掠めとるという苦行に晒される日が。


 ……ああ。あの空はあんなにも蒼くて高いのに……どうして我は地下の通路をこそこそと歩いているのだろうか。カタカタ。


 うむ。久し振りのスケルトンである。そしてモンドールの地下をてけてけと進軍中で青い空なんてまるっきり見えない我、参上! である。


 ……なぬ?


 いつにも増してテンションがおかしいだと?


 我のテンションが少しおかしいのは仕方無い事なのだ。


 だって……だってあの聖女が……



 勇者を半殺しにして城の玉座の間に立て籠もっているのだからー。るるるー。らららー。


 ワンコの情報だから確かなのー。るるるー。カタカター。


 ……。


 ……。


 でも作戦は続行中である。ドーベルワンコは厳しいのである。カタカタ。




 さて、我の様子がおかしいのも納得したところで状況の説明である。時はかなり戻る。時計の針がグルングルンである。


 時はモフモフ超会議まで遡る。


 我は復讐超会議で決定した『花嫁奪還計画』を嫌々推し進めていた。足掻いても無駄だったともいう。


 我は諜報に長けたワンコ達から情報を集めて奪還作戦を煮詰める事になったのである。グツグツと。


 聖女と勇者の結婚式はモンドールの建国記念日に行われる事になっていた。


 かつてここに住んでいた原住民を殺し尽くした血塗れの記念日であるな。多分国民が知る建国物語は脚色されてると思う。


 中々に血生臭い記念日であるな。そんな日に結婚式である。


 まぁそれは良いのだ。昔の話であるからな。


 肝心の結婚式には、まだ時間があった。一月は余裕であったのだ。なので今回の復讐はイタズラ満載げふーん! 


 ……かなりの手間暇を掛けて準備と細工をすることにした。


 例えば結婚式が行われる大聖堂のスタンドグラス。ここをぶちわって我は登場する予定であった。何故か高笑いをしながらな。


 なのでガラスに細工をして割れやすく、更に破片を被った人が怪我しないように少しの衝撃で粉々になるよう魔法を掛けたりもした。


 夜中に侵入して大きなステンドグラス全部に少しずつ魔法を掛けていったのである。めちゃくちゃ大変だった。誰かに見つかったらアウトであるからな。


 他には……大聖堂前のバージンロードに落とし穴を仕込んだりもした。ここを勇者と聖女が歩いた瞬間にズボン! である。聖女ならば怪我もしまい。無駄に頑丈な女だからな。


 これは遠くの地下墓地からこつこつと掘ってきたものである。ワンコ達がほりほりしまくった。崩れかけた事も数えきれぬ。というか何度も崩落した。穴を補強しながら頑張った。我が崩落しないように頑張った。ワンコはみんな夢中で掘っていた。まぁよいのだ。この落とし穴は結局掘りすぎて城の地下まで繋がってしまった遊びの産物なのだから。


 他にも多数の仕掛けを用意した。城の扉がピンク色に燃え上がる時限魔法とか宴会会場になる噴水広場の噴水が暴発するよう弄ったりとか。お祝い用のワインに下剤も混ぜたな、そういえば。


 そんな感じで我はウッキウキで細工をしまくったのだ。超楽しかったー!


 だがそんな我の企みをぶっ壊す奴がいた。結婚式を明日に控えたその日に奴が動いたのだ。




 聖女ペレノール。


 聖王国の聖女。光の魔法を使いこなし治癒と肉弾戦に秀でた変態女である。かなりの確率でノーパンというヤッバイ女だ。


 もしかしたら動くかも? という事態も想定していた。ペレノールが城を脱け出して花嫁失踪、とか。


 でも勇者をぶちのめして玉座の間に立て籠るとかは想定外であった。モンドールの兵士には、もうちょっと頑張ってもらいたいと我は思ったね。玉座にも勿論仕掛けはしてあるけど……まぁよい。


 我はワンコの掘った『ワンコ地下道』からモンドール城の『地下牢』に侵入して玉座の間を目指していた。これが冒頭である。


 うん。当初はその予定だったのだ。しかし計画は変更するために存在するものだ。


 通路として通りすぎるだけであった地下牢に人が沢山詰め込まれていたのでワンコと救助作業に当たることになったのである。


 我もまさか人がいるとは思わなかった。下見の段階では牢屋には誰も居なかったのである。なお、普通に地上を進んだ方が早いので諸々の細工をしに来たときはここを使わなかった。


 つまりこの地下侵入路は作戦当日限定のお楽しみ通路なのである。


 ワンコ地下道を掘り進めた結果、この牢屋の壁に偶然にも繋がったのだ。最初に掘り当てた時は地下遺跡かと思った。


 もしかして世紀の発見かっ!? と我もテンションだだ上がりであったな。すぐにモンドール城の地下牢だと分かってがっかりしたが。

 

 今は使われてないらしくて、ならばここを侵入口しよう、とワンコ達と決めたのである。


 そんな地下牢に大量の人である。


 地下の『牢』だけど詰め込まれているのは悪い人達ではなかった。牢屋に閉じ込められていたのは、みんな若い女性であった。話を聞こうとしたら思いっきり殴られたけど悪い人達ではあるまい。多分。


 ……頭蓋骨がぶっ飛んだけど。






 その後、我のホネホネヘッドを犠牲にして女性達からなんとか話を聞くことが出来た。今回の行き違いはローブも無しの全裸スケルトンだったのが原因だろう。

  

 ……ワンコが前に出たら一気に黄色い歓声が上がったが我の頭蓋骨が活躍したのだ。きっと。ワンコの魅力でその場を収めた訳では……まぁよい。


 牢に閉じ込められている女性達……ざっと二十人ほどであった。誰もが美人で可愛い人ばかりである。我をぶん殴った人もすらりとした綺麗な人であった。牢屋なのにドレスである。


 そんな美女軍団であるが……話を聞くと彼女達は勇者の妻達であったのだ。


 ……いや、ハーレムか?


 我もちょっと理解できなくて固まってしまった。


 彼女達は勇者にナンパ……いや、熱心に口説かれて集まった女性達という事らしい。勇者……お前……。

 

 彼女達は世界各地から集まっているそうで白い肌の人もいれば黒い肌の人もいた。我を殴ったのは他の国の貴族令嬢だそうな。ブルジョアは良い拳してやがるぜ。へへ。


 しかし勇者って節操なしのドスケベ野郎だったのであるな。ブリーを遥かに越えていた。何せ一番若い人はまだ少女とも言えぬ子供げふんげふん!


 ……多分成人はしてるだろう。うん。


 我は牢屋に詰め込まれていた女性達に当然のように困惑したがワンコ達はそうでもなかった。ワンコ達にきゃっきゃっと騒ぐ女性達を引き連れて順繰りに『ワンコ地下道』へと誘っていったのだ。


 ……外への誘導である……のか?


 ……おーい。秘書さーん! この情報は聞いてないよー!


 ちょっとこれはどういうことー!


 と、我は有能な秘書を問い詰めてみた。我の横にはいつもドーベルであるからな。だがしかし。


「わふ」


『知らなくても構わない事はお知らせしていません』


 と、ドーベルワンコに冷たくされた。顔をプイってされた。ドーベルワンコはツンデレなのでこんなもんである。

 

 ……まぁ知ったところで我のすることは変わらぬか。


 ……いや、おい、待てよ。


 これだけのハーレムがあるのに勇者は聖女と結婚式を挙げるってのか? ここにいた女性達は間違いなくあの変態よりもまともそうであるのに?


 多分みんなパンツ履いてるぞ?


 あ、我をぶん殴った貴族令嬢は我の頭蓋骨を拾ってきて謝ってくれた。普通に良い人だった。頭はちょっと割れてるけど問題無い。大丈夫だ。


 ……ブルジョワの拳って硬いのであるな。我、新発見。


 そんな鉄拳令嬢さんは髪の毛が縦ロールであった。なんかすごい。滅多に見ない縦のロールであるよ。すごく触りたくなったけど我は我慢した。なにせ今の我はスケルトンであるからな。後ろ髪を引かれたがパグぅに付き添われて彼女も『ワンコ地下道』へと避難していった。


 そして牢屋にいるのは我とドーベルワンコだけとなった。


 ……一気にがらんとしたのである。寒気すら覚えるのである。静けさを取り戻した牢屋でドーベルワンコも我を見上げていた。


「わふ」


 ここでようやくネタばらしである。うちの秘書は本当に優秀で困る。


 ワンコの説明はこうであった。



 彼女達は……『勇者のハーレム』は、ここでみんな殺される予定であった。勇者と聖女の結婚に彼女達は邪魔になる。だからここに集めて一気に……というのが真相だったのだ。


 世界各地から集めた勇者ハーレムは対外的には『ご友人』という扱いで城に留め置いていたそうなのだ。


 まぁ『ご友人』でもやることはやっていたそうだがな。破廉恥な事を。


 ……不潔な野郎めっ! もげろっ! ブリーみたいに磔になるがよい!


 まぁそうは言っても全員が全員、勇者に惚れているという訳でもなかったようだ。大国モンドールとの付き合いで仕方無くハーレムに参加した女性もいるそうで……どのみちそれを殺したらヤバくね? とか思ったけど『失踪』扱いにされれば相手の国も文句が言えない、ということらしい。


 分かっていたけど勇者は真っ黒であった。いや、モンドールそのものが真っ黒か。奴はこの国の王子であるからな。これは自称ではなく本当に王子である。『勇者』は自称なんだけどな。


 事の真相はそういう事であった。


 ワンコ的には勇者ハーレムの女性達は助けても助けなくても構わない相手になる。なので上手くかち合えば救助可能として積極的には作戦に組み込まなかったとのこと。


 ドーベルワンコの優先順位に冷酷さを感じた我である。優秀すぎてちょっと怖い。なにこの容赦ないプランニング。

 

 もし彼女達がこの牢屋ではない他の場所に連れていかれていたら……カタカタ。我の頭蓋骨が震えるのである。ヒビが増幅しちゃうのである。


 そんな震える我を尻目にドーベルワンコがすたっと立ち上がる。その目はキラキラであった。


「わふっ!」


『さぁ! 作戦はこれからが本番ですよ!』


 ……なんかさ。もうワンコが主人公で良いんじゃないかなって思うんだ。我よりも……いや、何でもないや。


 ドーベルワンコが暴走する前に我が止めないと。


 ……止められるとは思えないけどな。


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