第二十幕 ……あむあむ。今回は魔女の導入部なの。……あむあむ。
「もふもふー」
「わふわふー」
「もふもふー」
「わふわふー」
えへへ。頭の悪い会話をしてる我はもふもふの狩人である。世界がもふもふで満ちれば平和になるのになー。きっと戦争も争いもない平和な世界になる……
「わふっ!」
「わふわふっ!」
……無理だ。どんなにもふもふで溢れても世界に争いは無くならぬ。もふもふ待ちのワンコがせがんでくる。我がどんなに頑張っても一度に三匹が良いところである。
むむむ。これは腕を新たに増やすべきだろうか。かつて存在したというヘカトンケイルに我はなるべきなのか。あれって頭が沢山あって腕もいっぱい生えてたらしい。
……股間に頭とか生えてたのかな。
「わふ!」
「へぶっ!?」
ワンコ回転尻尾アタックを食らった。『馬鹿な事を考えてないで撫でて下さい』と丁寧な物言いながら主張ははっきりしている。うむ。今日もうちの秘書は有能であるな。なでなで。
さてさて、我もそろそろ回復したので復讐の続きを……したくないなぁ。だって残りは四人なのであるよ?
聖女と勇者と魔女。そしてジョン。
なんだかRPGの題名に有りそうな感じである。主人公を四人から選べる感じか?
この四人はなぁ……。
とりあえず面倒な臭いがぷんぷんするのだ。
まずは聖女。こいつは最初に会いに行ったときタックルで迎撃された。間違いなくラスボスである。昨日シスター服のラスボスに会ってきたけど、こいつもラスボスだ。ラスボスは複数いるらしい。なんてこったい。
そして勇者。こいつはとことん『悪』でありそうだ。生半可な復讐では済まぬだろう。我の予感としてはこいつを恨んでいる者の大半は死者である。いっそ全てをあの世から喚び出してみるのも一興か。国は大混乱になるだろうがな。
問題は魔女。この人は純粋にキツい。何せ世界最強を冠する魔法使いである。不可能は基本的に無い、と言われる伝説の存在であるからな。いつもは表舞台に出てこないのでそこが弱点といえば弱点になるのか? 下手に動くとあっさり返り討ちに遭うだろう。あとこの人は怒ると怖い。すごく怖い。でも露出狂。人の業は深いのである。
んで、オマケのジョン。こいつはもう復讐しなくても良いと思う。というか接点を持ちたくない。我も心のキャパシティが限界である。色々とありすぎたのだ。これ以上の負荷はよろしくない。
よって復讐は残り三人である。
三人って言ったら三人なのである!
そして始まった復讐超会議。いつものようにもふもふに囲まれての会議である。
また難航するだろうと思っていた我であるがワンコの言に事態は一気に動く事になった。
「わふっ!」
『お肉が食べたいです』
いつも真面目なドーベルワンコ秘書がそう切り出したのだ。会議の開幕でな。
という訳で我はモンドールに飛んだ。またしてもウサギ狩りである。急転直下であった。
ウサギー……とってもウサギー……でもおっきいのー……だってウサギだしー……ウサウサ。
ウサギ狩りは好調であった。好調すぎてモンドールウサギが絶滅しないか不安になった。我は見てるだけ。全てワンコ達がやってくれた。いや……殺っていた。時折巨大なワンコの影も森の中に見えたが気のせいという事にしておいた。クラウザーが外に出るとかあり得ないからな。はっはっは。
モンドールウサギは森の中に巣を作る習性がある。巨体だけど彼らは森を開拓するのだ。やたらと整備された森を歩いていてウサギにどつかれる、というのが森の基本である。森は怖いのだ。
ワンコ達がウサギをくわえて森の中に消えていく。きっと森の中にはゲートがあるのだろう。我が知らないゲートがな。大きなワンコパンチで空間をザクッ! として作るあのブラックホールであろうな。
……。
クラウザァァァァァ!
何で来てるのぉぉぉぉ!?
無視できないよぉぉぉぉ!?
ウサギ狩りは大成功に終わった。そしてクラウザーのお説教も終わった。クラウザーも寂しかったそうなのだ。いつも洞窟にお留守番で。
我は許すときは許すのである。
でも一応聞いておいた。
「クラウザーよ。今回が初犯であるよな?」
「…………わ、わふ?」
……挙動不審なワンコってどうしてこうも分かりやすいのだろうか。我も怒るときは怒るのである。
さて、今回の復讐は特別ゲストの力を借りようと思う。ゲストというかゲストの体の一部であるな。
今回使用するのはこちら。
『クラウザーの抜け毛』
抜けたてホヤホヤの逸品である。クラウザーのお仕置きで出た抜け毛であるが終末の獣の毛である。そのうちに秘めたパワーはとんでもないはずである。
見た目はただの白い毛玉であるがな。
我はこれを利用してあの魔女に一泡吹かせてみようと思う。気分はイタズラを目論む悪ガキである。
……あとで絶対に怒られるけど、やらずには居られない。そんな心境である。しみじみ。
あの人への復讐ならば……きっとあのプランしかあるまいて。だがそれをやると彼女は絶対に怒るだろう。めっちゃ怒ると思う。下手したら世界を破滅させるくらいに怒り狂うと思う。
だがもう止められないのだ。
我は復讐を誓いし闇の狩人である。この復讐は誰にも止められないのだ。この身を焦がす黒い炎は決して消えはしない。
「わふー!」
……復讐は中断である。
ワンコの『肉焼けー! はやくー!』というコールが入ったのだ。早く我の得意な黒い炎でウサギ肉を焼かなくては。
ワンコ達は最初に屋台の焼き肉を食べたからみんな火の通った肉が好きになってしまったのだ。生肉も好きだけどちょっと火の通ったレアな肉はもっと旨いらしい。
ちょっとグルメな感じであるな。内臓も食べるけどそれは別物らしい。我にもちょっと分かんないや。
そんなわけで……レッツ バーニング 肉!
今回は森の中でバーベキュースタイルである! び!び!きゅ!
……焼いた。我……すごく焼いた。
骨の山が出来るくらいにウサギさんはワンコ達のお腹に収まった。毛皮は何故か剥がされてて調理はすごく楽であった。
ウサギの皮を被ったワンコ……走り回って遊んでる。
……うん。うちの子は優秀であるからな。クラウザーも皮を被って遊んでるけど、まるで本物のウサギさんであるな。サイズがぴったしである。
……はっ!?
我は閃いた! 閃光のごとき閃きが我の脳裏にズビッと走ったのである!
復讐はこれで行こう!
でもまずはバーベキューの後片付けである。森で火事とかみんな困るからな。
よいしょ、よいしょ。