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我の復讐劇  作者: スモークされたサーモン
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第十八幕 永年ポテチ禁止令が出た。だけど大丈夫。私には半ズボンの可愛い男の子がいるの……ググッ……オマエ……ウマソウダナ……クワセロォォォォ!



 我輩は復讐を誓いし闇の狩人である。名前はちゃんとある。あるけど内緒である。


 そんなわけでまた始まった我の復讐劇。今回の相手は『オークの戦士ザッハーク』である。


 こいつは名前が格好いいのである。なんか蛇っぽいがオークの戦士である。オークとは肌が緑で筋肉がムキムキの亜人種である。まぁ人も純粋に分類すれば亜人種になってしまうのだが今は置いておこう。


 オークは基本的に力持ちで戦士に向いてる種族である。その分魔法が苦手という欠点もあるがそれを補って余りあるほどにパワフルでしぶとい種族なのだ。緑の肌で金髪とか茶髪なので違和感がパネェ種族でもある。本人達もそう思うのか、みんな頭を剃りあげていたりする。ツルツルだけどソルニ教とは無関係であるな。


 女性のオークは髪型をお洒落にデコるみたいだが我も見たことはない。みんなツルツルである。


 とある学者が『オークは単一性生物ではないか?』との研究を発表したこともある。それぐらいに男女の区別がつきにくい種族である。我も見分けつかないし。


 なにせ、みんな顔が厳ついのだ。


 少女オークもおっさんに見える。オーク同士だと違いは顕著に分かるそうだが他種族には難易度が高すぎである。


 研究を発表した学者はオーク達にボコボコにされて全ては謎になったのだ。オーク怖い。


 ザッハークはそんなオークの戦士である。勿論厳つい顔で全身がムキムキで二メートル以上ある巨漢である。すさまじい筋肉に裏打ちされた剣技はまさに『戦士最強』である。


 ちなみに魔女は『世界最強』である。


 オマケで聖女は『超絶変態』であるな。


 今改めて考えてもすごいパーティーである。何でそんな所に我が呼ばれたんだか。我は普通の闇魔導師であるよ。もうこの三人だけで十分だと思う。


 まぁ結果として不十分だった訳でクラウザーからスタコラと撤退したわけであるがな。


 ザッハークはなぁ。脳筋だからなぁ。終末の獣に対峙したときもいきなり斬りかかっていたし。ちょっと野蛮すぎてなぁ。あの野郎が喧嘩を吹っ掛けたせいでクラウザーも本気で我らを排除する羽目になったし。


 まずはコミュニケーションから入るのが文明人だと我は思う。いや、オークの挨拶が初手『大切断』かも知れぬがな。魔物を真っ二つにした技もクラウザーには通じなかったし。やはり物理的なアプローチでは滅びに対抗出来ないという事なのだろう。つまり『物理無効』であるな。


 ……オークの天敵であるな。クラウザー。


 そんなアンポンタンなザッハークに我は復讐するのである。あの野郎が先走ったせいで戦いになったのだ。しかもあの野郎は先に手を出したくせに真っ先に心を折られて使い物にならなくなったのだ! 


 もう少しメンタルを鍛えとけ! と我は言いたい。確かにあの時のクラウザーはまさに『終末』を体現した存在であったがな。そんなものに斬りかかっておいてすぐにメンタルをポッキンされても困るのだ。というか困ったのだ。


 今我がこうして復讐者に身をやつしているのも元をただせばこいつのせい……なのかもしれぬ。


 よって復讐である!


 今回は我が主導するのである。前回はワンコ達が全てをやってくれたので我はほぼ見てるだけであった。


 ……楽チンだったけど復讐としては微妙であった。


 なので今回は我が頑張るのである!


 我は復讐を誓いし闇の狩人であるからな! ふはははは!





「わふ」


「うむ。しかしその案だと奴が最悪死ぬのである。奴には生きて後悔してもらわぬと復讐にならぬ」


「わふ?」


「別に殺したい訳ではない。奴は乱世には必要とされる存在だが今の時代には少し過激すぎる。自ら剣を置くようになれば世界も平和にもなるだろう。多分」


「……わふっ!」


「……腕を噛み千切るとかは無しで」


 我は復讐会議を開いていた。毎度お馴染みの会議である。秘書のドーベルワンコや他のワンコも参加してのもふもふ会議である。


 ちょこちょこ過激な発言があるのはワンコだから、ということにしておく。


 とても今更であるが我にはワンコ達の言いたいことが分かる。これは我の秘められた力……というわけではなく。修行で山に放り込まれて得た生き残る為のスキルである。


 まだ幼い我を山に放り込んだ師匠は鬼であるな。鬼ババアである。何で魔法使いの修行で山籠りなのか今も分からぬ。


 死と隣り合わせの状況で得た我の不思議スキルであるが何故か言葉の通じる相手の方が意思疎通が上手くいかぬ。言葉が通じるのに通じぬのだ。


 その最たる例が『聖女』であるな。あれはもう駄目だ。とりあえずパンツであるからな。


 あのエルフ姉妹も……あ、そう言えば思い出したのである。


 妹のパニラがザッハークのフンドシを自分の下着と偽って勇者に差し出していたのを。


 ……あのフンドシを勇者はどうしたのだろうか。


 ……考えない方が良いな。そして現実逃避していることから予想がついてると思うが……会議は難航していた。


「さて、今回は難産であるな」


 上手いことザッハークを懲らしめる復讐案が中々出ない。なにせ相手は『戦士最強』である。力押しは悪手であるし、搦め手も脳筋だから通じない可能性が高い。まぁだからこそ『戦士最強』なのだがな。


「わふ」


「わふわふ」


「わふわふ!」


「またもふもふタイムであるか? まぁ、もふるけど」


 ワンコ達は甘えん坊であるからな。クラウザーも甘えん坊だし。ここは楽園であるな。いつももふもふが側にいる。こんなところは世界のどこを探しても存在しまい。


 ……もふもふ。


 ……もふもふ。


 ……もふ……うむ。考えてみればザッハークのアンポンタンのお陰でこうなったとも言える。


「わふ?」


「おおぅ。もふもふを続行であるな」


 もふもふ。ワンコは結構もふもふに拘りがあるのだ。頭を撫でて貰うのが好きな子や背中を撫でて貰うのが好きな子、豪快に全身をわしゃわしゃされるのが好きな子もいるのだ。


 そしてちょっとでも手が止まると抗議する。この辺は言葉が分かる分からないは関係ないだろう。こっちをガン見するからな。とりあえずザッハークは置いといてもふもふに集中である。




 ……もっふもふにしてやった。今日はもう……これで……。


「わふっ」


「……マジで?」


 我の秘書が『さぁ、休憩も終わったので続きを始めましょうか』と言ってきた。なんと厳しいドーベルワンコであるか。ドーベルワンコも撫でまくったから艶々の美人ワンコだというのに。


「わふ」


「あ、はい。頑張ります」


 ワンコの圧に負けた。しかし今回の復讐は中々難しいのである。なんたって相手はあの……最強で……最強……ふむ。


「最強には最強を当てるのが鉄板……であるな」


 我に秘策が浮かんだのである。


「わふ?」


 ワンコに『頭は大丈夫ですか?』とつぶらな瞳で言われた。


 ……ちょっと泣きそうなのは内緒である。





 時と場所は変わり、ここはモンドールの闘技場である。あのエルフ姉妹がおデブな人となんやかんやあったあの闘技場である。ここの屋上で我はパッカーンしたのであるなぁ。懐かしくも恐ろしい。


 今回の我は出場者ということで闘技場の内部に居たりする。今の我は相変わらずの裸ローブという男らしい服装である。中は当然スケルトン。衆人環視である。ローブが捲れて中が見えたら大騒ぎであるな、きっと。


 今はまだお昼時間なのだが相変わらず闘技場は熱気に満ちていた。たいまつなんて燃やしてなくても熱気が空気を歪ませるのだ。


 その歪んだ景色の向こうに奴がいる。


 そう……メイちゃんである!


 いや、闘技場で我とメイちゃんのバトルという訳ではない。むしろ我はメイちゃんのトレーナー的な立場である。ピンチになったらタオルを投げ込む感じの立ち位置であるな。


 あ、一応説明するがメイちゃんとは我の頭をパッカーンした怪力幼女の事である。筋肉好きなおにーたんを持つ魔法(に憧れる)幼女なのだ。


 詳しくはペチパニ編をチェケラである。


 今回の復讐はそんなメイちゃんに協力してもらうのである。


 くくく。我は思い出したのであるよ。オークの戦士には様々な制約があるという事を。


 あ、メイちゃんや。そんなテンションあげなくていいから。まだザッハーク来てないから走り回ったり武器を振り回さないで……おぎゃあ!?


 ……説明を続けるのである。


 オークの戦士には『誓い(ゲッシュ)』と呼ばれる独特な風習というか約束事がある。


 戦士となるものはまず誓いを立ててそれを遵守する事を神に誓う。それがオークの戦士になる条件なのだ。そしてもし誓いを破るような事があれば戦士としての資格を失ってしまう。


 まぁだからといって戦えなくなる訳ではないが、オークの戦士としての誇りは失われるそうなのだ。オークは誇り高き種族。それは何よりも汚辱とされている。


 面倒な種族だが、だからこそ信頼出来るとも言える。オークの戦士といえば傭兵や冒険者に比べても遥かに高い評価を受けている。金や欲望で狂わないので信頼感が違うらしい。雇う側からすれば確かに大切であるな。


 誓いを守る事で自分を戒め精進する。オークの戦士が強いのも納得である。


 ……で、復讐者の我はそこに目をつけたのだ。ぐふふふふ。


 ザッハークの『誓い』を破らせる事が出来れば奴は勝手に汚辱にまみれるのである。くくくくく。これ以上の復讐もあるまいて。


 そんな訳で我の右腕を吹っ飛ばしたメイちゃん先生の出番です。


 ええ、こん棒の素振りがかすって右腕が吹き飛びました。死ぬかと思いました。一瞬の出来事だったので観客は気付いておりません。


 ……気付けよ! そして助けろよ!


 ひとまず派手に裂けたローブを体に巻いて誤魔化してみたが……これはこれで怪しい人であるな。前衛的なお洒落さんに見えるだろうか。まぁよい。我は既に用済みである。


 ……用済みだけど粉砕は勘弁して欲しいなぁ。今はザッハーク待ちでメイちゃんもノリノリであるからな。メイちゃんの将来が本当に不安である。


『魔法を教えてあげるので協力して欲しい』と囁いたのは失敗であったか。


 オークの戦士は『女子供に手をあげない』という誓いを全員が立てている。それはオークの戦士の基本なのだそうだ。どんな時でも子供と女性には手を出さない。たとえ敵が女騎士でも手を出さないのがオークの戦士なのである。


 ぶっちゃけ対抗策が確立しててオークの戦士は国の戦争には役に立たん。真価を発揮するのは対魔物戦である。盗賊にも女性は多いので仕方無し。


 ……うん。つまりだね。この闘技場で今回催されるのは魔物使い(メイちゃん)とオークの戦士ザッハークの戦いなのである。


 我は噛ませ犬というか飾りというか囮である。スケルトンを操る幼女とオークの巨漢のバトルなのである。


 対戦カードに無理があると思うだろう。我も思った。しかし前回の復讐で多くの女性が救われた。そのうちの一人がこの闘技場の関係者であったのだ。具体的に言うと偉い人の娘さんである。


 ワンコの力を借りながらも我は交渉をして協力をこぎ着けたのだ。我は頑張ったぞ! すごく頑張った。


 ザッハークに一泡吹かせて引退させると正直に言ったらワンコにどつかれたしな。


 まぁ、すったもんだの挙げ句、快諾してくれたので良しとするのである。先方が確認したところザッハークも何故か乗り気だったし。意外とノリの良い奴だったのであるな。


 そんな訳で我はここにいる。対戦カードでは魔物と戦う事になっているが実際はメイちゃんとザッハークとの一騎討ちである。奴がオークの戦士である限りメイちゃんが立ちはだかった時点で奴の負けである。


 大人しく降参すれば良いがそうもいかぬのだ。オークの戦士に『撤退』の文字はない。いや、普通に撤退ぐらいしろよと思うがその場合集団のしんがりを務めるしかないのだ。つまり一対一の戦いでオークは退けぬ。


 なんとも面倒臭い種族であるがその分アホみたいに強いから仕方無し。だがそれが今回仇となるのだ。


 くくく。メイちゃんはヤル気に満ちている。恐ろしいほどにな。そんなに魔法幼女になりたかったのか、巨大なこん棒をマジカルステッキに見立てて振り回しておるわい。


 我は既に闘技場の壁まで避難してまーす。あんなの食らったら木っ端です。


 観客もブオンブオンと唸るこん棒の音に静かになっていた。そして闘技場が素振りの音以外は静まり返った頃……奴がようやく現れたのであった。




 ……で、結論である。


 ここで顛末を長々と記しても構わぬのだがそれどころではない事態になってしまったのだ。我は正直……どうして良いのか分からぬ。


 まさかあのザッハークが『女』で、しかもメイちゃんのおにーたんと結婚するなんて……。


 想像も出来るかぁ!


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