第十七幕 痛風が治ってたの。目が覚めたら病院でICUだったのよ。お見舞いに来てくれたミシェル君はナイスシルバーになってたの。孫はすっごく可愛いかった。
「ブリーよ。貴様を断罪する」
「なんだと!? お前は……まさかっ!?」
物語は一気にクライマックスへ。復讐を誓いし闇の狩人の凶刃が男の股間に吸い込まれるように突き刺さる。
「このドスケベブリーめが!」
「止めろ! そこは本当に止めろ!」
凶刃は寸での所でかわされた。ブリーの股間は無事である。ちっ。
「このスケルトン野郎! いきなり何しやがるんだ!」
「キャバクラ通いするブリーは切り落としてもいいと思う」
キャバクラのソファーに穴が出来ちゃった。ブリーのせいであるな。うん。
「え、いや……」
「そうよそうよ! 私が一番ってあなたは言ってたのに……」
あ、キャバ嬢の凶刃が……
サクッ!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
……ああ、うん。夜のモンドールに伊達男の絶叫が響き渡ったのである。なんというか……まぁいつもの流れであるなぁ。
これにて復讐完了である!
……。
……。
うむ。今回はクライマックスからスタートしてみた。そしてクライマックスが終わりでもあったので……終わりであるな。
我の偉大なる復讐劇を飾るにしてはあまりにも中身が無いので説明していこうと思う。復讐の説明ってなんなんだろう。考えたら負けであるな。
さてさて、股間からヤヴァイくらいの血を流して卒倒してるブリーだが……この惨状も自業自得であるから放置であるな。
復讐相手の股間がサクッ! で始まった(終わった)我の復讐劇『ブリー編』であるが、その始まりはやはりワンコレポートからであった。
うちのワンコはすっごく優秀である。親バカではなく事実であるな。うちの子が一番である。まぁ沢山ワンコがいるからみんな一番であるのだがな。ふはははは!
そんな優秀なワンコレポートはこんな内容だった。
『伊達男ブリニョルフ』
冒険者のギルドに属する弓使い。腕は一流だが女癖が悪く常に女性関係で問題を起こしている。そのため一ヵ所に落ち着いて仕事をすることがなく微妙に使いにくい人材。顔は良いが基本的にスケベで浮気性。最近モンドールで『英雄』扱いをされるも持ち前の女癖の悪さで問題を多発させている。そのうち穴だらけになって見つかると思われるのでツケは早めに精算することをお勧めする。
……というレポートを受け取った我はどうすれば良かったのであろうか。
とりあえず復讐のツケを払ってもらおうとブリーに相応しい復讐プランを練ろうとしたのだが……
ブリニョルフは多くの女性を妊娠させているクズ野郎なので去勢させましょう。是非。
というワンコの催促状を出されました。
……ドーベルワンコはその辺り厳しいワンコだったようである。委員長タイプであるかなぁ。眼鏡とか似合いそう。
我もとりあえず聞いてみた。うちのドーベルワンコさんに。
『愛があればモーマンタイでは?』とな。
そしたらば『奴は子供の認知をしないのでオス失格です』と返された。
……うむ。うちのワンコが絶対的に正しいのである!
……ワンコの世界にも認知ってあるんだな。我もビックリであるわ。
こうして我と優秀なドーベルワンコは情け容赦の無い『ブリー復讐プラン』を練り上げていったのである。心なしか側で見てたクラウザーも内股になって尻尾を股に挟んでいたような気もするが……多分気のせいであるな。うん、気のせい気のせい。クラウザーが微かにプルプルと震えてたけど……多分シバリングであるな。他のオスワンコ達も一塊になってブルブルしてたから間違いない。
封印の洞窟って寒くも暑くも無いんだけど……まぁ気にしたら負けであるからな。
今更であるが作戦会議は洞窟内で行っている。我とクラウザーの寝室であるな。クラウザーの抜け毛で埋め尽くされたフカフカなエリアである。いつも誰かしら寝てるのでとっても犬臭い部屋になっている。
我とクラウザーだけだと無臭だったのだが今はワンコ臭が溢れるワイルドな寝室となっている。まぁワンコ天国だからバッチコイであるがな。
そんな所で作戦会議をしているので我の復讐劇の進捗は他のワンコ達にも共有されている。モンドールの元野良ワンコであったウルフワンコも『僕も手伝うー! 噛み砕くのー!』と助力を申し出たが遠慮しておいた。
ウルフワンコは戦闘力に秀でたワンコである。多分我よりも強い。
だが断った。
何故ならば……我の見せ場がこれ以上無くなると復讐劇として微妙だからである!
既に空気みたいな存在になってる我がこれ以上薄くなったらまさに『空気』になってしまうのだ! 我はスカッと復讐したいのである!
なのでウルフワンコはもふもふして慰めておいた。狼系は体が大きくて素敵である。むふー。
そんなこんなで作戦会議はいつももふもふである。もふもふしながらもっふもふにされる会議はとても牧歌的である。復讐劇を繰り広げているとは思えないくらいに長閑であった。
さて、作戦会議はそんな感じで進んだのであるが、肝心の復讐である。
秘書のドーベルワンコの提案で無責任男の股間をスパッ! とする事に決定したのだが……。
「わふわふ!」
……今回は他のワンコも参戦することになった。どんだけ嫌われてんだよブリー。雌ワンコが総出であるぞ。
あとウルフワンコは凹んでた。まぁ男の子だからねぇ。撫で撫でして慰めておいた。むふー。
ここまでが準備であるな。いや、準備の準備であるか。
ワンコ達がやたらと殺る気に満ちていたのはブリーの毒牙に掛かった女の子達に関係があった。
モンドールの野良ワンコであったドーベルワンコ達は色々な人にご飯をもらって生きてきたのである。それでもガリガリだったのは総数が多すぎたゆえ。家族計画を立てるのはただのワンコには難しいからな。
今はムキムキで健康的なワンコ達も前はそうではなかった。
そんなときにご飯をくれていたのがブリーに汚されてしまった女の子達である。勿論無関係な女の子もいるし女の子というには年を重ねすぎた『女の子』もいる。
だがそんなことは関係ない。ワンコ達は恩義に報いる仁義なワンコなのだ。
ふっふっふ。ブリーよ。貴様は敵にしてはならぬ相手を敵にした。覚悟するがよい。我もこれは絶対に無理。土下座して命乞いである。
協力してくれたワンコ達は謎のネットワークであっという間にブリーの悪事を全て暴いた。それによると妊娠が十二名に無理矢理襲われたのが二人。妊娠してないけど傷物にされたのが三十余名というすさまじい結果であった。
こりゃスパッ! としないと駄目であるな。
いや、手をつけた女の子を大切にして愛しているなら問題はなかったのだ。ブリーは浮気性でドスケベで調子に乗りすぎたのだ。
英雄と持て囃されて……いや、ブリーは前からこんな感じであったな。エルフのペチカとパニラにも手を出そうとして刺されてたし。魔女に言い寄って魔法の雷を食らってたし。聖女には……ブリーも手を出さなかったな。流石にヤバイと思ったのだろう。
ブリーは変なところでチキンであったからな。しかし今回の罪業は見過ごせぬ。というかワンコ達が殺る気満々で退くに退けぬ。
よって作戦は決行である!
今回の作戦は完全にドーベルワンコさんの立案である。我が空気とか思ってはいけない。
大まかな作戦としてはこうなる。
(・ω・)その1
ブリーの潜伏する大人のお店に被害者女性達を連れていく。復讐者は我ではない。女性達である。我の存在理由を疑ってはならぬ。
(・ω・)その2
被害者女性達に復讐を果たさせる。我とワンコ達はそのサポートであるな。ほら我も役にたつもん。
(・ω・)その3
終わり。
復讐完了! であるな。
……いや、優秀で秘書なワンコが立案した作戦だったけど……正直どうなのかなぁと我は思った。
まぁ実際に上手くいってしまったのでやはりワンコはすごかったのだがな。まさかお店のキャバ嬢がヤンデレタイプで末期だったとは……ワンコはそこまで読んでいたのである。
相手は英雄に選ばれるほどの手練れである。我の不意打ちが決まるほど柔な相手ではなかった。まぁキャバ嬢の『超不意打ち』が炸裂してサクッ! といったので良しとする。
……同性としてお股がヒュン! ってしたけどこれも復讐である。毎度お馴染みスケルトンで股に何も付いてないのにヒュン! ってした。
復讐って怖いよね。という訳で今回の復讐は終わった……と思いきやまだ続いていたのである。ドーベルワンコは容赦なしのワンコなのである。
股間の応急処置だけされた泡を噴いてるブリー(失神)は裸にひん剥かれて晒し者にされることになったのだ。
……容赦無いよ。女性達も嬉々として参加してたよ。裸のブリーを縛り上げるのをさ。
そして裸のブリー(去勢済み)はモンドールの正門にくくりつけられる事になったのであった。具体的な描写は避けるが……子供の教育上大変よろしくない絵柄であった。
……我はそれを見て絶対に浮気しないと誓った。ブルブル。