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我の復讐劇  作者: スモークされたサーモン
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第十四幕 ……あむあむ。やはりポテチなの。世界はポテチとアルコールさえあれば事もなしなのよ。右の尻が痒ければ……左の尻を出せばいいの。パンツが無ければノーパンで十分なのよ。ぐびり、ぐびり。



 我は復讐を遂げし者。前回の復讐では見事に復讐を遂げられたので今回もサクッと復讐をしてみたいと思う。


 ぬ? 


 あれが復讐か? だと?


 ……。


 …………。


 さて、今回のターゲットは『清烈の神官』と呼ばれた男、マッケンジーである。


 こいつはソルニ教という大きな宗教組織の武闘神官でナイスミドルな男である。体格は中肉中背。でも武闘神官だから脱いだらムキムキの細マッチであるな。


 ソルニ教の神官は大体が頭を剃り込んでツルツルにしている。それが剃るに教……ソルニ教なのである。


 でもマッケンジーはふさふさであった。白髪というか銀髪がふっさふさである。


 ソルニ教は戒律でツルッパゲを強制している訳ではない。なのでマッケンジーがおかしい訳でもない。


 ソルニ教では修行の一環として頭を剃るのだ。


 何の修行なのかは秘匿されていて分からん。我もツルッパはちょっと嫌である。きっとマッケンジーもその修行をしなかったのであろう。


 そんなツルツル神官だらけのソルニ教から英雄として選ばれたのがマッケンジーなのだ。


 奴が英雄として選ばれた事を鑑みるとツルツル頭が能力に直結するわけではない……という事だろう。多分。


 ……大体の武闘神官はハゲだからちょっと自信ないけど。


 そんなふさふさマッケンジーの外見はまさにナイスミドルであった。三十代半ばで常に笑みを絶やさない優男。それがマッケンジーである。


 物腰も柔らかで、さぞ奥様方にモテモテだったろうと我は怒りを隠せぬのである!


 あの旅の中、マッケンジーはいつも笑顔を絶やさぬナイス中年であった。


 だがしかし! その微笑みは上っ面だけなのである!


 我は知っているのだ!


 マッケンジーは確かにいつも微笑んでいた。我が聖女にお説教されているときも遠くで優しく微笑んでいるだけだったのだ。


 我、悪くないのに! あの野郎は助けることも諌める事もしなかったのである!


 マッケンジーは、いわゆる置物野郎であったのだ!


 我が酷い目に遭っているときもあの野郎はずっとニコニコしていやがった。旅の間、ずっとな。


 なので復讐である。







 我は復讐を誓いし闇の狩人である。初回は何もせずにパッカーンされたが今回こそは上手いこと我の手で復讐したいと思っている。その為に今回は助手を用意した。


「わふ!」


 ワンコである。クラウザーではなくてモンドールで野良ワンコをしていたワンコを助手として採用したのである。見た目はものすごく利発そうなドーベルワンコである。体もムキムキであるな。毛も艶々である。むふー。


 今の我らはモンドールの路地裏で建物の角に隠れてマッケンジーが働いているというソルニ教の治療院を監視している。


 入り口をワンコと一緒に、こっそり監視であるな。


 ……ものすごく不審者感が満載である。


 だが我は怯むわけにはいかぬのだ。必ずあの憎っくきマッケンジーを……あんなことやこんなことにしてやるのである!


 具体的には……あんなことやこんなことである!


 ……我は今回も完全ノープランで来てしまった。正直な所……復讐をどうしようかと悩んでいた。


 助手に任命したドーベルワンコが優秀過ぎたのだ。今日はメイちゃんに破壊された日の翌日である。昨日粉砕されたばかりでちょっと休みたくもある。


 ドーベルワンコはモンドールに居たマッケンジーをアッサリと捜し出してしまったのだ。それと他の面子もついでに居場所が判明した。一部を除いて全員居たのである。このモンドールに。


 助手のワンコ……優秀すぎる気がする。


 これを外界に出すのはやはり危険である。もはや普通の犬ではないだろう。ここまですごいとちょっとまずい。


「わふ?」


 いや、誰にも迷惑にならなければ良いのだ。ワンコを閉じ込めるなんてそんなの虐待であるからな。こんなに健康的になったのだ。太陽の下を駆け巡る事こそワンコの幸せであろう。


 路地裏の片隅。地面に落ちている骸骨の振りをした我。それを心配そうに見つめるワンコのなんと尊いものか。


 ひっそりと骨のふりをして監視している我を慮るワンコはなんと優しいワンコなのだろうか。


 こんなに素敵なワンコなのだ。多分大丈夫! 外で活動しててもきっと……大丈夫……だといいな!


 気を取り直して監視を続ける我(地面に落ちてる骸骨)と我の骨を一本かじり始めたワンコはソルニ教の治療院の監視を続けた。


 そして夕日が街を赤く染め上げた頃、ついに我は憎っくき復讐相手を我が目で確認するのであった。


 我はスケルトンだから眼は無いけどな。ぬははは!

 


 

 あれから半年。我が置き去りにされてから半年である。人相が変わるには少し短い時間である。だからすぐに分かった。一目見て分かった。


 あれから半年経って見るマッケンジーは……でも大分様相が変わっていた。


 治療院の入り口から颯爽と出てきたマッケンジーは以前と変わらぬ細マッチで頭がふさふさのナイスミドルであった。ここまでは良いのだ。ここまでは。


 しかし明らかに以前と違ったのが……奴の肌艶だった。


 夕日に照らされたマッケンジーはなんか……艶々であった。すごく生気に満ちているというか……『精気』に満ちていたのだ。ご機嫌ニコニコマッケンジーが夕日に反射して眩しいっ! と我のスケルトンアイが感じる程にな。


 遠目に見るマッケンジーは相変わらずナイスミドルであり、そして相変わらずの微笑みをその面に張り付けていた。肌艶がやたらと良いけどマッケンジーその人である。間違いない。


 そのにやけた面に腐ったトマトを投げつけてやりてぇなぁ。


 と、我は思った。


 まぁやらないけど。


「ワンコよ。あの野郎は随分と精気に満ちておるが……もしかして……すごくエロ臭かったりする?」


 我はワンコに聞いてみた。我の予想が正しければ……あの野郎……あの野郎は……ぐぬぬぬぬ!


「わふ!」


 ワンコから『そうだよー! 情事の匂いがぷんぷんするー!』と返事があった。


 ……よし。マッケンジーに対する復讐が決まった。我の中では怒りの炎が燃え上がっていた。


 奴の股間に生えてるブツを切り落とす……そんな復讐にしようと思う。我も男であるからその恐ろしさはまさしくタマヒュンである。


 だがドスケベなマッケンジーにはこれ以上なく相応しい復讐になるだろう。

 

 ……復讐するは、我にあり!





 マッケンジーの復讐の前に少しソルニ教について復習しておこう。復讐の復習は大切であるからな。前回はこれがなかったからあんな結果になったのかも知れぬ。


 まさかあんな展開になるとはなぁ。予想もしてなかった。頭パッカーン……。


 まぁ気を取り直していくのである。


 さてさてソルニ教は武と瞑想を以て自然との調和を目指す肉体派な宗教の一派である。寺で黙々と修行する感じであるな。その本質は自然との融合であるから治療術との相性がすこぶるよいのが特徴である。


 いわゆるモンクであるな。ハゲだけど。


 治療術とは別に己の体一つで困難を突破せよ、という教えもソルニ教の大本にある。人は自然のままに生き、自然の中で淘汰される、ということらしい。だから肉体を鍛えよ、という教えにもなるのだろう。基本的にソルニ教の神官はムキムキであるからな。


 そんな教えだからソルニ教は武器をあまり嗜まない。使わぬわけではないが命を奪う場合、素手であることが前提になっているという面倒臭い宗派なのである。なんかみんなハゲだし。


 まとめるとストイックなハゲのモンクであるな。ソルニ教の神官というものは。


 そんな厳しそうなソルニ教であるが、戒律はそこまで厳しくはない。神官はそれなりに厳しいが一般の信者は本当に普通の人である。ハゲではないのだ、ハゲでは。


 さて、ソルニ教はこんなところである。マッケンジーはそこの神官……それも武を司る『武闘神官』である。


 勿論神官なのであれである。エッチなのは駄目なのである。家庭を持つのは構わないのだが女遊びは絶対にダメっ! なのである。

 

 だから我の復讐はソルニ教の教義的にアリなのである!


 女遊びに耽るあんちくしょうの股間がスッキリしてもそれは善なる行いなのである!



 ふっ。今回は自己弁護も完璧であるな。これならば我に天罰が降ることもない。頭をパッカーンされる心配もないのである。


 ……あの幼女は間違いなく天の配剤であろうな。そうでなければ説明がつかん。


 今回はまさかの事態に備えてワンコがいる。何かあってもワンコに助けてもらえるのだ。頭蓋骨をくわえてもらってスタコラサッサである。


 ……いくら我があいつらから酷い目に遭わされていたとしても、我の行いは復讐である。それが善なる行いであるわけがない。悪いことをすると悪いことが我が身に降り掛かるのがこの世であるからな。


 ……。


 あれ? 我は何でパンツ女に酷い目に遭わされたのであるか? 


 ……。


 ……復讐するは、我にあり!


 



 色々あったが復讐を決行することにした。スケルトンでなければ地面に涙の池が出来ていただろう。だが我は怯まぬ、退かぬ、省みぬ……こともないな。反省は大切である。


 ドーベルワンコにくわえてもらって我は上機嫌なマッケンジーの後を着けることにした。ぶっちゃけストーキングである。復讐という崇高な目的の前にそういう事は気にしない。なんだか我らに向けられる視線が沢山あるけどそれも気にしないのだ。帰宅途中のおじさんとか子供たちとかすっごいドーベルワンコを見てるけど気にしたら負けなのである。 


 徐々に夕日の赤は紫から紺へと変わっていく。辺りが闇の帳に包まれていくのだ。これからは闇の支配する時間であるな。子供は帰る時間なのである。


 これからは……大人の時間なのだ。


 でもおっさん達も付いてこなくて良いのである。シャレコウベを運ぶワンコが気になるのは分かる。だが、そこをスルーするのが大人である。


 我とワンコはマッケンジーを追い続けていた。こっそりと、艶々マッケンジーの後をてけてけと。時折我の頭がミシリと音を立てるが多分大丈夫。ワンコが噛み砕く事は多分無い。よだれは……すごいけど。


 地面に点々とよだれの跡がついているがマッケンジーの尾行は順調である。


 既に日は暮れた。マッケンジーが足を進めている先は……やはり繁華街……それも『大人のお店』が沢山あるエリアだったのである。


 きゃー! 不潔ーっ! このエロマッケンジー! マッケンジーエロス! エロティカマッケンジー! エッチなのはどうかと思いますー!


 と、我は胸を熱くした。胸……無いけどな。今回のスケルトンは最初から頭だけである。撤退を主眼に置いたのでこうなった。助手がいるとすごく楽である。実は体のパーツもあったのだが……全て食べられちゃったとも言う。というか、そうとしか言えぬ。

 

 まぁワンコのお給金と考えれば安いものであるな。運んでくれるし。


 ミシッ。


 ……急ぐのである! 今回のミッションも時間制限付きである! ワンコの食欲が我慢できなくなったら我がパッカーンである! なんてこったい! またパッカーンであるか!?


 と、我が内心戦々恐々としていると、マッケンジーが、とあるお店に入るのを確認した。ようやくである。


 ……あれ? 奴の股間をお仕置きするならわざわざ今ではなくて、別の時を狙えば良かったような……


 ミシミシ。


「よし! ドーベルワンコな助手君よ! マッケンジーのエロエロな現場に乗り込んでチョッキンするのである!」 


 考えてみればその方がダメージは大きそうである。朝起きたら『無いっ!?』というのもアリだが……我の痛みを知るがいい! このエロマッケンジーめ! 今回は痛みを伴う復讐なのだ! 


 我が痛いのっ! 今回は我の頭にも何故か鈍痛が走っているのだ! 


 やはりこのワンコは……


 ミキミキ。


「のわっ!? 音が変化したのである! 急いで突撃であるよー!」


 マッケンジーが入ったお店……明らかにエロエロなお店に……裏から侵入である!


 表からはちょっとね。うん。ちょっとね。


「……まぁふぅ」


 ……骨をくわえて喋ればそうなるか。ワンコもやる気満々である! それ、突撃ー!





 その後。


 ……我は汚れてしまった。


 我は……知ってしまったのだ。


 人の欲望が具現化するとこんなにもおぞましいものになるということを。


 エッチなお店に侵入した我は見てしまったのだ。


 マッケンジーが……マッケンジーが女の人と……女の人に見えるけど女じゃなくて髭が生えててすごくマッチョな……おえっ!


 しかも三人……おえっ! 絡み合って……おえっ! マッケンジーが……あの笑顔のマッケンジーが……恍惚の表情でお尻に……おえっ! 


 ……うん。復讐は終わった。終わった事にして忘れよう。今日もクラウザーの腹枕でいい夢見ないと。


 


 更に後日。


 ドーベルワンコが我の元へ自慢気にやって来た。とある報告を携えてな。その報告はかつて厳重に封印した我の記憶にまつわるものだった。我としては知りたくもなかったが、わざわざワンコが調べてくれたので無下にも出来ず……我はその報告を聞くことになった。


 それによると……マッケンジーはあの『終末の獣』討伐の後、モンドールで女色に溺れたらしい。この時はまさにエロエロなマッケンジーであったとか。それが終末の獣の記憶から逃げるための行為であったのかは分からない。


 だが……マッケンジーはエッチなお店でハッスルしすぎて問題を起こしまくったそうだ。それこそお店の怖い人が『お客さん。ちょっと裏まで来てくれやすか?』みたいな事が頻発したとの事。


 エロエロなマッケンジーはエロエロでも武闘神官であるからな。ゴロツキ程度ではお話にもならなかった。


 そんなとき……同じ大人のお店エリアにある『素敵なお姉さん』達がマッケンジーの説得に動く事になって……マッケンジーは……女色ではなくて別の色に染まってしまった……というのがドーベルワンコの報告であった。


 ……。


 ……うん。この情報……我が知って、どうしたらいいのかな。


 とりあえずご褒美を期待して待ってるワンコを褒めちぎっておいた。撫でて撫でて撫でまくってクラウザーが乱入するくらいのご褒美タイムとなった。


 ……うん。


 復讐ってさ……何も生まないよね。まだあの日からそんなに経ってねぇよ。つーか翌日だよ。昼だっつーの。優秀すぎるよ、ワンコ。


 マッケンジー……うん。知らない人であるな。うん、他人他人。


 さーて、次の復讐でもしますかー。



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