第十三幕 ミシェル君が……むさいオッサンになった。たった十二年でゴリラに……。ミシェェェェェル! 何故プロテインを買ったのよぉぉぉぉぉ! 私はそんなことのために投げ銭した訳じゃねぇぇぇぇ!
我はとこしえに封印されし者。魔晶石に琥珀の如く閉じ込められし、闇の魔法使いである。
我が封印されてから早半年。とこしえだけど半年である。そこはスルーであるな。
今思うと我の人生は波瀾万丈であった。
かつて我は旅をした。世界を救う旅だ。
そのなかで勇者と聖女と魔女と肉を取り合った事もあった。結局あのときはオークの戦士に肉を取られたが。
ふふっ、あれはボアボアボアを狩ったあとの夕食だったな。ボアボアなボアだからボアボアボアと呼んでいるが正式名はモグラ猪だ。
モグラはあんまり可愛いくないから我は苦手である。鼻がグロい。いや、感覚器官だから仕方無いのだが……我は駄目だ。
モグラ猪も鼻がグロい。
……我は駄目だった。
でも肉は美味しいのだ。一軒家と同じくらいのサイズだから大量の肉が取れた。しかし旨いが故にあっという間に我らの腹に消えていった。
ああ、懐かしいな。
……あのときはまだ……いや、あのときから既にパーティーはギスギスしていたか。我があのパンツ女の護衛にこっそりまわるほどにはギスギスしていたな。
いや、他意はない。全く以て他意はない。あんな変態を守る意図なんて我には全く無い。
ただ嫌な予感がしていたのであの女の周りをブラブラしていただけなのである。一応ほら、我も男だし。あのパンツ女も変態だけど一応女の子だし? 見て見ぬふりも……ねぇ?
だから我はこっそりとあのパンツ女を見守っていたのである。
だというのに……だというのにだ!
あのパンツ女は我をノゾキ扱いしたのだ!
……いや、まぁ……お風呂は確かに少し見ちゃったけども。でもでも、魔物とか色々と危険なのであるし、そこは勘弁してもらいたいのであるよね。
ほら、露天風呂って危険であるしー?
実際、誰かがこっそりとお風呂に来てたし。まぁ誰かと言うか……自称勇者なのだが。奴もあの女の裸を覗きに来ていたのだろう。確かに変態ではあったがすごく綺麗だったからな。全く……これだから男という奴は。
……。
……。
……。
……我は覗いてないよ?
見えちゃっただけだもん。
事故だもん。
我は……悪くないもん。
裸でお風呂の周りを練り歩いていたあのパンツ女…………痴女が悪いんだもん。
何でお風呂の周りを裸でうろうろするのか意味不明だったんだもん。心配になって声掛けたら『きゃー!』だもん。
……理不尽であるよ?
そのあとも理不尽は続いたのであるよ?
裸のまま我にディバインタックルをかましたのであるよ? 脚を刈るような超低空タックルは本当に止めて欲しいのよ?
お前は聖女だろ? レスリングの選手なの?
そのあとの馬乗りホーリーフルボッコも本当に止めて。
何でも聖を付ければ良いとか思うなよ。
そんな思い出が旅の間に沢山できた。
この思い出も思い出としては……まぁ悪くはない。
悪くはないのだが……
その日から我はみんなに『ノゾキ野郎』と呼ばれたのである。
……やはり復讐をしようと思う。あいつら全員メタメタのギッタンギッタンにしてくれるわ!
特にあの変態聖女だ! あやつは我の顔面をボコボコに……まぁ殴られる前に血は出ていたがな。
……。
……。
……。
ペレノール。
幸せを……ありがとう。