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国賊  作者: 火村虎太郎
8/22

永久機関と狂犬の嗅覚


趣の成る茶室で竹永先生の作られたお茶を飲みながらの会談で

先生はこの国の事をまだ深く心配しているようで・・

選択などそれしかない。とろとろするなこの若造がと・・


『相変わらず厳しく。畳には血が滲むほどでした』黒岩

『おおお・・』記者


この時代にまだ鉄拳制裁か・・しかもこの黒岩を・・

やはり竹永の影響力はまだまだ健在か・・


そして今日の会見も終わり黒岩は足早に某所へ・・


「装置の方は変わりないか?」黒岩

「ええ。多少のメンテナンス程度で・・」施設職員


半永久的に維持出来ると思われます。


あの永久機関だ。


黒岩は自分の派遣業務以外の会社を譲り渡すことで、

経済界などからこの永久機関の独占許可を取得。

そしてこの装置をうまく使うべく極秘にプロジェクトを進める・・


「まぁ一番簡単なのは・・」施設職員


広い地域にこの無限の電力を送るには、

この場所から、まず韓国まで送電線を繋ぐこと。

そうすればユーラシア、アフリカ大陸とカバーできる。


「工事もさほど工期も金額も掛かりません」施設職員

「うーむ・・」黒岩


アフリカはさほど利益がないのは誰でも分かること・・

だが中国、ロシア、ヨーロッパと主なる所を押さえられる。


アメリカ大陸や南米となるとまた送電線を引き直すか・・


「この装置は生産することは可能なのか?」黒岩


そうすれば各大陸、各国の電力所に作り・・


「私たち開発の補助だった者だけでも可能ですが・・」


私達だけだと運任せに、

何度も何度もトライして偶然の当たりを待つような物です・・

時間は下手したら数十年は掛かります。


「簡単に言えば・・」


ルーレットに回した玉が重力や反動、揺り返しなどの

上げ下げによって止まることなく回り続ける奇跡のような物です。


ルーレットの玉も回っているが、ルーレット板も回っており、

その何かの絶妙なきっかけで回り続ける玉・・


「地球ゴマのような原理です」

「なるほど」黒岩


コマは回転が落ちてきたら軸がブレ、倒れて止まるが、

これはそのブレの力でまた補正して回り続ける・・


「移動、移設は可能です。この装置は・・」


一度得た無限の推進力は外部からの破壊でなければ止まりません。

これを破壊するには最低でも対戦車用ロケットが必要です。


「ふむ・・」黒岩


なるほど答えは出た。

全世界と欲張らずとも世界の電力の4割でも十分だ。

これには施設警備というくらいの経費しか掛からないのだから。


「日本から移設する!用意を!」黒岩

「はい」科学者



そして次の日会見で・・


『タリバーン政権と何かコンタクトを取られたとか!?』

『黒岩会長っどういった意図で!?』


『はい。アフガンの復興に日本の経団連として・・』黒岩



アフガニスタン・・・


「・・・・・・・騙しだ」香月


その会見を見ている香月。

そのまますぎる・・アフガニスタンに原発でも作るのか?

それとも警備をタリバーンに頼んだのか?


この香月はもうそこまで読み切っている・・

開発したんだろ?


「何かとんでもない生産能力のある物を・・」香月


トヨタか?ホンダか?キーエンスか?

最近の科学の進歩は目を見張るものがある。

自動運転・・止まっても倒れないバイク・・


そしてそれが電気関係である事は濃厚・・

圧倒的コストパフォーマンスを出す原発のようなもの・・

それ一つあれば大陸すべての電気を賄えるくらいの・・


「奴は・・」香月


頭のいい黒岩なら世界の電力会社を買い占めるはずだ・・

だが国の重要なライフラインを売り渡すには躊躇がある・・

それなりの担保が必要だ・・


「ヴェオリア・・・」香月


フランスにある大企業である。エネルギー、水、産廃・・

ずっと香月が気になっている企業・・


「ヴェオリア・・・」香月


もしこの会社を取ればヨーロッパ全域・・

さらにロシア、中国へも送電可能・・

ヴェオリアならネームバリュー、信用もある・・

自国より安いコストで電気が賄えるなら、

どこもヴェオリアに替えるはずだ・・


まずは規格の世界統一・・

これを発表した時に関連株は高騰するはず。

それを見越して黒岩は今全力で株を買ってるはず・・


だがそれは俺も同じ・・

株というのは買うのは簡単だが売り抜けるのが大変なんだよ・・

大量の株を持てば持つほど・・


だから投資家は先回りをする。

答えが出る前に買って、答えが出る頃には売る。


「よし、ここで現金を使おう」香月


一番欲しい情報は黒岩の返済の『期日』だ

期日が分かれば、相場の天井と、ど底が読める。

これほどおいしい情報には何十億払ってもいい


なぜ不便な現金を香月が集めていたのか・・

大量の現金は口座に入れる時に脱税を怪しまれるし、

持ち運ぶのにも不便・・


部屋の奥には個人口座からかき集めたとんでもない量の札束・・


「あー、荷物の引っ越しなんですけど」香月


段ボールを大量にお願いします・・

まずこの大量の現金を一旦貸倉庫へ・・


この大量の現金の使い道は闇の依頼だ。

そしてシンガポールの沖田に日程調整をしてもらい、

香月はシンガポールへ・・


「現金は確かに確認しましたとの事です」通訳

「ええ。では私の頼んでおいた依頼結果を」香月


黒岩は国債で金を引っ張てるはず・・


そしてここには見たことある有名な欧米人


「That person's collateral is・・・」アサンジ


ウィキリークス・・

政府、企業などの機密情報を公開するウェブサイトの創始者・・

米軍やCIAの情報さえハッキングして公開するような、

とんでもないハッカー集団である。


「黒岩、二名島都市機構の担保は・・」通訳


二名島の権利、電力会社、派遣会社

それを担保に日銀が日本国債を買った

その額180兆

支払いは低金利短期一括

支払いが1秒でも遅れたら上記3つを没収

支払いは現金とそれ相応の時価ある物でも可能

期日は1月10日16時


「・・・サンキュー」香月

「Please request again」アサンジ


「また機会があればご依頼お願いします」通訳


180・・

とんでもない額だ・・期日は一年後・・

それを全部電力会社の買収につぎ込むのか?

イカれてる・・下手したら日本が吹き飛ぶぞ・・


「Another bonus・・」アサシン

「オマケでもうひとつ」通訳


アサシンが帰り際に・・


「Veolia・・I bought a Japanese water service」アサシン

「ヴェオリアが日本の水道を買いました」通訳

「ベリーサンキュー」香月


やはりヴェオリアだ!

最近小さな電力会社や他の企業を買収してたのは知ってたが、

M&Aはフランス企業の得意技なのであまり気にしていなかった

LVMHなどがそうだ (モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)

大企業がさらに次々とM&Aで雪だるま式にどこまでも大きく・・


日本の水道と引き換えにフランスの電力を交換したのだろう。

フランスヴェオリアは電気事業以外を切り離し独立して、

黒岩がその残った電気事業だけを買収した・・


そして黒岩はヴェオリアをメイン会社にして、

他の電力会社の買収合併を始めたのだ。

買収に180兆使ったとしても、

180兆以上の価値、生産が出来ると確信があるのだろう。


180兆は日銀が用意した言わば本物の実弾

借りたのは二名島都市機構、黒岩だ。

名目上は新都市開発費。

担保はパソック、ヴェオリア

二名島の権利というのは、

二名島を首都にする。推し進めるというようなニュアンスだろう

これも黒岩の利権に大きく繋がるのだろう・・

なるほどパソックか。首都移転が終わっても、

二名島開発維持はパソックに莫大な雇用、利益を生む。

何せ一から都市を作ってるのだ、

移転後も向こう30年は公共工事などで雇用が見込める。


だが黒岩は日銀に実弾を返さなければならない・・

返せなければ、パソックとヴェオリアが取られ、

さらに都市機構の役職からも外されるという事だろう。


一度失敗した奴にもう政府の方針、国の金は触らせない・・


退路のない勝負だ。

どんな金だとしても絶対に返さなければ・・

その巨額資金の当てなどそうそうあるもんじゃない

黒岩の狙いは年金だ年金の解体・・

年金で仕込んでる株をすべて売却するはずだ。

それを成すには・・


「ベーシックインカムだ!」香月


これが成れば名目上、年金や福祉の打ち切りが可能

福祉予算、年金の株。

これでいったんとんでもない額の金が宙に浮く


これでほぼほぼ180兆に届くか?

だがそれは国民の金、国民の権利だぞ!


「いや・・奴等ならやる・・」香月


ゆうちょさえ売っぱらった世紀の国賊だぞ・・

国民の金も政府もまるで自分の物のように扱い売り飛ばす・・


だが二名島が完成して無限の電力も得ても・・

ベーシックインカムの予算はどうする?

今の国の予算じゃせいぜい一人10万がいいとこ。

だがこれも全員が労働して税金を納めてこそだ。

中には10万だけで仕事せずに、

のんびり暮らすという奴が多く表れるはずだ。


生産もしない・・税金も納めない・・

そんな輩に国の税金を落とすのか?

どうするつもりだ?何の利点がある?

だが奴は金を回収、利益にする能力にかけては天才・・

まさしく金の魔術師だ

俺でも予測、理解出来ぬほどの事を考えてるはずだ・・


「一国二制度か!」香月


すべて繋がった・・・

国が割れる・・きっともうこれは止められない。

多分それは数か月後・・二名島が稼働してからだろう・・


「だが理にはかなってる・・」香月


黒岩は天才だ。こんな奴が日本に居るとは・・

だが俺が撃ち落とす・・


日本は変わらせない。

黒岩が売る前に俺が売って株価を暴落させてやる。

そうすれば俺の勝ち・・

黒岩が焦って全部売っても返済する額までは届かない。

黒岩はデフォルトして退陣し日本は元の日本に戻る。


だが俺もギリギリまでは買う。

それまでは株価はひたすら上がっていくからだ。

売りで早めに仕掛けたら逆にこちらが潰される。

たとえ今仕掛けたとしても一時の暴落で、

買い場と見た世界の金で数日すれば株価は元に戻る


※株は信用取引で売りからも入れる。

(株価が下がれば利益になり、上がれば損失になる)


タイミングは重要だ。

下手したら俺が黒岩の養分になってしまう・・


奴は世界中から投資アナリストや投資家も雇い入れてるはず・・


「・・・これだけか?黒岩の武器は?」香月


分からん・・だが圧倒してやる・・

金で飼われた投資家など敵ではない。


投資ではこの香月が圧倒的に上だが黒岩も天才だ。

そして香月の戦略もすんなりとは行かなくなる。

それは香月が黒岩の強さの根源を読めてないからだ・・

黒岩は夢を見ない。理想だけで電卓を叩かない。


そして誰よりも国の事を憂いているのだから・・

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