シンガポール本社
「うっ(ういっす)」香月
「はーい。どうぞこちらへ」かすみ
本日もお店にカズキさんが来てるけど、
私は指名で忙しくて今はかすみママが接客中。
「かすみ証券口座作ってくれない?」香月
「いいですよ香月さんの相談なら」かすみ
でも多少頂きますよ。お駄賃を。うふふ。
「ま、遠隔操作で・・」香月
俺がかすみママのお金で売買するから。税金もそっちが払って。
んで純利益の20%ほど謝礼で渡すから・・
「残りは現金で持ってきて」香月
「なるほど」かすみ
全うなマネーロンダリングというか・・
お金を持ってるのを銀行や国に分からせないようにするのかな?
「私今2億位ありますけど、どのくらいになります?」かすみ
「そうだなぁ・・」香月
そりゃ、行くとこまで行けって言えばどこまでも行けるが、
元の金額にまぁそれなりの限界額じゃないと目を付けられる。
投資を始めた素人が急に勝ち続けるとヤツにも地検にも怪しまれる
「せいぜい20倍くらいかな・・」香月
「まぁすごい」かすみ
これが一番足が付かずに現金をかき集められる方法だ。
口座審査の厳しい日本ではこれ位しかないだろう。
「いらっしゃいませー」リナ
「おう」香月
何かニュース見たらもうすぐ遷都するらしいですよ・・
「まぁ、ジリジリだろうな‥」リナ
「何がです?」リナ
街が消えていくのも・・
巨悪を倒すにはデフォルト(債務不履行)に追い込むしかない
奴は国債で金を引っ張ってるはずだ・・
「何考えてるんですか?」リナ
「先。」香月
の先の先・・・の先の先
「・・・・・・・明日旅行だからそろそろ帰るわ」香月
「まー、いつも贅沢」かすみ
そして・・
「アメリカに新しい証券口座作っておきましたよ」沖田
「ありがと」香月
ここはシンガポールにある香月の拠点だ。
本拠地と言ってもいいだろう。
そこにいるのはシステムエンジニアの沖田
「これ住所です一応住めるくらいまで家具も揃えてます」沖田
そして当然・・
「もう香月社長のパソコンに紐づいてますので」沖田
証券取引である謎の縛りが、
その国の者はその国の証券会社しか使えないというルール
これはアメリカが自国民の金(顧客)を、
外国にある証券会社に取られないようにする為に作ったルールだ。
日本にある証券会社の口座を開設しようとしたら、
かならず出る謎の質問がそれだ。
『あなたは米国民ではないですか?』
投資は投資をする者の9割が負けるのだ。
こんな確実に金落とす自国民を外国に取られたくない・・
だからここシンガポールから、
日本の証券会社を開設して取引するのも無理だ。
とは言っても遠隔操作なり、システムを組み込めば可能である。
そのシステムを担当するのが、この沖田だ。
「今、全部で78の口座です。まだ増やします」沖田
「大口でいけるとこバンバンで」香月
どれが本尊が分からせぬように・・
偽造ではないが、実際の人物を代表にして法人を作り、
世界各国に口座を分散。
ファンドを公に作れば一つで大きく出来るのだが、
やはり見えない敵に徹した方が自分はやりやすい。
そして・・
「日本の個別株、所持が4・8%に達したら・・」沖田
買いが出来ないよう自動計算プログラムを入れておきました
これも香月からの注文だ。
5%ルール・・
日本の株には色々とルールがあり・・
発行済み株式数の5%超を保有する株主は保有報告書を提出
すなわち俺ここの会社の株めっちゃ持ってまーす。
どこに住んでる誰誰でーすって提出しなければいけない。
そして一番メインの・・
「これが全決済ボタンです」沖田
すべての口座のすべてのポジションを反対売買するボタン
買ってる物は売って。売ってる物は買い戻して。
「とにかく気を付けて、うっかり無しにしてくださいね」沖田
これはその日の相場の方向を変えるほどの引き金になる。
なにせ香月のすべてポジションなのだから。
商いの薄い日、時間などにもしこれをしたら下手したら・・
「結構な大暴落、大暴騰さえ引き起こします・・」沖田
「まぁとは言っても・・」香月
自分の総資金からだと、暴落させられるのはせいぜい3日。
相場というのはかならず急な変動にはリバウンドするものだ。
これは世界中の大口のアルゴリズム取引が動くからだ。
※コンピューターシステムが株価や出来高などに応じて、
自動的に注文を繰り返す取引
「パスワード設定しておいてください」沖田
全決済ボタンの。
その辺のキャバ穣とかにノリで押されたらたまったもんじゃない
だから絶対にご自身しか分からないパスワードを・・
「・・・誕生日でいい?」香月
「駄目です。」沖田
「知り合いのキャバ穣の誕生日なら?」香月
「話聞いてます?駄目です。1234とかも駄目です。」沖田
セキュリティーの大事さを3日ほどお勉強致しますか?
ええ・・・やだぁ・・ジャポンに帰りたい・・
「でもすごいですね・・」沖田
最近の香月の売買量
電気関連の猛烈な買い。それに・・
「アコム・・オリコ・・セブン銀行まで・・」沖田
消費者金融銘柄やカード会社の株を全力買い
「多分この金融銘柄は随分先回りだと思うのですが・・」沖田
そんなに国が変わるのですか?
まだこの香月の銘柄だけではヒントにしかなってないが、
明らかに今回の香月は・・
「王になられるつもりですか?」沖田
それほどの売買量だ・・
「日本という国が・・」香月
元に戻ればいいんじゃないでしょうか?
「ははは。先の話過ぎて」沖田
天才の考えることは凡人には理解できないです。
だが・・
「お手伝いしますので」沖田
「よろしく」香月
見てみたい・・間近で。
この極東の狂犬が日本という大国に噛みつくのを・・
個人が大国に・・
そして・・
「これがパソックシンガポール本社だ」黒岩
「・・・・・・・・・・・・・」佐藤
・・・言っていい?マジでいい?
本社3つ目なんだけど・・・知恵っていい?どうしてって?
「旅行じゃないじゃん仕事じゃん!しかも休日に!」佐藤
「まぁまぁ・・」黒岩
ほらっその辺観光して来いよって・・マジついで・・
ここシンガポール本社は派遣業務も当然あるのだが、
国の特性を利用してなのかディーリング業務がメインだ。
※自社の資金を使って、
株式、債券、為替などの売買取引を行い利益を追求する業務
そしてその本社に入り
「邦人名の口座名簿リスト出た?」黒岩
「はい。ここに。」社員
社長は何か日本人名のリストをチェック
ここシンガポールの証券会社に登録されている日本人の名前
「多いな・・」黒岩
「元々租税回避の移住者が多いので」社員
日本の金持ちが税金対策にシンガポールに多く移住してるのだ。
投資取引をしてる日本人は趣味程度から本格派まで多くいる
「このオキタというのは?」黒岩
「こちらで小さなファンドを数件・・」社員
運営している日本人ですが・・
「投資詐欺ですね」社員
「あ~・・」黒岩
会社を調べればユーチューブなどの一撃数千万!とか、
絶対に勝てる自動売買!とかの動画が紐づけられている。
配信者が投資で大金を勝ってる風に装い、
金持ち自慢で信用させ、サロン登録や高級商材購入を促す。
この手の詐欺が最近多いが、
その何人か居る投資動画配信者の元締めらしい・・
「ふ~・・他にそれらしい大きな取引は無いかぁ・・」黒岩
『奴』には気づかれずに・・
値を荒らされたらたまったもんじゃない・・
「ほかのファンド系(大口のプロ)のポジションは?」黒岩
「当社が仕込んでる銘柄に増減はありません」社員
世界のファンド系にもまだ感づかれてはいない。
俺には責任がある・・その為にかき集めなければ・・
「地検に頼んだ捜査状況は?」黒岩
「関わりのありそうな個人には張り付いてるみたいですが」社員
社長の指示で探せと言われている『極東の狂犬』には・・
「まだどれが本尊かは・・」社員
「ふむ・・引き続きお願いしますと伝えておいてくれ」社長
他にもバタバタと書類のサインや仕事をこなし、
そして・・
チラっ・・
「ふぅ~・・・・・・・・」黒岩
「くっ!・・」佐藤
もしかして・・もしかして、そのこっちを伺う顔・・
そしてやっと終わった感満載の『ふぅ~』・・
「・・帰ろっか」黒岩
「やっぱそうだぁ!うわぁあん!」佐藤
全然旅行じゃない!
くそーっもう激おこ・・
「帰りはプライベートジェットで快適だよ~」黒岩
「わーいっ剛力剛力~」佐藤
いや・・せめて前澤って呼べよ・・プライベートジェットの事・・