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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
さいつよ編
98/153

最強へと至る道

誤字報告等、ありがとうございます。






「さぁ、あの建物が冒険者ギルドよ!」




 巨大な金属の足が、大地を踏みしめる。 

 人の十倍はある、巨大な金属の身体。カラーリングは黄色で、失われていた右腕も修復済み。

 完全復活した”ブラスターボーイ”が、帝都の道を歩く。


 その肩の上には、”九条瞳”が立っていた。

 相変わらずの金髪縦ロールである。



 異様なコンビの出現に、人々はざわめき立つ。



 九条瞳とブラスターボーイは道のど真ん中を歩き続け。

 ひときわ大きな建物、冒険者ギルドの前へとやって来た。



 用事があって、彼らはここへ来たのだが。

 冒険者ギルドは、あくまでも人間用の建物。ブラスターボーイがそのまま入れるほど大きくはない。




「どうしようか。」


「……そうね。」



 九条は考える。



「姿勢を低くすれば、問題無いんじゃない?」


「分かったよ。」




 九条の言葉を信じて、ブラスターボーイは姿勢を低くし。

 冒険者ギルドへと突入する。





 バキバキと、破壊の音が鳴り響く。





 入り口を突き破りながら、ブラスターボーイはギルドに入ってきた。


 姿勢を低くし、いわゆる”はいはい”のような格好で。

 入り口を壊し、床を傷つけながら進んでいく。



 突如現れた、謎の巨大ロボットに。中に居た冒険者たちは動揺する。

 明らかにこの世界の存在ではない異文明の産物。多くの人々には、”ロボット”という概念すら理解できない。


 ブラスターボーイの登場に驚くのは、冒険者たちだけではなく。仕事中の受付嬢たちも、その存在に呆気にとられていた。




「……嘘だろ。」




 1番窓口に遊びに来ていたミレイも、同じく唖然とする。

 ブラスターボーイの登場。というよりも、その”被害”に。



 面識のあるミレイなら、彼が敵ではないと理解できる。

 しかし、他のメンバーはそうでもない。




「とんでもない馬鹿が現れたわね。」



 ミレイと駄弁っていた”サーシャ”が、重い腰を上げた。








「……大丈夫なのか? 色々と壊れているような。」


「ふふっ、問題ないわ! もっと堂々としていなさい。」




 這うようにして、ブラスターボーイは前に進む。


 彼は完全に、頼る人間を間違えていた。

 九条瞳には、ぶっちぎりで常識がないのだから。



 そんな、彼らの前に。




「――何が、問題ないって?」




 受付嬢の筆頭、サーシャが立ちはだかる。

 その体には、微かに”電気”を帯びていた。




「あぁ貴女、受付の人よね? 実はここに居る彼を、冒険者として登録――」



「――とりあえず、出てって!」




 サーシャは聞く耳を持たず。


 激しい怒りとともに、その体から”強烈な雷撃”を解き放つ。




 その直撃を受け。

 ブラスターボーイと九条は、ギルドの外まで弾き飛ばされた。





「うわぁ……」



 衝撃の一部始終を見て。

 サーシャの想像以上の実力に、ミレイは驚いた。








 ギルドの外では。


 強烈な電撃によって、ブラスターボーイは完全にノックアウト。

 九条は、髪の毛で自分を包み込むことで、かろうじてガードしていた。


 そこへ、サーシャがゆっくりと近付いていく。





「ちょ、ちょっと! 彼は冒険者になるために、ここへ来たのよ!」


「……え?」



 サーシャは立ち止まって、言葉の意味を考える。





「その、”鉄の塊”が?」





 ほんの少し、選択肢を間違えるだけで、結果は散々なものになる。


 人生は難しいと、ミレイは悟った。

















「えぇっと。それではまず、お名前を教えて下さい。」


「ブラスターボーイだ。」




 ギルドの外で。

 倒れたままのブラスターボーイと、受付嬢のシャナが話す。




「年齢は分かりますか?」


「……2000か、3000の間くらいだと思うけど。」


「へぇ、ご長寿なんですね。」



 巨大ロボットと、小さなフェアリー族。

 そのサイズ差は凄まじかった。








 ギルドの入口付近では、サーシャが壊れた部分を見つめている。



「……まぁ、明日でいいか。」



 幸いにも、雨は降っていない。

 故に、修復は後回しにされた。








 ギルドの待合スペース、その一角のテーブルにて。




「瞳ちゃんも、大会に出るんだね。」


「えぇ、もちろん。最強を目指す者として、このイベントは見逃せないわ!」




 ミレイと九条が会話をしていた。




「貴女は何をしに来たの? クエストかしら。」


「ううん、今日は暇つぶしかな。キララは部屋に籠もって、”何かやってる”から。」




 キララが、何をやっているのか。残念ながら、ミレイはそれを知らない。尋ねてみたものの、”内緒”にされてしまった。


 1人で時間を潰すのも嫌なので、他のメンバーの元へと向かうも、ソルティアやフェイトは見当たらず。


 誰か居るだろうと思い、ギルドにやって来たが。

 誰も居なかったので、受付でサーシャと暇をつぶしていた。




「あっ、そうだわ。貴女に聞きたいことがあったの!」


「ん?」



 首を傾げる。





「――”魔法”を、教えて欲しいのよ!!」





 九条の言葉に、ミレイは固まった。




「独学じゃ難しそうだし、エドワードは人に教えられるレベルじゃないって言うから。聞くところによると、貴女も魔法を使えるんでしょ?」


「……うん、まぁ。」



 とても声が小さくなる。



「よかったら、教えてもらえないかしら。ほんの基礎程度でいいの。」


「うーん。」





――ごめん、わたし死ぬほどセンスないから。


 その一言を、言う勇気が出ない。





「あ、良いことを思い付いたわ。”彼女”に教えてもらうのはどう?」




 そう言いながら、九条が指し示す先には。

 受付で煙を吹かす、サーシャの姿があった。




「さっきの雷、どう見ても実力者だわ。」


「……そうだね。」




 確かに、魔法の実力は高そうだが。

 あれほど”面倒くさがり屋”な人間を、ミレイは他に知らない。




「絶対無理だと思うけど、聞いてみよっか。」



 弟子入りを請うため、サーシャの元へと向かった。










「……ふぅ。」



 サーシャが煙を吹かす。


 目の前に立っていたミレイと九条は、それをもろに浴びた。




「スースーする。」



 ミレイは、すでに慣れたもの。



「……不良界隈では、これは宣戦布告に等しいわよ。」



 流石に、九条は動揺していた。





「魔法を教えて欲しい、ねぇ。」



 面倒くさそうに、サーシャは九条を見る。



 たまにギルドで見かけるようになった、凄まじい金髪縦ロールの持ち主。


 間近で見たら、その毛量に圧倒される。

 というより、そこにしか目が行かない。




「……浮遊大陸の1つ、”バラム”って国に専門の学校があるの。何なら、招待状を書いてあげるけど。」


「えぇ……」




 想像の斜め上を行く、衝撃の提案を出される。

 意地でも、自分で動きたくないのか。




「ちなみにだけど、それって最短でどのくらいかかるの?」



 九条が尋ねる。



「そうね。まぁ、筋が良ければ、”5年位”で卒業できるわ。」


「ご、5年?」



 まさかの年単位。



「あの、先輩。瞳ちゃんは、来週の大会までに魔法を覚えたいんですけど。」



 ミレイがそう話すと。

 サーシャはまた、おもむろに煙を吹かす。




「……無理ね。」




 それが結論。

 しかも、しっかりと考えた上でのことである。



 サーシャ自身、なにも邪険に扱っているわけではない。

 元後輩の頼みでもあるし、魔法を教える程度ならやってもいい。


 だが、しかし。

 どれだけの才能があろうと、来週の大会までに間に合うとは思えなかった。















「困ったわね。」


「だね。」




 ミレイと九条。

 2人は、あてもなく街をさまよう。




「……そう言えば、貴女はどうやって魔法を習得したの?」


「えっと。」




 ミレイは魔法を習った時のことを説明する。



 自分とキララは、”パーシヴァル”という老練の魔女に魔法を教えてもらったこと。


 パーシヴァルは高い実力を持つ魔法使いだが、弟子を取るのは初めてだったらしく。

 とてつもない濃度の魔力を浴びせる、という謎の方法で2人は魔法の力に目覚めた。


 魔力を認知できるようになったものの、自分はセンスが無いのか向上せず。

 しかしキララは、たった数日で実用段階に至っていた。





「それこそ、今のわたしに必要なものじゃない!」



 ミレイの話に、九条は活路を見出した。 




「それで、その師匠っていうのはどこに居るの?」


「いや、それがわたしにも分からなくてさ。この”魔導書”を置き土産にして、急に消えちゃったんだよね。」




 ぽんぽんと、魔導書の入ったカバンを叩く。


 すると、






「――ふふ。愛用して頂けているようで、わたしも嬉しいです。」






 懐かしい声が、耳に届く。



 ミレイが顔を向けると。

 話に出ていた老練の魔女、パーシヴァルがそこに立っていた。






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