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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
さいつよ編
95/153

― 憑依融合 ―

感想等、ありがとうございます。






(とりあえず、門をどうにかしないと。)




 ミレイとキララが深海で目にしたのは、20を超える大量の”異界の門”。

 目眩がしそうになる光景だが、キララはそれに近付いていく。




(えっと、ギルドに連絡する?)


(ううん。”閉じ方”を習ったから、頑張ってみる。)




 ミレイからしてみれば、とても手に負えるような状況に見えないが。

 キララはそれを、自分の手で解決する”自信”があった。




(結構、多いけど。)


(まっかせて!)




 ギルドで行われた”異世界講座”、それを活かす時がやって来る。

 見込み無しであるミレイは、当然のように補助に回った。















 魔法とは、訓練次第で誰もが使えるようになる力だが。誰もが同じ工程で、同じ”結果”を起こせるわけではない。


 5+5という術式があるとして、ある者が使えば結果は10になり、また別の者が使えば結果は8になる。

 非常に単純な術式でもこれほどの差が出るのだから、術式が複雑になればなるほどその差も大きくなっていく。


 ”門を閉じる”、という結果を魔法で生み出す場合。陰陽師、ユリカの用いる術式を他の魔法使いが真似しても、その効力は10%にも満たないものになる。

 だからこそ、講座に参加した魔法使いたちは、あくまでもユリカの術式を参考程度に考え、自分なりに”結果”に至る術式を構築する必要があった。


 ”異界の門”は、時間や空間に干渉する超常現象の1つと考えられ。それに故に、門に干渉し、あまつさえ綺麗に閉じるともなれば、非常に高度な魔法構築が必要となる。


 ユリカの術式に匹敵する程の魔法ともなれば、ある程度の才能を持つ魔法使いでも、構築にかなりの時間がかかる。

 現に、大陸でもトップクラスの実力を誇る”5人の受付嬢”でさえも、未だに完全再現には至っていない。




 しかし、”ある天才(キララ)”に関しては別である。

 高度な治癒魔法を、一度見ただけで覚え。空間を蹴るという、独自の飛行方法すら編み出した彼女は。




(――えいっ!)




 ”その場で”、改良した術式を構築し。20個もの異界の門を、まとめて閉じようという荒業を行っていた。


 全長1kmの綱渡りをするように、無謀とも言える滅茶苦茶な行為だが。


 異界の門は、確かに縮小を始めていた。




 キララがそんな異常行為を行っているとは、まったくもって知らずに。ミレイはモササウルスとメガロドンを連れて、周囲の警戒に当たる。

 外敵がキララに危害を加えないように、真っ暗な周囲に目を向けていると。



 後ろからスーッと、綺麗な”虹色の魚”が通り過ぎていく。




(へ?)




 その姿に、ミレイが唖然としていると。

 1匹だけでなく、2匹、3匹と、同種の魚がミレイの隣を通り過ぎていく。


 忘れていた、クエスト目標である。




(まじか。)




 魚を捕獲したいが、キララのことも心配である。

 どうしようかと、ミレイが振り返ると。


 キララは、自信に満ちた表情をしていた。




(そっちは任せたよ。)


(了解!)




 キララの護衛は2匹の怪物に任せて。

 ミレイは1人、虹色の魚を追いかけた。















(待てこら!)



 蠱惑の魔眼を発動しながら、ミレイは必死で魚たちを追いかける。


 どんな相手も虜にする魔眼だが、相手が後ろ向きでは効果がない。

 謎の人魚に追いかけられて、魚たちも必死に逃げる。




(ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから、こっち向いて!)




 そんなミレイの願いも通じず。

 人魚と魚の追いかけっこは続き。



 根性で追い回した結果、魚たちが後ろを確認するように少しだけ角度を変え。

 ようやく、蠱惑の魔眼が発動した。




(よしよし、ストップ! カモン!)




 命令に従い、支配下に置かれた3匹の魚がミレイの側にやって来る。


 近くで見れば、ただ色が鮮やかなだけでなく、確かに”虹色に発光”していた。


 紛れもなく、依頼対象の魚である。

 というより、これじゃなかったらどうすればいいのか。




(……はぁ、はぁ。もう限界。)




 全力で泳いだせいで、ミレイはすでに疲労困憊であった。


 それに加えて、空腹感によってお腹が鳴る。

 軽く思考停止した状態で、ミレイは虹色の魚を見つめた。




(……美味いのかな。)




 お寿司好き、ミレイの頭にそんな考えがよぎる。

 しかし、これは依頼対象だと振り払い、空腹を我慢する。


 3匹の魚を確保するために、捕獲用のアイテムを召喚した。





 3つ星『モンスターボックス』


 近未来の技術で生み出された猛獣用の檻。どんな大きさの獲物にも対応できる。





 ルービックキューブほどの大きさをした、手のひらサイズの四角い箱が出現する。純粋な、機械の塊といった見た目である。




(これ、どうやって使うんだろ。)




 ボックスを適当に触っていると。

 何かしらのスイッチに触れたのか、ボックスがみるみる変形していき、魚たちがまとめて入るような大きさに変わった。

 おまけに、見た目が半透明になり、水槽のようにも見える。

 魚の捕獲に、最適な形状であった。




(よしよし、入って入って。)




 モンスターボックスが開き、中に魚たちが入っていく。




(捕獲完了っと。)




 半透明なボックスの中で、魚たちが泳ぎ。

 ミレイは、目的を見事に達成した。








(さてと、キララのところに戻らないと。)




 虹色の魚たちと負いかけっこをして、ミレイは当初の場所からかなり離れてしまった。

 幸いにも、ボックスに入った魚たちが明かりになってくれているため、完全なる暗闇状態ではない。それでも、多少の恐怖は感じるが。




(右か左、どっちに行くべきか。)




 ミレイは完全に迷子になっていた。

 しかし、なんとかしようと周辺を散策し。




(……へぁ?)




 目の前に存在する、”巨大な何か”。

 それが一体何なのか、確かめるためにボックスの明かりを近づけると。




 そこにあったのは、”巨大なドラゴン”の顔。


 よく見渡してみると、そのドラゴンの体は蛇のように長く。




 それでいて、”絶命”していた。

















(ミレイちゃん!)




 ミレイが魚たちと追いかけっこをしている間に、キララは異界の門を閉じ終わり。

 2匹の怪物を連れて、ミレイと合流する。



 ミレイは、巨大な竜の死骸に目を奪われていた。




(キララ、これって。)


(うそ、”リヴァイアサン”?)





 リヴァイアサン。それはこの世界に古くから存在する、”海の王”である。

 水中最強の魔獣と呼ばれ、あのクラーケンを主食とする絶対的な捕食者。

 おとぎ話などで、その存在は広く知れ渡っていた。


 そのリヴァイアサンが、死んでいる。

 流石のキララも、それには動揺を隠せない。




 2人が、リヴァイアサンの死骸を見つめていると。

 グラグラと、地響きが発生する。



 ただの地震か、それとも。




(ッ!?)




 まるで、海全体が揺れているような。

 揺れがどんどん激しくなっていく。




(か、海底地震?)




 突然の揺れに、ミレイは恐怖を抱くも。


 その隣で。

 キララは、より”深刻”そうな表情をしていた。




 恐怖の対象は、揺れではない。

 それを引き起こしている”モノ”である。




(……そんな。こんなのが、いるなんて。)




 魔力を張り巡らせ。

 キララは、”海底で蠢く存在”を認識する。




(ミレイちゃん、急いで逃げよう。)


(えっ?)


(早くっ!!)




 非常に焦った、キララの様子に。

 何かを理解する前に、ミレイは動き出した。



 2人揃って、全速力で海面を目指していく。その手には、ボックスを忘れずに持ったまま。




(いやいや、キララがこんな反応するなんて。)




 キララは、非常に勘の鋭い人間である。

 ミレイはそれを誰よりも知っていた。


 故に、欠片たりとも疑わず、一心不乱に浮上していく。




 しかし、突如として、2人の背後が明るくなる。

 何かしらの”光源”が、ミレイたちの後方に出現していた。


 凄まじく、嫌な予感がしつつも。

 ミレイは後ろを振り返り。




(――いっ!?)




 絶句する。





 そこには、巨大な顔があった。

 フォルムからして、ドラゴンの顔のようにも見える。


 しかし、モササウルスやリヴァイアサンなどと比べても、その大きさは段違いであり。


 その巨大な顔が口を広げ、”強烈な光”が集まっていた。




(あれって、まさか。)


(くっ。)




 ミレイが絶句する中で、キララもそれを察知し。

 敵の攻撃を迎撃するべく、弓を構えて魔力をチャージする。




 弓矢に込めるのは、生半可な力ではない。自分の出し得る、全ての魔力を集束させる。

 むしろ、一撃で終わらせるつもりで。




 全力の一撃を解き放った。


 それと同時に巨大なドラゴンも、口に溜めたエネルギーをビームとして放つ。




 両者の攻撃は、正面から衝突し。

 しばしの間、拮抗するも。



 キララの放った魔法が押し負け。

 極太のビームが迫ってくる。



 しかし、そこにミレイが割って入り。





(――フォトンバリア!!)



 キララを守る形で、光り輝く魔法の盾を出現させる。



 そして、キララもそれを黙って見ているはずもなく。

 背後から手を重ね合わせ、バリアに魔力を注ぎ込む。




 ビームと、バリアが衝突し。



 過剰な魔力で術式が焼き切れ、バリアにヒビが入りつつも。


 それでも、正面から受け止め。


 フォトンバリアは、ミレイとキララを守り切った。







 効力を失ったバリアが、水中に拡散していき。



 ミレイは、その手に聖女殺しを。

 キララは弓を構える。




(……なんだよ、あいつ。)




 周囲に拡散した、魔力の残滓に照らされて。

 その姿が明らかになる。


 形状からして、モササウルスのような”海竜”に分類される生き物だろうか。

 しかし、その大きさは生物の域を越え、山にも等しく感じられる。


 口からはビームを吐き。

 もはや、”怪獣”と呼ぶに相応しい存在であった。


 そして怪獣は、明らかに2人を敵視していた。




(なんで、攻撃してくるんだ?)


(……多分、遊んでるんだと思う。)




 それは、人が害虫を殺そうとするのと”同じ感情”。


 巨大な怪獣。その存在の強さゆえに、”知能”もまた高度なものを有していた。

 そんな怪獣にとって、ミレイとキララは駆除すべき害虫にも等しい。




(なら、やるしかないか。)



 ミレイは聖女殺しを構え、ここで戦う覚悟を決める。




(こんな場所じゃ、フェイトも呼べないし。)




 今現在、どこで何をしているのかは不明だが。

 少なくとも、こんな深海のど真ん中で召喚されては、フェイトもパニックになるはずである。

 水中で、彼女の能力がどう作用するのかも分からない。




(モッサ、これ持ってて。)



 戦いの邪魔になるため、魚の入ったボックスをモササウルスに渡す。





(――2匹とも、離れててよ!!)




 両手で、聖女殺しを構え。

 巨大な怪獣めがけて、思いっ切り振り払った。



 大鎌から、”漆黒の斬撃”が放たれる。

 それはまっすぐに、怪獣の顔に飛んでいき。



 その巨大な顔に、小さな”かすり傷”を付けた。




(……あれ、効いた?)




 4つ星、聖女殺し。

 確かにその威力は強大で、怪獣にも傷を与えるだけの力を有している。

 しかし今回は、あまりにも大きさが違いすぎた。



 そして、





――ギャアァァァアアア!!





 かすり傷とはいえ、血を流したことにより怪獣は激昂。

 ミレイとキララを、本格的な敵と認識した。



 その巨体から、強烈なプレッシャーが放たれ。

 鼓動に、海全体が揺れ動く。



 人が対峙するには、あまりにも強大すぎる生き物であった。





(くっ。)



 敵が放つエネルギーに、キララは思わず尻込みしてしまう。




 姿形は、まるで違うものの。


 かつてモノリス周辺で対峙した、”黒き竜”にも匹敵する力が感じられた。






 だが、”それほどの相手”だというのに。






(――よしっ。)



 なぜか、ミレイは闘志に満ち溢れていた。





 キララですら、尻込みするような相手。

 それなのになぜ、ミレイは恐怖を感じていないのか。


 サメや暗闇相手には、あれほどビビっていたにも拘わらず。





 聖女殺しを握るその手が、黒く染まっていく。

 まるで、”同化”していくように。





『――ふーん、面白いじゃない。』





 ミレイの頭の中で、声がする。

 サフラではなく、聞き覚えのない女性の声が。


 しかし、不思議と”信頼”が出来る。




『随分と甘っちょろいけど、無理やり使われるよりはマシね。』




 歯車は、すでに動き出している。

 心の深い部分で、”2つの魂”が重なり合う。






『――さぁ、ついてきなさい。』






 ミレイの体が、”黒”に染まっていく。



 なぜ、恐怖を抱かなかったのか。

 なぜ、戦おうと思えたのか。



 変わっていく自分の中で、ミレイは静かに理解する。





(”わたし達”のほうが、強い。)





 真っ白だった髪の毛は、黒に染まり。

 その身は漆黒のドレスに包まれる。


 手には巨大な大鎌を。

 背中には、悪魔のような翼を。


 人魚への変身は解け、真っ白い素足が晒される。




 そして、その身体は。

 大人でも子供でもなく。



 キララと同じ、”少女”と呼ぶに相応しい姿へと。

 確かに成長していた。






――”憑依融合(アビス・フュージョン)” Ver.聖女殺し――






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