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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
さいつよ編
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空に流星を、大地に色彩を

感想等、ありがとうございます。






 その竜には使命があった。


 地球上の生命体が宇宙に進出した場合、彼らを遠い外宇宙まで案内する使命である。



 必ず、その時が来ると信じて。竜は成層圏の外から地上を見つめ続けた。


 長い長い間。いくつもの生命が生まれ、滅びゆく様を見た。



 そしてある時、”人類”という種が地上に現れ、かつて無い速さで文明を築き上げた。

 彼らならきっと、この星の外に手を伸ばすはず。


 そう、思ったのだが。



 知的生命体の頂点である彼らは、兵器を用いた恐るべき戦争を引き起こし。

 やがて、全ての人類種が”砂”と化した。



 彼らに代わるように、すぐに別種の生命体が誕生したが。

 残念なことに、彼らは空を夢見ることなく、知性を失っていった。



 空の彼方から、その全てを見届け。

 竜はこの星が”失敗”に終わったのだと知る。



 やがて、竜は瞳を閉じた。

 1つの星、世界が終わり。自らの使命が果たされることもない。





 存在意義を失い。


 ”ミーティア・ドラゴン”は屍となった。





 自分が死んだのだと、不思議と実感できた瞬間。

 ミーティアは自分が”なにか大きな存在”の一部になったことを自覚した。


 存在意義を、輝きを失った魂に、もう一度”光”が灯される。

 この生命を、必要とする者がいる。





 再び目を開くと、そこには1人の人間が居た。

 真っ白な髪を持つ、”小さな人間の女”である。



 目が合った瞬間に、ミーティアは察した。

 この小さな人間こそが、自分に新たな生命を授けた存在であると。









「……また新しいやつね。」




 ギルドの真上で召喚された、”新たなる強大な魔力”に。

 1番窓口のサーシャは、静かにぼやく。



 以前であれば、この規模の魔力が発生しようものなら、確実に大騒ぎしていたが。

 ここ1~2週間で、受付嬢たちは完全に慣れていた。









 冒険者ギルド、屋根の上にて。



 神秘的な輝きを放つ、白銀の竜が宙に浮いていた。

 翼からは淡い粒子のようなものが放出され、羽ばたかずとも浮遊している。




「えーっと。」



 その美しい姿に、召喚者であるミレイは見惚れていた。

 隣に立つ、キララも同様である。




「あの。……背中に乗っても、大丈夫でしょうか。」




 初対面の相手なので、ミレイも下手に出る。

 それに対し、”ミーティア・ドラゴン”は無反応。


 なんとも言えない空気になる。



 しかし。



 ピー、と。

 笛を吹くような、甲高い音が鳴り響く。




「……ん?」



 その音に、ミレイは首を傾げる。


 対するミーティアも、若干困惑気味であった。




 再び、ピーという音が聞こえる。


 その音こそが、紛れもないミーティアのコミュニケーション方法なのだが。

 残念なことに、ミレイにそれを聞き取る能力はなかった。




「ふふっ。」



 言葉の通じない、そんな両者を見て。

 キララは思わず微笑んだ。















 その名の通り、まるで流星のように輝きながら。白銀の竜、ミーティアが飛翔する。


 背中には、ミレイとキララの2人が乗っており。ミレイの後ろから、キララが抱きつくような感じである。


 とはいえ、ただ単に抱きついているわけではなく。

 キララは右手を前に出し、魔法の力でミレイを強烈な風圧から守っていた。


 ミレイはその腕に、大事そうに箱を抱えている。

 イーニアから渡された、”グリーンスフィア”の入った箱である。




 2人を背中に乗せながら、ミーティアは飛翔し。

 ピーと、また鳴き声を出す。


 通訳として、キララの出番である。




「えっと。ご所望なら、もっと速く飛べるって言ってるよ? 宇宙も大丈夫だって。」


「……死んじまう。」




 出来る限り、ミレイは安全運転を望んでいた。




「それにしても、みんな結構、動物と話せるよね? フェイトも、ソルティアもそうだし。」




 パンダやフェンリルの考えていることを、ミレイは何となくのニュアンスで判断している。

 十中八九、それは間違っているのだが。


 少なくとも他のメンバーは、明確に意思の疎通が出来ていた。




「んー、そうだね。魔法使いは基本、動物の考えが分かるんだと思う。なんというか、”魂”を感じる、みたいな?」


「その理屈なら、わたしも分かるはずじゃ。」


「……うーん。」




 返す言葉が見当たらず、キララは黙った。







「ねぇ。ミーティアって、どういうドラゴンなの?」



 ミレイが尋ねると。

 ピーと、鳴き声が返される。



「えっとね。ずーっと長い間、星を見守ってたんだって。」


「へぇ。」




 まるで、おとぎ話のような話である。




「自分の居た世界では、人類は戦争で滅んじゃったから。見るのは久しぶりだって。」


「そ、そうなんだ。」



 それに対しては、ミレイも反応に困った。






 この世には、数多の異世界が存在する。


 ミレイの生まれ育った、何の変哲もない世界もあれば。アヴァンテリアのように、魔法や不思議な力に満ち溢れた世界もある。

 人類の存在しない、混沌に満ちた世界もあれば。科学が発展し、宇宙に進出した世界もある。


 それらの世界が、方向性こそ違えど”繁栄に成功した世界”ならば。

 きっとそれと同じくらい、”失敗した世界”もあるのだろう。




 この世界にやってきて、本当に幸運であったと。

 ミレイは実感する。




 ピーと、再び鳴き声が聞こえた。




「ミレイちゃんに召喚されて、とっても嬉しいって。」


「えっ、ほんと?」




 今の所、喜ばれるようなことは何一つしていないが。

 ともあれ、ミレイも嬉しくなる。


 そっと、ミーティアの背中を撫でた。




「ありがと。こちらこそ、よろしくね。」




 それに対し、笛のような声は聞こえない。


 それでも、ミーティアは微笑んでいるような気がした。
















 流石は、流星の名を冠するドラゴンか。

 まるで本気のスピードではなかったが、あっという間にピエタの街付近までやって来る。



 眼下に広がるのは、防壁に囲まれたピエタの街。かつては霧の都と呼ばれた街だが、今ではすっかり雪の都に変わっていた。


 最後に見た時と違わない、平和な光景が広がっている。

 だが、視界をずらせば、街の外にあった広大な森は、相変わらず”更地”のままである。


 建物や防壁は簡単に直せても、自然はそうはいかない。指先1つで、元には戻らない。




 なにか、”奇跡”でも起こらない限り。




 ミーティアは、森のあった場所の上空を旋回する。




「……うん。人も居ないし、大丈夫だと思う。」


「了解。」




 キララが地上の様子を確認し。

 ミレイは、抱えていた箱を開く。



 光り輝く球体、グリーンスフィア。

 それはまるで、ゼリーのような感触をしており、崩れないよう大切に取り出す。



 ミレイは、投下地点を見下ろすと。




「ほっ。」




 グリーンスフィアを、宙に放り投げた。

 スフィアは重力に従って、真っ直ぐと地上へと落下していき。





 なにもない更地に、衝突。


 水玉のように、弾け散った。





 大丈夫であろうか。ミレイたちは上空から見つめる。

 どのような結果をもたらすのか、不安ではあるが。出来ることは何もない。



 ただ、信じるのみ。

 そこに込められた”祈り”を。






 すると、変化が訪れる。






 一滴の雫が、乾いた大地に染み渡り。

 かつて森のあった、全ての大地に波及していく。



 グリーンスフィアに込められていた。

 強力な生命の力と、願い。





 ”イーニアの注いだ全て”が、爆発した。





「――凄い。」




 眼下に広がる光景に、ミレイは圧倒される。




 ”それはまるで魔法のように”。



 世界が、大地が、塗り替えられていく。

 何もなかった更地に、”色彩”が溢れ出す。



 世界中から集められた、多種多様な植物たち。生命の力によって、それらが一斉に芽吹いていく。



 それは、あまりにも力強く。

 森という概念を、瞬く間に駆け抜けた。






 それは、新しい世界の生まれる瞬間。

 アヴァンテリアの大地に、”植物の楽園”が誕生した。

















「綺麗だね。」


「うん。」




 竜の背中に乗りながら、ミレイとキララは全てを見た。



 世界が作られる光景を。

 魔法、能力という力の偉大さを。


 ”イーニア”という、1人の人間の強さを。




「サフラ、どう?」




 ミレイは手を伸ばし。そこから、真っ白な触手が伸びる。


 彼女たちの見つめる大地には、美しき色彩の世界が溢れていた。






 異世界樹の暴走。

 死滅した植物たち。



 ”過去は決して、消えることはない”。



 だが、それでも。

 今を経て、”未来を変えることは出来る”。



 人間には、その力がある。






『この光景を、美しいと思うのは。おかしなことだろうか。』


「……ううん。」




 サフラの問いに、ミレイは微笑む。




「”人間らしい”って、ことだよ。」









 しばしの間、ミレイたちは地上の楽園を眺めた。


 そして、それは白銀の竜、ミーティアにも同じこと。




――なんと、美しい世界か。




 かつての一生では、見ることのなかった光景。



 小さな主を、背中に乗せて。

 この空を飛べることに、ミーティアは感謝した。









 そんなさなか。

 ミレイは、自らの頬に触れ。



 自分が、”涙”を流していたことに気づく。




(……なんで。)




 その涙は、感動によるものではない。

 また、幸せによるものではない。




 今この瞬間、なぜ胸に”悲しみ”を覚えたのか。

 ミレイには分からなかった。






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