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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
さいつよ編
73/153

わーるどえんど・あふたー






「俺様のペットにしてやるぜ!!」




 巨大ロボットが、そう口にした瞬間。キララはその本質が、”悪”であると認識し。何を考えるよりも早く、弓を構え。



 破壊力を秘めた、魔法の矢を放った。



 一瞬の内に、5本近く放たれた矢は。

 その全てが、ロボットに命中する。


 だが、




「――いってぇなぁ!」




 衝撃の後。矢の直撃を受けたロボットは、”ほぼ無傷”に近く。

 サビだらけの装甲に、微かに傷がついた程度だった。


 それでも、キララの攻撃に苛立ちを覚えたのか。



「その腕よこせや!」



 背面にあるブースターを全力で吹かし、急加速。刃物のように鋭い爪で、思いっ切りキララに斬りかかる。


 優れた反応速度で、キララはロボットの攻撃を回避するも。

 ロボットも一手では諦めず。その巨体をもって、執拗にキララを追い回す。




「……速い。」




 キララとロボットの攻防を、ミレイは驚きと共に見つめる。

 自身も援護しようと、その手に”聖女殺し”を具現化するものの。双方の動きが速すぎて、迂闊に手を出すことが出来ない。


 ロボットの攻撃を回避し、合間に魔法の矢を放つ。

 そのさなか、キララはミレイの意図を理解し。


 鋭い魔法の矢を、ロボットの顔面に命中させる。




「ミレイちゃん!」


「よしっ!」




 顔面に攻撃を受けたことで、ロボットの動きが僅かに止まり。その隙に、ミレイは聖女殺しを起動。


 漆黒の斬撃を、ロボットに向けて解き放つ。


 顔面を押さえるロボットに、その斬撃を避ける暇はなく。

 斬撃をもろに食らい、両手首が綺麗に切断される。




「うおぉぉおお!! 俺様の腕が!?」



 両手首を切断されたことで、ロボットは叫び声を上げ。


 酷く憎しみを込めた視線で、ミレイを睨みつける。




「テメェ、ミンチにしてやるッ!!」




 手首を失った両腕を、ミレイに向け。すると、そのまま腕の形が変わっていき。


 それぞれの腕が、”銃口”のような形になる。


 ロボットは、それを躊躇なく発砲し。

 丸ノコのような弾丸、”ディスクブレード”が放たれる。




「ヤバっ。」



 咄嗟に、死を予感し。ミレイはフォトンバリアを展開しようとするも。

 それよりも早く、背中の両翼が反応し。


 盾のようにミレイを包み、放たれた刃から防御する。


 だが、その勢いまでは殺しきれず。着弾の衝撃で、ミレイは吹き飛ばされた。




「ミレイちゃん!!」




 動揺するキララに対し。

 即座に、ロボットが銃口を向ける。




「テメェも死んどけ。」




 完全に無防備になったキララに、鋭い刃が放たれる。

 その刹那、




――地上から飛来した、巨大な”黄金の毛糸玉”が。ロボットの体に直撃する。




 金属同士がぶつかったような、重い衝撃音が鳴り響き。

 ロボットは僅かによろめいた。




「……なんだ?」




 衝突の威力自体は、それほど大きくなかったものの。

 黄金の毛糸玉は、空中でその姿を変え。


 無数の糸となって、ロボットの体に纏わりつく。




「う、動けねぇ。」




 ”黄金の髪の毛”は、ロボットの動きを止め。

 その中から、髪の毛の主である、”九条瞳”が姿を現す。




「――さぁ、落ちるわよ!」




 髪の毛が、背面のブースターに干渉し。

 飛行能力を破壊。


 九条に巻き付かれたまま、ロボットは地上へと落下していく。




「おおぉぉっ!」




 飛行能力を失ったロボットは、重力に抗えず。


 九条は髪の毛を解くと、落下するロボットから距離を取り。

 大量の髪の毛を”パラシュート”のような形に変化させ、ゆっくりと降下する。



 勢いそのままに。

 巨大ロボットは、砂漠へと墜落した。


 凄まじい衝撃で、砂塵が舞う。





「クソッタレめッ。」



 悪態をつきながら、ロボットはゆっくりと立ち上がる。

 落下した程度では、さしたるダメージもない。


 だが、



 立ち上がろうとするロボットの前に。

 もう一体、別のロボットが立ちふさがる。



 剥げと錆が目立つボディに、根本から失われた右腕が特徴的な、”黄色のロボット”が。




「テメェ、ブラス――」



 その名を呼ぶ前に、黄色のロボットが刃のロボットをぶん殴り。


 思いっ切り、吹き飛ばされる。


 ボロボロで右腕も失っているものの、その力は健在であった。




「”スケアクロウ”。お前は俺が倒す!」




 堂々と、啖呵を切る黄色のロボットの側に。

 髪の毛をパラシュート状態にした九条が着地する。




「作戦成功ね!」


「ああ、だが油断は禁物だ。」


「分かってるわ。」




 九条と黄色のロボットは共闘しているのか。


 ぶん殴られた刃のロボット、”スケアクロウ”が立ち上がる。




「おうおう、”ブラスターボーイ”。まーだこの星に居やがったか。」


「当たり前だ! 人類を守るのが、この俺の使命だからな。」


「ご自慢のブラスターも無しで、吠えてんじゃねぇ!!」




 スケアクロウが、両腕からディスクブレードを発射する。


 黄色のロボット、ブラスターボーイは、横にローリングすることで回避し。

 九条は髪の毛をシールド状にして防御する。




「くっ、地上でもまぁまぁ強いわね。」




 ブラスターボーイは、片腕で武器も持たず。

 九条も、敵の猛攻に防御姿勢を取るしかない。


 スケアクロウを打破するには、致命的に攻撃の手が足りなかった。









「ミレイちゃん、大丈夫っ!?」




 ディスクブレードの直撃を受け、吹き飛ばされたミレイのもとに、キララが跳んでくる。




「い、生きてる生きてる! わたしはいいから、向こうを手伝ってあげて!」




 砂丘のど真ん中でひっくり返りながらも。幸運にも、ミレイに大きな怪我はなかった。




「……うん、分かった。」




 ミレイのことは心配だが、向こうの戦いも熾烈なため。

 九条たちに参戦するべく、キララは跳んでいった。



 ゆっくりと、ひっくり返ったミレイが姿勢を正す。




「死ぬかと思った。」



『ミレイ、フェイトを召喚したらどうだ?』


「……うん、それは分かってるんだけど。」



 サフラの指摘に、ミレイは苦笑いする。



「呼べないんだよね。」


『……何故だ。』



「多分だけど、向こうの世界で召喚してるから、だと思う。フェンリルとパンダも、さっきから呼ぼうとしてるけど。」



『……世界をまたぐと、繋がりが薄れるのか。』




 本来ならば、遠方にいるフェイトも強制的に召喚することが可能である。

 だが、世界単位で離れていては、流石にカードの力も届かないのか。

 フェイトやフェンリルなど、主力を召喚すること出来ない。


 このタイミングで発覚した、ミレイの致命的な弱点である。



 悪いことが重なるように、機械の翼から黒煙が発生した。













 ブラスターボーイと九条に向かって、スケアクロウがディスクブレードを発射し続ける。

 その猛攻で、彼女たちを圧倒していたが。


 ついに、”弾切れ”が訪れる。




「マジか!?」




 その隙を、九条は見逃さず。

 走って接近すると。


 髪の毛を操作し、スケアクロウの動きを止める。


 髪の毛に雁字搦めにされ、動けないスケアクロウに、ブラスターボーイが近づき。

 その残った左腕で、思いっ切りぶん殴る。



 重厚な金属音が鳴り響き。

 何度も、何度も。

 長年の恨みを晴らすかのように、タコ殴りにする。



 だが、スケアクロウも、やられっぱなしではなく。




「こんの野郎どもッ!」


「きゃっ。」




 脚部の補助ブースターを全開にし、無理矢理に上昇する。

 九条をも巻き込みながら。




「マズい!」




 そのまま飛行しようとするスケアクロウに、ブラスターボーイは攻撃する術を持たず。

 絡みついた九条もろとも、空へ向かって上昇していく。




「ヘヘッ。1人ずつ、なぶり殺しにしてやる。」


「くっ。」




 ゆっくりと上昇しながら。

 機械関節を駆使して、スケアクロウは九条を離さない。


 どうやって殺そうか。

 そう考えるスケアクロウであったが。






 空気を引き裂きながら。

 遥か遠方から、超高出力の”魔法の矢”が飛来し。






「――ガッ!」



 その胸を、一撃で穿たれる。





「……ふぅ。」



 今のキララに出来る。

 正真正銘、”全力の一撃”であった。






 自分が、何に攻撃されたのかも分からず。

 スケアクロウは地面に墜ちる。


 人知を超えた、巨大人型ロボットではあるが。

 流石に胸部を穿たれては、その生命も風前の灯火であった。




「……人間ごときに、この俺様が。」




 砂の上で、スケアクロウは必死に足掻くも。

 両手首を失った状態では、砂を掴むことすら叶わない。


 そこへ、九条が近づいていき。

 髪の毛を巨大な拳に変え、殴ろうとするものの。


 ブラスターボーイが、左手で制す。




「……いいんだ、もう。」


「そう。」





 苦しみ、足掻き。



 1人と1機に看取られながら。

 スケアクロウは息絶えた。














 翼がオシャカになったため。

 キララに抱えられる形で、ミレイは九条たちのもとへと向かう。


 空を飛んだ状態で、ミレイを抱きかかえて。キララは妙に嬉しそうにしていたが。

 その理由は、ミレイには分からなかった。







 九条も、人間の中では非常に目立つ存在だが。

 ブラスターボーイ、巨大な人型ロボットと比べては、流石にインパクトが落ちてしまう。


 巨大空中戦艦や、パワードスーツはお目にかかったことがあるが。

 人の言葉を話すロボットは、ミレイも会うのは初めてだった。


 キララと共に地面に降り、その巨体を見上げる。




「助かったよ。君たちの力添えが無かったら、スケアクロウを倒すことは出来なかった。」


「いえいえ。」




 片腕のない傷だらけのロボットだが。

 思いの外、少年のような声に、ミレイは驚く。




「俺はブラスターボーイ。この星に残る、最後の”セルシアス”だ。」


「あ、どうも。わたしはミレイです。一応、人間です。」


「キララです。」




 相手が機械なら、男っぽくても平気なのか。キララも普通に挨拶を交わす。




「それにしても貴女たち、こんな所で会うなんて奇遇ね。」


「……そうかな。」




 そもそも、九条を探しに来たのだから。

 奇遇も何も当然である。




「瞳ちゃん、何がどうなってるの?」




 ブラスターボーイやスケアクロウなど、このロボットたちは何者なのか。

 どうして、九条は共闘していたのか。

 諸々の理由を聞こうとするも。


 そこに、ブラスターボーイが割って入る。




「再会のところ悪いが、ひとまずここを離れよう。今の戦闘で、”他の連中”に気づかれた可能性がある。」


「……え。ああいう感じの敵が、他にも居るってこと?」


「ああ。この星に、もうそこまでの勢力は残っていないが。この近くの基地に、少なくとも4~5体は居るはずだ。」


「……マジか。」




 一体倒すだけでも、かなりの苦戦を強いられた相手である。

 キララの全力を持ってして、ようやく打倒することが出来るほどの。

 それが複数体ともなれば、敗北は必至である。


 もしも、戦う必要があるのなら。

 こちら側も、”チート級の戦力”を動員しなければならない。




「とりあえず、向こうの世界に戻ろっか。」


「そうだね〜」




 行方不明者の捜索など、この世界でやるべきことは残っている。

 だが、危険な殺人ロボットの徘徊する世界を、今の面子で探索するのは自殺行為である。


 最悪、フェイトだけでも連れてこようと。

 異界の門へ戻ろうとするも。




「……ん?」




 周囲を見渡して。

 あの特徴的な光の輪っかが、どこにも見当たらないことに気づく。




「んんんんー!?」









◆◇


◇◆









 50年前。

 まだ、この世界に人類が存在していた時代。




「君の故郷は、どこにあるんだい?」




 1人の黒髪の青年と。

 銃のような右腕を持つ、黄色のロボットが。


 丘の上に座り、美しい星空を見上げていた。




「俺の生まれた星は、とうに滅びてしまった。だから今は、ここが新しい故郷だ。……この星、”地球”が。」


「そうか。」





 種族も、大きさも関係ない。

 彼らは同じ空を見つめ、同じ感情を共有していた。


 この先に待つ困難も、手と手を取り合えば、必ず乗り越えられる。

 そう信じて。






 だが、しかし。

 その後、地球は機械生命体による宇宙戦争に巻き込まれ。






 人類は滅亡した。






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