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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
さいつよ編
71/153

触手少女 × 不良少女

感想等、ありがとうございます。






「今日もいい天気。」




 朝。


 ギルドの運営する宿舎、その女子寮にて。

 女子寮の管理人でもある、フェアリー族の受付嬢、シャナが。心地の良い朝日を拝んでいた。


 すると。




「あら、おはよう。」


「イーニアさん? おはようございます。」




 その女子寮に、イーニアがやって来る。

 Sランク冒険者であるイーニアは、特別待遇を受けており。他のメンバーとは違う、個別の物件を与えられていた。




「どうかしましたか?」


「別に。ここにみんなが居るって聞いたから。」


「はい。昨日から入室されてます。」


「ふーん。」



 ”自分以外の全員”が、この女子寮で暮らしている。その事実に、イーニアは少し、思うことがあった。

 まぁ、決して口には出さないが。



「ミレイの部屋はどこかしら。あいつ、朝弱いから。ちょっと心配なのよね。」


「なるほど。すぐに案内しますね。」



 シャナの案内を受けて。イーニアは女子寮へと入っていった。









 可愛らしい、森の妖精の後を追って。イーニアは女子寮の廊下を進んでいく。

 壁や天井など、インテリアが気になるのか。チラチラと見つめていた。




「案外、綺麗なのね、ここ。」


「ふふっ、ありがとうございます。実は、わたしが毎日掃除してるんです。」


「精が出るわね。」




 ギルドの仕事だけでなく、この女子寮の管理まで。小さいフェアリー族ながら、シャナの受け持つ仕事量は凄まじかった。




「……ほんと、悪くないわ。」



 みんなが暮らす女子寮を。イーニアは少し、羨ましそうに見つめていた。








「こちらが、ミレイさんとキララさんのお部屋となります。」



 とある一室の前まで、イーニアは案内される。



「ありがとう。」


「いいえ。ではまた、ギルドでお会いしましょう。」



 そう挨拶し。一足先に、シャナはギルドへと向かった。





 部屋の前に、イーニアは1人残される。

 しばしの間。無言で扉を見つめていたものの。意を決して、軽くノックをしてみる。

 だがしかし。返事はおろか、何の反応もない。


 間をおいて。もう一度ノックしてみるも。やはり反応はなかった。




「……あぁ、もう。鍵貰ってないのに。」




 起こしに行こうにも、部屋に入る手段が無い。

 少々苛つきながら。イーニアは、雑にドアノブをねじり。


 すると、普通にドアが開いてしまう。




「……鍵は?」



 いくら女子寮とは言え。2人の危機意識の低さに、イーニアは少し心配になった。


 とはいえ、これで障害はなくなり。ミレイを起こすべく、イーニアは部屋へと入っていく。




 シンプルなデザインとは言え、白を基調とした、清潔感のある内装。二人部屋だからか、宿舎の部屋とはいえ、かなり中は広めである。

 昨日今日の入室なため、部屋には特に見るものもなく。寝室であろう、奥の部屋へと向かう。



 奥の部屋には、ベッドが2つ置いてあり。一応、2人はそれぞれ別のベッドで眠っていた。その事実に、とりあえずイーニアは安心する。




(……熟睡中。)




 ミレイのベッドの周りには。彼女のアビリティカードであろうか。若干の魔力を放つぬいぐるみが、いくつか散乱していた。

 その他にも、自律型のカードを何体か”放し飼い”にしているのか。尻尾の燃えるネコ、ヒニャータが。イーニアの足に体をこすらせる。

 小型犬モードのフェンリルは、ベッドの真横で眠っていた。




(パンダは居ないのね。)



 内心、そう思っていると。



 重い音。


 何かが、思いっきりぶつかったような。凄まじい衝撃音が、窓の外から聞こえてくる。


 何事かと。窓の外に目を向けてみると。女子寮の庭に、パンダが仰向けでぶっ倒れており。

 その、すぐ近くには。拳を前に向ける、ソルティアの姿があった。




「……あんな特訓、絶対にイヤだわ。」



 絶対に、あいつらの特訓には参加しない。自分のお腹をさすりながら、イーニアはそう決心した。





「……うぅん?」



 今の音で、目が覚めたのか。ベッドで寝ていたキララが、ゆっくりと体を起こす。




「……イーニアちゃん?」


「ええ。おはよう、キララ。」



 寝起きのキララと話す。



「ギルドの仕事に遅れるから、そいつを起こしに来たわ。」


「あぁ、なるほどねぇ。」



 キララは、ゆっくりとベッドから起き上がり。



「ねぇ、ミレイちゃん。起きよ。」



 眠っているミレイの体を揺する。

 だがしかし、まるで起きる様子はない。



「……これ、起きないかも。」


「嘘でしょ?」




 埒が明かないと判断し。

 イーニアは寝ているミレイに近づくと。ぺちぺちと、軽く頬を叩いてみる。




「ほら、起きなさい! 仕事に遅れるわよ!」



 そう声をかけるも。

 眠り姫には届かない。



「ちょっとサフラ。貴方なら起こせるんじゃないの?」



 その呼びかけに応えてか。にょろっと、ミレイの首筋から、白い触手が伸び。イーニアの手に触れてくる。




『……無理だ。』



 テレパシー的なサフラの声が、イーニアの頭に響き渡る。



「じゃあ、どうすればいいのよ。」


「とりあえず、一緒に着替えさせよっか。」


「嫌よ!」




 その後、色々と策を講じるも、ミレイはまったく目を覚まさず。

 結局、キララの提案に乗ることに。




(……あぁ。)



 寝ている他人の着替えを。

 イーニアは、生まれて初めて経験した。











 ギルド本部、1番窓口にて。

 昨日と同様に。サフラとミレイが協力して、魔水晶で仕事をこなしていく。




――シュババババ。




 サフラもコツを掴んだのか。昨日以上のペースで、世界中から送られてくる案件に対処する。




「……わたし、何時いつからここに居るんだろう。」



 ミレイは、寝起きでぼんやりとしつつも。魔水晶の操作に、必要な魔力を捻出した。










「ニョロニョロ、今日も凄いわね。」


「ええ。」




 1番窓口で奮闘する、ミレイたちの後ろ姿を。受付嬢のリリエッタと、イーニアが見つめる。


 得体の知れない白い触手。それに、最初はみんな驚いたものの。とにかく”仕事が速い”ため、自然と受け入れていた。

 見た目よりも、大事なのは性能である。




「あれって、別に病気とかじゃないのよね?」


「もちろん。あいつは、望んで寄生されてるのよ。」


「……随分、変わってるのね、彼女。」


「そうね。」




 可哀想だから。生きたいと願ったから。だからといって。得体の知れない存在を、体内に受け入れることが出来るのか。イーニアには、理解ができなかった。




「……わたしも、不思議に感じてるわ。」




 その、わずか一点だけではあるが。


 ”あいつも大人なんだ”、と。

 ほんの少し、イーニアは悔しく思っていた。








◆◇








「……み、水を飲みまーす。」




 ほぼ全ての作業を、サフラに任せつつ。1番窓口を担当するミレイ。


 そこに、1人の人物が襲来する。






「――あぁ! なんてこと。これまさに運命だわ!!」






「うぉ。」



 目の前に現れた、特徴的な金髪縦ロールの髪の毛に。思わず、ミレイは声を漏らす。


 相変わらずの物凄い毛量。ミレイの記憶の中に、こんな見た目をした生き物は1人しか居ない。




「えぇっと。”九条瞳くじょうひとみ”さん、だっけ?」


「ええ、その通りよ!」




 魂の奥底から、自信が湧き出ているかのように。異様に高いテンションで。九条は、その美しい容姿を見せつける。




「……ギルドに、何の用でしょうか。」



 数日ぶりに出会った珍獣に。とりあえずミレイは、営業スマイルを浮かべた。











「冒険者登録?」


「ええ。この世界で生きるには、色々と実入りも必要だから。ここは一つ、冒険者の頂点を目指そうと思って。」


「……なるほど。」




 1番窓口にて、ミレイは九条瞳の冒険者登録を担当することに。

 他の仕事は、全てサフラがこなしてくれるため。よそ見も問題なしである。




「ここまで、どうやって来たの?」


「もちろん馬車よ。ゴブリンたちと仲良くなって、帝都まで送ってもらったの。」


「へぇ。それは良かった。」




 スタンネルンで会った時は、突如消え去ってしまったため。その後を心配していたが。

 何とか丸く収まったようで、ミレイは安心する。




「登録する名前は、クジョウヒトミで合ってるよね?」


「ええ。」


「年齢は?」


「18よ。」


「……なるほど、2つ年下か。」



 綺麗な容姿に、大人びた佇まい。

 自分との差に、ミレイは悲しくなる。



「ということは、貴女は16歳なの?」


「いいや、逆逆。わたし、これでも20歳(はたち)。」



 ペラッペラな胸を叩きながら。自らが年上であることを主張する。



「……流石は、異世界ね。」


「……いや、日本人です。」


「うそ!?」




 異世界ファンタジーではない。ミレイは、正真正銘の地球産であった。




「まさか、こんな異世界で同胞に会えるなんて。その触手が貴女の”異能”かしら。わたしとお揃いね。」



 九条は、ミレイのことを同胞であると判断し。それで気を良くしたのか。

 長ったらしい金髪で、ミレイのことをつんつん触ってくる。



「いや、何というかこれは。寄生されてるだけなんだけど。」


「……何を言っているの?」



 その疑問も、ごもっともである。





「えっと。瞳ちゃんのアビリティカードは、”髪の毛を操る能力”、でいいんだよね? それで登録しちゃうけど。」


「いいえ? わたしのアビリティカードは別だけど。」


「え?」


「ん?」



 お互いに、その違和感に気づく。



「あっ、なるほど。貴女はもう20歳だから、異能は使えないのね。わたしは”卒業式”に出なかったから、まだ異能が使えるのよ。」


「……はあ。」



 九条はひとりでに納得するものの。ミレイは、まるで理解が出来ない。



「君、本当に日本人?」



 たまらず、そう問いかけた。








――いわく。



 その世界では。中学に入学して暫く経つと、大半の子どもたちが、”異能”に目覚めるという。

 異能に目覚めることが出来るのは、その世界でも限られた者たちだけ。”日本の中高生”のみが、広い世界の中で唯一異能に目覚め。高校の卒業式を経ると、自然と異能は失われる。

 そのため、彼らの持つ異能は、世界的には”特殊な病”であると扱われ。政府による厳しい管理が行われていた。

 許可のない使用も、もちろん禁止であり。異能を確実に失わせるために、卒業式への参加も義務付けられている。


 そんな世界で。社会からの圧力に反逆し、恐れず異能を行使する者を”ツッパリ”と呼び。卒業式に参加せず、異能を保持し続ける者の事を”ダブり”と呼んだ。

 ツッパリに関しては、若気の至りということもあり、ある程度は黙認されているものの。異能を持ったまま大人になるダブりは、完全に違法とされていた。


 ダブりとなった者は警察に連行され。翌年の卒業式まで拘束される。

 そして、異能を失っても。ダブりであった者は、その後も重い罪に問われ続ける。


 異能者は病気。

 社会の秩序を守るため、厳しく管理しなくてはならない。



 九条瞳は、そんな世界からやって来た。








「ふぇ〜 じゃあ瞳ちゃん、めっちゃ不良じゃん。」


「ふふ。そう言われるのにも馴れたわ。誰に何と言われても。わたしは、この生き方を貫くって決めてるから。」




 彼女の選んだ生き方は、決して楽な道のりではない。

 ツッパリ、ダブりとなった時点で、社会には否定され。警察や、その”協力者”たちに追われることになる。


 彼女と共にこの世界に来た、”七瀬奈々”も。九条を捕えようとする者の1人である。


 だが、それでも。彼女はあくまでもツッパリとして生きる道を選んだ。

 社会に認知されない、”異能者”として生きる道を。




「いいんじゃない?」



 そんな彼女を、ミレイは笑顔で受け入れる。



「そっちの世界のことは、よく分かんないけど。わたしはカッコイイと思うよ。」


「そう?」




「うん、もちろん! ”同じ冒険者として”、これからよろしく。」




 どんな世界、どんな存在なのかは関係ない。


 この世界で暮らす、”新たな仲間”として。

 ミレイは、九条瞳を歓迎した。















「ふふっ。このわたしに、相応しいクエストを見繕ってもらおうかしら。」


「うん、いいよ〜」




 新しく発行された、Fランクの冒険者カードを。九条はどこか自慢げに掲げ。そんな彼女に、ミレイはクエストを見繕うことに。




「サフラ、なんか良いのある?」


『検索しよう。』




 他の仕事の片手間に。膨大な依頼の中から、サフラが条件に合った依頼を探し出す。


 暫く経つと。ディスプレイの中に、いくつかの依頼が列挙され。ミレイは、その中から良さそうなものを選ぶ。




「えっと。……”ペットの捜索依頼”とか、どう?」


「……それしか、ないのかしら。」


「あー、うん。……そだね。」




 Fランク冒険者に任せられるクエストは、非常に種類が限られており。その限られた依頼の中でも、特に”捜索関連”の依頼が多かった。




「いやでも、凄いよ? 帝都だけでも、”100件近い捜索願”が出てる。」


「……飼い主は、どんな管理をしてるのかしら。」




 色々と、疑問は有るものの。

 仕方がないので、九条はペットの捜索依頼を受けることにした。





 ”ペットが消える理由”。

 それを、深く考えることもなく。






◇ 57日目のガチャ





 1つ星 『歌ガエル』


 美しい音色を奏でるカエル。何匹か集まれば、綺麗な合唱団となる。




ミレイ「……最近、こんなのばっかだな。」



 とりあえず、窓口に置いておいた。





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