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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
サフラ拒絶領域
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綺麗な石





 地面を掘り進めて、ダンジョン最深部へと到達したミレイ達であったが。


 そこで彼女たちが目にしたのは、数十メートルまで肥大化した異界の門と。

 それを押し広げた元凶である、”太い根っ子の束”であった。




「ユリカさん。この状態でも、門を閉じることは可能ですか?」


 マキナが、ユリカに問いかける。



「……どう、でしょう。前例が無いので、なんとも言えないですけど。根っ子が原因で門が広がってるなら、まずはそれをどうにかしないと。」


「なるほど。つまり、根っ子を切断すれば済む話ですね。」



 話は単純だと。

 マキナは右手に、”剣状の光”を収束させ。



 根っ子を切断するべく、思い切り振り下ろした。



 森を容易く斬り刻むほどの、鋭い光の斬撃。

 一晩にも渡って、根っ子と変異種を食い止めた力であったが。



 斬撃が、根っ子に触れた瞬間。

 突如として、触れた部分の光が崩壊してしまう。


 剣を形成する魔法が、解けてしまったかのように。




「――なぜ。」


 目の前で起きた現象に、マキナは動揺を隠せない。



 他の面々も、同様に驚くものの。


 唯一フェイトだけは、どこか納得したような表情をしていた。



「まっ、わたしの氷結に対応できるなら、不可能って事は無いわよね。」


「……わたしの斬撃を浴び続けたことで、”光に対する耐性”を得たと?」


「それしかないでしょ。」



 かつて、フェイトの氷結能力を克服した時のように。

 一晩中、マキナの能力を浴び続けたことで、彼らは光の魔力を弾く特性を獲得していた。



「マキナでダメなら、どうすりゃいいんだよ。」



 フェイトに続いて、マキナまでも。

 最高戦力2人の力が無力化されたことで、より一層、敵の脅威度が上がっていく。



「ですが。光への耐性は持っていても、”斬撃”そのものへの耐性は、流石にまだ持っていないのでは?」


 ソルティアが提案する。



「……確かに。ここまで掘ってくる中で、普通に迎撃出来てたか。」


「試す価値はあるでしょう。」



 鞘を握る拳に、力が入る。

 ソルティアはやる気だった。



「なら、斬った後に再結合しないよう、わたしが断面を塞ぐわ。」


 フェイトも含めて。

 彼女たちは作戦の続行を決める。



 だが。

 マキナは1人、深刻そうな表情をしていた。



(わたしの力が通じないのなら。”残りの殲滅”が、かなり厳しくなる。)


 ”門を閉じた後”のことを、不安に思う。







 静かに、呼吸を整え。

 居合斬りを放つ体勢で、ソルティアは根っ子の束を見つめる。


 チョーカーの機能により、絶え間ない痛みが全身を蝕むものの。

 ただ”斬る”ということだけに、純粋な意識を向ける。



 そんな彼女の後ろ姿を、ミレイ達は緊張した様子で見つめていた。




「頑張れ、ソルティア。」



 手を組んで。

 祈るように、ミレイが思いを込める。



 すると。

 彼女の”真紅の瞳”が、ほんの少しだけ輝いた。




「――ッ!」


 渾身の力で、斬撃を解き放ち。



 全てを出し切ったソルティアは、何故か”驚いた表情”をしていた。

 自分が想定するよりも、”斬れ過ぎて”しまったかのように。



 空を斬るが如く、美しい斬撃は。

 巨大な根っ子の束を、容易く切断し。


 その先にある壁に、深々とした刀傷を刻んでいた。




「やるわよ!」


「おう!」



 フェイトとイリスが、同時に動き出し。

 斬った部分が再結合しないよう、イリスが渾身の拳で殴り飛ばす。


 そして、双方の断面に対して。

 分厚い氷を、フェイトが纏わせた。



「おっし。」



 根っ子が離れていき。

 異界の門が、完全にフリーになる。



 そこまでは、良かったのだが。



 こちら側の世界に残された方。

 切り離された側の根っ子が、凄まじい勢いで暴れ始める。

 まるで、ちぎれたトカゲの尻尾のように。


 いくら本体から切り離されたとはいえ、根っ子が巨大なのは変わりなく。

 激しく暴れる根っ子により、凄まじい地響きが発生する。



 ダンジョン全体が、押し潰されようとしていた。




「やべぇ、このままじゃ崩れるぞ!」


「ッ、面倒ね!」



 フェイトが能力を使い、周辺の壁や天井を分厚い氷で覆っていく。



 その強固な氷によって。

 かろうじて、彼女たちの居る空間は形を保つ。



 だが、その後も地響きは鳴り止まず。


 音と振動から判断して。

 巨大な根っ子は、”地上”へと向かっている様子だった。





「まぁ、なにはともあれ。予想通りの結果になりましたね。」


「ああ。後は門を閉じて、地上の残党を殲滅すれば、クエスト完了ってな。」



 巨大な根っ子は、こちらの世界に残されたままだが。

 それは、もとより承知の上である。


 あちら側の世界。つまりは本体から切り離されたことにより、無限とも言える生命力は失ったはず。

 それならば、たとえ森の変異種たちを合わせたとして、こちら側の戦力なら十分に殲滅が可能であった。


 とはいえ、主戦力であるマキナの能力が無力化され。

 本体から切り離されたことで、完全な”混乱状態”である根っ子が、”何をしでかすか分からない”というのも、また事実である。



 そして、もう1つ。

 ”そもそもの脅威”が、そこには残っていた。




 追い返したとはいえ。

 それは、”無限に等しい根っ子の1つ”であり。



 1つ斬られたなら、また1つ。



 ”新たなる根っ子”が、向こう側の世界からやって来る。




「くっそ。」


 各々の武器を構え、彼女たちは根っ子に応戦する。



 だが、新たにやって来た根っ子は、明確な”目的”を持っている様子で。

 細かな根っ子が、凄まじい物量で押し寄せてくる。


 まるで、空間を飲み込もうとするかのように。



「――とにかく斬り刻め!」


「ううううう。」



 ミレイは聖女殺しを振りまくり。


 ソルティアとシュラマルは、刀で応戦。


 ユリカは御札で、キララは魔法の弓矢で。


 イリスはとにかく殴り。


 能力を封じられたマキナも、蹴り技で対応する。



 だがしかし、門より溢れる敵の量は、もはや圧倒的であり。



 氷の剣で応戦しつつも。

 ”勝利がありえない”ということを、フェイトはすでに確信していた。




(やるしか、ない。)



 最後の最後まで、取っておきたかった力だが。

 今ここで、”覚醒”させる。




「――SCAR DRIVE(スカードライブ)、起動ッ!!」




 その瞬間。

 フェイトの体を中心として、爆発的な魔力が解き放たれる。



 他の存在、他の生物を圧倒するほどの力を覚醒させながら。


 それと同時に、フェイトの左半身が凍りついていく。



 だが、そんなものはお構いなしに。

 凍った左手の先に、”力”を集中させる。



 まるで、ミレイの使うRYNOの力のように。

 氷で出来た、”巨大な竜の顎”が形作られる。




「消えなさいッ!」




 フェイトの意思によって、竜の顎は解き放たれ。


 全ての根っ子と、真っ向からぶつかり合う。




 そして。


 門の先、向こう側の世界へと。

 力づくで押し返した。







「……まさか、これ程とは。」



 魂すら凍てつかせる、圧倒的なフェイトの力に。

 マキナは驚きを隠せない。



 そんな強大な力を発揮したフェイトであったが。

 心臓部分を中心に、半身が凍りついており。


 真っ白な息を吐いていた。



(……胸が痛い。やっぱ、諸刃の剣ね。)



 静かに、自らの”活動限界”が近いことを悟る。



「わたしが向こうの侵攻を食い止めるから、アンタ達は門を閉じなさい。」



 この力を起動した以上。

 目的を達成せずに力尽きることだけは、絶対に避けたかった。



「はい、やりましょう!」


 ユリカを筆頭に。

 彼女たちは渡された御札を手にとって、異界の門へと近づいていく。




 だが、ただ1人。

 ミレイだけは、その場に立ち止まっていた。



 目を見開き。

 その”最悪な現実”に、震えるように。






「――ねぇ、”キララ”はどこ?」











「……今の根っ子に紛れてた。というよりも、”連れ去られた”ってことかしら。」


「すぐに助けないと、キララが。」



 根っ子に捕まえられた、という時点でも、十分に憂慮すべき事態だが。

 ”向こうの世界”に連れ去られた、というのが、何よりも深刻な問題であった。



「チョーカーが壊されでもしたら、一巻の終わりだからな。急いで助けに行くぞ!」



 キララを連れ戻す。

 そのために、全員の意思が1つになる。




 だが、そんな彼女たちの決意とは裏腹に。


 突如として。

 ミレイの眼前に、”黒のカード”が出現し。


 ひとりでに起動する。




「え?」


 咄嗟のことに、ミレイは驚く。



「なんだ? 新しいカードでも召喚すんのか?」



 今日はすでに、1日1回の召喚を終えたはずであったが。



「……まさか。」


 ミレイの予感は、無常にも的中する。




『”ターミナルに不具合を検知。遠隔操作による停止を試みます”。』



 花の都で、怪人達と戦った時と同じく。

 知らないナニカの声が聞こえる。



『”接続失敗、ターミナルにアクセスできません。応急処置のため、該当箇所の修正を行います”。』



 黒のカードは、微かに光を発すると。




 それを切っ掛けとするように。

 巨大な異界の門が歪み、徐々にサイズが”縮小”し始める。




 それこそが、謎の声が言う”修正”なのだろう。

 本来なら、それは喜ばしい出来事のはずであったが。


 今この瞬間においては、”最悪”に他ならない。




「――嘘!?」


 門が閉じていく様子に、彼女たちは目を疑う。



「……なんで、こんなタイミングで。」


 無情な現実に、ミレイは震えた。



「だめだめだめ、ちょっとまって! まだキララが向こうにいるのに。」



 この現象を止めるため、黒のカードに念を送るものの。

 うんともすんとも反応しない。

 物言わぬカードのまま。



「――このっ、このっ。」



 ならば力ずくにと、黒のカードを引き千切ろうとするも。

 ミレイの腕力ではどうにもならず。


 思いっきり踏みつけても、結果は何も変わらない。




 ただただ、門が小さくなっていく。

 それが現実であった。




 異界の門が消えてしまえば。

 向こうの世界と繋がる手段はなくなる。


 もう、得体の知れない植物が伸びてくる事もない。



 ミレイは、迷わなかった。



「……ごめん。」



 他のメンバーに、一言謝罪すると。

 ミレイは機械の翼を展開し。


 加速しつつ飛翔し。


 門の向こう側。

 異世界へと旅立っていく。



「ッ。」


 その行動に真っ先に反応したのは、無論のことフェイトであり。


 ミレイを真似るように、その背中に氷の翼を展開し。

 羽ばたき、凄まじいスピードで後を追う。






「……あいつら、帰らねぇつもりか。」



 閉じゆく門を前にして。

 仲間の命が最優先と、イリスは一歩を踏み出すが。



「っ。」



 ”異世界”

 ”戻ってこれない”

 ”確実に死ぬ”


 脳裏に湧き上がる思考によって、思わず足が止まってしまう。




 冷静に考えて、向こうの世界は”死地”である。

 人と相容れない植物が支配し、当然のように変異放射線に溢れている。

 故に、向こう側に取り残されては、一日と経たずに死んでしまうだろう。

 チョーカーの維持に必要な魔力も、いずれ底を尽きる。



 仲間は助けたいが。

 理性ではなく”本能”が、その体を止めた。



 だが、閉じゆく門を前にして。


 動いたのは、マキナであった。




 マキナは門の目の前まで跳ぶと。

 光の魔力を棒状に形成し。


 突っ張り棒のように、門の間に挟み込んだ。



 だが、”異常を修正しようとする力”が強すぎるのか。

 光の棒は、容易く砕かれてしまう。




「――くっ。」



 それでも、マキナは諦めず。


 渾身の力を集中させて。

 新たなる光の棒を創造し。




 そこに、更に力を注ぎ続けることで、なんとか門の維持に成功する。




「……わたしが、押さえておきますので。どうかお願いします。」



 機械のように、抑揚のない言葉だったが。

 必死に門を支えるその姿は、紛うことなき”人間”であった。




 マキナの手によって、繋がりは保たれる。




「……あぁ、悪ぃな。」



 恥ずべき恐怖を掻き消して。

 イリス達は、門の先へと向かった。









 地下に潜ったメンバーが、異世界へ向かおうとしていた頃。


 地上では。



 本体から切り離されたことで。

 混乱状態になった巨大な根っ子が、激しく暴れまわっていた。



 街にも匹敵する、巨大な植物の根っ子。

 その暴れようは凄まじく。


 巻き添えを食らわないよう、アマルガムは根っ子から距離を取る。




 アマルガムのブリッジでは。


 エドワード、カミーラ。

 そして、デルタとクレイジーフィッシュという面々が集結し。


 各々操作を担当することで巨大な戦艦の操縦を行っていた。



 能力の所有者であるイリスなら、声の1つで船を動かすことが可能だが。

 無関係である彼らは、”本来の操縦法”で船を制御する必要があった。




「……この暴れよう。どうやら彼女たちは、無事に門を閉じれたらしいな。」


「ああ。作戦が順調そうで、安心するよ。」



 地下で、どういう状況になっているのか知らず。

 暴れまわる根っ子を見つめるエドワード達であったが。




 突如として。

 ”アマルガムが消失する”。




「――なっ!?」



 足場、というよりも。

 乗っていた船が丸々消えてしまい。



 ブリッジにいた4人は、そのまま空中に投げ出される。




「うっそー!?」


 何の前触れもなく、自然落下状態になり。

 クレイジーフィッシュはパニックに陥る。




 だが、幸運にも。

 天使であるカミーラが、その翼をはためかせ。


 デルタとクレイジーフィッシュを、なんとか捕まえる。




「――エドワード!!」



 アーマーを纏ったエドワードは、他より速い速度で地上へ落下していき。


 人間2人を抱えたカミーラでは、それに追いつく術がない。




 だが。



SCAR DRIVE(スカードライブ)!!」



 エドワードの纏っていたアーマーが、漆黒に染まり。

 異形の力が、全身にみなぎる。




 凄まじい衝撃を生みながらも。

 その両足で、エドワードは地面に着地した。




「……一体、何があった。」



 その疑問に答えるものは、この世界にはいない。











 機械の翼を背に、空を飛翔し。


 ミレイは世界を見る。



 そこは、暗い世界だった。

 分厚い雲が空を覆い、陽の光は感じられない。



 そこは、暑い世界だった。

 じめじめとした空気に、嫌な汗が流れ出る。



 呼吸こそ、何とか出来るものの。


 吸っているのは、本当に酸素なのか。

 喉が渇き、口の中が妙に不味い。




 下を覗いてみれば。

 存在するのは、全て同じ種類の植物のみ。


 ミレイ達の世界に訪れた根っ子よりも。

 ”遥かに大きな”根っ子や幹が、地上全てを埋め尽くしている。


 サフラの言っていたことは、何一つとして間違っていない。

 ここは、彼らの支配する世界。


 たった1種類の植物しか存在しない、”孤独な世界”だった。




 氷の翼で空を飛ぶフェイトは。

 ミレイと同じく、未知なる世界に圧倒される。




 彼女たちが、上空から世界を見つめていると。


 異界の門を通って、イリス達がこちら側へとやって来る。

 足元全てが、大きな生命体の一部であるとも知らず。



 だが、そんな事実に気づく前に。



 異界の門をくぐり、こちらの世界にやって来た瞬間。


 まるで、糸が切れた人形のように。

 ユリカが、その場で倒れてしまう。




「――ユリカちゃん!?」


 咄嗟に、シュラマルが駆け寄り。

 イリスとソルティアも、同様に目を向ける。



 だが2人は、倒れたユリカよりも。

 ”駆け寄ったシュラマルの姿”に、驚いてしまう。



「おい、お前。なんで”裸”なんだ?」



 今さっきまで着ていた、”セクシー忍者スーツ”はどこへ行ったのか。


 シュラマルは素っ裸になっており。

 豊満すぎる肉体を、ありのままに晒していた。



「うそっ、なんで?」


 なぜ裸になっているのか、動揺するシュラマルを。



「――くっ。」


 門を支え続けるマキナは、嫌でも見つめざるを得ない。




 そんなさなか、ソルティアも。

 ”持っていたはずの刀”が、消えてしまっていることに気づく。



「……まさか、”アビリティカード”が使えない?」



 ソルティアの刀も、シュラマルのスーツも。

 共に、アビリティカードである。



「だから、ユリカちゃんも倒れたんだ。」


「どういう意味だ?」



「ユリカちゃんの能力は、”バトルフォース”って言って。単純に言えば、”強くなる能力”なんだよ。体も丈夫になって、運動能力も上がる。ユリカちゃんは、それを”常時発動”させてたから。多分、それが無効化された反動で。」



「チョーカーの負荷に、耐えられなくなった。というわけですか。」



 誰もが持つ力、アビリティカード。

 それが使えないとなれば、まさに死活問題である。



「……アビリティカードは、”オレたちの世界限定”ってことか。」



 試しに、イリスもアマルガムを呼び出そうと念じてみるも。

 実物が召喚できないだけでなく、カードの具現化すらも不可能であった。



「ならなんで、”あいつら”は平気なんだ?」



 この世界に来た時点で、イリスたち全員の能力が無効化された。




 だが、上空にいるミレイは、未だに機械の翼を展開している。


 フェイトに関しても、消えることなく存在を保っていた。




(……まぁ、考えても仕方ねぇか。)



「シュラマル、ユリカを連れて向こうに帰れ。流石に無理だろ。」


「うん。残念だけど、そうするよ。」



 素っ裸のシュラマルが、ユリカを持ち上げる。



「――あっ、そうだ。これ使ってよ。」


 シュラマルは、自身の持っていた短刀をソルティアに渡した。



「……分かりました。」


 ソルティアも、想いと共に受け取る。




 倒れたユリカと、素っ裸のシュラマルが。

 元の世界へと戻って行く。


 洒落にならない光景であった。




「とはいえ、当てはあんのか?」



 見渡す限り、”蠢く緑”が存在するだけ。


 こちらの世界に連れ去られたであろうキララは、その痕跡すらも見当たらない。




 上空から、周囲を見つめる2人も。

 それは同じであった。




「で、どうするわけ?」


「……ちょっと、待ってて。今サフラと話してるから。」



 ミレイは、そっと目を閉じ。

 体の中に居る、もう一人の言葉に耳を傾ける。





『――キララはおそらく、”この星の中枢部分”に連れて行かれたはずだ。』


「星の中枢? どうして?」


『どうして、か。中々に難しい質問だな。』



 結局のところ、彼らは”大きな植物”に過ぎないため。

 人間らしい表現で、わかりやすい”理由”を考える。



『目の前に、”綺麗な石”が落ちていたとして、それを拾ったら。よく見てみようと、顔に近づけるだろう? ”それと同じ”だ。』



「え?」



『周囲にある根っ子や枝が、なぜこちらに反応しないか分かるか? ”手に入ったおもちゃ”に夢中で、反応する暇がないんだよ。』



 サフラが告げたのは、単純ながらも恐ろしい言葉。



『もしも、”綺麗な石(キララ)”を助けたいのなら、星の中枢へ急ぐべきだ。』





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