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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
サフラ拒絶領域
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雪解け





 アマルガムの医務室にて。



「はい、あ〜ん。」


「あ〜ん。」



 怪我の影響で、ミレイはベッドから身動きが取れず。

 フォークに刺さったリンゴを、キララに口に運ばれていた。



「美味しい? ミレイちゃん。」


「うん。うまうま。」


 ミレイはリンゴを頬張る。



「ミレイちゃん。本当にりんごが好きなんだねぇ。」



 完全に、記憶と意識が飛んでいたが。

 久方ぶりの食事に、身体が喜んでいるような気がする。


 馴染みのある味ながら。

 ミレイはリンゴを噛み締めて味わった。


 その様子を見ながら。

 たまらず、キララもにっこりと笑う。



「次は何が食べたい?」



 キララは、果物の入ったカゴをミレイに見せた。


 だがしかし、そのカゴの中身を見ながら。

 ミレイは、何とも言えない表情を浮かべる。



(……あぁ。知らない果物ばっかだ。)



 カゴに入った果物は、名前も知らない果物ばかりであり。

 最初にリンゴを選んだのも、それが唯一知っている果物だったからに過ぎない。



「……じゃあ。その、”桃色のやつ”で。」


 とりあえずの消去法で、食べられそうな形のものを選んだ。



「えっ、”ビエラ”が食べたいの? これって、生で大丈夫なのかなぁ。」



 少々、不穏な言葉が聞こえてきたが。

 せっかくキララが用意してくれた果物のため、ミレイは何も言えなかった。





 器用に包丁を使って。

 キララが、ビエラという果物の皮を剥く。


 それを、ぼーっと見つめるミレイであったが。



「……ん?」



 ビエラの皮を剥きながら。


 キララが、”無言で涙を流していること”に気づく。



「――だ、大丈夫? 目に染みるの?」



 玉ねぎの汁のように、何かが目に入ったのかと。

 単純な理由で、ミレイは驚いた。



 けれども、それを否定するように。

 キララは首を横に振る。



「ううん、嬉しいんだぁ。またこうやって、一緒に居られるのが。」



 この空間と、この時間を共有できることを。

 キララは心の底から安堵していた。



「この街に来て、”お屋敷”でミレイちゃんの姿を見たとき。もう、ダメかもって思っちゃったから。」


「……そう、なんだ。」



 キララの思いに。

 ミレイは、うまく言葉を返せなかった。











「ここが、霧の都ピエタですか。」



 ピエタの街に、馬車が到着し。

 そこから、2人の女性が降り立つ。


 仲間を探しに、ここまで来た。

 キララとソルティアである。



「噂と違って、霧も無いですし。とにかく寒いですね。」


「……そう、だね。」



 ソルティアは、いつも通りの様子で。

 雪の降る街の様子に感想を漏らす。


 けれどもキララには、そのような感想を言う余裕もなかった。



 2人が、街の入口で立っていると。




「――アンタ達が、ミレイの仲間ね。」




 彼女たちの到来を、待ちわびていたように。

 腕を組んだ”フェイト”が、キララとソルティアを出迎える。




「フェイトよ。あの水晶玉で話した通り、”ミレイのアビリティカード”をやっているわ。」





 そうして、彼女たちは出会った。





 フェイトに連れられる形で、キララとソルティアはピエタの街並みを進んで行き。


 大きなお屋敷の前へと案内される。



「ここは?」


「この街の領主、”ホープ家の屋敷”よ。わたしが世話になってるところ。ミレイも、ここに居るわ。」



 ソルティアの疑問に答え。

 フェイトは、2人を屋敷に招き入れた。



 世話になっていると言いつつも。

 フェイトは、我が物顔で屋敷の中を進んでいき。


 とある一室の前へと、2人を連れてきた。



「ちょっと、”ショック”かもしれないけど。覚悟はいい?」



 扉の前で、フェイトは最後の確認をする。



「……うん。」



 キララは胸元を押さえながら、重々しく肯定し。


 ソルティアも無言で頷いた。



「じゃあ、どうぞ。」



 扉が開き。

 キララとソルティアは、重い足取りで中へと入っていく。



 そして、

 そこにあった光景に。


 思わず、キララは口元を覆った。





 事情も、何も知らない者が見たら。

 それは”一種の芸術品”のようにも見えたであろう。



 ”とても精巧な氷像”、とでも言えばいいのか。



 よく見知った人物。

 一緒に暮らしてきた存在。

 探していた友達のはずなのに。




 そこにいたミレイは、地面にしゃがんだ姿勢のまま、右手を下に突き出して。



 時が止まってしまったかのように。

 ”完全に、凍りついていた”。





 こうなっていることは、事前に聞いていたものの。


 いざ目にすると、あまりにも衝撃的すぎて。

 2人は言葉も出ない。




「……右手付近が、その。”歪んでいる”のは何故ですか?」


 ソルティアが、疑問を口にする。



 凍結したミレイであったが。

 下に向けられた右手は、その周辺ごと空間が歪んでいるように見えた。



「そこが、いわゆる”爆心地”だからよ。」



 フェイトは、冷静に説明する。


 植物の化け物を追い払うために、ミレイが爆発の魔法を放ったこと。

 それが、ダンジョンに満ちていた”何か”に引火し。

 信じられない規模の爆発を引き起こしたこと。



「咄嗟に反応して、凍らせたけど。あと一歩遅かったら、多分全身が吹き飛んでたわ。」



 もっと、余裕があれば。

 爆発の起点が、ミレイの右手でなければ。

 別の対処法も、有ったのかも知れないが。


 フェイトの能力的には、もろとも凍らせることが限度であった。



「……ミレイちゃん、助かるの?」



 どんな現実を見せられても。

 最初から、キララの頭にはそれしかない。



「分からないわ。正直、わたしに出来るのは凍らせることだけ。そこから助ける方法は、何も知らないもの。」


 フェイトからしても。

 この状況は、決して望んだものではなかった。


「一応、街の外にある凍った化け物を使って、何度か蘇生を試してみたけど。生きたままの解凍は、一度も成功しなかった。」



 自分なりに、手は尽くしたものの。


 結局、自分に出来ることは。

 ”凍らせること”か、”壊すこと”だけなのだと知る。



「でも、まだ死んではいない。ということですよね?」



 現実を、その瞳で受け止めながら。

 ソルティアは、冷静さを保っていた。



「ええ、生きてはいるはずよ。わたしやフェンリルが消えてないってことは、”繋がり”が残ってるってことだから。」




 部屋の片隅には、小型モードの”フェンリル”がおり。


 凍った主を守るように。

 その帰りを待つように。


 忠犬のように、鎮座していた。




 この世界で人が死んだ場合。

 その人物が持っていたアビリティカードは効力を失い。天に召されるように、光の粒子となって消えてしまうという。

 その理屈で言えば。ミレイはまだ、死んではいないのだろう。



「でも、”もの凄く慎重に”溶かしてあげないと、十中八九死んじゃうわ。」



 あくまでも。

 現状は、かろうじて延命できているに過ぎないのだから。



「”凄腕の医者”とか、”科学者”とかの知り合いは居ないの?」



 ミレイを救うには、もっと多くの”助け”が必要であった。






 そして、時は現在に戻り。






 医務室の中に、1人の女性が入ってくる。


 ”純白の翼”を、背中に持ち。

 文字通りの白衣の天使である彼女は、ミレイもよく知る人物であった。



「――おい。そいつの意識が戻ったなら、わたしかエドワードに伝えるべきじゃないか?」



 花の都で暮らしているはずの。

 ”カミーラ”が、そこに居た。



「あっ、ごめんなさい。もう、胸がいっぱいいっぱいで。」


 キララが謝罪する。



「カミーラさん? おひさです。」



 得体の知れない果物を摂取したせいか。

 ミレイの顔色は、若干悪かった。



「ああ、まったく。こんな形ですぐに再会するとは、夢にも思わなかったよ。」



 そっけない態度を取りつつも。

 カミーラの表情は、どこかホッとした様子だった。



「お前が凍って死にかけてるって聞いたから、文字通り飛んできたんだぞ?」


「いや、本当に。ありがとうございます。」



 ミレイはすでに、”全感謝の精神”であった。



「そんなに気にするな。知り合いに死なれたら、わたしも気分が悪いからな。」


「カミーラさん、ほんっとうに凄かったんだよ? 治癒魔法って、あんな事もできるんだって!」



 キララは、カミーラの治癒魔法を褒めちぎる。


 100年以上を生きる天使の実力は、伊達ではなかった。



「”右手と右足”の包帯は、しばらく取れんからな。それは覚悟しとけよ。」


「はい。」


「わたしがしっかりとお世話するから、心配しないでください。」


「ああ。お前たちなら、心配は無さそうだ。」



 色々とあったものの。

 ミレイとキララの様子を見て、カミーラは微笑んだ。



「まぁ、”それはそれ”として。これから検査をするが、文句は言うなよ?」



 ”やたらと大きな注射器”を、わざとらしく見せつけながら。


 カミーラは、ニッコリと笑った。











「……はぁ。」



 カミーラによる検査を受けて。

 ぐったりとした様子で、ミレイはベッドの上に寝転がる。



 ミレイが目覚めたことを、他のみんなに知らせるために。

 キララも医務室を出ていってしまった。



 それ故に、ミレイは1人。

 眠る気にもならないため、暇な時間を過ごすことに。



 死にかけのナメクジのように、ゴロゴロとするミレイであったが。



「……あっ。”魔導書”、どこだろ。」



 ふと、大切な魔導書の所在が気になり、周囲を見渡す。


 すると、隣のベッドの上に置いてあることに気づく。



「うぎぎっ。」



 まだ起き上がれないため。

 ミレイは必死に手を伸ばし、魔導書を取ろうとする。


 だが、悲しいかな。

 圧倒的な身長不足から、それは不可能であった。



「はぁ。」



 試しに、魔法の力でどうにかしようとも思ったが。

 しばらく修行をサボっていたせいか、うんともすんとも言わず。

 ミレイは、諦めた。




 他に、やることもなく。



「あ。」



 思い出したように、ミレイは左手の中に”黒のカード”を具現化する。



「ふっふ〜」


(今日は、どんなカードが手に入るかな〜)



 黒のカードを起動し。

 光の輪の中から、新たなカードを召喚しようとする。



 だが、しかし。



 みるみるうちに。

 黒のカードが、端っこから”凍っていき”。



「あわわっ。」



 驚いたミレイは、たまらずカードを手放した。


 地面に落とされたことで、召喚は中止される。



「なっ、何が。」



 動揺したミレイは、周囲を見渡し。



 いつの間にか部屋に居た、”もう一人の存在”に気づく。



 不機嫌そうに腕を組む。

 自身のアビリティカードでもある、”フェイト”の存在に。




「……む、謀反?」


「違うわよ。」



 ミレイの反応に。

 フェイトは、心底呆れた様子で。


 床に落ちた黒のカードを拾うと。

 そのままミレイに返した。



「あっ、ありがと。」



 若干、ひんやり冷たかったが。

 とりあえずミレイは、黒のカードを胸ポケットにしまった。




「アンタ、ポンポン”それ”やってるらしいけど、本当に大丈夫なの?」



「ど、どういう意味?」


 ミレイは、突然の問いに動揺する。



「”リスクが無いのか”って話よ。アンタが凍ってる間、しばらくこの街で暮らしてきたけど。アビリティカードって、本来は”1人1枚が原則”なんでしょ?」


「う、うん。」



 その指摘は、たびたびミレイ自身も疑問に思うことがある。


 だがしかし。



――”まぁ、身長が縮まなければいっか”。



 という考えのもと、気にしないようにしていた。



「……まっ、正直どうでもいいんだけど。下手なもん召喚して、足元すくわれたら目も当てられないわ。現に、”わたしのせいで死にかけた”わけだし。」



 フェイトは、そう主張するものの。


 その考えに、ミレイは首を傾げる。



「いや。話は、聞いたんだけどさ。爆発からわたしを守るために、フェイトが凍らせてくれたんでしょ? それに、フェンリルと協力して、ユリカさんとシュラマルさんを助けたって。」



「……それが、何だって言うのよ。」


 不思議と、心がざわつくような。



「フェイトが居なかったら、わたしは絶対に助からなかったし。街の人達だって、もっと大勢犠牲になってたはず。」




 ただ、凍らせるだけの力でも。

 ただ、破壊するだけの力でも。



 それで、救えるものもあるのだから。




「君と出会えて、わたしは”幸運”だったよ。」



 とても正直な、笑顔を向けられた。




「――あっそ。心配して損したわ。」



 まるで、逃げるように。

 フェイトはミレイに背を向ける。



「わたし、仕事があるから。また何かあったら呼びなさい。」


「うん。ありがとね、フェイト。」


「ん。」



 それで、会話を切り上げて。

 フェイトは医務室を後にする。



 けれども、どうにも気持ちの整理がつかず。



「……はぁ。」



 通路の壁を背にして。

 フェイトは、天井を見上げた。



――君と出会えて、幸運だったよ。


 冗談でも、そんな事を言われたのは初めてだった。



 それだけではない。

 思えば、ミレイに召喚されてから。

 ”知らない言葉”を、多く聞いたような気がする。



――街を救ってもらった恩もあるし、うちの屋敷に泊まっていったら?


 ダンジョンから帰還した後。

 ”イーニア・ホープ”に、そう言われた。



 自分が冷気の使い手で、”街を凍らせた張本人”だと知っても。

 それでもこの街には、”居場所”があった。




「……”わたしの力”が、人の役に立ってる?」



 ”生前”。

 地球にいた時には、感じたことのなかった不思議な気持ち。




 ただ、生きているのではなく。


 そこで、”暮らしている”のだと。











「あぁ、気持ちいぃ〜」



 ミレイは、ベッドの上から動けないため。

 温かな蒸しタオルで、キララに全身を拭いてもらっていた。



「すまんのぅ、婆さんや。」


「気にするでない、儂らの仲ではないかぁ。」



 ふざけながらも。

 腕や背中と、くまなく清拭していく。



「ふひっ。くっ、くすぐったい。」


「はいはい。あんよも、ちゃんと綺麗にしましょうね〜」



 他人の体を拭くという、少々抵抗がある事でも。

 ”気にせずやってくれる”友だちが居るのは、本当に有り難かく感じた。

 


「結構、汗とかかいてるのに。ほんとにありがとね。」





「――ううん、全然! むしろ”汗好き”だから!」





「……うん?」


 少々、引っかかったが。

 ミレイは気にしないことにした。







「……これはまた、随分と元気になったらしい。」



 ミレイが、体を拭いてもらっていると。

 医務室に新たな人物がやって来る。



 医者のように、白衣を身に纏い。

 左目の眼帯が特徴的なオジサマ、”エドワード”である。



「あがっ、ちょっと! わたし今、裸なんだけど!」



 咄嗟に布団を引き寄せ、ミレイは抗議する。


 いくら幼児体型とは言え、れっきとした20歳の女性なのだから。

 一応、人並みの羞恥心はあった。



「あぁ。それはどうも、すまなかったな。」



 けれども、エドワードは大して気にした様子もなく。

 そのまま、医務室の中へと入ってくる。



「ちょっとー、キララもなんか言ってよ。」


「う、うーん。」



 キララも出来ることなら、ミレイの味方をしてあげたかったが。



「博士とカミーラさんが、ミレイちゃんの治療をしたんだよ? なんというか、その。”裸どころの話じゃない”ような。」



 ”治療の一部始終”を見学していたため。

 キララは、何とも言えない顔をする。



「……そんなぁ。」


 ミレイのライフポイントは減少した。



「そう気にするな。娘とよく風呂に入っていたが、それと”大差なかったぞ”?」



「がっ。」


 効果は抜群だった。





「……それと、一応言っておくが。僕は、”ロリコン”じゃあない。」



「いや、別に。そう思ったことはないけど。」


 突然の非ロリコン宣言に、ミレイは困惑する。



「あ、気にしてたんだ。」


 キララはほんの少し、エドワードに同情した。







 エドワードは、ベッド横の精密機械を操作し。

 ミレイの容態を確認する。



「うぐぐ。」


「むむむ。」



 その、肝心のミレイは。


 今日召喚したばかりの新しいカード、”手錠”を具現化し。

 キララと腕を繋げて遊んでいた。



 それの何が楽しいのか。

 エドワードには、まるで理解が出来なかったが。



「ふっ。」


 その”バカさ加減”は、どうにも憎めなかった。



「あっ。」


 そんな中、ミレイは思い出す。



「そう言えば、まだ”イリスさん”と会ってないんだけど。ここ、アマルガムの中だよね?」


 この船の持ち主に会っていないことを、ふと疑問に思った。



「ん〜。イリスさんなら、ギルドの方に行ってたかも。」


「ああ、”上”に呼ばれたとか言っていたな。」



「ふぇ〜」


 よくわからないが。

 とりあえずは無事そうで、ミレイは安心した。







「体は痛むか? 特に手や足は。」


「いんや、痛みは別に。ちょっと、感覚が鈍い気がするけど。」


「なるほど。」



 概ね、予想通りの返事に。

 エドワードは問題無しと判断する。



「話は聞いてると思うが。君の”右手”は、かなり損傷が激しかった。」


「あぁ、爆発の。……火傷か何か?」




「いや、”まるで原型を留めていなかった”。」




「えっ?」


 衝撃的な事実に、ミレイは言葉を失う。



「とは言え、君は運が良かった。”ジルの妹”、いや、フェイトのおかげで。君はとても良好な状態で保存されていた。”飛び散ったパーツ”も含めてな。」



「……ひぇ。」


 たまらず、顔が真っ青になる。



「だ、大丈夫だよ、ミレイちゃん! みんなが協力して、ミレイちゃんの体を治してくれたから。」



 ガシャガシャと手錠を動かしながら、キララが励ましの言葉を送る。



「ああ。この船に搭載された”テクノロジー”に加え。カミーラ氏の見事な治癒魔術もあった。ほぼ完璧に、元の形に戻せたはずだ。まぁ、多少リハビリは要るだろうが。」



「……い、いえ。とても、ありがたいです。」


 本当に、自分は幸運であったと。

 ミレイはつくづく思った。





「それで、次は”右足”なんだが。」


「あ、そうだ。なんで右足にも包帯が巻かれてるの?」



 右手に関しては、ある程度理解が出来ていたが。

 足の方は本当に謎であった。



「……少々、話は変わるが。ダンジョンで君たちを襲った、”植物型の魔獣”は覚えているか?」


「あぁ、それはもちろん。」


「フェイトの能力によって、ダンジョン内に存在していた個体は、”全て例外なく凍結”。つまりは”全滅”させられた。まぁ、それは良いんだが。」


 言いにくそうに、エドワードは頬を掻く。



「……随分と、”脅威的な生命力”を持っていたらしく。図太いことに、君の右足に”寄生”してたんだ。」



「えー。」


 ミレイは完全に思考を停止した。



「まぁ、心配は無い。検査の途中で気づいたから、すでに除去は完了している。まぁそのせいで、右足の再生治療が必要になったが。」



「なっ、なるほど! つまり、何の問題も無いわけね。」


 除去がすでに済んでいると知り。

 ミレイは心底安心した。







「……あー、実は。君の右足に”寄生してたヤツ”なんだが。まぁ、中々に興味深くてね。隔離しつつ、詳しく研究をしてるんだ。良ければ見てみるか?」



 家のペットを紹介するような感覚で。

 エドワードは、衝撃的な事実を口にする。



「いや。それは、ちょっと。」


「博士、流石にひどいかも。」



 ミレイとキララは、当然のように拒否する。



「いや、それが本当に面白いんだ。既存の植物とはまるで異なるDNA、一部は人間のそれにも近い。おまけに、”凄まじい速度”で進化している。”君の肉片”すらも取り込んでね。」



「えぇ……」


 それには、ミレイもドン引きである。



「とりあえず、暫定で”サフラ”という名をつけたんだが。命名について、なにか意見はあるかい?」



「……いや、知らんがな。」





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