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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
サフラ拒絶領域
33/153

SCAR DRIVE





 モノリスの障壁内部に侵入して、鬱蒼とした森を目の前にしながら。


 ミレイたちは、どうしたものかと悩んでいた。



「まいったな。」


「ですね。」


 通信機が通じない。

 その問題を、ミレイとソルティアは考える。


「向こうと連絡が出来ないと。正直、調査どころじゃないような。」


「ええ。ですがイリスさんも、通信が繋がらないことは気づいているでしょう。」



 ソルティアは、障壁外に待機する戦艦アマルガムを見上げる。



「とりあえずは、ここで待機するべきかと。」


「だな。多分イリスさんも、そのうち降りてくるだろうし。」



 連絡が取れない以上、闇雲に内部に進むべきではない。

 そのためミレイたちは、イリスが船から降りてくるのを待つことにした。


 そしてそれを、マイペースなもう一人にも伝える。



「キララ、分かった?」


 ミレイが声をかけるも。


 キララはその場でしゃがんだまま。

 じーっと、何かを見つめていた。



「キララ?」


 ミレイは不思議に思い。

 キララの見つめる先に目を向ける。



 するとそこには、”白くてモフモフ”とした、小さな毛だるまが存在した。



 ピクピクと動き。

 どこに目があるのかは分からないが。

 とにかく、小動物であることは明白である。



「……何あれ、可愛い。」


 ミレイの瞳は、完全にそのモフモフに奪われていた。

 ここ最近、出会う生き物は。火山のように燃えるゴーレムや、謎だらけの怪人集団。そして、腐敗臭漂う化けダコなど。

 まともな生き物とは遭遇しなかった。



 フェンリルやパンダは、もはや癒やしにはならない。


 それに故に。ミレイは胸に、強い衝撃を受けた。




「可愛いですか? 妙にあざとすぎるような。」


 ソルティアには不評であったが。




「――そうだ、記録しないと!」


 ミレイは鞄から、手のひらサイズの水晶玉を取り出した。

 イリスに支給された、録画用の魔水晶である。



(こんな可愛い生き物が居るなんて。……ここって案外、楽園みたいな場所なのかも。)


 そんな事を思いながら。

 ミレイは、白いモフモフに魔水晶を向ける。


 だがしかし、ミレイには一つ、疑問があった。



「……これって、録画できてるの?」


 手に持った魔水晶。

 ミレイにはずっと、ただの水晶玉にしか見えていない。


 そんな彼女を見て、ソルティアは溜息を吐く。


「魔力を込めないと、魔水晶は操作できませんよ?」


「……なるほど。」



 ソルティアからの助言を受けて。

 ミレイは魔水晶に魔力を込める。



「うぐぐぐ。」


 必死に、魔力を込めるような。

 そんな努力をしてみるも。

 魔水晶は、うんともすんとも言わず。



「……はぁ、はぁ。」


(そう言えば最近、魔法の修行サボってたな。)



 覚えるのが遅ければ、忘れるのは早い。

 それが、ミレイの魔法の才能であった。


 そんな彼女を見かねて、キララがそっと手を差し伸べる。


「ミレイちゃん、ちょっと見せて。」


「うん。」


 ミレイは、手に持った魔水晶をキララに向けて。

 キララはほんの指先で、魔水晶に触れた。


 すると、あれほど無反応だった魔水晶が、淡い輝きを放ち始める。



「はい。これで録画できるよ。」


「……ありがと。」



 魔水晶を起動してもらって。

 ミレイは、もっと修行を頑張ろうと、その胸に誓った。




 起動した魔水晶を、白いモフモフへと向ける。

 原理は不明だが、恐らくはこれで録画ができているのだろう。



 鼻歌交じりに、気楽に録画を行うミレイであったが。


 写されていた白いモフモフが、草むらの中へと入って行ってしまう。



「――あっ、待って待って。」


 録画中のミレイも、それを追いかける。



「ミレイさん。あまり離れないようにしてくださいね。」


「うん、分かってる。そこまでは追っかけないよ。」



 あの小動物を追いかけて、この場所から離れてしまっては。

 それこそ、最も愚かな行動であると言える。


 ミレイにもそれは分かっており。

 草むらの先に見当たらなかったら、録画は諦めるつもりであった。



 だがしかし。

 草むらの先には、予想を遥かに上回るモノが存在した。




 白いモフモフは。その”巨大な存在”の、尻尾の先端についた毛の塊であり。

 いわゆる、”疑似餌”のような役割を果たすのだろう。


 そしてその疑似餌に、ミレイという獲物が引っかかった。



 それは、”巨大な蛇のような魔獣”であった。

 その身体の大きさは、人間の大人をも上回るものであり。


 ミレイとの体格差は、もはや圧倒的である。




「へ?」



――もう何も怖くない。


 そんな言葉を、胸の内で抱いた報いなのだろうか。




「――ちょ、」



 大蛇の魔獣によって。

 ミレイは頭から、丸呑みにされた。





「ミレイちゃん!?」


 その刹那の叫びに、キララとソルティアは反応し。

 すぐさま草むらの中へと向かう。



 けれども、そこにはすでに何者の姿もなく。


 何かが、這ったような痕跡だけが存在した。



 ミレイを襲った魔獣は、凄まじい逃げ足を有しているのか。



 けれども、2人の判断は一瞬であり。



「行きましょう。」


「うん。」



 すぐさま、森の中へと追跡を始めた。






 その直後に。

 高度を下げたアマルガムから、イリスが飛び降りる。


 そして、地面に着地すると。すぐさま障壁の方へと向かった。



「――おい、お前ら!」



 通信機が繋がらないため。

 直接話をするために、イリスは地上へと降りたのだが。


 障壁の向こう側には、すでにミレイ達の姿は存在せず。

 彼女たちに声を届ける手段は、もう残されていなかった。



「ッ、どこに行きやがった。」



 連絡が取れなければ、障壁から出られるタイミングも伝えられない。



 そして何より。

 あの得体の知れない、”黒いドラゴン”の存在も。



 次にいつ突破できるか分からない、鉄壁の障壁を前にして。


 イリスはその怒りから、拳を強く握りしめた。









 森の中を、巨大な蛇の魔獣が這っていく。


 その速さは、巨体からは想像もできないほどに速く。

 車のようなスピードで、森の中を移動していた。



 そして、その体内で。


(……うぐぐ。)


 ミレイは今まさに、食物連鎖というものを実感していた。



 食うだけが生き物ではない。

 食われるのもまた、生き物のあり方なのだと。



 けれども、最も幸いだったのは。

 相手が蛇のような魔獣であり、噛み殺すのではなく、丸呑みという選択肢を取ったこと。


 そしてミレイには。

 丸呑みにされつつも、どうにか出来る手立てがあった。



(――来い。)



 その手に、力を。

 ”聖女殺し”を召喚し。



 その剥き出しの刃が。

 大蛇の身体を、内側から引き裂いた。



――ギギッ。



 身体に穴が開いた痛みから、大蛇がその動きを止める。


 だが、ミレイの行動はそれに留まらず。


 聖女殺しに念を込めると。

 黒い刃が形成され。



 大蛇の腹を、内側から掻っ捌いた。



 腹を盛大に裂かれて。鮮血が周囲に飛び散り。

 流石にそれは、致命傷だったのだろう。



 大蛇はその場に横たわり、ピクピクと痙攣するだけになった。



 ぐいっと、手を突き出して。

 続けて身体も。


 ミレイは必死に、大蛇の腹の中から這い出た。



「……はぁ、はぁ。」


 何とか、消化されずに済んだものの。


 ミレイの身体は、得体の知れない体液まみれになっていた。


 流石は魔獣と言うべきか。

 紫色のゼリーのような、スライムのような体液である。



「いぃぃ。」


 形容し難い謎の体液に、ミレイは気絶寸前だった。



「最悪だ。」


 とは言え、九死に一生を得たのである。

 ミレイはほっと胸をなでおろす。


 だがしかし、それもつかの間。



「……へ?」


 気づけば、周囲には。

 ミレイを飲み込んだのと、同種の魔獣が存在していた。


 その数は10匹近く。

 ミレイは完全に、彼らによって囲まれていた。



「は。」


 だとしても、臨戦態勢に入っているのは、こちらも同じであり。



「――”ライノ”!」


 困った時には最大火力。

 その考えで。



 ミレイはその右手に、真っ赤なガントレットを。

 ”RYNO”を召喚した。



 左手には”聖女殺し”、右手には”RYNO”と。

 考えうる、最上級装備だが。



「ちょっと、どうしよう。囲まれちゃったんだけど。」


 ミレイは、ライノに助けを求める。



『ヘイヘイッ!! 落ち着けよマスター。』


 相も変わらず、ライノのテンションは高い。


『右手には”俺様”、左手には”クソみてぇな鎌”を持ってるだろ?』


「そうだけど。」


 いくら、両手に4つ星だとしても。

 ミレイの不安は拭えない。



『落ち着いて周りを見てみろよ。敵さん、完全に”ビビってるぜ”?』


「えっ?」



 周囲の魔獣達に目を向けると。

 彼らは、聖女殺しとRYNOの力を感じ取っているのか。

 その力に酷く警戒し、安易に襲いかかって来る様子はなかった。



「確かに、ビビってるような。」


 ようやく、ミレイは現状を理解する。



「……は、ははっ。確かにコイツら、捕獲レベル低そうだし。」



『おうよ! 格がちげぇってことだな!!』


 ミレイとライノが、そうやって自信ありげにしていると。




 周囲にいた蛇の魔獣達が、一斉に”何か”に気づき。

 一目散に、その場から退散していく。


 その様子に、ミレイはますます機嫌を良くした。




「ふっ、事なきを得たな。」


 戦わずして勝つ。

 そんな、強者の余裕を醸し出すも。



『――いいや、そうとも限らねぇぜ。』


 ライノは。

 お気楽な主と違って、状況を冷静に判断していた。



『奴ら、お前から逃げたわけじゃ無さそうだ。』


「へ?」



 ライノの予想通り。

 何かが、草むらをかき分ける音が聞こえて。



 嫌な予感がしつつ、ミレイはゆっくりと振り向くと。




 そこには、”巨大な2足歩行の魔獣”が立っていた。


 ゴリラか、猿か。そのどちらとも言えないフォルムに。

 あらゆる暴力を詰め込んだような、ぶっとい筋肉質な体付き。


 その表情は、”鬼のような形相”をしており。


 どう考えても、友好的とは思えなかった。




「……なんか、めっちゃ強そうなんだけど。」


 その圧倒的なビジュアルに、ミレイは身体の震えが止まらない。



『オイ! そんなにビビんじゃねぇ!』


 ライノは、そんなミレイを励ます。



『いいか? 冷静に対処すれば、無傷で倒せる相手だ。お前の武器を思い出せ。』



(……そうだ。)


 敵は確かに、恐ろしい魔獣であろうが。

 その手に持った武器は、それを遥かに凌駕する力を秘めている。

 それを適切に使うことが出来れば、勝つのは難しくない。



『とは言えだ。基本的にお前は、そっちの”大鎌”を使え。威力は断然、俺様の方が上だが、どのみちお前じゃ”当てられねぇ”。俺様を使うのは、敵に”接近を許した時だけ”だ。』



「……うん、分かった。」


 ライノのアドバイスを、しっかりと聞いて。


 ガントレットはそのままに。

 ミレイは、両手で聖女殺しを構える。



「――くらえ!」


 思いっきり振りかぶると。


 聖女殺しから、漆黒の斬撃が解き放たれる。



 凄まじい勢いのそれを、魔獣は咄嗟に避けようとするも。

 完全にはかわしきれず。



 いとも容易く、魔獣の左腕を切断した。

 その背後にあった、木々もろともに。



 左腕を奪われて。


――ギャアァァァ。



 痛みか、怒りからか。

 魔獣は、凄まじいほどの怒号を上げた。



 空気が揺れるほどの大音量で。


「うっ。」


 ミレイは咄嗟に、耳をふさいでしまう。



 その隙を、見逃さないとばかりに。


 怒り狂った魔獣が。

 残った右腕を振りかぶり、ミレイのもとへ迫る。



 だがしかし。


「――こっちだってっ!」




 迎え撃つように。

 ミレイは、ガントレットを突き出すと。


 そこに魔力が凝縮され。

 ドラゴンの形をしたオーラが形成される。



 そして、凝縮された魔力が、爆炎へと姿を変え。

 砲撃のように、ガントレットから放たれた。



 ドラゴンの形をした爆炎は、迫りくる魔獣に直撃し。



 その圧倒的な火力を持ってして。

 片腕の魔獣を、一瞬で黒焦げにしてしまった。




「……やった。」


 額に汗を滲ませつつ。

 ミレイは勝利を確信し、ゆっくりと息を整える。


 周囲には、もう敵は存在しない。



『オイオイオイッ!! お前、前に教えた”技名”を、もう忘れたのか!?』


 ライノが激しく怒鳴り散らす。


『”覇竜滅来砲はりゅうめつらいほう”だ! ちゃんと言えよ、お前!!』


 彼には、彼なりのこだわりがあるようだった。



「……うるさい。」


 だが、ミレイには関係なく。



「別に、言わなくても撃てるんだろ?」


『そりゃそうだがよ!』


「そんなハズい名前、何度も言いたくないって。」


『何だとお前! この俺様のネーミングをバカにしてんのか!?』



「……はぁ。」


 うるさくて敵わないと。

 ミレイは、RYNOの実体化を解いた。



「早く、2人と合流しないと。」



 キララとソルティア。

 2人の心配をするミレイであったが。



 木の影から、彼女を見つめる瞳があり。


 脅威はまだ、過ぎ去ってはいなかった。









 目指す方角の先で、小規模な爆発が発生する。



「今の爆発は。」


「うん、ミレイちゃんだと思う。」



 森を疾走ながら。

 キララとソルティアは、ミレイの居場所を突き止める。



「急がないと。」


 ミレイと合流するために。

 先を急ぐ2人だったが。




 そんな彼女たちの、行く手を阻むように。

 大地を揺るがすほどの、”巨大な魔獣”が立ち塞がる。




 力強い腕に、強靭な爪。

 既存の生物とはかけ離れた、その異形の四足歩行の魔獣は。

 まさに、怪獣とも呼ぶべき存在だった。



 空気がピリつき。

 その存在感は、あのフェンリルにも匹敵して見える。




「……厄介な。」


 刀を具現化し、ソルティアは臨戦態勢に入る。


 だが、それよりも速く。

 キララは弓を構えており。


 即座に魔法の矢を放った。



 強烈な冷気を帯びた矢が命中し、魔獣の前足が凍りつく。



 だがしかし、なんてことがないように。

 すぐに氷は砕かれてしまう。



「――お願い、行って!」


 キララは、全力でこの魔獣を足止めするつもりであり。



 そしてソルティアも、判断に時間は使わない。



「了解です。」


 この魔獣はキララに任せて。

 ソルティアは先を目指す。



 だが、ただ素通りするのも癪なため。



 魔獣が振り回した前足を、スライディングでかわし。

 その股下を潜り抜けながら。



 ついでに”渾身の斬撃”を、その胴体へと叩き込んだ。



 鮮血が舞い。

 魔獣はソルティアに怒りを向けるものの。


 キララによる、強烈な魔法の矢を浴びせられ。

 即座に、意識をそちらへ戻す。




(彼女なら、大丈夫でしょう。)


 振り返ること無く。

 ソルティアは先へと進んだ。











「ん。」


 巨大な猿のような魔獣を倒して。

 どうやって2人と合流しようかと、考えるミレイであったが。



 木々の合間から、何かが勢いよく射出され。



「――ッ、」


 それが、ミレイの左腕に命中し。


 その強烈な痛みと、衝撃によって。

 思わず、聖女殺しを落としてしまう。



 ミレイの左腕に命中したのは、手のひら大の石つぶてであり。



「……ぐっ。」


 腕の骨が折れたのか。

 そのあまりの痛みに、ミレイは苦悶の声を上げる。



 そして。

 そんな彼女に対して、石を投げつけた存在が、木の陰から現れる。


 それは、先ほどミレイが倒した個体と、同種の猿型の魔獣だった。


 だが、今度は2匹同時であり。

 おまけに初撃で、ミレイの無力化を行っている。



 つまり彼らは。

 その”知能”を持って、ミレイを確実に”狩ろう”としていた。



 ミレイは。

 予想外の激痛に、完全に頭が働かなくなっており。


 そんな彼女に対し。

 2匹の魔獣は、一斉に襲いかかる。



 聖女殺しは足元で、RYNOも消してしまっている。

 おまけに、痛みに悶えるミレイに、抵抗する術は無く。


 魔獣の剛腕が、彼女に迫る。


 だが、そのすんでの所で。




――”鋭い刃の一閃”が、ミレイの眼前に出現し。


 迫りくる2匹の魔獣を、真っ二つに両断した。




 その刃の持ち主、ソルティアは。

 変わらずクールに、ミレイに目を向ける。



「――ご無事ですか?」


 そう問いかけられて。


 けれどもミレイは、左腕の痛みが激しく。


「……う、うん。」


 額からは脂汗が流れ。なおかつ、全身がヘビ型魔獣の体液まみれなため。

 まともに返事をする余裕もなかった。



「すぐに、手当てをしてあげたいですが。」


 ソルティアは、周囲に目を向ける。


「どうやら、簡単には行かなさそうです。」



 1匹目が叫んだ時。

 あれが、仲間を呼ぶ合図だったのだろう。



 ぞろぞろと、仲間の魔獣達がやって来る。

 全部で、10匹ほどであろうか。



 ミレイとソルティアは、完全に包囲されていた。




「……ふぅ。」


 冷静に、ソルティアは考える。


 4~5匹なら、何の問題もない。たとえ10匹いたとしても、対等に立ち回れる自信はある。

 だが、明らかに負傷しているミレイをかばいながら、容易に切り抜けられるとは思えなかった。



 だが、しかし。



 ”わたしが貴女を守ります”。



 その言葉を言った手前。

 刀を握る拳には、不思議と力が宿るようだった。



「どうかご安心を。チンケな猿風情、わたしの相手ではありませんから。」



 決死の覚悟、などではなく。

 自分にならやれるはずだと、そう信じて。



 ソルティアは、刀を構える。




 そんな、一触即発のさなか。





――”SCAR DRIVE(スカードライブ)”、起動


 どこからか、そんな声が聞こえて。




 その直後。

 1匹の魔獣が、妙な奇声を上げた。


 その魔獣に目を向けてみると。



 真っ黒なエネルギーで形成された、”ビームソード”のようなものに。

 後ろから貫かれていた。



 黒のビームソードは、魔獣の生命をも穿ち。

 地面へと斬り捨てる。




 すると、そこには。


 機械的な黒いアーマー。

 いわゆる”パワードスーツ”を身に纏った、謎の男が立っており。


 スーツの右腕部からは、黒いビームソードが展開されていた。




 その、予想外の乱入者に。

 ソルティアと、そしてミレイも。驚きを隠せない。



 彼女たちの驚きと。

 魔獣達の動揺を尻目に。



 黒いアーマーの男は、ミレイたちの方へと歩み始める。




「――この怪物たちは、基本的に群れで行動する。まともに戦うべき相手ではない。」



 魔獣を殺した。という意味では、味方であると判断できるものの。


 余りにも馴染みのない”鎧”に、ソルティアは警戒心を緩めない。



「とはいえ、こうなったら仕方がないか。」



 アーマーの男は。

 ミレイを庇おうとする、ソルティアの前に立つと。




 ”その彼女をも守るように”、魔獣たちと対峙する。




「絶対に、その少女の傍を離れるな。」


 ソルティアに、そう忠告すると。




「――怪物たちは、わたしが倒す。」




 ビームソードを振りかざし。

 黒いアーマーの男は、魔獣たちに立ち向かっていった。





 ソルティアの後ろに隠れながら。

 ミレイは、その男の戦いを見つめる。




 頑丈で素早い、漆黒のパワードスーツ。

 強靭な拳と、鋭い切れ味のビームソード。



 そして、果敢に敵に立ち向かう、迷いのない後ろ姿。




 彼が何者なのかは知らない。

 どの世界の、どんな立場の存在なのかも。



 けれども、ミレイの瞳には。



 まるで映画に出てくるような、

 ”スーパーヒーロー”の姿が映っていた。





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