表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
花の都の冒険者
21/153

抗う者たち

誤字報告等、ありがとうございます。





「キエェェェッ!」



 おぞましい奇声を上げながら。

 大量の怪人たちが、街の人々に襲いかかる。



 その大軍の姿は、人々にとっては恐怖の対象にしか映らず。



 皆、悲鳴を上げながら。

 逃れるために、必死に駆けていく。



 だが、怪人たちの身体能力は、常人のそれを遥かに上回っており。


 無情にも、その魔の手が住民たちに届かんとし。




 その寸前で、怪人は地面に押し付けられ。

 そのまま圧死する。




 強大なる魔獣。

 フェンリルの剛腕によって、それは成され。


「……うっ。」


 その背中には、主人であるミレイが乗っていた。



 怪人に立ち向かうのは、彼女だけではない。



 鉄を切るような、甲高い音が鳴り響き。


 空気が唸ると。



 人為的に生み出された”風の刃”によって。

 怪人たちの身体が、ズタズタに引き裂かれる。



「ふぅ。」


 指先1つで、パーシヴァルはそのような魔法を連発し。



 視界に入った怪人たちは、ほんの一瞬の内に殲滅された。




「……この化け物たち。どうやら、この世界の存在ではないようですね。」


「わたしの世界でも、ないと思います。」



 人々を守りながら。

 ミレイとパーシヴァルは敵の存在を認識する。



「あの雷で、異界の門が開いたって事ですか?」


「いえ。それはまた、別の問題でしょう。」



 そうやって話している内に。

 またぞろ、新しい怪人たちがやって来る。



「兎にも角にも、この数は非常に不味いですね。」


「……無限湧き、してるみたい。」



 魔法、カードの力を使って、怪人たちを迎え撃つ。


 人間や動物、魔獣とも違い。

 この怪人たちは、”まともな生物”ではないのだろう。



 ダメージを受け、活動を停止した個体は、”真っ黒な液体”へと姿を変えてしまう。


 ドロドロと、得体の知れない物質へと。



「それに、一体一体が地味に強いですね。この街の冒険者や衛兵では、とても対抗できないでしょう。」


 花の都は、魔獣の脅威とは無縁の土地である。

 それ故に、不測の事態に対する戦力が圧倒的に不足していた。


「これ以上敵を増やさないためにも、急いで門へと向かいます。」


「はい!」



 邪魔な怪人たちを蹴散らして。

 ミレイとパーシヴァルは街の中心部へと向かっていく。


 だが、そんな彼女たちの行く手を阻むように。



 空から、1体の怪人が飛来する。



 最初にこの世界に降り立った、3体の怪人の一角。


 人語を解す、痩せ型の怪人である。



「――よぉ。お前らってさ、魔法使いってやつ?」



 明らかに、他の個体とは違う雰囲気に。

 ミレイたちは警戒心を高める。



「てか、どう考えても魔法使いだよね。ババアと、狼に乗ったガキ。」



「こいつも、異世界の化け物なの?」


「そう、でしょうね。」



 ミレイからしてみれば。

 ちょっと、変わった個体が出てきた。程度の認識だったが。



(……”次元が違う”。)


 パーシヴァルは、目の前の存在の持つ”力”に、思わず冷や汗を流した。



「何者ですか? あなた達は。」



「俺? 俺は”ダース”。見ての通り、”怪人”だよ。」


 痩せ型の怪人は、自らをダースと名乗る。



「怪人というのは、そういう人種、ということですか?」


「んー? なんて言えば良いんだろ。”黒の帝国”に生み出された、兵士みたいな感じかなぁ。」



「……その黒の帝国とやらが。何を目的として、このような蛮行を?」


「えっ。いや、蛮行とか言われてもさぁ。」



 ダースは、面倒くさそうに頬を掻く。


「こんなに人間が居るんだから、”楽しまなきゃ損”だろ。」



 彼ら怪人にとって、人間は単なる”獲物”に過ぎず。

 今こうして会話が成立しているのも、彼の気まぐれ故だった。



(対話は無理、か。)


 パーシヴァルは明確に、目の前の怪人を敵と認識する。



「ミレイさん、この怪人はわたしが仕留めますので。貴女は左から回って、先に広場を目指してください。」


「いや、でも。2人で一気に倒せば。」


 ミレイは共闘を望むも。



 パーシヴァルは、それを受け入れる気はなく。

 そっと、フェンリルの体を撫でた。



「……彼女を、頼みます。」


 賢きその魔獣は、意図を読み取ったのだろう。



 小さく吠えると。


 ミレイを乗せたまま、回り道の方向へと走っていく。



「――ちょっ、待って。」


 自力で、背中から下りられず。

 ミレイの声が、どんどん遠ざかっていき。



 完全に、一対一の構図となる。



「へぇ。1人で俺と戦うんだ。」


「ええ、もちろんです。」



 その身に魔力を纏い。


「今の彼女では、”足手まとい”になるだけですから。」


 魔女、パーシヴァルが、本気の戦闘態勢へと移行する。



「この街だと、お前が一番強いわけ?」


「ええ。――”貴方も”、そうでしょう?」



 それを肯定するように。


 怪人、ダースは微笑み。



 異なる世界の強者が、激突する。









 怪人たちを蹴散らしながら。

 フェンリルが混乱する街中を駆けていく。


(……師匠。)


 思うことは多々あるものの。

 今は考えるだけ無駄と判断し、ミレイは前を向いていた。



 街を疾走する中。


「――なっ。」


 ”見慣れぬ存在”と遭遇し、フェンリルはその足を止める。



 そこに居たのは、建物ほどの大きさはあるであろう、”単眼の巨人”。


 その巨人が、怪人たちと交戦していた。



 その足元を見てみると。

 巨人の近くには、剣を振るって怪人と戦う女性がおり。


 その顔には、見覚えがあった。



「あれは、”アッカちゃん”?」


 ギルドの受付嬢、ソニーのアビリティカードにして。

 姉のパン屋を手伝っている、あの”赤き瞳の剣士”である。



「フェンリル、行こう!」


 身をかがめてもらい、フェンリルの背中から下りると。



 ミレイはザザの斧を召喚し、怪人たちへと向かっていく。



 巨人とアッカちゃんは、怪人たちの大軍に苦戦していた。


 だが、そこにフェンリルという規格外の魔獣が参戦し、流れが変わる。



 ミレイも、ザザの斧とフォトンバリアを展開し、怪人たちと応戦。



 あっという間に、その場にいた怪人たちを全滅させた。




「ふぅ。」


 ミレイが、一息ついていると。


「――ミレイさん!」


 見知った声が、彼女に近づいてくる。



 アッカちゃんの召喚者であるソニーと。

 その姉、マロアの2人である。



「ご無事ですか?」


「うん、一応ね。」



 ソニーはいつも通りの様子で。

 姉のマロアも、無言ながら軽く会釈をしてくる。


 知人の安否を確認できて。

 ミレイは少々ホッとした。



「それで、この巨人は?」



 巨人は、”怪人のみ”を敵と認識しているのだろう。


 ミレイはおろか、フェンリルにも反応を示さない。



「おそらく、”カミーラ”さんのアビリティカードでしょう。街を守るように、指示を受けてるんだと思います。」



「なるほど。」


 カミーラのカードを見たことはなかったが。

 確かにこの巨体なら、”余程の有事”でもなければ使うことはないだろう。



「……単独で動けるカードなら、そうした方が効果的か。」



 ミレイは、少々考え。

 その手に3枚のカードを出現させると。



 それらを一斉に具現化させる。



 大盾を装備したパンダファイターと。

 今まで使い道のなかった、”ドリロイド”を。



 ドリロイドに関しては、戦闘面で役に立つかは不明だが。


 とりあえず、頭数が欲しかった。



「こ、これは、カードの力ですか?」


 複数枚のアビリティカードという、珍しい光景に。

 ソニーは驚きをあらわにする。


 ミレイは、気にすることなく。



「――みんなを守って、全力で。」



 たった一言の命令を下し。



「ワン!」


 パンダは吠え。

 ドリロイドは、腕のドリルを回し。


 主人の命令を理解した。




「そう言えば、キララは見なかった?」


 ミレイがソニー達に尋ねる。



「いいえ、見てません。」


「わたしもです。」


 2人は首を横に振るも。


 ソニーには、1つ心当たりがあった。


「ですが、”強い魔力の持ち主”が、広場の方へ集まってます。もしかしたら、キララさんもその中に居るのかも。」


「……そっか。」



 それは、あまり望ましくない話だが。

 どのみち、広場には向かう必要があるため。

 ミレイは悩むのを止める。



「じゃあ、わたしはそっちに向かうから、2人も気をつけて。」



 先を急ぐため。

 ミレイは再び、フェンリルの背中に乗る。



 すると、深刻そうな顔で、ソニーが近づく。


「……行ったら、”死んじゃいますよ”?」



 それは、彼女の本心からの言葉だった。



「パーシヴァルさんが戦っている相手も、”とびっきり危険”ですけど。広場にいる方も、多分同じくらいです。」


 魔力に敏感なソニーだからこそ。




 この街の、”詰み具合”に気づいていた。




 だがしかし。


「それでも、行かないと。」


 ミレイは迷わなかった。


「戦わないと、街は守れないから。」



 フェンリルが動き出す。



 この惨状を引き起こした元凶。

 敵の親玉が居るであろう場所へと向かって。



 どれだけ敵が強大でも。

 ミレイには、逃げるという選択肢は無かった。



「――キララ、無事でいて。」



 ただそれだけを願い。

 最も苛烈な、死地へと向かっていく。











 強力な魔力と、破壊衝動を凝縮して。


 ”魔法の矢”として発射する。



 ブラスターゴーレムにすら、ダメージを与えたその一撃だが。



 相手の実力は、その更に上であり。


「フッ。」


 角の怪人、ザイードは矢を片手で払いのける。



 もう一方の怪人。

 異界の門を守るクォークにも矢を放つも。


 エネルギーバリアのようなものに弾かれてしまう。


「グゲゲゲ。」




 会得した魔法でも、傷一つ付けられない。

 その無情なる現実に、キララは言葉を失う。


(……どっちにも、何の効果も無いなんて)



 感じられる魔力から、敵が自分よりも格上なのは分かっていた。


 けれども、技と立ち回り次第では、十分戦えるはず。

 そう、キララは思っていたのだが。



「面白い手品だな。魔法か何かか?」


 現実は、戦いにすらなっていなかった。



「クォーク。お前の手品も、お返しに見せてやれ。」



「アガガ!」


 クォークの身体が、膨大な”雷の力”を帯びる。


 激しく、強烈に。



 クォークが、その指先をキララの方へと向けると。

 力がその一点に集中し。



「ギガ。」


 雷撃が、解き放たれる。




「――やばっ!」


 咄嗟の攻撃に、キララは思わず足を止めてしまう。



(防御はまだ、習ってない!)


 少しでも衝撃を減らそうと。


 キララは身をかがめ。



 その身体に、当たる瞬間。



 他の者によって展開された、魔力の障壁によって。


 雷撃が完全に防がれる。




「――やれやれ。」


 広げられた、その純白の翼には見覚えがあった。



「敵の力量を見誤るなと、師匠に教わらなかったか?」


 キララを、その背に守るように。



 カミーラが怪人たちに立ち塞がる。




「カミーラさん!」



 新手の登場に。

 怪人たちの表情は愉快に歪む。



「天使も居るのか。退屈しないな、この世界は。」



 そんな、怪人たちの様子をうかがいながら。

 カミーラは、現状を冷静に考える。


(……向こうに倒れているのは、コッコロか。何とか助けたいが。そんな隙は、無さそうだな。)


 カミーラとしても、この怪人たちに勝てるとは思っておらず。


 少しでも被害を減らせるよう、その頭を働かせる。




「フフフ。」


 怪人たちは、積極的に手を出そうとはせず。


 目の前に現れた天使が、どんな攻撃をしてくるのかを楽しみに待っていた。



 彼らにとって、これは単なる遊びに過ぎず。

 ”殺意”など、微塵も抱いていないのだから。




 だが、それは向こう側の話であり。

 こちら側の”剣”には、殺意が宿っていた。




 気配を感じさせずに。


 3人目の戦士。


 刀を構えた”ソルティア”が、ザイードに背後から襲いかかる。



「――ぬっ。」


 だが、ザイードは人間離れした直感で反応し。


 その左腕で、ソルティアの刀を受け止めた。



 どれほどの力が、刀に宿っていたのか。

 ”空気が軋むような感覚”が、周囲にまで広がる。



「ほぅ。サムライガールか。」


 刀を受け止めながら。

 ザイードの表情には何の焦りもない。



 だが、ソルティアの本気も、ここからである。



「――フッ。」


 凄まじい速さで、再び刀を振るう。


 普段の彼女からは、想像もできないほどに。



 熾烈に、美しく。

 怒涛の連撃を叩き込む。



 刹那の奇襲を見て。


「ちっ、今しかないか。」


 カミーラは咄嗟に翼をはためかせ、ギルドマスターの救助へ向かう。



 この機に乗じて。

 キララも魔法で援護をしようとするも。



「うっ。」


 その目で捉えられないほど、ソルティアの動きは速すぎて。

 キララは、迂闊に手を出すことが出来なかった。



 ソルティアの戦闘能力は、ザイードにとっても予想外のものであり。



 ほんの僅かながらも、肌に傷が入る。



 だが。それでも決して、有効打とはなり得ず。


「フッ。」


 刀を弾かれた拍子に、ソルティアの懐がガラ空きになり。



 そこへ、ギルドマスターを一撃で沈めた、ザイードの”拳”が叩き込まれる。



「――ぐっ。」


 重すぎる一撃を受け。

 ソルティアは激しく吹き飛ばされる。



「ソルティアさん!」


 剣の腕は確かであったが。

 キララからしてみれば、ソルティアは華奢な受付嬢でしかなく。

 その一撃に、最悪を覚悟する。



 だが、そんなキララの予想とは裏腹に。



 ソルティアは空中で体勢を整え。

 華麗な着地を決めた。



「――ふぅ。」


 僅かばかり吐血するも。

 ソルティアの瞳は、まだ死んでいなかった。




「へっ、平気ですか!?」


 側へと近づき。

 キララがその身を案じる。



「ええ、まぁ。”それなり”に鍛えているので。」



 拳を受けた腹部は、衝撃で服が弾け飛んでおり。

 鍛え上げられた、”逞しい腹筋”が垣間見える。



「うわっ、すご。」


 あまりのギャップに、思わずキララは呟いた。



 その肉体をあらわにしても。

 ソルティアはいつも通り、無表情のまま。



「……強さとはすなわち、”筋肉”ですから。」


「……なるほど。」




 そうやって2人が話していると。

 カミーラも、その場に戻ってくる。


 倒れたギルドマスターは、物陰で怯えるアルトリウスの側へと置いてきた。



「お前の筋肉は確かに凄いが。だからといって、それで勝てるような相手でも無いだろう?」


「ですね。向こうも、かなりの筋肉ですし。」



 ほんの僅かな間、刃を交わして。

 ソルティアは冷静に、敵との実力差を認識していた。



「でも、逃げるのも無理ですよねぇ。」


 キララは若干後ろ向きに考える。



「そうだな。倒れたコッコロと、”領主のバカ息子”。両方を抱えて逃げられるほど、ぬるい相手じゃないだろう。」




 今、この瞬間にも。

 異界の門からは、無数の怪人たちがやって来ている。


 ザイードの命令のおかげか。

 キララ達に襲いかかることはないものの。


 いつまでも、放っておいていい問題でもない。




「3人で手を合わせて、勝てる見込みはありますか?」


 ソルティアはまだ、戦意を失っていなかった。


「どうかな。こっちの作戦会議を、”悠長に眺めている”のを察するに。向こうはてんで、本気じゃないだろう。」



 キララ達の作戦会議を。

 ザイードは腕を組み、余裕そうな表情で見つめていた。



「せめて、どっちか単体なら、まだ希望はあったが。」


 目を背けたくなる現実に。

 カミーラは溜息を吐く。




「――あれは両方とも、人の手に余る。”Sランク超えの化け物”だ。」




 遠い世界からやって来た、”異なる摂理の生命体”。

 その実力を、こちらの世界で考えれば。


 最強のSランク。

 その水準すらも、超えていた。




「……やっぱり、そういう次元の相手なんですね。」


 なんとなく、予想はしていたものの。

 希望を砕く言葉に、キララは気落ちする。


 同様に、ソルティアの表情も硬かった。




「まぁ、それでも希望が無いわけじゃない。パーシヴァルが来るまで時間を稼げれば、”こっちの勝ち”だ。」


 カミーラは、友の到着に一縷の望みを託す。


「わたしの知る限り。アイツより強い奴は、この世に存在しない。」



 それこそが、最後の希望。









 光が、世界に満ちるような。

 凄まじいエネルギーが解き放たれる。



 それを生み出すのは、”ダース”という名の1体の怪人。



 体中の炉心を稼働させ。

 凝縮されたエネルギーを、純粋な破壊光線として放射する。


 それが、彼の戦い方であった。



 角度が悪ければ、”街を両断しかねない”、その一撃を。



「――くっ。」


 魔女パーシヴァルが受け止める。




 衝撃を抑え込み。


 エネルギーを中和し。


 ただ、ひたすらに耐える。




 怪人の生み出すエネルギーに、限界は無いのか。

 放射され続けるエネルギーは、一向に収まらず。



(わたしの魔力で、相殺し切れないとは。)


 抑えきれない力の余波で、周囲の建物が崩壊していく。




 永遠に続くかと思われた、破壊光線の放射であったが。


 ダースの体の発光が止むと。

 それと同時に、光線の放射も止まる。



 パーシヴァルは、鋭い視線で敵を睨むも。


「楽しいなぁ。これで死なない奴なんて、お前が初めてだよ。」



 ダースは非常に愉快そうに笑っていた。

 力を放出できることが、快感であるかのように。



「結構やるじゃん。」


「……えぇ、そちらこそ。」



 考え方、価値観こそ違うものの。

 2人は互いの実力を認め合う。



(とは言え、やりにくいですね。)


 パーシヴァルは、確かな焦りを覚えていた。



(こっちも、”本気”を出さないと勝てませんし。出したら出したで、街の半分が吹き飛びかねない。)




 守りながら戦う。


 実のところ、それが彼女の”最も苦手”とする事だった。



 故に、パーシヴァルは彼に提案を持ちかける。


「場所を変えませんか?」


「場所?」



「ええ、ここでは全力を出せないので。その方が、”貴方も楽しめる”のではないですか?」



 彼を、街の外へ誘い出すために。

 だが、それはダースにとっても、都合の良い事だった。




「そうだな、俺もここじゃやりづらい。街を壊しすぎたら、後で”上に”怒られるし。」




(上に怒られる?)


 その言葉に、嫌な不安を感じつつも。



「……付いてきてください。」


 敵を確実に倒すため、パーシヴァルは街の外へと向かう。




 魔法で、風と一つになり。

 空を自在に移動する。


 ダースも、身体を発光させながら飛行を行い。

 彼女の後ろをついていく。




(他の個体も無視できませんが。今は、こいつをどうにかしなければ。)


 拭い去れない不安が、パーシヴァルの心をざわつかせる。



「――持ちこたえてください、皆さん。」


 最強の魔女は、未だ救助には訪れず。






 キララたち。

 そして、ミレイは。


 この日、”絶望”を知る事になる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ