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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
花の都の冒険者
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初めての魔法講座




 湖の上を優雅に舞う、一匹の翼持つ魔獣。


 ワイバーンと呼ばれるそれは、魔獣の中でも比較的高位に数えられる存在であり。

 豊富な水棲魔獣の生息するこの湖は、ワイバーンにとっては格好の餌場であった。


 本来、ワイバーンなどの強力な魔獣はこの地方には生息しておらず。

 それ故に、天敵たりうる脅威も有り得ない。


 優雅に、そして無防備に。

 湖の上を飛翔するその姿は、まるで王者のような風格を纏っていた。



 だが、そんな湖の主に、挑もうとする者が1人。



「おーい! かかってこいやー!」



 腹の底から声を出して。


 小さな冒険者。

 ミレイは、ワイバーンを挑発する。



 遠い視線の先、湖の畔に現れた小さな人間に。


 何の意図、どういった作戦があるのかなど。

 そんな事を、魔獣たるワイバーンは考えない。


 ただ、いつもとは違う餌がやって来たのだと思い。

 ワイバーンは、ミレイへと向けて飛翔する。



 その巨体でありながら、通常では考えられないような速度で空を飛ぶ。


 それが魔獣、それがこの世界の捕食者であり。



 迫りくるプレッシャーに、ミレイは体をこわばらせる。


 だがこの恐怖、ピンチこそ。

 彼女の求めるものだった。


 目の前の脅威に立ち向かうべく。

 ミレイは、黒のカードをその手でかざし。



 今日、この日の召喚ガチャを行う。



 あの時を再現するように。

 奇跡を呼び出すように。



 だが、光の輪が発生し。

 その中から誕生した、新たなるカードをその手に取って。



「――なっ!?」



 ミレイは、戦慄した。



 新しいカードのランクは、星1つ。

 その名も、”ワクワク花火セット”である。



 子供が買ってもらえたら、きっと嬉しい商品。

 だが、今この状況で、出てきて嬉しいアイテムではなかった。


 その衝撃で、ミレイは完全に停止してしまい。



 それでもお構いなしに、ワイバーンは彼女の元へと迫っていく。


 その命を喰らうため、巨大な口を開き。



――刹那。鋭い矢によって、右目を狙撃され。


 ワイバーンはたまらなく、その場で動きを止めた。



 矢を放った人物。

 キララは、すでに次の攻撃に移っており。


 連続して矢が放たれる。


 それらは、全て緻密に計算された軌道で進み。


 羽根の根本、胸、頭部付近など。

 どれも致命的な箇所へとダメージを与えていく。



 その無慈悲なまでの射撃に。

 ワイバーンはまともに飛ぶことすらままならなくなり。


 ゆっくりと、湖の畔へと不時着する。



「――ミレイちゃん!」


 その呼び声に応えるように。


 ミレイはカードの力を呼び出し。



 その手に、巨大な斧、”ザザの斧”を出現させる。



 うめき声を上げるワイバーンを、その目で捉え。

 引導を渡すべく、小さな体で、大きな斧を振りかざす。


 だが、目の前で苦しむのは、敵とは言え、紛れもない”命”であり。



「――くっ。」



 ほんの一瞬、罪悪感に苛まれるも。


 その斧を振り下ろし。

 ミレイは、初めての魔獣討伐を果たした。







 魔獣の血液で、ベットリと濡れた斧。

 その実体化を解いたとしても。

 ミレイの身体、服には、多量の返り血が付着したまま。


 けれども、そんな所に意識は行かず。

 その視線は、自分が殺したワイバーンに向けられていた。


 あれほどまでに、”魔獣討伐”という言葉に心を惹かれていたものの。

 結局それは、まだゲームのような感覚が抜けていなかっただけ。



 蓋を開けてみれば。

 それは単なる、”命を奪う”という行為。



 ミレイが、ワイバーンの側から離れられずにいると。


 戦いを見学していたパーシヴァルが、彼女の側にやって来る。


 パーシヴァルが、ミレイに向けて手をかざすと。

 ミレイの全身が、微かな光に包まれて。


 その光が収まると、全身に付着していた血液が、跡形もなく消えて無くなった。


 まるで、”証拠”を消し去ったかのように。



「多少、臭いは残るので。後で洗濯はしてくださいね。」


「……はい。」



 どうせなら、罪悪感も消してくれれば良いのに。

 そう、思ってしまうも。

 それこそが無粋であるとして、ミレイは考えを止めた。


 あからさまに、落ち込んでいるミレイの様子を見て。

 パーシヴァルは、人生の先輩として微笑みを浮かべる。



「ワイバーンの肉は、確か食用にも使えるはずです。もしよろしければ、後で食べましょうか?」


 そう、提案されて。



「……お願いします。」



 少しでも、胸の痛みが治まるように。

 ミレイは敬意を払って、”死を食べる”ことを決めた。









「ごちそうさまでした。」


 自分の手で殺した、初めての獲物の肉。

 その味は、想像よりもずっと美味しくて。


 ミレイは生まれて初めて、本当の意味で食べ物に感謝することが出来た。


 ような気がした。



(……キララも、こんな気持ちなのかな。)


 キララは幼少の頃から狩りをしていたという。

 自分が生きるため、自分以外の誰かを生かすために。



 ”生き物を殺して、食べる”ということ。



 そんな、当たり前な事なのに。

 ミレイは20年も生きてきて、その事を知らなかった。


 それなのに、ずっと年上アピールをしていた自分を、ミレイは少し恥ずかしく思う。



「余った肉と、”討伐の証”である頭部は、馬車にくくりつけておきました。」


 魔法を巧みに使って。

 パーシヴァルは人手が必要な作業を、ほぼ1人でこなしていた。



「後は帰るだけだね〜」


「うん。そうだね。」


 慣れない事だらけであったが。

 初めての高ランククエストを無事に終えられて、2人はほっと息をつく。



「……確かに、それでも良いですが。」


 だがパーシヴァルには、もう一つ別の考えがあった。


 2人は、何だろうと首を傾げる。


「せっかく、こんな遠くまで来たのですから。街では出来ないことをしてみませんか?」


「街では、出来ない?」


 そう言われても、ピンとくるものはなく。

 ミレイは首を傾げたまま。



「――ええ。”魔法の修行”です。」


「「魔法?」」



 存在を知ってはいるものの。

 自分には縁が無いと思っていた単語に、2人は驚く。



「魔法って、パーシヴァルさんの使ってる、あの魔法ですよね?」


「わたしたちにも使えるんですか?」


 魔法とは無縁の世界、そして田舎で暮らしていた2人にとって。

 それはまさに、寝耳に水な話であった。


「もちろんです。それに極論を言ってしまえば、この世の”あらゆる人間”に魔法を扱える素養があります。」


 そう。魔法は、2人が思っているほど雲の上の存在ではなく。

 あくまでも、人の扱う”技術”の延長である。



「そしてわたしの見立てでは、お二人には”かなりの才能”があるかと。」


「えっ、ホントですか?」


 魔法の才能がある。

 そう言われて、ミレイは嬉しさを隠せない。

 なにせ、魔法とはロマンなのである。


「はい。それにキララさんに関しては、すでに”兆し”が見えています。」


「兆し?」


 そう言われても、キララ本人には魔法を使った経験など無い。


「ええ。そうでもないと、あれほど機敏な動きは出来ないでしょう。見た所、”ガリガリ”ですし。」



「なるほど。」


 その話を聞いて、ようやくミレイは合点がいった。

 なぜキララに、自分を肩車できるほどのパワーがあるのか。

 そして、異界のトリニンゲンモドキや、ワイバーン相手に正面から立ち回れるのか。



「あはは。」


 当の本人には、未だ理解が出来ていなかったが。


 パーシヴァルからしてみれば。

 それらは全て、魔法の”片鱗”によるものだった。



「魔法とは、単純なる”願いの力”です。こうあって欲しい、こうしたい。そう強く願うことにより、魔力が願望を叶えてくれます。」



 パーシヴァルが手を前にかざすと。

 その真上に、どこからか”水の塊”が発生する。



 それだけでも、ミレイたちにとっては驚嘆に値するものであったが。


 当然、それだけには留まらず。



 水は、空中でその形を変えると。

 より具体的な姿、意味を持った姿へと変わっていき。



 先程の思い出深い、”ワイバーン”を模した姿へと形を変える。



 水で作られたワイバーンは、まるで生きているかのように羽根をはためかせ。

 優雅に空中を舞っていく。



 その、お手本のように素晴らしい魔法を見せられ。

 ミレイとキララは、共に言葉を失う。



「水を生み出す。というより、物質を生み出す魔法は、最も初歩的な魔法と言えるでしょう。なにせ、単に魔力を別の存在に”変換”しているだけですから。」


 再び手の上に、水の塊を作り出し。


「物質の形を変えたり、動かしたりするのも、同じく初歩的な魔法です。」


 今度はそれを、粘土のように、ぐにゃりと変形させる。


「この程度の現象には、大して魔力を使いませんので。どれほど才能に乏しい人でも、努力次第で必ず習得できます。」


 あくまでも、魔法は技術なのだから。


「まぁ、数ヶ月、もしくは数年かかるかも知れませんが。」



「数年!?」


 途方も無い道のりだと、ミレイは思う。



「ご心配なく。あくまでも、”最低ライン”の話です。お二人の才能次第では、それはいくらでも短縮できるでしょう。」



 そう。もしも2人が、何の変哲もない凡人であったのなら。

 わざわざパーシヴァルが、魔法を教える気にはならなかったであろう。



「ではまずは、手のひらの上に水を生成することから始めましょうか。」


 こうして、初めての魔法講座は始まった。











「うぐぐぐ。」



 何かを絞り出すように。

 強く、強く念じても。



 ミレイの手のひらには、何一つとして変化の兆しが見られない。



「む〜」


 それは、キララにとっても同様で。

 どれだけ願おうとも、魔法の”まの字”も見えてこなかった。



 精神力を絞り出し、気力を出し切っても、その結果には何ら繋がらず。

 2人は同時に、深い溜め息をつく。



「こんな、初歩的な魔法も使えないなんて。」


「もしかしてわたしたち、最低ラインなのかな。」


 パーシヴァルは、あれほど簡単そうに魔法を発動していたのに。

 2人たちはどれだけ念じても、その片鱗すら伺えなかった。


「これって普通、どれくらいで出来るようになるんですか?」


 ミレイにそう尋ねられ。


 パーシヴァルは少し、考える。



「……どう、なんでしょう。わたしも人に魔法を教えるのは、これが”初めて”なので。」



「え?」


「正直な所、この”教え方が正しいのか”どうかも、あまり確証がありません。」



 その衝撃的な事実に、ミレイたちは言葉を失う。


 見た感じ、弟子を数十人は持っていそうな雰囲気なのに。

 まさか、これが初めてとは。



「……ちなみに、パーシヴァルさんはどれくらいで出来るようになったんですか?」


 参考のために、ミレイが尋ねると。



「そうですね。わたしの場合は、”三日三晩飲まず食わず”で。どうしても水が飲みたいと願い続けた結果、ようやく水を生み出すことに成功しました。」



「え?」


「あれは、懐かしい記憶です。」


 自分たちのやっている修行とは、全く異なる内容に。

 ミレイたちは困惑する。


「わたしの師匠は、非常に厳しいお方でしたので、……ですがわたしは、そのような教育方針には断固反対です。修行で死にかけるなど、あまりにもナンセンスですから。」


「なるほど。」


 その考え方は、ミレイにも有り難いものであった。


 修行の有効性には、未だ疑問が残るが。


「なら、わたしたちはどうしたら。何か出せるようになるまで、粘ったほうが良いですか?」



 そう、尋ねられて。

 パーシヴァルは再び、悩むような表情をする。



「……何か案を考えるので。それまで自主練をお願いします。」


 思いの外、ぐだぐだな魔法講座であった。







「むむむむ。」


「うぐぅ。」


 とりあえず、何でも良い。何でも良いから出てきてくれ、という気持ちで。

 ミレイたちは頑張っていた。


 けれども、水の”みの字”も感じられず。



 やはり、やり方自体が間違っているのではないか。

 そう思うミレイであったが。



「――あっ。」


 すぐ隣から聞こえてきた、ちょっと嬉しそうな声に。


 嫌な予感を感じつつ、ミレイが横を見てみると。



 キララの手のひらの上に。

 ほんの僅かながらも、小さな水の塊が浮かんでいた。



(まじか!)


 それは明らかに、キララが起こした奇跡であり。



 キララは同時に、ミレイの知らない”何か”を感じていた。



「――凄い! 何なのこれ。」



 ミレイには、”気付けない”事だが。

 キララの周囲には、光り輝く粒子が舞っていた。



 今までモノクロだった世界に、本来の色が戻ったように。

 全てが変わってしまったことに、キララは戸惑いを隠せない。



「どうしたの? 魔法感じてる?」


 ミレイには、何がなんだか分からず。



「……うん。何だかすっごく、溢れてる。」



 周囲に漂う、大量の粒子。

 魔力の多さに、キララは圧倒されていた。




「――なるほど。この方法なら、修行として成立しそうですね。」




 水を操るキララを見ながら。

 パーシヴァルは、そう確信する。



「せ、先生! どうしてキララだけ、急に魔法を使えるようになったんでしょうか!」


 まさか、本当に魔法が使えるようになるとは思わず。

 ミレイは問いかけた。



「魔力の、”濃度”ですよ。」


「濃度?」



 そう言われても、ミレイには何のことだか理解できない。



「今この場所には、通常の”数百倍”もの魔力が満ちています。わたしの力によって。」



 ミレイには、未だ知覚できない事ではあるが。


 パーシヴァルの身体からは膨大な量の魔力が溢れており。

 この周囲一帯を、囲むような形で展開されていた。



「味を感じないのであれば、感じるまで”濃く”すれば良いのです。」



 それこそが、パーシヴァルの導き出した教育方法である。



「凄い。どんどん溢れてる。」


 この方法が、本当に正しいのかは定かではないが。


 キララはすでに、複数の水の塊を生み出せるようになっており。

 明確に魔法の基礎に目覚め始めていた。



 しかし、ミレイには何一つとして影響がなく。

 水を生み出すことも出来なければ、周囲に満ちる魔力の存在すら感じ取れない。



「……すでに、かなり魔力の濃度を高めていますが。何も感じませんか?」


「すみません。」



 凄まじい量の魔力を放出し、なおかつ周囲に留めているものの。

 ミレイは未だに、魔法に辿り着かない。



「はわわ。なにこれ!?」


 キララはすでに、魔力を知覚できるようになっており。

 周囲に、どれほどの魔力が満ちているのかを、すでにその肌で実感していた。



「キララさん。貴女はもうコツが掴めているので、少し離れた場所で練習してください。」


「わ、分かりました!」



 パーシヴァルの指示に従い、キララは2人から距離を取る。






「――凄い。」


 キララの目には、2人を覆うように形成されたドーム状の魔力が映っており。



 その輝きが、より一層強くなっていく。



「こうなったら、根比べといきましょう。貴女が魔法に目覚めるまで、わたしもとことん付き合います。」



 パーシヴァルは、自らのより深い部分へと繋がり。

 爆発的に、放出する魔力を増やす。


 それは、先程までとは比べ物にならず。



「何なの、これ。」


 あまりの濃度と輝きに、キララは目が眩みそうになった。





「ミレイさん。まだ水は作れませんか?」


 流石のパーシヴァルも、これ程の魔力を維持し続けるのは一苦労であり。


「すみません、ちゃんと念じてはいるんですけど。」


 けれども、ミレイに魔法の兆しは見えない。



「もうすでに、”常人でも視認できる”ほどの魔力ですが。」


「はい! なんかキラキラしたのは見えてるんですけど。」



 周囲の魔力濃度は、もはや空間に漂う限界地点にまで達しており。

 すでに、物質としての領域にまで足を突っ込んでいた。

 それはもはや、その辺りの”動植物”ですら、魔法に目覚めかねないレベルである。


 しかし、ミレイには届かない。



「もうちょっとだけ、上げられませんか?」


「もっとですか!?」



 これでも足りないのかと。

 パーシヴァルは冷や汗をかく。



「使いようによっては、もう”街を吹き飛ばせるほど”の魔力が溜まっていますが。」


「あと少しで出来そうなんです!」



 ミレイの中では、何かが変わろうとしており。


 パーシヴァルもそれを信じて、ラストスパートをかける。




 空間が軋むほどに、膨大な量の魔力が濃縮されていき。


 その瞬間。何かが、切り替わると。




 それらが全て、ミレイの手のひらに集っていく。


 彼女の願いを叶えるため。


 ほんの1つの魔法を発動するために。





 一瞬にして、溢れていた魔力が消失し。



 ミレイの手のひらに、”小さな水玉”として姿を変えた。





「――出来た!」



 その奇跡に、喜んだのも束の間。

 小さな水玉は、重力に従い。

 ミレイの手のひらを、僅かばかり濡らす。


「……これが、魔法。」


 濡れた手をなぞって。

 ミレイは生まれて初めての魔法に感動していた。





 その隣、パーシヴァルはすでに疲労困憊であり。


「……あ、あれ程の魔力を代償にして。この結果とは。」


 ミレイのもたらした結果を、愕然とした表情で見つめていた。





 魔法は努力次第で誰でも使用可能な技術である。


 けれども、才能というものも確かに存在する。

 どれだけ魔力に愛され、密接に繋がれるかという才能が。


 あくまでも、例えではあるが。


 並の才能の者が”10”の魔力を使えば、魔法として”10”の結果が生まれる。

 優れた才能の持ち主の場合は、魔法として”15”の結果を生み。

 劣った才能の持ち主の場合は、魔法として”5”の結果を生むだろう。



 そして、ミレイは今。



 ”100万”の魔力を使い、魔法として”1”の結果を生み出した。





(……何という、”センスの無さ”。)



 悪い意味で、桁違いの才能を見せつけられ。

 パーシヴァルは震え上がる。



(これは10年どころか、100年単位の修行が必要では?)



 それほどまでに、途方も無い道程が目に見えた。


 だがしかし、落ち込むほどではない。



「……これも、教育というものでしょう。」



 現に、ミレイは魔法を発動させたのだから。


 どれだけ小さくとも、一歩進んだことに変わりはなかった。









 ほぼ、全ての魔力を使い切り。

 馬車を維持するための魔力すら、パーシヴァルには残っていなかった。


 けれども、初めての弟子の進歩に、喜びと達成感を噛みしめる。


 それ故に。


 ”体を覆う魔法”が、僅かに揺らいでいた事に。

 本人は気づかない。




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