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次元戦争






 魔獣大陸メビウス。


 古の時代から人の介入を拒み続け、赤き竜王によって統治されていた土地。

 アヴァンテリア最大の秘境とも呼ばれた土地であったが、今となってはその影もない。


 混沌の土地は、圧倒的な外来種によって制圧されていた。




 数多の怪人たちを指揮する者、最上位幹部であるゼストが君臨し。

 彼の視界には、何十体もの上位怪人たちが集まっている。


 ゼストの背には、地球へと繋がる異界の門が。

 そしてその手には、”虹色”に輝くアビリティカードが存在した。





「……ここには、随分と便利なものがある」





 ゼストがカードを起動。

 恐るべき力を秘めた、”漆黒の魔剣”が具現化する。


 それに続くように、他の怪人たちもカードを起動し。

 武器や乗り物など、様々な物体が現れた。




 アビリティカード。

 この世界で生きる以上、彼らにもそれを得る権利はある。





「この世界の力で、この世界を滅ぼすとしよう」





 ミレイが連れ去られて、3日後。

 怪人たちによる、アヴァンテリア侵攻が始まった。

















 アビリティカードという存在に気づいたことにより、怪人たちの侵攻は初速から凄まじかった。


 送り込まれてきた上位怪人は、100体。

 全員が、Sランク冒険者に相当する化け物である。


 彼らはカードによって飛行手段を手に入れ、およそ半数の怪人が残り四つの浮遊大陸を襲撃した。






 浮遊大陸の一つ、魔導国家バラム。


 魔法研究の分野においては帝国をも凌ぐ大国であり、独自の魔法騎士団を有している。

 その保有戦力は強大であり、かつて行われた大戦では帝国側からの侵攻を見事に食い止めていた。


 そのかつての栄光から、およそ半世紀。異世界から現れた侵略者に対し、当然のように魔法騎士団は出撃。




 そして、わずか2時間足らずで壊滅した。




 バラムを襲ったのは、10体ほどの上位怪人。

 Sランク冒険者が10人がかりで攻めてきた、と考えれば、彼らも奮闘したのかもしれない。




 しかしそんな中、未だに孤軍奮闘する者が一人。




「くっ」




 帝国より派遣されたSランク冒険者、ミーア。

 ソルティアの双子の姉にして、超攻撃的魔法の達人である。


 彼女は自身のカードである巨大昆虫の背中に乗って、たった一人で怪人たちとの空中戦を繰り広げていた。




 選ばれし者、4つ星カードの所有者。

 そのプライドと、鍛え上げられた魔法の力をもって、冒険者の最高峰である七星剣(サテライト)にも選ばれた。


 自分の持つ力を自覚してからは、ただの一度も敗北はなく。不出来な妹に見せつけるために、華やかな功績を築き上げてきた。


 だがしかし、人の真価というものは、窮地に陥った際に分かるもの。




「……ティア」




 圧倒的な敵を前にして、ミーアの心は折れようとしていた。















 場所は変わって、地上。

 異質な文化を築く島国、武蔵ノ国。


 ここにも当然、怪人たちによる侵攻の手が迫っていたのだが。

 武蔵を襲っているのは、たった一体の怪人。


 しかしその一体が、あまりにも強大であった。




 巨大化能力を有する幹部怪人、ゴモラ。

 3日前に帝都で暴れた時のように、圧倒的な巨体で武蔵を蹂躙する。


 独自の文化によって築かれた和の町並みが、巨大な足によって踏み潰される。それに抗える人間は、ここにはおらず。

 また、アビリティカードの能力であろうか。全身が強固な光のバリアに覆われ、その無敵ぶりに拍車がかかっていた。




 だがしかし、武蔵ノ国もただ蹂躙されるつもりはなく。

 12代目宮本武蔵の率いるサムライたちが、ゴモラ討伐へと赴いていた。








 そして、帝国では。


 およそ50体の上位怪人が、地上に向けて降下しようとしていた。

















 天井を見上げながら、フェンリルが唸り声を上げる。

 この世界に多くの敵が現れたことを、彼も察知していた。




「ドンパチが始まった」


「うん」




 フェンリルの背中に乗るのは、この世界の神であるアリアと、キララの二人。

 二人は他のメンバーたちと分かれ、”帝都の地下”へと潜っていた。




「……こんな場所があったなんて」




 地下に広がる光景に、キララは驚きの声を上げる。



 帝都の地下は、巨大な迷宮になっていた。周囲の至る場所に魔力が満ち、どこか神秘的な空気に包まれている。

 かつて探索したピエタのダンジョンと違い、この場所は不思議と人工的に見えた。



 一般市民には隠された、帝都の秘密。

 空中に浮かぶギルド本部の塔や、市民の生活を支える都市循環魔力。それらは全て、この地下空間から汲み上げられていた。

 より正確には、地下深くにある”ある物体”から生み出された魔力だが。




「ここの最深部なら、キララの力を覚醒させられる」




 二人がここを訪れたのは、白紙化したキララのカードを修復するため。

 この”戦争”に勝つためには、どうしても彼女の力が鍵になると、アリアは予想していた。



 本来であれば、アリアはその手で触れるだけでアビリティカードを修復することが可能である。

 神である彼女にはそれだけの力があり、かつて皇帝セラフィムも長い旅路の果てにアリアのもとへ辿り着いた。


 だがしかし、今のアリアにはその力が存在しない。

 彼女の神としての権限は、その大半が”剥奪”されていた。




 神とは、星によって定められるもの。

 ゆえにアリアも、何千年もの昔に星によって生み出された。


 神に与えられた役割は、世界を円滑に動かし、文明を発展させること。

 世界が栄えれば栄えるほど、神の持つ力は増大し。逆に衰退すれば、神の力は失われる。




 今現在、アヴァンテリアはかつてないほどの窮地に立たされていた。

 皇帝や竜王という大いなる支配者が倒れ、異界の侵略者の脅威に晒されている。


 この現実に、星は神に”失望”。

 アリアの持つ力は、過去最低レベルまで低下していた。


 もはや、アビリティカードというシステムに干渉するだけの力も残っておらず。

 それを無理矢理にでも可能にするため、こうして彼女たちは最も近場にある”モノリス”を目指していた。




「……もしも地上が征服されたら、きっと”あの男”が神に選ばれる」




 アリアの脳裏に浮かぶのは、ミレイを拐った男の顔。




「神さまって、そういう感じなんだ」


「うん。わたしがこの世界を制御できてないから、星が揺らいでる」




 今の神が運営する世界には、もう未来がない。星がそう判断すれば、神の座は別の者に。

 世界とは、そうやって成り立っていた。






 フェンリルが、警戒を露わにする。



 彼女たちの前に現れたのは、異形の怪物。

 人型のようにも見えるが、全身が焼け爛れた異様な姿に、頭部には何かが寄生していた。



 帝国によって封印されているとはいえ、ここはれっきとしたモノリス周辺部。

 異界の門が頻繁に開く関係上、このような異次元の怪物で溢れている。




「これを突破しないと」




 プロメテウスを倒す。

 ミレイを助けるための切り札が手に入ると信じて、キララとアリアは最深部のモノリスを目指す。



 ただ、同じ領域に立つために。




「……大丈夫。地上は、あいつらがどうにかしてくれる」















「ッ、しまっ――」




 魔導国家バラム。

 孤軍奮闘するミーアであったが、ついに彼女の乗る巨大昆虫が被弾してしまう。



 それにより、彼女は投げ出され。

 怪人たちの魔の手が迫ろうと、





 その刹那、強烈な光の束が怪人を消し飛ばす。


 光の使い手と言えば、彼女しかいない。





「すみません、遅くなりました」




 最強の冒険者、マキナ。

 浮遊大陸を守護するべく、彼女が救援にやって来た。















 巨大怪人ゴモラの暴れる武蔵ノ国。


 そこに、船に乗った戦士たちの一団が到着する。




「さて、やりましょう」




 ソルティアにエドワード、ブラスターボーイなど。

 ゴモラを討伐するべく、帝国から戦力が送られてきた。















 そして、帝都の上空では。



 降下してくる無数の怪人たちを前に、一人の少女が立ち塞がる。



 二振りの剣を握り締めた、魔法少女アリサ☆ブレイヴ。





「全員、消す」





 世界と世界が、正面から衝突した。






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