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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
魔法少女大戦
135/153

最強の魔法少女、異世界で遊園地を経営する






「あら、帰ってきたわね」


「きました」


「ました〜」




 ギルドに戻ってきたミレイたちを、受付嬢のサーシャが出迎える。


 いつもと変わらない、元気そうな二人。

 だがしかし、そこにアリサの姿はない。




「もしかして、彼女……」


「あー、いえ。別に怪我とかはしてないですよ」




 最悪を予感するサーシャであったが、ミレイがそれを否定する。




「ただちょっと、”居残り”があるとかで」















 崩壊した遊園地。瓦礫の山の上に、ミレイたちは立っていた。


 熾烈な戦いに勝利し、行方不明の人たちも助けることが出来た。結果としてみれば、この上ない勝利と言えるのだが。




「……」




 瓦礫の上で、キララはしょんぼりとしていた。

 あれほど楽しかった遊園地が、粉々に壊されてしまったから。




「仕方ないって。元々、この世界のものじゃないんだし」


「うーん。そうだけど」




 ミレイの慰めも、今のキララには通用しない。

 キララにとって、ここは本当に楽しい場所であった。たとえ、どんな目的で動いていたとしても。この場所は、キララの心に楽しさを刻み込んだ。




「――でも、ここはまだ”生きてるわ”」




 ミレイとキララは、完全に落ち込んでいたものの。アリサだけは、すでに別の地点を見つめていた。




「地上は破壊されたけど、地下のメインフレームは無傷のはず。なら、上手くシステムを動かせれば、きっと元通りに蘇る」


「それって、直してくれるの!?」


「ええ、もちろんそのつもりよ」




 キララの問いに、アリサは肯定する。

 その様子を、ミレイは意外そうに眺めていた。




「へぇ〜。遊園地、嫌いって言ってたのに」


「今でも嫌いよ。むしろ、この一件で更に嫌いになったわ」


「え、じゃあなんで」




 それだけ毛嫌いしている遊園地を、再建しようとしているのか。




「だって、この世界に遊園地は無いんでしょ? なら、絶好の”ビジネスチャンス”じゃない」



 アリサは完全に、打算で動いていた。




「タイムレコードを見るに、この遊園地のシステムは”31世紀の地球”で作られたものよ。物質変換、ナノテクノロジー、他にも高度な技術が組み込まれていて、しかも全自動で運営が可能。――つまり適切に稼働できれば、この遊園地は巨万の富を生むはず」




 すでにその脳内では、遥か未来のことを考えていた。




「まさか、異世界に来て早々、遊園地が手に入るなんて。わたしたち、ついてるわね」


「……えーっと、つまり。ここを使って、お金を稼ぐってこと?」




 ミレイは、若干呆れた様子。




「当たり前じゃない。わたし自身、そんなに執着はないけど。お金って、どれだけあっても困らないのよ」




 二人と違って、アリサは冒険者の報酬だけで生きていくつもりはなかった。

 どちらかと言えば、彼女は”犯罪者寄り”の思考回路を持っているため。楽に、ズルして金を稼ぐ方が性に合っていた。





『最強の魔法少女、異世界で遊園地を経営する』


 主人公、真神アリサ





「というわけで、わたしは少し残っていくわ。クエストの報酬は、二人で分けていいわよ。わたしは、ここを貰うから」


「……そっか」



 アリサのたくましさに、ミレイは何も言えなかった。





「アリサちゃん。直ったら、すぐに教えてね!」


「ええ、もちろん。あなた達なら、特別料金で利用させてあげる」


「金を取るんかい!」





 そんな冗談を交えながら、くだらなく笑い。


 波乱を呼んだクエストは、こうして終結した。










◆◇










 次の日の夜。

 ルームシェアをしているイーニアの家で、ミレイたちは全員で夕食を食べていた。


 家事や料理は、便利な執事ロボットに任せて。

 六人ものメンバーが、楽しく食事を行う。





「わたしのアビリティカード、色が薄くなっているけど。これって大丈夫なのかしら」


「そうですね。一週間ほどあれば、自然に直りますよ」



 アリサの問いに、ソルティアが答える。




「ちなみに、こうなったらお終いです!」




 キララはそう言うと、珍しく自身のアビリティカードを具現化する。

 白紙化し、能力を失ったカードを。

 才能を恨んだ村の大人によって、キララは赤子の頃にカードを壊されていた。




「それは、残念ね」



 カードの経緯を聞き、アリサは表情を暗くする。




「ううん! 別にこれは、物心ついたときから、ずっとだから」




 カードの強さなど、キララには関係がなかった。

 人の持つ価値は、能力の強さではないと知っている。




「それに、もしも大会で優勝できれば、師匠が直し方を教えてくれるんだよ!」




 ミレイとキララの師匠。パーシヴァルこと、皇帝セラフィムが残した言葉。

 もしも、自力でSランクに上がることが出来たら、白紙化したカードの直し方を教えると言っていた。


 そして、その一番の近道こそが、帝都最強決定戦での優勝である。




「あー。だから、珍しく本気だったのね」



 フェイトは、予選会での戦いを思い出す。




「うん。今までは、全然気にしてなかったけど。最近はちょっと、”強くなりたい”なって思ってて」




 キララが、力を求める理由。

 それはもちろん、”大切な一つ”を守りたいから。




「でも、そんな無理する必要ないんじゃない? 別にキララは、今のままでも……」


「よくなーい! 全然、よくないよ!」




 ミレイの言葉に、キララは反論する。

 今のままでは、守られてばかりになってしまうから。




「ぶー!」


「こんにゃろ、可愛い顔しやがって」




 ミレイとキララ。

 何も変わっていないようで、その関係性は少しずつ変化している。






「……この二人、見てると和むわね」



 アリサは小さくつぶやいた。









◇ 今日のカード召喚





 1つ星 『復刻版ブーブーアニマル(キリン)』


 懐かしのおもちゃ、ブーブーアニマルの復刻版。背中のゼンマイを回すと動き出す。





「ぷっ」



 その召喚を真横で見ながら、フェイトは笑う。




 このようなカードが出る時もあれば、フェイトのような存在を呼ぶこともある。

 カードの召喚とは、なんとも不思議であった。




「よかったね、フェイトちゃん。まだライバルが出てこなくて」


「はぁ〜? アタシ、そんなの別に気にしてないんですけど!」




 キララの言葉に、フェイトは大きく反応する。

 5つ星、自分に匹敵する存在が呼ばれないか。事実、彼女は毎日気にしていた。










◆◇










 それは、始まりの日。

 ミレイが、この世界にやってきた日。



 この世界のどこにもない。

 不思議な空間にある城に、ミレイは招かれていた。




 とはいえ、どうやら様子がおかしく。


 なぜか、ミレイは気持ちよさそうに眠り。

 白髪の少女アリアは、色々とボロボロになっていた。


 眠っているミレイの側には、酒瓶のようなものが転がっており。何が原因かは、一目瞭然であった。





「まさか、ここまで豹変するなんて。……流石、魔女と同じ名前を持つだけある」





 とはいえ、眠れば小さくなるようで。

 安全を確認すると、アリアはミレイの元へと近づいた。





「ミレイ。まだ、最後の願いを聞いてない」





 この世界を救ってほしい。


 それを頼む見返りとして、ミレイは”三つの願い”を叶えてもらうことになっていた。


 残念なことに、ずっと忘れていたが。




 一つ目の願いは、”アリアと一緒にお酒を飲みたい”というもの。二十歳の誕生日を迎えたミレイの、純粋な願望であった。

 これが原因で、ある意味全てが台無しになってしまったが。


 二つ目の願いは、”五歳ほど若返らしてほしい”というもの。

 せっかくの異世界なので、ミレイは気持ち的にちょっと若返りたいと思っていた。



 そして、三つ目。





「ミレイ、最後の願いは?」




 ぺしぺしと、頬を叩くものの。ミレイはまるで起きる気配がない。

 まさか、これで記憶まで吹き飛んでいるとは、アリアは思ってもいなかった。




「起きて」


「んん」


「起きて」


「うぅ」




 必死に体を揺さぶっても、ミレイは起きない。

 口から漏れるのは、単なる寝言のみ。


 と、思いきや。





「……アリア、一緒に来て」





 それが、ミレイの三つ目の願い。

 この世界で出来た最初の友だち、アリアと一緒に、ミレイは異世界を冒険したかった。


 しかし、アリアは首を横に振る。




「わたしには仕事がある。この世界のために、もっと力が必要だから」




 いくらミレイの願いとはいえ、それは叶わぬ願いであった。





「”その代わりに、使える奴を用意する”。向こうについたら、そいつを頼って。ミレイと共通点の多い人間だから、きっと仲良くできるはず」





 その話を、ミレイは覚えていない。





「そいつの名前は――」















「――ッ」




 真夜中。

 ベッドの中で、ミレイは唐突に思い出した。



 ずっと忘れていた、始まりの記憶。

 世界を救ってほしいという、アリアという少女のことを。



 なぜ、こころなしか若返っていたのか。なぜ、最初の記憶を忘れていたのか。

 それを思い出しただけなら、何の問題もないのだが。




――その代わりに、使える奴を用意する。




 アリアの言葉が、頭の中から離れない。




(……それって)




 ミレイが思い出すのは、とある出会いの記憶。

 初めて訪れた冒険者ギルドで、期待と不安で胸が一杯で。


 そんな時に、少女の手が触れた。





 その名は、キララ。

 忘れられない、運命の出会い。





(あの出会いって、そういうことなの?)




 奇跡でも、運命でもない。

 ただ自分の願いのために、仕組まれた出会いだったのか。




 その記憶は、ミレイの中に不安を生んだ。










 第一部 終章 『ネオ』








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― 新着の感想 ―
[一言] あけおめです!1部終章楽しみにしてます。 5歳若返ったのミレイの出会いだったのかって思ったんですけど、読み返したら最初の方に書いてましたね(覚えてません) ミレイの世界、怪人の世界、アリサの…
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