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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
魔法少女大戦
130/153

敗北!? 魔法少女アリサちゃん

誤字報告等、ありがとうございます。






「不審者が確認されました。来園中のお客様は、係員の指示に従ってください」




 それは異様な光景だった。


 不審者、つまり冒険者の数が多いからだろうか、大量のハッピーくんが一箇所に集まってくる。


 現代人として、マスコットキャラクター、遊園地という概念を知っているアリサから見ても、かなり恐ろしい光景だというのに。

 何も知らない冒険者たちからすれば、一体どれほどの恐怖なのだろう。




「近寄るな!」




 冒険者の一人が、鋭い剣を振るい、ハッピーくんの頭部を斬り裂く。



 するとその中身は、人の影すら無い、見事なまでの空洞。

 このハッピーくん達は、”空のきぐるみ”だけで動いていた。





「……なるほど。捕まった人間が、強制労働させられてるわけじゃないのね」




 アトラクションの上から、アリサは冷静に地上を分析する。

 助けようという考えは、残念ながら微塵も持っていなかった。







「この、化け物め!」



 ハッピーくん相手に、武力で抵抗する冒険者たちであったが。




「なっ」




 突如として、足が地面に沈み始める。

 まるで、底なし沼にはまってしまったように。




「あ、あ。……いや、おい!」




 冒険者たちは、逃れようと必死にもがくも。

 体がどんどん地面に沈んでいき。





「抵抗は止めてください。ただいま制圧中です」



 さらに追い打ちをかけるように、ハッピーくんが覆い被さってくる。





「……」



 そのあまりの光景に、アリサは言葉を失った。


 行方不明になった他の人々も、同じような目に遭ったのだろうか。



 そこに残ったのは、大量のハッピーくんだけ。

 必死の抵抗も虚しく、冒険者の一団は”跡形もなく消えてしまった”。



 やがて、遊園地は通常営業に戻った。





 何ごともなかったかのように、散り散りになっていくハッピーくんを眺めながら、アリサは考える。



 冒険者たちを一方的に瞬殺した、セキュリティシステムとやらの脅威。

 人抜きで動くハッピーくんと、沼のように人を吸い込む地面。

 空を飛べる人間でなければ、これへの対処は難しいだろう。




(やっぱり、遊園地そのものが動いてるわね)




 地上を見てみれば。斬り裂かれたハッピーくんだけでなく、戦いで壊れた建造物も、綺麗サッパリ元通りに修復されていた。

 ハッピーくんを含めて、この遊園地には高度な自己修復機能が備わっているらしい。

 これだけの芸当が可能なら、あの増殖スピードにも納得ができる。




(それにしても。どうしてわたしたちは、今まで狙われていないのかしら)




 この遊園地のカラクリ。

 セキュリティシステムについて、アリサは思考を巡らせた。















 冒険者たちの悲惨な一部始終を見届けて、アリサはミレイたちの元へと帰ってくる。




「どうだった? 正直、ここからじゃよく分かんなかったんだけど」



 ミレイが純粋な疑問を口に。




「……」


「あはは」




 間近で眺めていたアリサと、目を強化して見ていたキララは、何とも言えない表情になった。


 



「もしかしたら、あなたの言った通りかも知れないわ」


「え?」


「ほら、言ってたじゃない。”某テーマパークの都市伝説”。行方不明になった人間が、地下の施設に連れて行かれてるって」




 少なくとも、あの冒険者たちは地面に吸い込まれていった。

 あのまま、どこかに閉じ込められているのか、それとも”養分”として遊園地に吸収されたのか。


 どのみち、謎を解く鍵は地下にありそうだった。





「話が単純になったわね」


「……そうかな」




 ミレイは首を傾げる。




「地下施設を暴いて、捕まった人々を救出。それが完了したら、ここを跡形もなく吹き飛ばせばいい」




 そう言って、アリサは自らのアビリティカードを具現化する。


 5つ星、”人界剪定機構ケラウノス”。


 カードテキストを信じるなら、街を消し去れるほどの超兵器である。




「たとえ修復機能を持っていたとしても。消滅させれば、大体の問題は解決するわ」




 本当なら、今すぐぶっ放してもいいくらいだが。

 あくまでも依頼は行方不明者の捜索のため、消すのは最後に後回し。




「今日で、終わらせましょう」




 アリサは決意した。

 今日この日の内に、遊園地を跡形もなく消し去ると。




「えぇ……」



 話の進むスピードに、ミレイは取り残された。








「でもアリサちゃん、どうやって地下を探すの?」


「もちろん、”掘るわ”」




 その覚悟を示すように、アリサの纏う衣装が変化する。


 純白のドレスに、美しい青が混じり。


 左手には、もう一振りの剣。





――魔法少女アリサ☆ブレイヴ/ミラクルモード。





「……本気じゃん」



 まさかの最終形態に、ミレイは唖然とする。




「たとえ大量のハッピーくんが相手でも、わたしなら負けないわ。手遅れになる前に、片を付けられるはず」




 連れ去られた人々の安否が分からない以上、のんきに入り口を探す時間はない。

 ハッピーくんに尋ねたとしても、きっと分からないの一点張りであろう。


 ゆえに、アリサは強硬手段に打って出る。




「地面を掘削する以上、わたしは”ルールを破る”ことになる」


「?」


「ルール?」




 ミレイとキララは、ともに首を傾げた。




「ルールを守って遊んでいる間は、この遊園地は”お客”として扱ってくれる。だからあなた達は、きっとこのままでも大丈夫」




 バカ正直に、この遊園地を楽しもうと思ったため、ミレイ達は不思議と平和に過ごせてきた。


 それが、”他の行方不明者たちとの違い”である。




「わたしは暴れるから、二人はルールを守ってて」


「あー、うん。……了解」


「頑張ってね!」




 かくして、魔法少女は異世界で初めての戦闘を行うことに。

















「――破壊行為は止めてください。武器を下ろしてください」




 遊園地のど真ん中で、魔法少女は地面を破壊する。

 それを止めるべく、大量のハッピーくんが集まっていた。



 しかし相手は、高すぎる戦闘力を持つ最強の魔法少女。

 ハッピーくんは、近づく前にバラバラに斬り刻まれる。


 アリサは、本気だった。





「すっご」


「激しいね〜」




 遊園地を破壊し続ける魔法少女。

 そんな特殊な光景を、ミレイとキララはホテルのバルコニーから眺めていた。



 掘削に協力しようとも思ったが、とても近づけるような雰囲気ではない。

 果たして、あの戦闘力とやり方が、本当に合っているのだろうか。





「それにしても、やっぱり空っぽなのか」




 斬り刻まれるハッピーくんたち。

 もしも中に人が入っていれば、今頃あそこは地獄絵図になっていただろう。




(……じゃあ、連れて行かれた人は?)




 ミレイは、ここに来て思考を開始する。


 行方不明になった人々。

 ハッピーくんの中身は空っぽなので、恐らくは地下に捕らえられているはず。




(地下に牢屋がある? ……いや、”ここは遊園地なんだから”、そんな場所は無いはず)




 純粋に、ここを遊園地であると仮定して。

 人がいっぱい捕らえられている場所。もしくは、集められている場所はどこなのか。





――もしかして、”迷子”ポヨン?





「あ」



 ミレイはひらめいた。









「あのー。ちょっといいですか?」


「何かようポヨン?」




 ミレイとキララは、ホテル内にいたハッピーくんに声をかける。




「えっと、――”迷子センター”って、どこにあります?」




 それこそが、単純にして唯一の正解であると。















 二振りの剣を持って。

 地面を滅茶苦茶に破壊しながら、アリサは遊園地の地下を目指す。



 そうしていると。



 掘削された周囲の壁が、まるで”触手”のようにアリサを襲い始めた。




「やっぱり、そう来るわね」




 ハッピーくんだけではない。

 この遊園地の壁や地面も、同様にセキュリティとして機能する。


 しかし、彼女は魔法少女。

 こんな得体の知れない敵を相手に、絶対に負けたりしない。






 だがしかし。

 彼女にも誤算があるとすれば。



 ここに遊園地とは異なる、”別の悪意”が存在したことだろう。






「――あーらら。随分と強い子がいるのねぇ」






 掘り進められた穴の上から、”一人の女性”が覗いていた。


 アリサはそれに、気づかない。





「悪いけど、この子はまだ終わらせないわ」





 女性の瞳が、妖しく光った。










「この調子なら、余裕で行けそうね」




 圧倒的な力で、アリサは地下へと斬り進んでいく。


 二振りの剣から繰り出される剣技は、まさに無双。


 彼女と正面から戦える者は、この世界にもそうはいないだろう。




 そんな、彼女であったが。



 なぜか急に、”持っていた剣を手放してしまう”。




「え」




 すっぽ抜けた。

 というより、なぜ手を開いてしまったのか。



 アリサは一瞬、思考が停止し。

 それが、致命的な隙となった。





「あ、ちょ」



 周囲の触手が、アリサの体にまとわりつく。




「そんな、とこっ」



 地表からは、大量のハッピーくんが覆い被さり。

 ついにアリサは、もう一振りの剣も落としてしまう。




「くっ」



 そうして魔法少女は、遊園地に飲み込まれた。






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