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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
魔法少女大戦
127/153

きえる






 怖い顔。

 もとい、真剣な表情でアリサが調査を開始した頃。


 ミレイとキララはというと。




「やっぱ最初は、ジェットコースターかな」




 アリサに言われた通り、アトラクションの調査を行うべく。一番大きなジェットコースターへと足を運んでいた。


 遊びではなく、れっきとした調査である。




 だが、しかし。




「ポヨヨヨヨ〜ン。この線より大きくないと、このアトラクションには乗れないポヨン」


「え」




 ジェットコースターを前にして、ミレイは凍りつく。



 ハッピーくんが指し示すパネルには、大きく”140cm”と書かれていた。

 140cmとは、ミレイの嫌いな言葉の一つである。




「嘘、だろ」


「ミレイちゃん……」




 なぜ、異世界に来てまで、身長制限に引っかからなければならないのか。

 今までに味わってきた屈辱が、ミレイの脳内を駆け巡る。




「いや、まぁ。……最近、成長期が来てるし」




 キララが言うには、ミレイは最近大きくなっているらしい。


 正直、自分では自覚がないものの。

 意を決して、ミレイはパネルの前に立ってみる。




「……どう?」


「ポヨヨン」




 ハッピーくんが、パネルとの身長を見比べる。




「139cmポヨン。あと1cm足りないポヨン」


「あぁー。惜しいね、ミレイちゃん」




 残念ながら、ミレイの身長は基準を満たしていない。

 だがしかし、




 なぜかミレイは、その場でプルプルと震えていた。




「ミレイちゃん?」




 明らかに、様子がおかしい。





「――あとちょっとで、140いくんだっ」





 ミレイは、思わず感動していた。



 記憶が確かなら、身長は136cm程度で停滞していたはず。

 なのに、ここへ来て驚異的な伸びを見せている。


 この世界が、ミレイに何らかの影響を与えていた。




 とはいえ、




「でも、ミレイちゃん乗れないね」


「うん」




 確かに身長は伸びているが、基準となる140cmには届かない。

 1cm、されど1cmである。




「ハッピーくん、ちょっとくらい大目に見てよ」


「申し訳ないポヨン。規則で決まってるから、君は乗せられないポヨン」




 ミレイは、きっぱりと断られた。




「”もう少し大人になったら”、また遊ぶポヨン」


「うぐっ」




 若干、心を抉られながら。







「わたしはここで見てるから、とりあえず乗ってみたら?」



 仕方がないので、ミレイは保護者に徹することに。




「えぇ〜 ミレイちゃんと一緒に乗りたいよぉ」


「うぅ、そんなこと言わんといて」




 悲しいかな、ルールは守らなければならない。

 それが、大人というものである。




「――あっ、そうだ! ミレイちゃん、あの大きくなる技を使ったら?」


「……おお、忘れてた」




 ミレイは、手軽なドーピング法を思い出した。










――きゃー!!




 遠くのジェットコースターから、ミレイたちの悲鳴が聞こえてくる。


 とはいえ、アリサには関係ない。




「わざわざ乗って、悲鳴を上げる。何が面白いのかしら」




 アリサには、絶叫マシンに乗る気持ちが分からない。

 そもそも、遊園地自体が嫌いであった。




 その昔、アリサは一度だけ、家族と遊園地に行ったことがある。


 アリサ以外の家族は全員普通で、遊園地も普通に楽しめる人たちだった。

 しかし、幼いアリサが”全部イヤ”と駄々をこねるので、以降一度も行くことはなかった。




 仲良くしなければならない。

 楽しまなければならない。


 そういった感覚が嫌いだった。




「……」




 アリサは、遠くのジェットコースターを見る。



 ミレイたちは嫌いではないが、真面目に仕事をする上では邪魔になる。

 だからアリサは、別の道を歩む。



 今は、まだ――















「おい、そこの嬢ちゃん」




 アリサが遊園地内を探索していると、見知らぬ男に声をかけられる。


 軽めの鎧を身に纏った、髭の生えた男。


 筋肉質な身体に、腰には剣と、戦士であることは容易に分かる。




「なに?」


「嬢ちゃんは、ここの人間か?」


「いいえ、わたしは調査に来てるだけ。ただの冒険者よ」


「そうか」




 どうやらこの男も、外部からこの遊園地へやって来たらしい。




「俺はクエストを受けたわけじゃないが、知り合いが行方不明になっててな。それで、乗り込んだわけだが」


「今の所、成果はなしと」


「ああ、さっぱりだ」




 この遊園地が、一体どういう仕組みで動いているのか。

 いや、そもそも彼は、”遊園地という概念”すら理解していないのかも知れない。




「ここはまるで異世界だよ。嬢ちゃんも、くれぐれも気をつけるんだな」


「ええ」




 そう言葉を交わして、男はその場を去っていった。


 わざわざ単身で乗り込んできた辺り、彼は戦える冒険者なのだろう。




「……色々なタイプが居るのね」



 アリサは、一瞬で興味を失った。





 次はどこを調べようかと、アリサは園内マップを開いてみる。


 書いてあるのはアトラクションについてのみで、どこで管理しているのかも分からない。




「?」



 マップを見るうちに、アリサは小さな疑問を抱いた。




「こんなアトラクション、さっきまであったかしら」















「ここはイカれてやがる」




 アリサと分かれたあと、髭面の冒険者は一人で園内を探索していた。

 遊園地という異世界の文化に、恐怖すら覚えながら。



 そんな中、彼はマスコットキャラのハッピーくんとすれ違い。




「ッ」



 ある事に、気づいた。




「おい、お前!」



 ほとんど反射的に、男はハッピーくんに掴みかかる。




「ポヨヨン? どうしたポヨン?」


「何だ、お前。何でなんだ?」




 ハッピーくんは、突然掴まれて動揺するも。

 男は、それ以上に気を動転させていた。




「答えろッ!」


「ポヨン!」






 そして男は、

 踏み込んではならない部分に、その手を伸ばしてしまった。






――うわあああ!!





「ッ」



 アリサはその叫び声に反応し、急いで飛翔した。




 だがしかし。

 現場に駆けつけた時には、そこには何も存在せず。





 ただ、ハッピーくんが立っていた。





「ポヨヨヨヨ〜ン? もしかして、迷子ポヨン?」


「……いいえ、問題ないわ」




 得体の知れない不気味さを感じ、アリサはハッピーくんと距離を取る。


 この遊園地は、やはり何かがおかしい。

















 一通り、アリサは園内を見回ったものの、人を襲うような存在は確認できず。

 昼間の冒険者を除けば、見かけたのはハッピーくんだけで。



 そろそろ日が暮れる時間なので、三人は合流することに。





「それで、そっちはどうだった?」



 あまり期待せずに、アリサは二人に聞いてみる。




「うん、ここは凄いね。一日じゃ回り切れないと思う」


「ねぇアリサちゃん、一緒に回転ブランコに乗らない?」




 ミレイとキララは、単に遊園地を堪能していた。

 当然、有益な情報など得られない。


 キララがどういうアトラクションを気に入ったか、そういう話しか出てこない。




(やっぱり、戦力にならないわね)



 アリサは諦めた。








「もうすぐ日が暮れるわ。今日は撤退しましょう」


「だね」




 暗くなっては調査どころではない。

 三人は遊園地を出て、帝都へ帰ろうとするものの。




「あれ?」



 外に出ようとして、ミレイは気づく。




 遊園地全体を覆うように、”見えないバリア”のようなものが展開されていた。 




 手で叩いても、まるで壊れる気配がない。




「……どうしよう」


「普通に、壊せば良いじゃない」




 アリサは剣を構える。


 得体の知れないバリアなど、魔法少女の力なら斬り払えるはず。



 すると、





「ポヨヨヨヨ〜ン!」



 ミレイたちのもとへ、ハッピーくんがやって来る。





「どうかしたポヨン?」


「えっと、外に出られなくて」



 ミレイが事情を説明すると。




「ポヨヨン! 今、外は危険な状態だポヨン。だから今日は、”トリックハウス”に泊まるポヨン」


「トリックハウス?」


「……園内にあるホテルよ。地図に書いてあったわ」




 アリサは、その存在を知っている。




「それで、どうして外は危険なの?」


「ポヨヨン、それは分からないポヨン」




 ハッピーくんは、所詮はマスコットに過ぎない。


 ゆえに、”肝心なこと”は知らなかった。




「どうする?」


「ね〜」




 ミレイとキララは、正直どちらでもよく。

 判断はアリサに委ねられる。




「……誘いに乗るのも、一つの手ね」




 ここは一体何なのか、なぜ人々が行方不明になるのか。

 確かめるため、三人はトリックハウスに泊まることに。















 遊園地内にあるホテル、トリックハウス。

 これまた大きく、立派なホテルに泊まることになったのだが。


 



「「すっごーい!!」」




 ミレイたちがやって来たのは、最上階にあるスイートルーム。


 もの凄く、豪華な部屋に案内された。




「ここって多分、何十万もする部屋だよ」


「ベッドもおっきい!」




 ミレイとキララは、部屋の様子に大興奮。




「……」



 アリサは無言で、部屋の安全性を確かめていた。







 


「えぇ〜、一緒に入らないの?」


「ええ。安心したところに、敵が襲ってくる可能性もあるから」




 一緒にお風呂に入ろうと、ミレイに誘われたものの。

 アリサはそれをきっぱりと断った。






 お風呂の方から、ミレイとキララの楽しそうな声が聞こえてくる。



 それを背に、アリサは警戒心を緩めない。



 こんな得体の知れない場所で、なぜのんきに笑えるのか。

 そもそも、”一緒にお風呂に入る理由”も分からない。




 アリサが、無性に苛ついていると。





――ぎゃー!



 風呂場の中から、ミレイの叫び声が聞こえてくる。





「まさかっ」



 アリサは、急いで風呂場に入った。



 すると、





 ”巨大な狼の化け物”が、風呂場の中に侵入していた。


 しかも、ミレイに喰らいつきそうなほどの至近距離に。





「ッ」




 言葉にならない感情とともに、アリサは力を開放した。






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