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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
魔法少女大戦
124/153

新世界での一歩






「困ったわね」


「ええ」




 フェイトとソルティアが、女子寮の部屋の前で話し合う。

 この部屋の住人は、ミレイとキララ。けれども、ミレイがどこかへ消えてしまい、今はキララが一人だけ。


 ミレイが消えてしまったショックで、キララは完全に塞ぎ込んでいた。

 ここ数日、部屋から出てきた様子もない。




「自分で撒いた種ってのが、よっぽど堪えたのかしら」




 ミレイとキララの関係は、上手く言葉で表現することが出来ない。

 キララの中で、ミレイという存在がどれほどの比重を占めているのか。




「イーニアの髪の毛を白に染めて、ミレイのフリでもさせようかしら。ほら、身長は似たようなもんだし」


「……それは、流石に狂気です」




 ミレイが消えてしまい、みんな大なり小なり心配はしている。

 空を飛べる人間は、すぐさま捜索にも向かった。


 とはいえミレイが、追い込まれたら”案外どうにか出来るタイプ”なのも事実なので。

 皆、それほど深刻には考えていなかった。


 希薄ではあるものの、フェイトはその”繋がり”を確かに感じている。

 だから、ミレイの生存を疑ったりしない。




「それにしてもあの子、何も食べてないけど大丈夫かしら」


「差し入れでもしますか?」


「ええ。こういう時は、心のこもった手料理よ!」




 いつもニコニコしている人間が、ここまで塞ぎ込んでしまうと流石に心配になる。

 フェイトは珍しく優しさを発揮し、キララのために手料理をご馳走することに。




 調理は、もちろん自室で。

 誰も掃除しなくなり、混沌のゴミ部屋と化したあの部屋で行う。




(……思い出すわね)




 フェイトが、まだ普通の人間として生きていた頃。施設で一緒に暮らしていた姉が、自分のために手料理を作ってくれた。


 味は、正直とんでもなかったが。

 胸が温かくなって、とても嬉しかった。


 その時の気持ちを思い出しながら、フェイトは鍋に火を付け。




「あ」




 部屋に溢れていた、得体の知れないゴミ山に引火。

 その中に、よくない物でも混じっていたのだろうか。





 フェイトもろとも、爆発で部屋が吹き飛び。





――きゃー! 火事よー!





 かくして、女子寮は壊滅的な被害を受けた。

















「ミレイちゃ〜ん!!」


「うげっ」




 キララによる抱きつき、もとい突進を受け。ミレイは思いっきり吹き飛ばされる。




「よかった、幻覚じゃない」




 一週間ぶりのミレイを、キララはこれでもかと抱きしめる。


 すりすり、くんくん。

 五感を駆使して、ミレイ成分を摂取していた。




「ちょっと、そこは恥ずかしいって!」




 ミレイとキララが、ギルドのど真ん中でぐちゃぐちゃに。

 そんな様子を、アリサは何とも言えない表情で見つめる。




「これ、大丈夫なの?」


「まぁ、流石におっ始めはしないでしょ」




 アリサの問いに、フェイトが答える。

 数奇な運命を辿った、二人の出会い。




「あんた、異世界人よね」


「ええ」


「どういう世界から来たの?」


「普通の世界よ」


「普通って、どういう普通よ」


「……」




 フェイトからの質問を受けて、アリサは口を閉ざしてしまう。

 しつこい人間、面倒くさい人間は嫌いである。




「仏頂面ね。……あんたみたいのが、なんでミレイについてきたの?」




 そんな問いを受けて、アリサは考える。


 自分がなぜ、ここに来たのか。

 何に惹かれてきたのか。




「……ただ、選んだだけ」


「……そう」




 まだ、アリサにも分からない。















 キララとフェイトに対して、ミレイは改めてアリサを紹介する。




「この子はアリサ。17歳の女子高生です!」


「……年上だった」




 まさか年上だとは思っておらず、フェイトは気まずそうに目を逸らす。




「よろしくね〜」



 キララはすっかり元気である。




「で、戦ったりできるの?」




 フェイトから見て、アリサには特別な力を感じなかった。

 ただちょっと、顔の良い女としか思えない。




「アリサ、ステッキは?」


「ええ、もちろん持ってきたわ」




 アリサは右手の指輪を、待機状態のステッキを見せる。

 最強の魔法少女、その力は健在であった。




「もしかしたら、フェイトと同じくらい強いかも」


「へ、へぇ」




 その言葉は、流石に聞き捨てならず。




「わたしはフェイト。この世界最強の女よ」



 フェイトは、アリサに対抗意識を向ける。




(……大丈夫かな)




 人間嫌いなアリサ。

 果たしてみんなと仲良く出来るのか、ミレイは若干不安であった。















「今はみんな、イーニアちゃんの家で暮らしてるよ。荷物も全部運んであるから」


「わたしと、アリサも暮らせる?」


「うん、もちろん大丈夫だよ」




 一週間ぶり。

 多少の変化がありつつも、ミレイはこの世界へと帰ってきた。



 しかし、アリサにとって、ここは全てが物珍しい”異世界”であり。

 非常に興味深そうに、ギルド内の様子を眺める。




「わたし、その気になれば世界を氷河期に出来るわ。タイマンでも今の所無敗だし、正直他の5つ星が相手でも――」




 そんな彼女の隣りで、フェイトが自分の強さをこれでもかと説明するも。

 アリサはまるで聞いておらず、右から左へ受け流していた。




 剣などの武器を携えた者。

 魔法使いのような格好をした者。

 小さな妖精や、耳の長いエルフのような人間。


 現代日本とは何もかも違う光景に、瞳を奪われる。




「ぐぬぬ」



 あまりにもアリサからの反応が薄いため、フェイトは怒ってどこかへ行ってしまった。






 アリサがぼーっとしていると、そこへミレイがやって来る。




「どう? ここは」


「……まぁまぁね」




 初めての異世界。

 もっと多くを見てみなければ、本当に素晴らしい世界なのかは判断できない。




「彼らはどういう集団なの?」


「みんな、冒険者だよ」


「……冒険者?」


「まぁ、なんでも屋みたいな? 一応国営だから、安心な職業だけど」


「そう。……あなたは?」


「もっちろん! 冒険者だよ」




 ミレイは、テンション高めに冒険者カードを見せつける。

 悲しいかな、未だに”Eランク”のままである。




「わたしも、やってみようかしら」




 せっかく、異世界に来たのだから。

 アリサは第一歩を踏み出すことに。















 ギルドの一番窓口にて、アリサは冒険者登録を行うことに。

 担当者のサーシャは、いつもながら面倒くさそうに対応する。




「名前はアリサ、と」



 頬杖をつきながら、魔水晶に情報を入力していく。




「アビリティカードは出せる?」


「……アビリティカード?」




 初めての異世界用語に、アリサは首を傾げる。




「こうやって、カードを出そうと思えば出せるよ」




 隣りで、ミレイが試しにやってみる。

 彼女の場合、それがアビリティカードなのかは疑問だが。




 この世界で生活する人間なら、誰しも一つだけ手に入る不思議なカード。

 強力なカード、特殊なカードの持ち主なら、クエストの斡旋などで有利になることがある。




「……カードを、出す」




 ミレイを真似て、アリサはカードを具現化してみる。


 すると、




 アリサの手のひらに、光が集い、カードとして形成されていく。



 ”途方もない力”が凝縮され、輝きとして周囲を照らす。



 それは、決して並のカードではなく。





 言葉にできない、虹色の輝きを放つカード。

 最高峰を意味する、”5つ星”のカードが具現化した。





「うわぁ」


「……最近、滅茶苦茶な奴が増えたわね」




 ミレイもサーシャも、そのカードには驚きを隠せない。





 5つ星 『人界剪定機構ケラウノス』


 国や人種を対象とした最上級の破壊兵器。

 全長2000mを超える空中要塞であり、主砲の一撃は街を跡形もなく消し去る。





 カードテキストを読むだけで分かる、まるで悪夢のようなカードであった。




「きっとあなたなら、Sランクに上がるのもそう遠くないわね」




 能力の傾向としては、イリスの持つ”空中戦艦アマルガム”と同じであろう。

 けれども、その脅威度はアマルガムの比ではない。




 この日、超大型ルーキーが冒険者デビューした。








「……」




 発行された冒険者カード。

 最低ランク、Fランクを意味するカードを、アリサは眺める。


 今までの人生で、常に高い成績しか経験したことがなかったため、このFランクというのは中々に新鮮であった。




「これから、イーニアって子の家でお世話になるんだけど。みんないい子だから、仲良く、ね」


「……善処するわ」




 出来る限り、みんなと仲良くしたいミレイと違って、アリサは基本的に人間が嫌いである。

 好きや嫌いは人それぞれで、無理に馴染ませようとは思わない。



 それでも、どうか打ち解けられるように。

 ミレイは願った。






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