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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
魔法少女大戦
123/153

またね






 支配者、レイシーが打ち倒されたことにより。

 魔法少女たちにかけられていた、”洗脳魔法”が効果を失う。


 それにより、一人残らず自由の身になったのだが。




 戦いを終えたアリサが、ミレイの元へと戻ってくる。

 一応、気絶したレイシーを抱えた状態で。




「ミレイ、あの根っ子に命令できる?」


「えっと……」



 アリサの言葉を受けて、ミレイはルビーの顔を見る。




「なにかご要望があれば、仰ってください」


「なら。……城を含めて、ここにいる魔法少女を”全員捕縛”して」




 アリサは、そう要請した。

 少しでも被害を抑えるために。








 洗脳され、操られていた魔法少女たち。

 レイシーという支配者から解放され、彼女たちはどう行動するのか。



 世界に散っていた魔法少女たちが、わざわざ妖精界に戻ってくるわけもなく。

 きっと彼女たちは、それぞれの居場所へと帰るだろう。



 ”魔法少女の力”を持ったまま。



 妖精界で戦っていた少女たちも、解放されたらどう動くのか。

 一刻も早く、こんな場所から逃げて。家に帰りたい、大切な人の元へ戻りたい。そう考えるのが自然であろう。



 それもやはり、力を持ったまま。





 冷静に判断し、妖精界に留まることを選んだ者もいれば、逃げようとして世界樹の根に捕まった者も。

 しかし、何人かの魔法少女はその包囲を突破し、外の世界へと逃走してしまった。


 その中には、”伝説級の魔法少女”も含まれる。





 この一連の騒動の結果。

 ”300人を超える”魔法少女が、世界中に流出した。





 これから世界は、混迷の時代へ突入する。

 魔法少女が世界に溢れ、妖精界の存在も知られてしまった。




 新たなる支配者は倒され、誰にも制御できない世界へと。

 本当の意味での、魔法少女大戦が起きる可能性もある。




 それが、この世界のこれから。

 ”魔法少女の時代”が始まる。

















「お城に泊まるのは、初めてかな」




 夜になり。

 ミレイはお城のテラスから星を見る。


 煌めく星々の海と、巨大な異界の門。

 そこから伸びる世界樹の根が、大人しく佇んでいる。




「マスター。わたしたちは、元の世界へと帰ります」




 テラスにいるのは、ミレイ一人だけではない。

 花の妖精ルビーが、最後の挨拶を行う。




「また会おうね」


「はい。いつでも呼んでください」




 どんな奇跡なのかは分からないが。

 一度会えたのなら、きっとまた会えるだろう。


 ”自分の持つ力”を、ミレイが理解することが出来れば。





 世界樹と妖精、シャンビアとルビーが元の世界へ戻っていき。

 やがて、巨大な異界の門も消失した。








 ミレイが一人で星を見つめていると。

 そこへ、アリサがやって来る。




「女王も他の妖精も、全員無事らしいわ」


「よかった〜」




 問題は山積みだが。

 それでも、確かに妖精界は救われた。




「ここも、すぐに元通りになるでしょうけど。世界が放っておかないでしょうね」


「これから、どうなるんだろ」


「さぁ、想像も出来ないわ」




 レイシーと魔法少女の手によって、世界中の軍隊は力を失い。

 追い打ちをかけるように、無秩序で強力な魔法少女たちが野に放たれた。




「国や組織が、どう動くのか。いえ、もう動いてるでしょうね」


「……」




 魔法や神秘に満ち溢れた、異世界ならまだしも。

 この現代の地球において、どれほどの影響をもたらすのか。


 どうしようもなく、世界は変わっていく。




「あなたが気にする必要はないわ。この世界の問題は、この世界で解決するしかない」




 世界を支配しようとする者、レイシーの野望は打ち砕かれた。


 なら今はそれでいい。


 これからの問題は、これから考えていけばいいのだから。















「――望まぬ力、望まぬ役割を与えられて。あなた方には、大変なご迷惑をおかけしました」




 玉座の間に、アリサを含む数十人の魔法少女たちが集められる。

 洗脳が解けた後も、冷静に留まることを選択してくれた者たち。



 フレイヤとレジーナという、二人の伝説級魔法少女に。

 天使えんじぇるを筆頭とする、問題児たちも含まれる。




「妖精族を代表して、謝罪します」



 そんな魔法少女たちに、女王は頭を下げる。




「ひとまず、レイシーという大きな脅威は去りましたが。これより世界は、大きな混乱の渦に突入するでしょう。――そこであなた達に、ある”お願い”をしたいのです」




 ここに残ってくれた、全ての魔法少女たちと。

 女王は、これからのことを話し合う。










◆◇










 決戦から一夜明け、ミレイとアリサは玉座の間へと招かれた。




「昨日はとても忙しかったので。改めて、お礼を申し上げます」


「いえいえ」





 ここにいるのは、女王とミレイ達のみ。


 魔法少女絡みではない、”別の問題”を解決するためにここへ来た。





「さて、ミレイさん。あなたは遠い異世界の出身だと聞きましたが」


「はい」


「あなたの魔法なら、彼女を帰せるんでしょう?」




 それを、コロンボから聞いたからこそ。

 アリサはここまで戦ってきた。




「不可能では、ないと思いますが……」




 一人の人間を別の世界へ送る。

 その難易度などの観点から、女王は思い悩む。




「元の世界と繋がりの深い、何か”強力なアイテム”などはありませんか?」


「アイテム?」


「ええ。それがあれば、かなりスムーズに魔法を起動できるのですが」




 そんな、女王の言葉を受けて。




「これなんかは、どうですか?」



 ミレイは黒のカードを具現化した。




 その”得体の知れない物体”に、女王は眉をひそめるも。




「試してみましょう」



 黒のカードを基点として、魔法を起動することに。








 女王が魔法の準備を行っている間。

 ミレイとアリサは、最後のお別れを行う。




「アリサは、これからどうするの?」


「わたしを含めた何人かの魔法少女は、女王の要請で”ステッキの回収”を行うことになったわ」


「そう、なんだ」




 これから先、この世界は混乱の渦へと突入する。

 それを少しでも沈静化できるよう、何人かの魔法少女は妖精界に協力することに。




「簡単に行き来できるなら、わたしも協力したいけど」




 ミレイが顔を向けると、女王は首を横に振った。




「残念ながら、世界を繋げるのは非常に難易度が高いので。よほどの奇跡が起きない限り、再会は難しいでしょう」




 世界というのは、本来ならば決して重ならないもの。

 アヴァンテリアのように、門が頻発する方が異常である。


 この世界へと繋がる門が、いったいどれほどの確率で生まれるのか。




「やっぱ、嫌だな。こういうのって」


「こういうの?」


「また明日、くらいならいいけど。次にいつ会えるのか分からないのは、ちょっと悲しい」




 せっかく友だちになれたのに。

 もっともっと、色々なことを知りたいのに。




 別れは、大嫌い。


 そんなミレイの表情を見て、アリサは――















 女王が生み出したのは、渦のような形をした魔法のゲート。

 異界の門と比べると、明らかに仕組みが違っていた。




「前を見て、決して振り返らずに進んでください。元の世界に帰りたい、誰かに会いたいという”強い思い”がないと、目的地には辿り着けません」


「……分かりました」




 女王の話を聞いて、ミレイはゲートのもとへ向かい。

 最後に、振り返る。




「じゃあ、またね」


「ええ」




――いつか、また会う日まで。



 言葉と約束を重ねて、二人は別れた。










◆◇


◆◇









 この世のどこでもない。

 次元の狭間を、ひたすらにかき分けて。



 ただ前だけを見つめながら、ミレイは歩みを進め。

 そこへ、手を伸ばした。







 渦を越えると、そこは見覚えのある風景。

 帝都にある、”ギルド本部”の中へと辿り着いた。



 突如現れたミレイに、周りにいた人々はざわめき。

 ミレイは、ゆっくりと深呼吸を行う。




「うん、この匂い」



 一週間ぶりの匂いに、ミレイが安心していると。




「よかった、帰ってきたのね」



 受付にいたサーシャが出迎えてくれる。




「一週間も留守にして、みんな死ぬほど心配してたわよ」


「へへっ」


「ちなみに、女子寮は火事で使えなくなったから」


「なんで!?」





 一体、この一週間で何があったのか。





「それで、”そっちの子”は?」


「へ?」




 そっちの子。

 よく分からない言葉を受けて、ミレイが後ろを向くと。





 何食わぬ顔で、”アリサ”がそこに立っていた。





「……」


「なるほど、これが異世界の香りね」




 ミレイの真似をするように、わざとらしく息を吸っている。




「アリサ、なんで?」


「……冷静に考えて、あれ以上協力する義理もないと思って」





 一年前は、バラ撒かれたステッキを回収して。

 今回の事件では、敵の親玉をぶっ飛ばした。

 これだけ無償で働いたのだから、もう十分であろう。


 故に、アリサはついてきた。





「よろしく」















「やはり、行ってしまいましたか」



 消えゆくゲートを見つめながら、女王はつぶやく。




 女王は、アリサを止めなかった。

 最強の魔法少女とはいえ、彼女に頼り切りではいられない。





「それにしても、”ミレイ”とは」




 異世界からやって来た、あの不思議な人間を思い出す。




「単なる偶然でしょうが、なんとも不吉な名前ですね」




 かつて故郷を壊滅に追いやった、あの”忌まわしき魔女”と同じ名前。


 一筋縄ではいかない、彼女たちの行く末を祈った。






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― 新着の感想 ―
[一言] 前回の返信で「まさか…!?」ってなってけどやっぱりミレイでしたか ミレイはいろいろイレギュラーな存在だけど、九条とかとちがって異界の門に入った時の経緯もないし、普通の日本人だったはずのミレイ…
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