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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
魔法少女大戦
120/153

愛の劇薬






「まさか、こんな事になるとは」


「えへへ、そうだね〜」




 帝都最強決定戦、準決勝。

 その対戦者である、”ミレイとキララ”が武舞台の上で向かい合う。






「普通に戦えば、わたしが勝ってたのに」



 試合の様子を、フェイトは観客席から見つめる。

 彼女が失格になったがために、不戦勝という形でキララは準決勝に上がっていた。




「いえ、そうとも限りませんよ」



 その隣では、同じくソルティアも観戦している。




「キララさんは、ああ見えて恐ろしい方なので。フェイトさんに勝つ方法も、しっかり”準備”していたはずです」


「うっそ」




 キララという人間の異常性。

 実際に戦ったりしない限り、それは理解出来ないものである。






「対戦表を見たときから、こうなるのを想像してたんだよ〜」


「え、本当?」




 すでに試合は始まっているというのに、二人はいつも通りの空気で話をしていた。


 ミレイは憑依融合スタイルを止めて、魔導書入りのバッグを装備。

 対するキララも、弓を構える素振りすらない。


 この二人の間に、戦いという文字は似合わなかった。




「ミレイちゃんのために、”特製のお薬”も用意したし」


「……え?」



 ミレイの笑顔が、氷のように固まる。



 そんな彼女の様子などお構いなしに、キララは懐から謎の小瓶を取り出す。

 小瓶の中は、キラキラと輝く”ピンク色の液体”で満たされていた。




「なにそれ」


「お薬!」




 キララは満面の笑みを浮かべている。




「なんで、そんなのを出したの?」


「え? なんでって、……”今から使う”からだけど」


「!?」



 衝撃的な一言に、ミレイは気絶しそうだった。




「なんで急に? さっきの試合とか、使ってなかったじゃん!」


「えぇっと、実はさっきも使ってたんだよ? 常人なら動けなくなるような猛毒を、わたしとソルティアさんの”両方に”」


「両方!?」




 キララが何を言っているのか、ミレイには理解出来ない。




「フェイトちゃんを騙すために、できるだけ”弱く”見せたかったんだ〜 お互いに猛毒で弱ってて、”レベルの低い戦い”を見せれば、十分に油断してくれると思って」




 少し前に行われた、キララとソルティアの試合。

 当事者以外には分からなかったが、実は両者ともに猛毒で動きが鈍っていた。


 互いに弱った状態で、”なおかつ必死に戦って”。

 それをフェイトに見せることで、油断を誘う作戦であった。




「流石に、”本気”のフェイトちゃんには打つ手がないけど。最初に油断した状態なら、場外に落とす方法はいくらでもあるから」




 ゆるふわに微笑みながらも、内心では誰よりも”真剣(マジ)”で勝ちに来ている。

 それが、今日のキララであった。




「もしかして、わたしにも猛毒を?」



 小瓶を手にしたキララを見て、ミレイは後ずさる。




「そんな! ミレイちゃんに危険なものは使わないよ〜」


「だ、だよね〜」



 その言葉に、ミレイはとりあえず安心するも。





「これは単純に、”エッチな気分”になるお薬だから」





 続く一言に、開いた口が塞がらなくなる。




「え」


「じゃあ、行ってみよ〜」


「ちょ、ちょっと」




 制止の声など関係なく。

 キララは小瓶を開いて、その中身を武舞台に拡散させた。



 ミレイは、その場から一歩たりとも動けず。

 蛇に睨まれた蛙のように、拡散する薬を見続けて。





――瞬間、魔力が”覚醒”した。





 まるで、酒を摂取した時のように。

 ミレイの容姿が、完全なる大人のそれに変化。


 内に秘められた魔力が、湯水の如く溢れ出す。




「あ、あれれー?」



 その覚醒は、キララにも”想定外”であった。




「お酒とかは入ってない、本能を刺激するタイプのお薬なのに」



 覚醒したミレイに、キララが動揺していると。




「つまり、これが”あいつの本能”ってことでしょ」



 試合を見ていたフェイトが、武舞台に飛んでくる。




「フェイトちゃん?」


「まったく、とんでもない薬を作ったわね」




 フェイトは体から魔力を放出し、舞っていた薬を会場の外へと吹き飛ばした。




「……思えば、”酒がトリガー”っていう認識自体、間違ってたのね」




 ミレイが、この状態に移行する条件。

 今までずっと、その原因はアルコールにあると考えられていた。


 しかし、それは真実ではない。




 ”理性の消失”。

 それが、全ての起因になっていた。




 ”理性”が失われることにより、抑え込まれていた”本能”が解放される。

 普段のゆるい感じのミレイでさえ、しっかりと”セーフティ”の役割を担っていた。


 ある時は、アルコールが原因でセーフティが緩み。

 そして今回は、キララ手製の”媚薬”によって、ミレイの理性は完全に崩壊した。



 しかし、今回ばかりはいつもと様子が違うようで。




「ッ」



 大人モードのミレイは、顔を真っ赤にしながら自分の体を抱きしめていた。


 とりあえず暴力という、いつもの様子とは違い。

 明らかに媚薬の効果に苦しんでいる。




 もはや、暴走どころではない。

 大人モードのミレイにとって、媚薬は完全に弱点であった。




「……凄いわね、あんたの薬」


「えへへっ」




 キララ特製の魔法薬は、どんな化物にも通用する。





「くっ、何だこれは」



 自分の体に戸惑い、ミレイは動けない。

 地面にぺたんと座り込んで、顔を真っ赤に染めていた。



 この時点で、すでに無力化されたようなものだが。



 そんなミレイのもとに、キララがじわじわと近づいていく。

 満開に咲く花のように、”とびっきりの笑顔”を浮かべながら。




「ミレイちゃ〜ん」


「ッ、近寄るな!」




 ミレイが言葉で制止しても、キララは止まらない。

 大きくても小さくても、ミレイはミレイなのだから。




「安心して? ”優しく”、場外に落としてあげるから」


「この変態めッ!」




 キララを止めようと、ミレイは持っていた魔導書をぶん投げる。

 しかし、そんなものでは止められない。




「サフラ!」



 いざという時の最終手段、体内のサフラに呼びかける。

 だがしかし、




『……無理だ』



 彼にも媚薬の影響が出ているのか。

 ミレイの腕から、真っ白な触手がだらりと伸びる。


 どう見ても、まともに戦えるようなコンディションではない。




「くっ、どいつもこいつも役立たずめッ」




 まるで頼りにならないため、ミレイは魔導書と同じようにサフラをぶん投げた。

 とはいえ、やはり効果はなく。




「えへへ」



 サフラはキララに捕獲され、にぎにぎと可愛がられていた。





「……とんでもない試合ね」



 あまりにも酷すぎる内容に、フェイトも呆れるしかない。





「くっ」



 近づいてくるキララに、ミレイは為す術がなかった。

 逃げようとはしているものの、腰が抜けて動けない。




 このままでは、”屈辱的な行為”をされるに決まっている。

 大人モードのミレイにとって、それは何としてでも避けたかった。



 故に、プライドすら投げ捨てる。




「――ミーティア!!」




 ミレイの選んだ道は、”逃走”。

 召喚したミーティアの背中に、なんとかしがみつくと。




「さっさと逃げろ!」


「ピー!?」




 もの凄く必死な形相で、ミレイは会場から逃げ出した。





「――待って、ミレイちゃーん!!」





 キララが手を伸ばすも、ミレイとミーティアは流星のように消えていき。

 二度と、会場には戻らなかった。








「ピ〜!!」




 混乱したミレイに、滅茶苦茶な舵取りをされながら。

 ミーティアは超スピードで南に飛行。


 大陸を飛び出して。

 南にある島国、”武蔵ノ国”の上空までやって来る。




 常闇の国、武蔵を象徴する”巨大な黒雲”。

 様々な怪異の元凶とされるそれに、ミレイとミーティアは突入した。




「ピー!?」


「黙って飛び続けろ!」




 できるだけ、あの変態から距離を取るために。



 雷の直撃を受けながらも、ミーティアは必死に飛び続け。



 やがて彼女たちは、この世界から消失した。










◆◇










(思い、出した)



 ミーティアの背中に乗りながら、湖に浮かび。

 そのさなかに、ミレイは忘れていた記憶を思い出した。




「……ごめんね、わたしのせいで」


「ピー」




 暴走したミレイが悪いのか、原因を生み出したキララが悪いのか。

 こんな異世界に来てまで、ミーティアは振り回されていた。




 上空を見上げてみれば、三人の魔法少女がミレイを見下ろしている。

 こちらにはもう、戦う手段が残っていない。



 しかしそれでも、ミレイは諦めない。




「……そろそろ、行けるかな」




 黒のカードを呼び出して、望みを繋げることに。

 小さな光の輪が発生し、中から新たなカードが姿を現す。





 1つ星 『盗賊の短剣』


 盗賊が好んで使う短剣。軽くて使い勝手がいい。





「……あらま」



 残念なことに、幸運は舞い降りなかった。




 カードの力に頼れないのなら、もう”最終手段”に頼るしかない。

 ミレイは、懐から小瓶を取り出す。




(まだ割れてない)




 幸いにも小瓶は無事であり、中身を飲むことは可能である。


 しかし、躊躇いを捨てきれない。




(本当に、これでいいのかな)




 初めて思い出した、暴走した時の記憶。

 自分の中に秘められた”本性”を、さらけ出すのが怖かった。















 ミレイが、湖に浮かんでいる頃。

 アリサは城の中で、敵の総大将と戦っていた。




「ッ」




 魔法少女、アリサ☆ブレイヴ。

 彼女の持つ剣は、唯一無二の力を持ち。



 対峙する伝説の魔法少女、レイシーの持つ剣にも劣らない。



 だがしかし、




 ”聖剣の魔法少女”、レイシー☆フルムーンレクト。




 彼女が有するのは、絶大な力を持つ”七本の聖剣”。

 ”そのうちの一本”を相手に、アリサは互角に持ち込むのが精一杯であった。




「……弱いわね。この程度の相手に好き勝手されるなんて、役立たずばかり」




 一本の聖剣を魔法で動かし、それでアリサを翻弄する。

 レイシーにとって、これは戦いにすらなっていなかった。




 それでも、アリサは必死に食らいつく。




「ステッキを破壊したというのは、どういう意味なの?」


「言葉の通りよ。あなたみたいな適合者に奪われたら、やっぱり脅威になるもの。脅威は確実に取り除かないと」


「……随分と、用心深いのね」




 いくら、その可能性があるとはいえ。

 ”伝説級のステッキ”を破壊するとなると、簡単には決断できないはず。




「イレギュラーは排除したいのよ。特に、あの”竜使いの女”は」


「竜使い?」




 竜使いと聞いて、思い浮かぶのはミレイ一人。

 しかし、目の前にいる彼女との関係性が分からない。





「――そもそも”あれ”が現れなければ、こんな事態にはなっていなかった!」






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― 新着の感想 ―
[気になる点] ある意味キララが原因ってこういうことか() ミレイが帰るのが先か キララが精神崩壊するのが先か…気になるなあ
[一言] …………め、滅茶苦茶くだらない理由で異世界にきてるんだけど!? 暴走モードの仕様がわかったのは確かに成果だけど、その対価として元に戻ったミレイを筆頭にたくさんの方々に迷惑かかってるし!? で…
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