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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
花の都の冒険者
12/153

まだ見ぬ世界




 ミレイとキララ。そして、大勢の人々が暮らす大地、ボルケーノ帝国。

 広大な領土を誇るその国の、遙か上空。雲の上の世界に。


 その大陸は存在した。


 地上とは違い、その大陸に人間は居ない。

 そこに生きるのは、全てが強大な力を宿した”魔獣”たち。

 地上のそれとは比べ物にならないほどの魔獣たちが群雄割拠し。

 いかなる強者をも退ける、人類未開の地。


 かつて、国1つを焼き滅ぼしたとされる、邪悪なる竜の伝説など。

 人類にとって、脅威でしか無いその土地から。



 激しく燃え盛る、1つの”火球”が降ってくる。

 遙か先にある地上。帝国の大地へと向かって。



 それは意思持つモノ。

 そして人とは、決して相容れることは無い。


 新たなる災いの兆しが、人知れず迫っていた。







「うわっ、すっごーい!」


 花の都ジータン、その市場通りにて。


「人がいっぱいだ。」


 活気づく人々の様子を見て。

 ミレイとキララは共に興奮の声を上げた。


 ジータンの街では、古くより露店文化が根付いている。

 飲食店や商店なども、実店舗を構えている店は少なく。

 他の行商人などと共に、通りで店を開くことが多い。


 それ故、特に露店の多い通りは、市場通りと呼ばれており。

 この街の中心となっていた。



「この街、こんなに人が居たんだね。」


「うん! なんだかお祭りみたい。」


 見慣れない街の様子に驚きつつも。


「いこっか。」


「うん。」


 2人はそれを楽しむべく、活気の中へと足を踏み入れる。





 見たことのない品物。不思議な商品が大量に存在し。

 どれもこれも、つい目移りしてしまう。


 店や商人がいっぱい居て。平常時よりも、住民の数が多いだけ。

 ただ、それだけのことではあるが。

 まるで、日本のお祭りみたいだと、ミレイは思った。


(あんまり、人が多いのは慣れてないからなぁ。ちょっとドキドキする。)


 僅かばかり、不安は存在するものの。

 隣にはキララも居るために、心配は無い。


 だが。


「……わたし、こういうの初めてだから。ちょっと怖いと言うか。むしろ、気持ち悪いと言うか。」


 キララの顔色は、先程よりも明らかに悪くなっていた。


(あぁ。キララは田舎出身だからなぁ。)


 慣れない状況に、辟易しているキララを見て。



「えっ。」


 ミレイは何も言わずに、そっと手を握ってあげる。


「ほら。はぐれないように気をつけよう。」


 年上らしく。

 ミレイは優しく微笑んだ。


「……うん。ありがとう、ミレイちゃん。」


 気持ちが溢れてしまいそうで。

 キララは小さく呟いた。





 そうして、2人が色々な店を物色していると。


「あれ?」


 見知った顔を見かけて、ミレイは歩みを止める。


 昼間にランチを共にした、受付嬢のソルティアである。


 植物を扱う、他の土地から来た行商人の店であろうか。

 その店先で、食い入るように商品を見つめている。


「ソルティア。仕事に戻ったんじゃないの?」


 そう声をかけられて。

 ソルティアは2人の存在に気づく。


「おや、お二人とも。相変わらず仲が良いですね。」


 その言葉に、キララはご満悦であった。


「てっきり、ソニーと一緒にギルドに戻ったのかと。」


 常識的に考えて、そうなるはずであった。


「いえ、まぁ。せっかくの賑わいですから。仕事に関しては、頼りになる後輩も居るので。」


「……お前、人の心は無いのか。」


「大丈夫ですよ。そもそも、ソニーちゃんは人混みが苦手ですし。わたしが知る限り、物欲もほとんど有りませんから。」


「へぇ。なるほど。」


 果たして、それを理由にして、自分がサボるのは有りなのだろうかと。

 ミレイは思ったが、思うだけに留めておいた。


「ソルティアさん、何か欲しいものでもあるんですか?」


 そう、キララに尋ねられて。

 ソルティアは僅かに笑みを浮かべる。


「ええ。少々、珍しい植物に関心がありまして。何か良いものがあれば、部屋にでも飾ろうかと。」


「珍しい植物、ですか?」


「そんなの、この街ならいくらでも手に入るんじゃ。」


 なんと言っても、この街は花の都である。

 他の土地では手に入らない、希少な花々の宝庫である。



「あぁ、わたし、綺麗な花とかが、”大の苦手”なんですよ。」



「「えっ?」」


 その言葉に、2人は驚きをあらわにする。


「生まれた時から、ずっとこの街で暮らして。もう散々見慣れてますからね。正直、勘弁してくれ、というのが本音です。」


「な、なるほど。」


 そんな気持ちを抱えたまま、この街で生活しているのかと。ミレイは中々に衝撃を受ける。


「”魔獣大陸”辺りから来た、希少な植物でもあれば良いんですが。」


「……それって、ギルドが飼育禁止にしてるやつなんじゃ。」


 ミレイにはさっぱりだが。

 キララには知識があるようだった。


「ふふっ、冗談ですよ。」


 抑揚のない声で、そう言いながら。

 ソルティアは2人の前を後にし、人混みの中へと消えていく。


 愉快そうに歪んだ、その最後の口元を見て。


(怖いなー)


 ミレイはちょっと、ホラーな気持ちになった。






 そんなこんなで、知人との遭遇もありながら。

 2人は気を取り直して、市場通りを物色していく。


 知らない物、珍しい物が次々と目に入り。

 ついつい目移りしてしまう。


「可愛い服とかも、結構あるね。」


「うん。どれもミレイちゃんに似合いそう。」


 服に対する視点が、二人して異なるものの。

 ミレイは気にしないことにした。


「この前のやつよりも、だいぶお手頃価格だよね。」


 ミレイが引き合いに出すのは、キララに買ってもらった”フリフリのワンピース”。


「まぁ、あれは帝都の高級ブランドだからね。」


 プレゼントしたキララにとって、値段は関係無い様子だった。


「そんな服を着たまま、カミーラさんの依頼を受けるんじゃなかった。」


「……大丈夫だよ。臭いだけなら、洗濯でなんとか。」


 危うく、お気に入りの服が台無しになるところであった。





「――”カシウスのカラクリ人形”だよ〜、安いから見てって〜」


 人形、というよりも、ぬいぐるみらしき物を売っている店が目に入る。


「ねぇ、カシウスってなに?」


「ずぅ〜と、北の方にある街だよ。分厚い雲に覆われて、一年中日光が届かないから。通称、”常闇の都”って呼ばれてる。」


「へぇ。なんかカッコいい。」


 見知らぬ土地の情報に、ミレイは心を躍らせる。




 そのすぐ近く。

 他の店の前では、地元の主婦たちが集っていた。


「これ見てちょうだい。”ヴァルトベルク産の竜皮”ですって。」


「本物なのかしら。」


 ゴツゴツとした、革製の財布を見つめている。


「これを身につけてると、野生の魔獣に襲われなくなるらしいわよ。」


「あらやだ。この街じゃ意味ないじゃない。」



 耳に入る全ての情報が、ミレイにとっては真新しく感じられる。



「ヴァルトベルクっていうのは、ここから西に行った所にある町だよ。」


 気になっているだろうミレイに対し、キララが言葉の意味を教えてあげる。


「この国で一番危険な土地って言われてるけど。それ以上に、凄腕の冒険者が山ほどいるんだって。」


「へぇ。」


 知れば知るほど。

 自分がまだ、この世界のほんの一部しか体験していないことに気づく。


「ホントに、色んな場所があるんだね。いつか行ってみたいや。」


「うん、わたしも。ミレイちゃんと一緒に行きたいな。」


 手を繋いだまま。

 2人は同じ道を歩んでいた。









 様々な土地の特産品に目を通して。

 多くの情報を見聞きするほど、まだ見ぬ世界への興味が溢れてくる。


(これ、ずっと見てられそうだな。)


 そうして、市場通りを歩いていると。



「――さぁ、良かったら見ていって。この国じゃお目にかかれない、驚きの商品がずらり。」



 どこか、聞き覚えのある声に。

 ミレイは振り返る。


「浮遊大陸だけじゃなく、異世界から来た珍品もあるよ。」


 そこで店を構えていたのは、ミレイがこの世界に来たばかりの時に、お世話になった恩人。

 馬車の青年であった。


「……あの人は。」


 思わぬ再会に、ミレイの足は動き出す。






「これは驚いたな。まさかまた会えるなんて。」


「はい。先日はどうも、お世話になりました。」



 ミレイは、礼儀正しくお辞儀をする。


 目の前の彼が居なかったら。

 もしかしたら、この街に辿り着くことすら無かったかも知れないのだから。



「そう言えば、名乗ってなかったね。俺は”カイラ”。世界を股にかける大商人、……まぁ、その卵ってところかな。」


 出会った時と何ら変わらず。

 青年カイラは優しそうに笑みを浮かべていた。


「わたしはミレイです。こっちは友達のキララ。わたしたち2人で、一緒に冒険者をやってるんです。」



 そう紹介されるも。

 キララは、小さなミレイの体を盾にしたまま。


 カイラの方を、じっと睨んでいた。


 警戒心、というよりも、敵意が剥き出しである。



「いやでも、やっぱり凄いね。君のようなレディが、まさか見知らぬ土地で冒険者になる道を選ぶとは。」


 彼にとっても、それは完全に予想外の事実であった。


「俺が思っていたよりも、ずっと肝が据わってるらしい。」


「あはは。まぁ、単に考え無しなだけかも、ですけど。」


 そんな、思いがけない再会を果たし。




「さぁ、どうぞ見てくれ。うちの自慢の商品だ。」


 自分の店の商品に、余程の自信があるのだろう。

 その謳い文句に、興味を持って目を通す2人であったが。


「……うーん。」

(これは、なんと言えば良いんだろう。)


 商品のラインナップに、ミレイは言葉が詰まる。


 カイラの広げている商品は、他の店のそれとは明らかに毛色が違っていた。


 よく分からない昆虫のホルマリン漬けらしき物に、やたらと古臭い電子部品らしき物。

 その隣にはシマウマのような毛皮が置かれ。

 挙句の果てに、柱にはサーフボードが掛けられている。


(なんだろう。地元のリサイクルショップ感がエグい。)


 ミレイは妙な懐かしさを覚えた。




「――何ていうか、”ガラクタ”ばっかですね。」




「ちょっ、」


 臆すること無く言い放ったキララに、ミレイはドキッとする。



 キララは、一見いつも通りに見えるものの。

 その”笑顔”は、完全に凍りついていた。



「手厳しいなぁ。どれもこれも、ちゃんと使い道があるんだけど。」


「……まぁ、それはそうでしょうけど。やっぱり、ラインナップがちょっと。」


 他の店の商品は、みな興味を惹かれる不思議な品ばかりであったが。

 この店の商品は、ミレイにとっては夢も欠片もない代物ばかりであった。


 だが、そんな中から。


「あっ、これ。ファミコンのソフトじゃん。」


 ミレイは馴染み深い物品を手に取る。


「何のゲームか分かんないけど。ちょっと感動かも。」


 まさか、この世界でゲームに出会えるとは思わず。

 ミレイは感慨にふける。


 すると。



「えっ、ゲーム?」


 ゲームという単語に、キララが強く反応する。



「そうだけど。興味ある?」


 そう言って、手渡されたゲームソフトを。

 キララは食い入るように見つめる。


「……これがゲーム? こんな物が、ミレイちゃんの大好き?」


 この謎の物体に、一体どれほどの魅力が詰まっているというのか。



 キララには理解が出来ず、ひたすらにソフトを睨みつける。



 そんな様子を見て。

 店主であるカイラは苦笑い。


「なんだか、変わった子だね。」


 可愛い見た目とは裏腹に。

 何にでも敵意を向ける、番犬のような少女だと思った。


「あぁ、普段は良い子なんですよ? どうも、初対面の男の人には、ちょっと緊張しちゃうみたいで。」


 ミレイには、”そういう認識”であった。


 だが、目ざといカイラには、そうは思えず。


「そういう反応じゃ、なさそうだけどね。」


 そう呟くも。


「?」


 ミレイには理解が出来ず、首を傾げた。






「あっ、この人形。」


 ミレイは、ボサボサ髪の”トロール人形”を見つけ、手に取る。


(たしか、髪を撫でると幸運が訪れるんだよな。)


 その人形の存在は、前の世界の時から知っていた。

 だが、実際に巡り合うことはなく。

 まさか異世界に来てからお目にかかれるとは、と。


 ミレイは運命を感じずにはいられない。


「カイラさん、この人形っておいくらですか?」


「……あぁ。その人形は、ケッタマンに暮らす異世界人から手に入れた代物でね。」


 カイラは、諸々の計算を頭で行う。



「ざっと、”800G”ってところかな。」



「はっぴゃく!?」


 その想定外の価格に、ミレイは声を荒げる。



「なんと言ったって、この世界じゃ手に入らない貴重品だからね。それくらいの値は必要なのさ。」


 世界が変われば、色々と事情も変わるのだと。

 ミレイはしみじみ実感する。


「……800Gかぁ。」


 前の世界で、買っておけば良かったと。

 ミレイは深く、後悔した。







 時は流れ、その日の夜。

 カミーラ家では、昨日と同様に3人揃っての夕食が行われようとしていた。

 唯一の違いは、酒が一滴も存在しないこと。

 だがそれだけで、何よりも平和な食卓へと変わっていた。


 すっかり料理担当となったキララが、鼻歌交じりに調理を行い。


 その出来上がった料理を、何故かミレイのカードである”パンダファイター”が配膳している。



 その様子に、当のミレイ本人が一番驚いていた。



「……なんでアイツ、”勝手”に出てきて、勝手に飯を運んでるんだ?」


 そう。パンダファイターはミレイの意思とは関係なしに実体化し。

 しれっと配膳係と化していたのだ。


 同じく、食卓につくカミーラは、何とも言えない表情で見つめている。


「……あまり気にするな。アビリティカードにだって、所有者に尽くしたい時があるんだろう。」


 カミーラに言えるのは、ただそれだけだった。


「まぁ、お前が”何枚”カードを持っているのかは知らんが。優しく扱ってやれよ?」


「あっ、はい。了解です。」


 昨日の夜、あれだけの惨劇を生み出したのだから。

 カミーラには、ミレイの特殊な事情がお見通しなのだろう。


(家に住まわせてもらってるんだし。変に誤魔化さなくていいか。)


 ミレイも気にしないことにし。


「あっ、そうだ。」


 思い出したように、ミレイは1枚のカードを実体化させる。



 3つ星カード、”ドリロイド”。

 色の薄くなったカードである。



「朝起きたら、実体化したこいつが”バラバラ”にぶっ壊れてて。これって、直るんですか?」


 ミレイが手に持ったカードを見て。


 カミーラは思わず、ギョッとする。



「……”ぶっ壊した”の間違いだろうに。」


「はい?」


「いや、何でも無い。」


 思わず漏れてしまった本音を、カミーラは誤魔化す。


「まぁ、それに関しては心配するな。カードには自己修復機能があるからな。」


 カードの持つ機能を、ミレイに説明する。


「完全に白紙化してしまったらどうしようもないが。色の薄くなった程度なら、1週間もすれば直るだろう。」


「なるほど。そういう仕組みなんだ。」


 どういう原理なのかは不明だが。

 よく出来たアイテムだと、ミレイは感心する。





「さぁ、いっぱい食べてね。ミレイちゃんは大盛りだよ!」


「ありがとう、キララ。」



 3人揃って、食事を行う。



「パンダもありがと。」


 ミレイに感謝の言葉を伝えられ。

 パンダファイターは、とても礼儀正しくお辞儀をする。


「お前、そんなキャラだったのか。」


「あはは。」



 他愛のないことで笑い。

 美味しい料理に、温かさを感じる。


 何でも無い幸せを、当たり前のように享受できる。



 まだこの世界の、”ほんの1%程度”しか知り得ていないが。

 それでも、とても楽しかった。







 深夜。

 ミレイとキララの2人は、同じ部屋で眠りにつく。


 当然、布団は別々である。


 明日は普通にクエストを受けるため。

 しっかりと寝ようと心がけるミレイであったが。



「……ねぇ、ミレイちゃん。」


 キララに声をかけられ、目を開く。


「なぁに?」


 眠気混じりに声を出す。


 朝もそうではあるが、基本的にミレイの身体は眠気に抗うのが苦手であった。



「ミレイちゃんって、元の世界に帰りたいって思ってる?」



「……どうして、そんな事を聞くの?」


 ミレイは、優しく問いかける。



「あのカイラって人と、異世界の話で盛り上がってたから。」



 きっとその時から、キララはずっと気になっていたのだろう。


 気になって気になって。

 どうしても眠れそうにないから、ミレイに直接聞くことにしたのだ。



「――多分、だけど。元の世界に、もう未練は無いかな。」


 ミレイは眠たい頭を働かして、自分の考えを答える。


「今の生活は、すっごく楽しいし。それに何より、”キララが居る”から。」


 それは、単純な理由であった。


 普段は表立って態度には出さず。

 どちらかと言うと、キララに対しては受け身になる事が多かったが。



 ミレイという人間は、何よりも”友達キララ”を必要としていた。



 他の誰が思うよりも、ずっと強く。

 むしろ深刻なまでに。



「……そっか。なら、嬉しいなぁ。」


 僅かに漏らしてくれた本音に。

 キララは胸のつかえが下り、ポカポカと温かくなる。




「――それにしても、やっぱりあの人形は高すぎるよ。」


 カイラの名前が出たせいで。

 ミレイは、その存在を思い出してしまう。


「精々、2〜30Gが関の山だろうに。」


 今度はそれが気になって、眠気が散ってしまった。


「あの人形、欲しかったんだね、ミレイちゃん。」


「……まぁ、そこまでじゃないけど。」


「ふふっ、素直じゃないなぁ。」


 小さくて意地っ張りで。

 本当に見てくれだけなら、キララの方が年上のようだった。


「そう言えばミレイちゃん、今日はまだカードを出してないんでしょ? もしかしたら、何か良い物が出てくるかも。」


「あっ、確かにそうだ。」


 今日が終わる前にと。

 ミレイは黒のカードを取り出す。


(パンダすら出てくるんだから。可能性はゼロじゃない。)



 一握りの希望を掛けて。

 ミレイは、就寝前のガチャへと興じる。



 黒のカードから、光の輪が生じ。

 中から1枚のカードが出現する。



 現れたカードのランクは、”星2つ”。

 その名も、『太っちょピエロ人形』であった。



「おおっ。」


 本当に人形が出てきたことに、もはや驚くしか無い。



「見せて見せて。」


「うん。」


 キララにも急かされて。

 ミレイはカードを実体化させる。



 すると文字通り。

 肥満体型のピエロを模した人形が出現する。


 何かのカラクリが働いているのか。

 その人形は勝手に動き出すと。



 奇妙なダンスを踊り始めた。



 太っている割には、中々に軽快なダンスであり。


 2人は目を合わせると。


「「ぷっ」」


 揃って、吹き出してしまう。



(――あぁ。こういうのも、悪くない。)



 愉快な道化師が、2人に笑顔をもたらした。




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