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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
魔法少女大戦
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妖精界の戦い






 世界三大瀑布の一つ、ナイアガラの滝。

 カナダ滝とも呼ばれる巨大な滝の内側に、”妖精界”は存在する。


 いつからそこにあるのか、滝が形成される前からあったのか。

 それはともかくとして、太古の昔より妖精たちはそこで暮らしていた。


 滝の内側にあるとは言え、単純に地続きになっているわけではない。妖精界は”実際には存在しない土地”であり、たとえ滝を抜けても人類が中に迷い込むことはない。

 故に、何万年もの間、人と妖精は交わることがなかった。







 妖精界を支配する伝説の魔法少女、レイシーを倒すため。アリサを筆頭にする魔法少女たちは、ナイアガラの滝へ向かうことになった。

 しかし団体行動は行わず、それぞれ別々に行動して、決めた時刻に”現地集合”することに。



 チームでの行動など不可能。

 というより、アリサは単純にメンバーが嫌いだった。















 集合場所はナイアガラの滝だが、流石にその付近に泊まるわけにもいかないため。

 ミレイとアリサは、少々離れたデトロイトの街にやって来た。


 魔法少女が悪いのか、それとも単純に治安が悪いのか。遠くからの銃声が鳴り止まない。




「ピー」


「よしよし」




 夜空の下。

 泊まっているホテルの屋上で、ミレイはミーティアと触れ合う。


 元の世界から連れてきたのは、このミーティアのみ。魔導書も置いてきてしまったため、頼みの綱であるフェイトも召喚できない。




「……なんで、こんなところに来ちゃったんだろ」


「ピー?」




 ミーティアに問いかけてみるも、ミレイにはその言葉が理解できない。

 なぜこの世界にやって来たのか。なぜミーティアだけが一緒なのか。肝心な記憶が思い出せなかった。



 帝都最強決定戦。その中で戦った、デスロックという名の怪人。自分を見つめる彼の瞳が、どうしても忘れられない。

 記憶を失くした理由と、何か関係があるのか。


 キララやフェイトは、今頃どうしているのか。ちゃんとご飯は食べているのか。

 気になって気になって仕方がないが、今はどうしようもなかった。




 悪い魔法少女を倒して、妖精界を解放。

 女王陛下の力を借りて、元の世界に帰る。


 やるべきことは明らかである。




「頑張ろう」


「ピー」





 来たるべき戦いに備えて、ミレイが覚悟を決めていると。





「こんばんは」



 いわくつきの妖精、モニカがやって来る。




「ど、どうも」



 アリサとの関係もあるので、ミレイは彼女が苦手であった。





「人間って、恐ろしいと思わない?」


「?」


「ドンパチ抵抗してる人々も、それを蹂躙する魔法少女も、結局は人間。わたしたち妖精は、一体どうすればいいのかしら」


「どうって?」




 ミレイの疑問に、モニカは微笑む。




「もしも仮に、奇跡的にあなた達が勝てたとして。それから、この世界はどうなると思う?」


「えっ」




 この戦いの”その後”など、ミレイには想像もできない。




「どう転んだとしても、元の形には戻らないでしょうね。世界は、魔法少女について知り、妖精界についても知ってしまった。――へぇ、そんな世界もあるんだ。なんて、簡単に終わるわけがないわ」




 一年前の事件とは違う。

 今回は、あまりにも規模が大きくなってしまった。




「戦いに勝って、ステッキを全て回収したとして。世界は妖精界を許してくれるかしら?」


「それは……」




 街を破壊して、少女を誘拐し。世界中の軍事施設に攻撃を仕掛けた。

 そんな魔法少女という”大きな力”を、世界は放っておいてはくれないだろう。




「でも去年は、あなたが事件を起こしたんでしょ? ”悪いこと”をしてるのは、正直おんなじだと思うけど」


「……わたしはただ、”ちょっとした変化”が欲しかったのよ。閉ざされた妖精界に、新しい風を吹き込みたかった。戦争をしたかったわけでも、憎しみ合いたかったわけでもない」




 人と妖精の交わり。

 こんな”最悪な形”ではなく、もっと別の形で。少しずつ世界を変えていきたかった。




「――伝説の魔法少女、”レイシー”。彼女は一体何者で、何を目的としているのかしら」










◆◇










 激しい轟音と、撒き散らされる水しぶき。


 日が昇る時間帯に、ミレイ達はナイアガラの滝へとやって来た。




「はぁ〜」



 時間も時間なので、ミレイは思わずため息が出てしまう。





 だが、しかし。





 妖精界へ突入する、訳アリの魔法少女たち。ミレイとアリサは、彼女たちの到着を待つものの。

 約束の時間を過ぎても、彼女たちは1人としてやって来なかった。




「……時計の読み方くらい、理解してると思ったけど」



 スマホの画面を見ながら、アリサは苛立ちを隠さない。




「寝坊とかかな?」


「それにしても、1人も来ないのは異常だわ」





 1人として集まらない魔法少女たち。

 ミレイとアリサが、それに待ちくたびれていると。





 轟音とともに。

 滝の内側から、激しい”爆発”が発生した。





 凄まじい勢いの水しぶきが、ミレイたちの元へと飛んでくる。




「……どうやら、すでに始まっているようね」


「チームワークは!?」




 集合の約束はどこへ行ったのか。

 戦闘は、すでに始まっていた。




「もしもこれで負けたら、あいつらは一生許さないわ」




 指輪状態のステッキを起動し。

 アリサは、魔法少女ブレイヴへと変身する。


 そして、もう一つ持っていたニックスの杖をミレイに渡した。




「魔法少女にならないと、妖精界には入れないわ」


「うん」




 覚悟を決めて、ミレイはステッキを起動。

 ガッシリとしたドレスアーマーに身を包む。




「――魔法少女ミレイ☆ニックス、参上」




 魔法”少女”というような年齢ではないが。

 仕方がないので、ミレイは華麗にポーズを決めた。





「あと、これを持っておいて」


「へ? なにこれ」




 アリサがミレイに渡したのは、謎の液体が入った小瓶。

 何か色々と文字が書かれているが、英語なので理解が出来ない。




「昨日の夜に入手した、”お酒”よ」


「でぇ!?」



 まさかのアイテムにミレイは驚く。




「ギリギリまで粘って、それでも無理ってなったら、これを使ってちょうだい。いざという時の”最終手段”よ」


「……分かった」




 こんな物の力に、できれば頼りたくはない。

 しかし、負ければどうなるか分からない。元の世界に帰れないかも知れない。


 ”家に帰るため”なら、こんな手段にでも頼るしかなかった。





「行きましょう」




 アリサ☆ブレイヴと、ミレイ☆ニックス。

 二人の魔法少女が飛翔し、ナイアガラにある滝の一つ、”カナダ滝”へと突っ込んでいく。





 もしも魔法少女でなければ、滝の内側に衝突するだけだが。


 アリサとミレイは、世界の壁を越えた。





 妖精界へと。





「凄い!」


「ええ」





 透き通った湖に、遙か先には純白の城。


 城の周りには小さな町が広がり、妖精たちの暮らす世界が広がっていた。


 それだけなら、ただ景色に感動できたのだが。




「……一足、遅かったわね」




 美しい湖には、倒された十数人の魔法少女が浮かんでいた。

 共に戦うことを約束した、”味方の魔法少女”である。




「くっ」




 その中でも、ただ一人。砲撃の魔法少女、天使(えんじぇる)だけが満身創痍ながらも食い下がっていた。



 それに対するは、”三人の魔法少女たち”。



 伝説の魔法少女、フレイヤと。

 それと”同格”であろう、残る二人。




 伝説の魔法少女が三人も。

 いくら歴戦の彼女たちとはいえ、敵う相手ではなかった。





天使(えんじぇる)。どうしてあなた達は、先に突入したの? 集合時間って言葉、理解できなかったのかしら」


「へ、へへ」



 駆けつけたアリサの言葉に、天使は笑うしかない。




「伝説のステッキに、空席があるならよ。他の奴らを出し抜いて、我先に手に入れようと思ったんだ。”お前以外の全員”がな。」


「……相変わらず、どうしようもない連中ね」


「へっ、お前も”こっち側”だろ」




 最後に、そう言い残して。

 体力の限界だったのか、天使は湖へと落ちていった。







「デザートにお二人。これでコースも終わりかしら」




 フレイヤを筆頭にする、三人の伝説級魔法少女。

 圧倒的な敵を前に、ミレイとアリサは立ち向かう。




「……早くも、最終手段が必要かも知れないわね」




 相手が一人でも敵わないのに、それと同格がもう二人。

 こちら側の戦力では、どう考えても太刀打ち出来る相手ではない。




 ミレイの”暴走”を使えば、確かに状況は変わるだろう。

 伝説の魔法少女が相手でも、勝利を掴めるかも知れない。



 しかし、敗北よりも”凄惨な結末”を迎える可能性もあった。



 この美しい湖が、真っ赤に染まるような。

 そんな犠牲の結果に勝利を得ても、笑顔と幸せは訪れない。




 伝説の魔法少女を倒して、この妖精界を解放する。

 ”ただ強いだけの力”じゃ、欲しい未来は掴めない。





「お願い、ミーティア」




 ミレイは、その手に黄金のカードを具現化させる。

 ここまでついてきてくれた、気高きドラゴンのカードを。





「言葉も理解できないわたしだけど。どうか、力を貸して」





 ミレイは、黄金のカードに語りかけ。

 その声が、想いが、一つになる。





――憑依融合(アビス・フュージョン) Ver.ミーティア――





 ミレイの姿が変わっていく。



 力に相応しい肉体へと成長し、その拳は竜のように力強く。


 アリサと同じ、白銀の鎧を身に纏い。



 神々しく輝く、光の翼を背に展開する。




「ふぅ」



 肉体の成長と共に、その表情も大人びたものに変わっていた。





 魔法少女とは異なる”変身”に。

 敵だけでなく、アリサでさえも驚きを隠せない。





「――”アリサ”。ここはわたしに任せて、先に行って!」





 かくして、決戦の幕が上がった。






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