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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
魔法少女大戦
109/153

もこもこセクシー

感想等、ありがとうございます。






『さぁて、波乱の続く予選会ですが、これより二回戦を開始します!』




 帝都ヨシュアで行われる、帝都最強決定戦の予選会。一回戦全ての試合が終了し、続いて第二回戦が始まろうとしていた。

 特設の闘技場にて、受付嬢タバサの実況が響き渡る。




『二回戦一試合目は、ミレイ選手vs 鬼童丸(きどうまる)選手だ!』




(……鬼童丸?)



 武舞台の上に、ミレイが立つ。相変わらず、パンダと融合した姿であり、いつもより背が高い。

 そんな彼女と対峙するのは、フルプレートアーマーを身に纏う大男。ミレイとの身長差は歴然であり、非常に重そうな大剣を背負っていた。

 鎧のせいで顔は見えないが。文字通り、鬼のような男である。




(めっちゃ強そう)



 本当に同じ人間かと、そう思わずにいられない。




『一回戦では、対戦相手を圧倒したミレイ選手だが、今度の戦いはどうだー? 鬼童丸選手は、帝都でも指折りの実力者にして、Aランク冒険者。果たして、Eランクの彼女に勝ち目があるのか!?』


「うっそー!」




 ミレイの悲鳴も関係なく。




『――それでは、試合開始ッ!!』




 二回戦は幕を開けた。








 試合のゴングが鳴り。ミレイは緊張しつつ、対戦相手を見つめる。

 憑依融合があるとはいえ、大男が相手では流石に恐怖の方が勝っていた。




(めっちゃ武器がおっきい)




 ドラゴンでも真っ二つに出来そうな、巨大な大剣。もはや、アクションゲームでしか見たこと無い。


 ミレイが内心怯えていると。それを見かねて、対戦相手の鬼童丸が話しかけてくる。




「君、Eランクなのかい?」


「ええ、まぁ」



 鬼のような大男だが、声は優しげであった。




「とはいえ、あのヴァイオラを倒すとは。侮っていては、こちらが痛い目を見そうだな」



 そう言って、鬼童丸は大剣を構える。




「あぁ、やっぱそれ使うんだ」



 巨大な大剣。どう考えても、人間相手に使う武器ではない。





「では、お手並み拝見だ」



 鬼童丸は大きく跳躍し。ミレイに向かって、思いっきり大剣を振り下ろす。




「ッ」



 ミレイは、真後ろに跳んで攻撃を避けるも。

 とっさの判断で跳び過ぎてしまい、そのまま武舞台の外へと。




(あかん!)




 場外に落ちる寸前のところで、”機械の翼”――フォトンギア・イカロスを起動。

 華麗に宙を舞い、武舞台の上に戻っていく。




「ふぅ」



 しかし、戦いには使わない予定なので、翼の具現化を解いた。





「……なるほど、それが君の能力か」


「ええ、まぁ」



 正確には、そのうちの一つである。




「なら、これにはどう対処する?」



 鬼童丸は大剣を構えると、刀身に魔力を纏わせ。



「フンッ」



 ミレイに向けて、鋭い斬撃を飛ばした。




「ッ」



 ミレイは、思わず冷や汗をかくも。



「負けるかッ!」



 拳に魔力を纏わせて。渾身のパンチを放つことで、鬼童丸の斬撃を打ち消した。





「やるな」



 地面を蹴り、鬼童丸がミレイのもとに接近すると。思いっきり大剣を振り払う。


 ミレイは、華麗な跳躍をもって攻撃を回避。

 そのままの勢いで、鬼童丸の頭に”かかと落とし”を放った。




 魔力の籠もった一撃。

 重い衝撃が発生する。




 だが、鬼童丸はそれに耐え切り。




「フンッ」



 ミレイの足を掴むと、武舞台の真ん中へとぶん投げた。





「うっ」



 着地に失敗し、ミレイは地面を転がる。




「……いてて」



 全体的に体が痛むも。




「――避けなさい!!」



「ッ」




 どこからか聞こえた、フェイトの声に反応し。

 ミレイは、咄嗟にその場所を離れる。



 すると間髪入れず、ミレイのいた場所に鬼童丸の拳が突き刺さる。

 地面が砕けるほどの、恐ろしい威力であった。






「ふぅ」



 流石に、Aランク冒険者と言うこともあり。ミレイの全力の打撃を与えても、そう簡単に倒せそうにない。




「……」



 どうやったら倒せるか、ミレイは考える。

 困った時には、聖女殺しの力に頼るべきだが。あの力では”手加減”が出来ない。正確には、中の人(アクメラ)が手加減を好まないため、無理に手加減しようとすると憑依融合が解けてしまう。

 正真正銘の化け物相手でないと、聖女殺しは使えない。


 ならば、




「ここは、君の力を借りようかな」




 ミレイは両手を合わせて、その中にあるカードを呼び寄せる。

 この世界で初めて召喚した、”原点”とも呼べる黄金のカードを。





「行こう」



 心を、一つに。





――憑依融合(アビス・フュージョン)/Ver.フェンリル――





 パンダからフェンリルに、力を切り替え。ミレイの姿が変わっていく。

 ぶっつけ本番。フェンリルとの融合は初めてだが、失敗する理由はどこにもない。



 服装が完全に変化し、その体に強力なパワーが宿る。



 フェンリルとの融合なら、絶対に勝てるはず。そう思って、ミレイは変身したものの。





――おおー!





 会場内が、妙な雰囲気に包まれる。

 対戦相手の鬼童丸は、気まずそうに視線を外していた。




 ミレイは、何となく察してしまう。




(……なんか、”涼しい”)



 先程までと比べて、圧倒的に肌で風を感じている。





『おおっと、ミレイ選手! なんだ、その格好は!? 一瞬のうちに、”もこもこセクシー水着”に着替えたぞ!!』





 若干のオオカミ要素があるものの。それは紛うことなき、ビキニタイプの水着であった。

 今のミレイは、”普段より成長した姿”ということもあり、周囲からの熱い視線が突き刺さる。




「あー、君。その格好で戦うつもりかい?」



 鬼童丸からの、なんとも言えない反応を受け。ミレイの顔が、赤く染まっていく。




(……こ、ここに居たくない)



 ミレイは、完全に戦意を喪失していた。





「戦う気がないのなら、もうリタイアしたほうが――」




 話しかけながら、鬼童丸が近づいてくる。

 それに対して、ミレイはうつむいたまま。




「……む」


「む?」





 りんごのように、真っ赤に染まった顔をして。





「――むりぃー!!」





 それ以上、近づかないで。そう言わんばかりに、手を思いっきり振り払い。


 ”鋭い爪”のような、強烈な衝撃波が発生。





「がっ!?」




 鬼童丸を、いとも容易く吹き飛ばす。

 フルプレートのアーマーを、無惨にも引き裂きながら。



 圧倒的な力に抗えないまま、鬼童丸は場外に落ちた。





『おおっと、何という威力だ! ミレイ選手、鬼童丸選手を一撃で吹き飛ばし、次の戦いへと駒を進めたぁ!!』





 かくして、ミレイvs鬼童丸は、ミレイの勝利で幕を下ろした。



 だがしかし。ミレイは武舞台の上から動けず、その場で丸くなってしまう。




(……は、恥ずかしい)




 水着同然の姿で、大勢の観客たちに見られて。

 ミレイは、精神的な大ダメージを負った。










◆◇










 電車での戦いを終えた後。ミレイとアリサは急いでその場を離れ、タクシーでの移動に切り替えていた。


 2人は後部座席に座り。

 アリサはスマートフォンを弄っている。




「……とりあえずは、大丈夫そうね。あなたの写真は、ネットに出回ってないわ」


「よかった〜。SNSに晒されたら終わりだもん」




 アリサの言葉に、ミレイは一安心する。




「でも、ドラゴンと魔法少女に関しては、かなり動画が上がってるわ」


「ほんと? 見せて見せて」


「ええ」




 アリサのスマホで、ネットに上がった動画を見てみることに。


 そこに映っていたのは、派手な空中戦を繰り広げる、ミーティアと魔法少女の姿だった。

 魔法少女みやびは、様々な氷の武器をばら撒き、それが周囲のビルに当たりまくっている。




「うわ、派手だねぇ」


「そうね。……なぜ彼女は、こんな白昼堂々と」




 動画の中で、激しい攻撃を繰り返す魔法少女であったが。

 ミーティアによる、”異次元のスピード”にはまるで対処ができず。




「あ」




 尻尾による攻撃で、呆気なく吹き飛ばされてしまう。

 おそらくは、それが決定打となったのだろう。

 ミーティアがその場を離れていくシーンで、動画は終了した。






「でも、ほんとに良かった。もし怪我人が出てたら、わたしじゃ治癒できないから」



 ミレイはほっと一安心する。



「あっ、でも、回復薬が。……いや、やっぱ無いな」




 もしも、魔導書が同じ世界にあれば、様々なカードを呼び出せるのだが。今のミレイは、ほとんど無一文である。


 現状、手元にあるカードは、たったの3枚。

 ミーティア、サンドボックス、そして暗黒水晶と。

 魔法少女という未知なる存在がいる以上、これだけでは心もとない。






「ていうかそもそも、魔法少女って何なの?」


「……さぁ」



 ミレイの質問に、アリサははぐらかす。



「ほんとに知らない?」


「ええ」


「ほんとにほんと?」


「ええ」


「……そっか」




 アリサがそう言うのなら、きっとそうなのだろう。

 ミレイはあまり深追いせず、話を終えることに。



 とはいえ、タクシーの中は微妙な空気になってしまう。

 アリサにとっても、それは居心地が悪かった。




「……ごめんなさい」


「え?」


「実はわたし、ほんとは知ってるの、魔法少女について」



 ”昔”を思い出すように、アリサは窓の外を見つめる。




「でも、あまり深入りしない方がいい。魔法少女に関わったら、ろくな結末にならないわ」



 それが、アリサの導き出した”結論”であった。

 





「……もうすぐ、着くわね」




 話は終わり。

 2人を乗せたタクシーは、目的地である”ミレイの実家”までやって来た。






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― 新着の感想 ―
[一言] 魔法少女とか言うのがいるしエドワードがいた世界みたいに似て非なる世界で、ミレイの実家とかもないかもって思ってたけど普通にあった…(本当にこのミレイの実家かは分からないけど) あと前回話してた…
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