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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
魔法少女大戦
108/153

トレインパニック

感想等、ありがとうございます






「えっ、ちょ。なにあれ!?」




 謎の変身を遂げた、痴漢少女。もとい、”みやび☆アルティスタ”。

 アリサに手を引かれながらも、ミレイはその瞬間をはっきりと目撃した。


 異世界でも見たことない、新しいタイプの何か。

 というより、変態を。




「アリサちゃん、知ってる?」


「さぁ。でも見たところ、”魔法少女”ね。」


「いや、あんなのいる!?」




 まさに、理解不能。

 その力の原理も不明だが、なぜここで変身したのか。




「とにかく、早くここから逃げましょう。」



 ミレイを連れて、アリサは操縦室の近くまでやって来る。




「ちょっと、今すぐ電車を止めて。」


「……はい?」




 突然のアリサの要求に、運転士は意味が分からず。

 当然ながら、電車の運行を止めたりはしない。




「いいから! じゃないと、取り返しのつかない事態に。」



「――途中下車は、お断りしてま〜す♪」




 ”氷で出来た剣”が、アリサの真横を通り過ぎ。

 運転室の扉を突き破る。



 剣は、運転機器に深々と突き刺さり。

 一撃で、その機能を破壊した。




「ああ、そんな。」


「うふふふ。」




 これでもう、電車は止められない。

 魔法少女みやびは、悠々と微笑む。




(この子、何でこんな無茶を。)



 アリサには理解が出来なかった。

 魔法少女がどうこうよりも。なぜ、”これほどまでの暴挙”を行うのか、アリサには不思議でならない。




「あなたの目的は?」


「うふふ。それを、あなた達が知る必要はないの。ただわたしと一緒に来て、”幸せ”になりましょう。」




 もはや、言葉は通用しない。

 彼女の目的は、ミレイとアリサの2人なのだから。


 みやびが手をかざすと、無数の氷の剣が出現。

 それを威嚇射撃のように射出し、電車の窓ガラスが砕け散る。




「くっ。」



 乗客たちの怯える声。

 アリサは敵を睨みつつも、”戦う力”を持たない自分を呪う。




「ねぇ? 痛い思いはしたくないでしょう? 安心してちょうだい、優しくしてあげるから。」




 みやびが近づいてくる。


 だが、しかし。

 アリサを守るような形で、ミレイが一歩前に踏み出る。




「――大丈夫。ここは、わたしに任せて。」




 アリサを安心させるように、にっこりと微笑むと。

 ミレイは、真っ直ぐと前を向き。



 その手に、”サンドボックス”を具現化させる。




(……魔法少女。)




 見たことないタイプの相手。どういう存在なのか、皆目見当もつかないが。

 使っているのは、”氷の力”。


 ならば、決して未知なる敵ではない。

 ”うちの子”と比べたら、まったくもって怖くない。



 サンドボックスから、魔法の砂が溢れ出る。

 魔法の砂は、ミレイの思うがままに姿を変え。


 ”巨大な拳”の形へと。




「いっけー!」



 思いっきり、みやびをぶん殴る。




「ちょ、え!?」



 予想だにしない攻撃に、みやびは反応できず。

 砂の拳によって、殴り飛ばされた。




 魔法の砂の威力は絶大であり、その衝撃は車の衝突にも匹敵する。

 ミレイは若干、冷や汗をかいた。




「や、やっちゃったかな?」


「いいえ、多分大丈夫。向こうも、そんなに脆くはないはず。」




 アリサの言った通り。




「――いったいわね。」




 魔法少女みやびは、一発殴られた程度ではこたえておらず。

 ゆっくりと起き上がる。




「皆さんすみません! 端っこの方に寄っててください!」




 生半可な力じゃ止められない。

 ミレイは本気で戦うことを決意する。


 アリサは、電車をどうにかしようと運転席へ向かった。





 砂を操るミレイと、魔法少女みやびが対峙する。





「その箱が、手品の種かしら?」



 ミレイの力の源が、サンドボックスにあると踏み。

 みやびは氷の短剣を具現化すると、それをボックスに向けて射出した。


 だが、ミレイが攻撃を認識すると同時に、魔法の砂は盾へと姿を変え。

 みやびの攻撃を、容易くガードする。




「だったら。」




 今度は威力重視で、一本の”氷の槍”を具現化。

 盾を穿とうと、射出するものの。


 砂の盾は強固であり、穴をあけることすら叶わない。




「なによそれ! ちょっと硬すぎじゃない?」



「……悪いけど、あんまり構ってられないから。」




 文句を口にするみやびに対し、ミレイは魔法の砂を放出し。

 彼女の周囲を、砂で覆っていく。




「ちょ、何なのよ!」




 集めた砂を、球体のように変形させ。

 その中に、みやびをギュッと閉じ込める。


 そして、ミレイは割れた窓を見ると、ほんの少し躊躇しつつ。




「――ごめんね!」




 みやびを閉じ込めた砂の球体を、電車の外に放り投げた。

















「砂で包んだから、大丈夫だよね?」


「え、ええ。魔法少女は頑丈だから、問題ない……はず。」




 生きた人間を、電車から落っことした。冷静に考えたら、とんでもない事ではあるものの。

 今はそれ以上に、”ひっ迫した問題”に対処しなければならない。


 魔法少女の攻撃によって、電車の運転機器は破損。

 一切の操作が出来なくなっていた。




「電車、どうしよう。」


「まぁ、たぶん大丈夫よ。運転士の人が、反対側の操縦室に向かったから。すぐに制御を――」





 ミレイとアリサが、そんな話をしていると。


 突如、電車が”急加速”を始める。





「うぉっち。」



 ミレイは体勢を崩し、その場に尻餅をついた。




「ど、どういう。」


「随分と、しつこいわね。」




 アリサは敵を、”魔法少女”を睨みつける。




「――うっふっふ。絶対に、逃さないわ。」




 ミレイの砂によって、電車の外に落とされたはずだが。


 魔法少女みやびは、後方車両から悠々と歩いてくる。



 反対側にある操縦席は、”アクセル全開”の状態で氷漬けにされていた。




「なぜ、こんな真似を?」


「あなた達が悪いのよ? ぜんぜん、言うことを聞いてくれないから。」




 みやびは、引きつったような笑みを浮かべる。




「わたし達は、もう止まれないの。全ては”あの方”のために。」





 彼女の口元は笑っていたが。


 その瞳からは、何故か”涙”が流れていた。





――なんで。



 その涙が、表情が。

 ミレイの瞳に焼き付いた。






「もう容赦しないから、覚悟しなさい!」




 みやびが無数の氷の剣を生み出し、2人をめがけて射出する。


 それを、ミレイは砂の壁を作り出すことで防ぐものの。

 色々と問題が山積みで、表情に焦りが出る。




「このままじゃ、電車が。」


「そうね。このスピードじゃ、カーブを曲がりきれないわ。」





 このままでは、取り返しのつかない”大惨事”を起こしてしまう。

 ゆえに、長々と戦っている暇はない。





「なら。」



 ミレイは再び、大量の砂を拳のような形に変え。




「とにかく、出てって!」



 みやびを思いっきりぶん殴り、電車の外へと吹き飛ばした。



 だが、しかし。




「逃さない!」




 みやびは空を飛びながら、電車を追従し。

 外から氷の剣で攻撃を仕掛けてくる。




「うっそ、飛べるの!?」


「魔法少女だから、当然ね。」




 外から一方的に、みやびは攻撃を行い。

 ミレイは防戦一方。

 砂で反撃しようにも、相手の機動力に対応できない。




「だったら、こっちも。」




 相手がスピードで勝負を仕掛けてくるなら、こっちもそれに乗ればいい。

 幸いにも、電車の外でなら召喚できる。




「――ミーティア!!」




 ミレイの声とともに、電車の真上に光が生じ。

 白銀の竜、ミーティアが姿を現す。


 そしてすぐさま、みやびへと突進した。






 上空にて、ドラゴンと魔法少女の戦いが繰り広げられる。






「よし。あとは、こっちをどうにかしないと。」



 魔法少女はミーティアに任せ、ミレイは電車への対処に当たる。




「……こういう時に、なにか使える力が。」



 ミレイは黒のカードを起動し、新しい力をその手に呼び込む。





 2つ星 『暗黒水晶』


 違法な実験によって作り出された水晶。触れた者の魔力を吸収する。





「使えない、か。」



 新たに召喚したカードは、現状役には立たず。

 ”今ある力”だけで、ミレイは電車への対処を決意する。




「サンドボックス!!」




 電車を止めるために、最大限の力を行使。

 大量の魔法の砂を、窓から外に放出する。



 外に放出された砂は、巨大な一つの塊へ。


 ”砂の巨人”へと姿を変える。




「電車を止めて!」




 ミレイの声に従い、砂の巨人が電車を正面から受け止める。

 がっしりと、強大なパワーをもって。



 だが、しかし。



 強力なカードの力とはいえ、所詮、その巨人は”砂”に過ぎず。

 地面、線路との摩擦によって、ガリガリと体が削れていく。



 電車を止めるために、必要な力を発揮できない。





 ちっとも止まらない電車に、ミレイの表情が焦りに染まり。


 そんな彼女の手を、アリサがギュッと握りしめた。




「ミレイ。電車の屋根の上に、アンテナみたいな物があるの。それが電力を供給してるから、壊せばエンジンが止まるはず。」


「ほんと?」


「ええ、……たぶん。」


「たぶん!?」



 この場面でのたぶんは、非常に恐ろしい。



「アリサちゃん、電車好きって言ってたじゃん。」


「嘘に決まってるでしょ、おバカさん。」


「ひどっ。」





 とはいえ、もう迷っている時間はない。


 ミレイは、魔法の砂に指令を送り。

 屋根にあるアンテナみたいな物、パンタグラフを破壊していく。


 車体が激しく揺れ。

 乗客たちの叫び声が聞こえる。




(お願い、止まって。)




 ミレイは、ひたすらに祈り。



 砂の巨人は、電車の勢いを抑えていく。



 アリサは静かに、ミレイの力を信じ。








 やがて、電車は完全に停止した。















「や、やった。」




 一気に力が抜けて、ミレイはその場に座り込む。



 一歩間違えれば、大勢の死者を出していたかも知れない。

 そんな環境での戦いは、流石に精神的な負担が大きかった。



 だが、しかし。





――乗客たちからの、惜しみない”拍手”の音が聞こえてくる。





 誰一人、怪我人はいない。

 電車も止めることが出来た。



 自分の力が、多くの人の役に立った。

 その事実が、ひたすらに嬉しかった。








「驚いたわ。案外凄いのね、あなた。」


「えっへへ。」




 アリサの言葉を受け、ミレイは若干照れ臭くなる。

 すると、




 ”ピー”



 魔法少女と戦っていたはずのミーティアが、電車の側に戻ってくる。





「あれ、あの子は?」


「……どうやら、”倒した”みたいね。」


「うっそ。」




 ミレイが、必死こいて電車を止めていた頃。

 すでにミーティアは、魔法少女みやびを倒していた。


 今頃彼女は、どこかのビルの屋上で気絶しているだろう。




「強いな〜、お前。」


 ピー!




 気を良くしたのか。

 ミーティアは翼をはためかせ、遙か上空へと飛翔していった。




「ねぇ。それはそうと、早くここから離れましょ。」


「へ? なんで?」



 ミレイは首を傾げる。




「このままじゃあなた、絶対”警察”に連れて行かれるわよ。」


「……あ。」





 忘れてはいけない。

 ここは異世界ではなく、日本なのだから。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 人目につかず活躍してるミーティアさん尊敬 [気になる点] みやびは自分が異質なことは知ってると思うけど、より異質なミレイにどういう心境で戦ってたのか気になる [一言] アリサも魔法少女に深…
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