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1日1回ガチャ無料!  作者: 相舞藻子
さいつよ編
102/153

鋼鉄のダークホース

感想等、ありがとうございます。






「ようこそ! ここがミーの研究室にゃん!」




 昨日、お風呂に入りながら約束した通り、ミレイはタマにゃんの研究室を訪れていた。

 ミレイの持つ”黒のカード”、その調査をするために。




「ほぇ〜」




 初めて見る光景に、ミレイは目を輝かせる


 果たして、ここは本当に”同じ世界”なのか。

 パソコンやディスプレイといった、ミレイの馴染みある物体が普通に存在している。電気を使ってるのか、魔力を使ってるのかは不明だが。

 興味をそそる、”謎のガジェット”が盛り沢山であった。





「……これって、スマホ?」



 見覚えのある物体を、ミレイは手に取ってみる。

 機械文明の代表格、スマートフォンである。




「にゃん。それは試作型の”魔導デバイス”にゃん。」


「へぇ。」


「プログラム化した魔法を、好きなタイミングで気軽に発動できる代物にゃん。これがあれば、冒険者の戦闘力を底上げできる。と、思ったけどにゃ……」


「上手く行かなかったの?」


「にゃん。こいつを使うには、自力で魔法を発動できる才能と、自力でプログラムを組める能力が必要にゃ。でもそんな奴、冒険者には居ないにゃん。」


「そりゃそうだ。」




 もっと単純な仕組みでなければ、ミレイにだって扱えない。





「じゃあ、早速調べてみるにゃん。」


「うん、お願い。」




 黒のカードをタマにゃんに渡し。

 その間、ミレイは研究室を物色することに。




「ふんふーん。」




 つい、気分が上がってしまう。

 何となく、日本に居たことを思い出す。


 ”科学の匂い”を漂わせる、ハイテクっぽい物品が大量にあった。




「ねぇ、触ったら危ないのってある?」


「大丈夫にゃん。今ここにある物に、殺傷能力は無いにゃん。」


「ほいほい。」




 安全を確認し、ミレイは純粋な好奇心で物品を見る。

 とはいえ、”殺傷能力が無い”だけであるが。


 何に使うのか分からない装置を、まじまじと眺めていく。





(……こっちの部屋は、なんだろ。)



 好奇心に動かされ、ミレイは隣の部屋へとやって来る。


 すると、そこにあったのは。




「おおー!」




 鋼鉄の輝きを放つ、巨大なロボット。

 大きさとしては、ブラスターボーイと同等程度か。


 だがしかし、あくまでも”人型”である彼とは違い、このロボットは”蜘蛛”のような形をしていた。

 新車のように輝いているが、どこか刺々しい雰囲気を感じる。




「タマにゃーん、これなに?」



 ミレイの呼び声に応じて、タマにゃんがやって来る。




「にゃーん。これは都市防衛用に作った魔導兵器、”スキュラ”にゃん。」


「へぇ〜、すっご。」




 ミレイは、まじまじとスキュラを見上げる。

 他の発明品とは、明らかにレベルの違う存在であった。

 こいつはヤバい、という雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。




「これ、動くの?」


「にゃーん。一応バッテリーを取り付けたけど、魔力の供給が追いついてないにゃん。これじゃ、いつになったら起動できるやら。」


「そうなんだ。」




 動かないのは残念である。

 まぁ、動いたら動いたで怖そうだが。




「そうだにゃん! ミレイはかなり魔力が多そうだから、ちょっと分けて欲しいにゃん。」


「えっ。」



 まさかのお願いに、ミレイは固まる。




「それって、献血みたいに?」


「まぁ、間違ってないにゃん。」


「えぇ……」



 献血なら、ちょっとやだ。

 痛いのは嫌いである。




「でも献血と違って、痛みはないにゃん。それに、そんなにいっぱいは取らないから、安心して欲しいにゃん。」


「うーん。まぁ、それなら。」



 せっかくの頼みなので、ミレイはスキュラに魔力を供給することに。















「体に異変を感じたら、すぐに言うにゃん。」


「了解。」




 ミレイは台の上に寝っ転がる。

 台の隣には医療機器のような物が置いてあり、たくさんの線がミレイの体に繋がっていた。

 その機器から、さらに線が伸び、最終的にスキュラへと繋がっている。


 もしもこれが献血なら、全身からがっぽりと吸い尽くされそうだった。




「じゃあ、抽出を始めるにゃん。」




 タマにゃんがボタンを押すと、装置が起動し。

 ミレイの体から魔力を吸い始める。




「おおー? なんか気持ちいい。」




 多少の痛みくらいは覚悟していたが。意外にも、ミレイは”快感”を感じ取る。


 例えるなら、マッサージを受けているような。

 不思議な心地よさに包まれながら、魔力の抽出が続いていく。




「……えっと、まだ大丈夫にゃん?」


「うん、平気平気。」




 辛くなるどころか、むしろその逆。

 もっともっとやって欲しいと、ミレイは思う。


 魔力抽出の心地よさに、表情が緩む。




「あぁ〜」




 まさに”革命”、生まれて初めての快感。

 こんなに気持ちいいのなら、定期的にやって欲しいくらいである。




「せんせい、もっと強く出来ますか?」


「え。……ま、まぁ、出来るにゃん。」




 ミレイの要望に従い、タマにゃんは魔力の抽出速度を上げる。

 すると、




「お、おおー!」




 刺激が強まる。

 尋常じゃない魔力が、体から吸われていく。


 だが、それに伴い快感も上昇する。




(……たまらぬ。)



 あまりの快感に、ミレイは涙ぐむ。




「ま、まだ平気にゃん!?」


「うん。だいじょぶ、だいじょぶ。」




 魔力抽出。元はと言えば、タマにゃんが頼み込んだことだが。

 体から引き出される魔力の量に、タマにゃんは思わず引いてしまう。




 しばらくの間、魔力を代償に快感を得るミレイであったが。


 やがて、装置が停止する。




「ん、どうしたの?」


「いや。……もう、満タンにゃん。」


「あー」




 魔力の抽出が終了し、体中から管を外される。


 軽く伸びをしながら、ミレイは体の調子を確かめると。




「お?」



 驚くほどに、軽さを感じる。

 まさにマッサージである。




「……また来てもいい?」


「も、もちろんにゃん。」




 ミレイは、新しい趣味に目覚めた。















「これだけの魔力があれば、スキュラは完璧なパフォーマンスを発揮できるにゃん!」



 若干、怖かったが。念願の魔力が手に入り、タマにゃんはご満悦であった。





 微かな起動音と共に、スキュラの心臓に火が宿る。


 瞳が光を発し、全身に魔力のラインが走った。





「おおー」



 ミレイは感嘆の声を漏らす。


 自分の魔力で、これだけの機械が動く。

 流石に驚きである。




「システムオールグリーン。完璧にゃん!」


「やったぜ!」




 ちょっと寝っ転がって、気持ちよかっただけだが。

 ミレイはタマにゃんと一緒に喜ぶ。




「ねぇタマにゃん、これって強いの?」


「もっちろんにゃん! ミーの設計した兵器の中では、紛れもなく最高傑作! 国一つを落とせるにゃん。」


「へ、へぇ。」




 タマにゃんは、異様にテンションが高かった。




「全身に余すことなく魔力を供給し、秒速100メートルを超える圧倒的な機動力を発揮するにゃん! もちろん、戦闘時には装甲に多重構造の障壁を形成するから、核攻撃を食らっても壊れないにゃん!」


「そ、そりゃ凄い。」




 スキュラの能力もそうだが、タマにゃんの早口が凄まじい。




「早く、こいつが戦ってる姿が見たいにゃん。」


「なにと戦うの?」


「にゃーん。こいつは都市防衛用に作ったロボットだから、侵略者でも来ない限り出番はないにゃん。」


「うわ、そりゃ残念。」



 せっかく、自分の魔力で起動したのだから。ミレイは動くのを見てみたかった。




「……あっ、そうだ。”今度の大会”に持ち込んだら?」


「にゃんと! その手があったにゃん。」


「うんうん。武器とかは何使ってもいいって話だから。こいつもセーフだよ。」




 元受付嬢(仕事はしていない)が言うのだから、間違いない。




「ふっふっふ。最強の座はいただきにゃん!」



 こうして、衝撃のダークホースが誕生した。

















 タマにゃんの装置が、自動で黒のカードのスキャンを行い。

 それが終わるまで、ミレイたちはお菓子を楽しむことに。


 他愛のない話に花を咲かせる。




「それじゃあ、ミレイも大会に出るにゃん?」


「うん。多分、そっかな。」



 帝都最強決定戦。その予選会が、あと数日で始まる。




「冒険者らしいにゃん。」


「いや、まぁ。……”みんな出るから”。」



 結局の所、それが一番の理由であった。




「もちろん、優勝目指すにゃん?」


「いや、それは流石に。」



 ミレイはそこまで本気ではない。



「そもそも、本戦に出れる可能性すら無いと思う。枠は2つあるけど、1つはフェイトで埋まってるし。」



 ミレイの知る限り、フェイトより強い存在はこの街に居ない。




「昨日のあれを見るに、瞳ちゃんにも絶対勝てないから。」



 恐ろしいことに、昨日はパンチの余波で死にかけた。




「キララとソルティアも、多分なんかやってるし。」



 キララは部屋で謎の液体を調合し。ソルティアに至っては、毎日のように修行をしている。

 何をしてくるかが分からない故に、恐ろしくてたまらない。




「にゃ〜。でもミレイのポテンシャルなら、結構行けると思うにゃん。現に昨日だって、魔力的には陛下たちに負けてなかったにゃん。」


「……一撃でやられたのに?」




 今までにない、圧倒的な敗北である。




「にゃん! そもそもミレイは、”攻撃を受ける”ことに慣れてないにゃん。」


「あー。確かに、そうかも。」



 ミレイは昨日の敗因を考える。




「陛下は昔からの武闘派で、”力で”皇帝の座を奪ったらしいにゃん。それに瞳も、見るからに喧嘩慣れしてるにゃん。」


「確かに確かに。」


「ミレイはこの世界に来るまで、殴り合いの喧嘩とかしたことあるにゃん?」


「いや、一度も。」


「”それが”、みんなとの差だにゃん! 本来戦いとは、力と力のぶつかり合いにゃ。でもミレイは打たれ弱いから、一発殴られただけで戦意喪失しちゃうにゃん。」




 どれだけ強い力を持っていても、心が弱くては意味がない。




「大会に挑む前に、”武術”の心構えを習ったほうがいいにゃん。」


「……うん、そうしよっかな。」




 ミレイは修行を決意する。

 幸いにも、身近には修行好きの友達がいた。















「にゃ、スキャンが終わったにゃん。」




 解析装置から音が鳴り。

 タマにゃんがその結果を確かめる。




「これ、とっても大丈夫?」


「にゃん。」




 ミレイが装置から黒のカードを外す。

 相変わらずの真っ黒である。




「どう?」


「にゃーん。」




 調査結果が、思った通りでなかったのか。タマにゃんの表情は芳しくない。

 むしろ、深刻そうな表情をしていた。




「……どっか悪いの?」


「いや、そうじゃないにゃ。」



 タマにゃんは髪の毛を弄る。




「”なんにも”、分からなかったにゃん。」


「まじか。」




 まさかの解析結果であった。




「普通のアビリティカードなら、ある程度中身の情報が見えるにゃん。でもこの黒いカードは、プロテクトが異常に固いにゃん。正直、お手上げにゃん。」




 タマにゃんの持つ技術力。科学、魔法を持ってしても、解析ができない。

 黒のカードは、まさに”ブラックボックス”であった。




「あと、そうだにゃ。カードを召喚する瞬間も調べたいにゃん。」


「あ、うん。いいよ、今日はまだだったし。」




 召喚は1日に1回だけ。それも、黒のカードのルールである。




「こい!」



 なにか来いと願いつつ、ミレイは黒のカードを起動する。





 2つ星 『下級騎士の盾』


 シンプルなデザインの盾。鋼鉄製で、使い勝手は悪くない。





「……うん、シンプル。」



 ミレイは召喚したカードを見つめる。

 使えるのか使えないのか、いつも通りのクオリティ。




「それで、なにか分かった?」


「にゃは〜。これもさっぱりだにゃん。」




 タマにゃんは観測装置を弄るも、結果は芳しくない様子。




「でも召喚する瞬間に、”どこか”と繋がってたにゃん。」


「どこか?」



 ミレイは首を傾げる。




「……運営のサーバーかな。」


「にゃん! ”ゲームのガチャ”じゃないにゃん!」


「おおー!!」




 この世界に来て、初めて説明無しに会話が通じた。


 ミレイは、とっても嬉しかった。






 予選会まで、あと4日。






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