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第5話 王位継承は不可避っぽい? その2

 僕は、壁際に追い詰められていた。

「ルドルフ、どうしてそんなに怒っているのかな……?」

「怒ってはいません!!!!」

「うっ」

 めっちゃ唾飛ばしてくるじゃん。どう考えても怒ってるよね。

 思い当たるのは、ルドルフと別れる直前の行動だった。

 よきお歳だけど純情なルドルフに、いきなり女性と2人きりはハードルが高かったかもしれない。

「あ、今すごく失礼なことを考えましたね!」

「ひぇっ! そんな、誤解デス」

「今度は逃がしませんよ!」

 おでこに青筋を立てたルドルフが、僕にぐいぐいと迫ってくる。

 これって、『壁ドン』てやつなのでは?イケメンの壁ドンは迫力がすごい。

「いいですか、殿下。私はあなたの護衛なのです。あなたの命をお守りするのが使命なのです。その私を振り切るとは、いったい、どういうお考えなのでしょうか」

「でも、陛下がいらっしゃる部屋はすぐそこだったし、ルドルフも、視察ルートについてずっと相談したいって言ってたけど、なかなか時間が取れなくて困っていたでしょう?」

「だからといって、殿下のお傍を離れるなど、あってはなりません! 相談の時間は、後でいくらでも取ることができます! それよりも、貴方の命の方が大切なのです!」

 ふわぁ~~イケメンにそんなこと言われると、なんかちょっと照れちゃうな。

 ルドルフの言葉は、護衛として、僕の身を案じたものだとわかってはいるけれど、壁ドンしながら、超至近距離で、『貴方が大切』なんて言われると、男の僕でも赤くなってしまうというものだ。

「ちゃんと聞いていっらしゃるのですか!」

「ルドルフ、ごめん、わかったよ。でもちょっと顔が近いかも……」

「……! こ、これは失礼しました」

 ルドルフも、僕に指摘されて、今の体勢を認識したようだ。少し距離を取ってくれた。

 あれ…? ルドルフの顔もちょっと赤い?

 すごく年上の男性に対して、失礼かもしれないけれど、思わず、可愛いと思ってしまった。

「と、とにかく、ウィルフォード様は、もっと王子としての自覚を持った行動を取っていただくようお願いします」

「はい、気を付けます」

 またルドルフから説教されてしまった。

 でも、僕のためを思って言ってくれているのは伝わるので、素直に反省することにしよう。


「騒がしいと思って来てみたら、ウィルフォードではないか」

 ルドルフの説教を受け、しょんぼりしていると、よく響く声に名前を呼ばれた。

「ルシャード殿下!」

 声のした方を見ると、そこには、兄のルシャード殿下が立っていた。

「お騒がせして、申し訳ございません」

 うるさくして、気分を害してしまったかもしれないと、慌てて謝る。

「よい、頭をあげなさい。嫌みのつもりではなかったのだ。こちらこそすまない」

「いえ、そんな! 僕が騒いでいたのが悪いのです」

「大きくなったな、ウィルフォード。達者にしていたか?」

 そう言って、ルシャード殿下が微笑む。

 はぁ~~ふ、ふつくしい……。

 この世界の人たちは、美形が多い。こちらの基準では普通なのかもしれないが、前世基準で見ると、『世界の美しい顔の人を100人集めた本』に載っていそうな容姿をした人がうじゃうじゃいる。

 ルドルフもハンサムなのだが、ルシャード殿下はまたベクトルが違うというか……そう、美しいのだ。背後に薔薇が咲き乱れているように見えるほどだ。

「はい、お陰様で、近頃は、各領地の視察など、政務の補佐のようなことも任せていただけるようになりました。ルシャード殿下もご健勝のようで、嬉しく思います」

 実は、ルシャード殿下と会うのはこれで2回目だった。

1回目は、僕の命名の儀のときだ。リヒトリーベ王国では、10歳になるまでは、生まれてきた子供に名前をつけない。

 10歳になる誕生日に初めて名前を付けるのだが、僕は王子という立場なので、王が名前を授ける儀式を行う。その時のことを覚えていてくれたらしい。

「久しぶりに顔を見ることができて、私も嬉しく思う。そういえば、来月は私の成人の儀があるが、其方は参加できるのだろうか」

「あ、は、はい! 私も参列する予定です」

「そうか、では、そのときまた会えるということだな。楽しみにしている」

 うっ……眩しい……!ルシャード殿下の微笑みの威力は凄まじい。

 直前に、彼の王位継承権の剥奪について聞かされていた僕は、罪悪感から、ルシャード殿下の顔を直視することができなかった。

「はい、私も楽しみにしています」

 なんとか、笑顔をつくると、ルシャード殿下は、さらに笑みを深め、去っていった。

 美形2人に囲まれて、一瞬、前世で声優として出演した乙女ゲームみたいと思ったが、違う。この世界の基準なら、僕は攻略対象ではない。モブだ。


「ウィルフォード殿下、顔色が悪いようですが、体調が優れないのですか?」

 ルシャード殿下が去った直後、ルドルフが顔を覗き込んできた。

「え、全然、元気だよ?」

「そうですか? 問題ないならいいのですが……」

 ルシャード殿下の王位継承権の件は、他言無用だ。当然、ルドルフにも話すことはできない。

 しかし、生まれてからずっと一緒にいるルドルフは、僕の些細な変化にも敏感に反応する。来月の成人の儀まで隠し通すのは、至難の業に思われた。

 あぁ、やっぱり胃が痛くなってきたかも……。

 来月までに、何とかディアーク陛下に考えを改めてもらって、僕が王位継承を辞退することを了承してもらって、でも誰にも相談できないし、もちろんルドルフにもバレないようにしないとで。

 ーーあれ? これって無理ゲーっぽくない?

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