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いつだってキミが世界の真ん中だ!  作者: 憚 岩三
「あかんのか?平和を夢見ちゃ、あかんのか?」
2/12

第2話

な、なんや?


この可愛らしい生き物は。


めっちゃ泣きながら拍手してるし。


口閉じて、歯ぁ食いしばってんのかな。


顔面に力が入ってるのがよぉわかるわ。


ホンマは泣くのを我慢してんのかな。


でも、涙、まったく止まってへんやん。


感動したんか?


ウチの言葉に?


そうやとしたら、めっちゃええ子やんけ。


あかん、テンション爆上がりや。


お尻、触らせてくれへんかな。


さっきのニヤけヅラのキン○マはどうでもええわ。


あの可憐な少女とお近づきにならな。


「どないしたんや?」



驚きと興奮を隠し、冷静を装い、七は拍手を続ける女子生徒に話しかけた。


声を掛けられたことで拍手が止まった。


たっぷりと涙が溜まったままの瞳は、七を見ていた。


自己紹介が始まったばかりの教室内。


立っている生徒は2人だけである。


1人は、自己紹介中に夢を笑われ激昂した秋葉七。


もう1人は、その七の言葉に感動したのか、涙を流し拍手をしていた女子生徒だ。


その女子生徒は身長が低かった。


同じく立っている七の身長が高いので、なおさら低く見える。


ボリューミーなふわふわした髪質。


ショートボブで高い位置の両サイドにお団子を作っている。


童顔。


女の子を好きな七でなくても、目を奪われるような可愛らしい容姿をしていた。


「わ、私もです」


「?」


七は首をかしげた。


「私も、世界平和が夢なんですッ!」


思い切りのいい、大きな声だった。


七は宝物を見つけたような目で、お団子の少女を見た。


その表情には笑み張り付いている。


「ご、ごめんなさい、じ、自己紹介を邪魔しちゃって」


少女は、我に返ったような顔になり、慌てて席に着いた。


「邪魔だなんてとんでもない」


口調と声色を変えて七は答えた。


ニヤけているのを隠しきれていない。


そのまま、言葉を続けた。


「もしよかったら、今度デートしませんか?」


「!?」


少女は驚き、言葉に詰まった。


その時、七は自分に向けて発せられた殺意のようなものを後方から感じた。


その瞬間、猛スピードで飛んできた消しゴムが七の後頭部に当たった。


ゴンッ!


「あいだぁッ!」


思わず声が出た。


物凄い音。


物凄い激痛。


七は、かつて叔父から食らわされたゲンコツを思い出した。


つんのめりそうになるのを堪えた七は、先ほどの笑顔から一転、再び怒りの顔になった。


「なにすんねんッ!」


消しゴムがぶつかった後頭部をさすりながら、七は後方を見る。


1人の女子生徒と目が合う。


七は、自分にダメージを与えた犯人の正体に気づくと、態度を変えた。


「なんや、ミコちゃんかいな」


顔から怒りの色は消え、どこか怯えを感じているような表情になった。


ミコちゃん、そう呼ばれた女子生徒は、七を睨みつけている。


凄まじい目力だ。


親の仇でも見るような眼をしている。


先ほど、七が激昂していた時、まったくの無表情だったことが信じられないくらい感情をむき出しにしていた。


「そない怒らんといてぇな、冗談や、冗談」


お団子の少女をデートに誘ったことを、笑って誤魔化そうとする七。


本心を言えば、半分以上は本気だったが、今はミコちゃんの怒りを鎮めることを優先すべきと判断した。


「ウチのステディはミコちゃん以外におらんのやから、安心してぇな」


へらへらした口調で、へらへらと笑いながら七は言った。


ミコちゃんはペンを手に取り、七に向かって投げるような素振りをした。


「ひぇッ」


両手を顔の前に挙げ、手のひらを広げて、降参のポーズを兼ねたガードの体勢に構えた。


怒りを鎮めるどころか、完全に逆効果だったようだ。


「もうええわ、次いこ、次!以上、秋葉七でしたッ!」


都合が悪くなったため、七は半ば強引に自己紹介を終わらせ、席に座った。


しかし、秋葉七がどのような人物であるかということは、クラスの全員が概ね理解したようである。



「じゃあ、次は俺かな」


まだ騒動の余韻が残る中、1人の男子生徒が席を立った。


先ほど七のことを『白鬼』と揶揄したニヤけ顔の男子生徒だった。


「えーと、俺の名前は祖谷納屋いやなや ろう。夢は世界平和だ」



この物語は、実際に起きた出来事を基に作られたフィクションです。

作中に登場する人物や団体は実際には存在しません。

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