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第4話 黒き華から黒き剣へ

 「おい、1回集合だ」という声に周りにいた人達はそいつの元に集まる。


「全員、集まったな。よくここまでバレずに集まってくれた。それでは最後の確認をする」


 とおそらくリーダーであろう男性は作戦を確認している。


 流石リーダーをやるだけはあって部下の統率はしっかりととれており、見た目だけでもそれなりに力を持っているのがわかる。身体も鍛えられており巨大な体は2mは優にあるのではないかと考えられる。


 それに感じる魔力もかなりビシバシと伝わってきており、魔法に関しても実力があるのだろうと推察する。グループはリーダー含めて5人だ。周囲に気配は今のところ感じない。


やるか……


 俺は黒華の方に顔を向けて首を縦に動かす。それが伝わったようで黒華も首を力強く頷き握っている手をギュッと握った。


 そして俺達は立ち上がって、集まっている背後に忍び寄る。向こうは気づく気配はない。改めて魔装であるカメレオンの潜伏能力の高さに感心しながらも、俺と黒華はそれぞれ隣り合う男の首元に手をあてがい、首に思いっきり手刀を叩き込む。


「なっ!?お前らいきなりどうした!?」


 周りの人も驚きで焦っているのかかなり戸惑っている様子だ。俺と黒華は繋いでいた手を離して左右に分けれ、カメレオンを解除する。


「なんなんだこいつらは!?」


 突然俺達が現れたことで、さらなる動揺を引き出して俺と黒華はそれぞれ1人ずつ倒していった。


 最後にリーダーを!と思ったがそう上手くいかずリーダーの男は既に俺達から距離をとり、銃を構えている。


 その構えているものを見て俺は内心舌打ちをする。

 

 魔装であれば黒華の能力で一発だったのだがしょうがない。

 

 俺は周囲を確認して他の奴らが皆意識を失っているのを確認し、魔装である「シールド」を展開する。


 この「シールド」は使用者の魔力を消費し続けて魔力で構成された盾を形成する。

 サイズや形なども調整可能で自分の好みに合うようにカスタマイズされている。

 俺の使うシールドは俺の半身はカバーできそうな程の大きさだ。


 俺と黒華は相手と睨み合い、一定の距離感を保ちながら円を描くようにしてゆっくりと足を動かして相手との感覚を一定の幅で保つ。

 最初の位置から90度ほど回転したところで、動くのをやめる。相手も動きを合わせてくれたのか俺達と同じように停止してくれる。


 ちなみに睨み合いながら移動したのは、近くに倒れている奴らに流れ弾が当たらないようにしたり、口封じのために射殺されないようにするためである。

 もし目の前の男が銃口を別の方向に向けた瞬間その隙を突いて黒華が決める。だから相手も容易に口封じに走ることはできない。


 そして黒華はシールドを持っていないのは、避けられる自信があるからだ。

 実際訓練でもこれまでの実践でも実弾含め弾には当たったことがない。


 『集中すれば、弾なんか遅すぎる』『そもそもシールドが重たすぎて動きが鈍っちゃう』とのことで動体視力も反応速度も俺なんかでは比にならない。

 

 俺は毎回当たらないかとヒヤヒヤしているがそんな俺の心配とは裏腹にさも当然と言わんばかりにすました表情で避けていく。


 ちなみにこれは一葉さんもできることである……あれっ?……女性陣がバケモノ染みてませんか?


 つまりだ!俺がシールドを構えていることで当然黒華に照準は向けられる。黒華に向けて放ったその時がきっとあいつの最期である。


 そして俺の予想通り、いや、狙い通り銃口を俺ではなく黒華に向けて引き金に指を掛ける。そして気持ち悪い笑みを浮かべながら、


「小さなお嬢ちゃん、君は隣の薄情なお兄さんから守ってもらえなくてかわいそうだねぇ?可哀想だとは思うけどもせめて痛く思わないようにちゃんと狙ってあげるから。この距離では避けられないだろう?」


「そうですか、だったら早くしてくれませんか?時間の無駄なんですけど」


 しかし、黒華は煽ってくる男に対して冷たく対応……さらには逆に煽り返すこともやってのけた。


「あと、彼は薄情なんかではありません、私の知る限りで最も優しく、素晴らしい人です。あなたなんかと比べるまでもありません」


 先程の『薄情な』という言葉に反応したのか、さきほどよりも明らかに怒りの感情が混じった言葉で俺を擁護してくれている。

 そんなことでわざわざ言い返さなくてもいいのに。だけど嬉しくないわけじゃない。


 心が温かくなるのを感じながらも俺は一応、警告をしておく。


「意味ないとは思うけど、武器を下げて投降しろ。でないとさっきの奴らみたいに眠ってもらう」


「今さらだな、おい」


「あぁ、今さらだ」


 俺の言葉を最後に沈黙がこの場を支配する。相手が狙いをきっちりと黒華に定めているのを確認した俺は神経を再度集中させる。


 互いに固まったまま動かずだったが、


「死ね!」


 声とともに奴から握る拳銃から発砲音が響く。だが、しかしその弾丸の軌道上に既に黒華はいない。


 俺はそのことに一安心していると、向こうもようやくそのことに気づいたみたいで、「はっ!?」と間抜けな声を出している。

 

 そしていつの間にか相手の背後に回っていた黒華が既に攻撃態勢に入っており手刀を首めがけて打ち込もうとしている。


 しかし、相手もそう簡単にはやられてくれないみたいで後ろを振り返ることなく前に体を倒れたことにより黒華の手は横一線に空を切る。


 黒華は躱されたことを特に気にすることもなく、そのまま手を振った勢いのまま横一回転して前に倒れて屈む男を蹴り飛ばした。


 バキッ!と嫌な音がしたが俺は聞こえないふりをしておく。


 目の前からは黒華によって吹っ飛ばされた男が飛んでくるのでシールドで受け止め余計に距離が空くのを防ぐ。

 そしてシールドと男が触れた瞬間、黒華も一瞬にして距離を詰めてシールドとぶつかった衝撃で動けない男にシールドと黒華の板挟みになる形で再度手刀が決まった。


「ぐはっ……」


 苦悶の声を吐き出した後、そのまま男の体は重力に従って落ちていく、だがその時、


「…あ………は……む」


 何かを喋ったのが聞こえたのだが上手く聞き取ることができなかった。問い詰めようとしたが、既に気を失ってしまっていた。


 なんだ?……歯に魚の骨が挟まってなかなか取れないのが歯痒いみたいな感じで、謎の引っかかりが胸から拭えない。


 俺は黒華の方を見たのだが、既に一息吐いて終わったぁ的な顔をしている。黒華は特に気になることはないようだ。


「とりあえずさっさと連絡しよ」


 淡々と言いながら俺のスマホを奪い取って、本部に連絡する。俺はスマホを当たり前のように使われてしまうのに最早何も感じなくなってしまった俺は特に咎めることもなく、特異隊専用の色々と頑丈な手錠で5人分しっかりと拘束する。


「はい、取り押さえましたので引き渡しお願いします、失礼します」


 電話で報告をし終えた黒華はニコリと笑って俺の元にスマホを渡そうと駆け寄ってくる。

スタスタと走ってくる黒華がなんだか可愛いなと思ったのだが、次の瞬間俺は鳥肌がゾッと立つほどの寒気を感じて、俺は咄嗟に黒華の背後を守るように庇い膝をつきながらもシールドを構えた。


 俺はなんでそんな行動をしたのかわからなかった。


「何!?」

 黒華も驚いているようで、黒華がバタバタと片腕の中で暴れている。だが、離してはならないと俺の本能がビシビシと訴えていたので、俺は必死に黒華を抑える。


 俺が黒華を庇うようにしてシールドを構え、黒華が喚きだした瞬間に構えていたシールドから金属音が響いたのを聞いてシールドを見ると、潰れた銃弾がシールドについていた。俺は弾丸が飛んできたであろう方角を見つめるが、それらしい姿も確認することもできない。それどころか人の気配も感じられない。


「黒華!」


「刀哉!」


 俺は黒華の名前を呼び、黒華もそれに応えるように黒い剣に変化して右手には黒華、左手にはシールドを構えて力を発動させる。俺を中心とする魔力打ち消しの円を広げていくと銃弾が飛んできた方向に魔力を打ち消した感覚があった。


「あそこか!」


「なっ!なんで!?」


 狙撃銃を手にした男が驚きの声を上げている。どうやらもう1人仲間がいたらしく、先程の俺達と同じようにカメレオンを使ったのか、似たようなストレス系の魔法を使った上で狙撃してきたようだ。


 俺は逃がすまいと足に力を入れて男がいる高い所に向かって跳躍して逃げようとする男の退路を塞ぐ。男は最後の抵抗とでも言わんばかりにナイフこちらに向けて正面から突っ込んでくる。


 俺はその単純な軌道から振り下ろされるナイフを剣で受け止めた……のだがナイフが貧弱すぎて溶けるようにナイフを切ってしまい、そのまま相手の手まで切りつけてしまうところだったので、


「やばい!」


 俺は咄嗟に黒華を離して、身をかがめ勢いのまま向かってくる相手の顎を下から殴り挙げた。相手はそのまま仰向けに体を地面に打ち付けて仰向けになっていた。


「今度こそこれで終わり?」


 いつの間にか剣から戻っていた黒華が不安そうな表情で問いかける。俺は黒華の容体を確認しながら倒した男を拘束する。


「あぁ、さっき黒華の能力で確認したけどこいつだけだったからもう大丈夫だ」


「そっか」


 ホッと息を吐いて安心できたのか気を緩めたのか表情を柔らかくした。


「にしてもさっきは切りつけそうになってごめん」


「ん、大丈夫。心配してくれるのは嬉しいけど、私も覚悟はできてるから」


「そっか、でも極力黒華で人は切らない。お前の手を汚したくないからな」


 そう言って俺は黒華の小さくて白くて綺麗な手を優しく包む。微かに震える黒華の手を安心させてやるようにギュッとしてあげてしばらくすると黒華の震えも収まったのを確認できた。

 

 やはり、覚悟はできてるとは自分で言ったもののまだ怖かったのだろう、自分が誰かを切りつけることが……。


 幼い子供にそんな非情なことはさせられない、というかしてほしくない。

 

 黒華が少し恥ずかしそうにして顔を俯かせながら


「……ありがとう」


小さく呟くのだった。

読んでいただきありがとうございます!


面白い!続きが気になるかも?と思っていただけた方はブックマークや評価よろしくお願いします!

黒華が可愛い!と思った方も是非!

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