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戦姫戦国ぶらり旅  作者: リューク
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美那乃との交渉




湊「あんたが今川義元?」




義元「ええそうです。私が現今川家当主今川治部大輔美那乃義元です。それで、あなた方は?」




海「椎名海と言います。こちらは兄の椎名湊です。今回は芽衣ちゃ......今川氏真様をこちらにお返しするために来ました」




海がそういうと、義元はますます疑問を2人に感じるようになった。なぜなら......




義元「あなた方は織田家の人間でしょう?なぜわざわざこちらに芽衣を返しに参られたのですか?普通ならば選曲を有利にするのに人質にするのが定石でしょうに」




海「へ!?何で私たちが織田から来たってこと......」




義元「馬の鐙に織田家の紋章がついていましたので。それよりも質問に答えなさい。なぜあなた方は敵軍である私たちのもとに芽衣をお返しに参ったのですか?」




少し口調を鋭くさせながら義元は言った。返答次第ではこの場で打ち首に処す!そう言わんばかりの覇気を纏っていたため、海は思わず身動いだ。




湊「んなの......芽衣が帰りたがってたから?」




義元「......はい?」




湊の言ってることが理解できなかったのか、義元は思わず聞き返していた。




湊「だ〜か〜ら〜、単に芽衣がお母さんに会いたいって言ってたから連れて来ただけだって。それ以外の理由なんてないよ〜」




海「はい......実はそうなんです。芽衣ちゃんがお母さんに会いたいっていうもんですからほっとけなくて......」




義元「......たったそれだけの理由でこんな真似を?」




湊「うん。何か問題ある?」




義元「......いや」




義元は疑問を通り越して呆れてしまっていた。それはそうだろう。ただ、自分の娘が自分に会いたいと言っていただけでこんな危険を冒してまでここまで来てしまうのだから。それもこの戦乱の世でだ。そんななんともは天候というか常識外れのことをしでかした2人のことをじっと観察していた義元だったが、次第にーーー




義元「ふふふ.......あはははは!!」




弾けたように笑い始めたのだった。その笑顔は先ほどの無表情だった顔とは打って違い、年相応の素晴らしい笑顔だった。




芽衣「お母さんが笑ってるの久しぶりに見た!なんだか楽しそう!」




海「ほんと......さっきまでとはなんか雰囲気が違う気がする......」
















義元がひとしきり笑った後、2人はとりあえず芽衣を義元に返そうと馬から下ろした。馬から降りた芽衣はそのままトテトテと義元の元に歩いて行った。




芽衣「お母さーん!ただいま〜!」




義元「今までどこに行っていたのですか?本当に心配しましたのよ?」




芽衣「えへへ〜ごめんなさーい。でも、湊と海がいたから大丈夫だったよ!」




歩み寄って来た芽衣を義元はギュッと抱きしめた。よほど心配だったのか、義元の瞳にはうっすらと涙が滲み出ていた。今この場にいる義元は、今川家当主今川義元ではなく、芽衣の母、美那乃として芽衣と接していた。





その親子の感動的な光景を見ていた2人は感動すると同時に、この2人に待つ残酷な未来のことについて考えていた。このままいけば、この2人は破滅してしまう......。











美那乃「先ほどは笑ってしまい申し訳ありませんでしたね。改めて、芽衣を送り届けてくれて感謝します。何かお礼をしたいのですが?」




湊「お礼はいいんだけどさ。代わりに俺と海の頼み聞いてくれない?」




美那乃「頼みですか?なんでしょうか?」




湊「このまま軍を退いて駿府に帰って」




その頼みに義元は思わず目を見開いた。これはさっき海と湊が話し合ったことだ。このまま行けば今川軍は桶狭間の戦いで敗北する。そうなれば美那乃の命もなくなる。そしてその後、今川家も没落してしまう。歴史を変えてしまうことになってしまうが、先ほどの美那乃と芽衣のやりとりを見てしまった以上、2人は放っては置けなかったのだ。だがもちろん美那乃も簡単にこの話に応じるはずもなくーーー




美那乃「申し訳ありませんがその頼みは聞けません。そもそも何故突然そのようなことを?」




海「え、えっと......」




湊「このままだと今川が織田に負けちゃうから」




美那乃「なっ......」




海「お兄ちゃん!?そんな唐突に!?」




さすがに湊のこの一言には美那乃も目を鋭くさせながら滾らせ、湊をギラリと睨み付けていた。




美那乃「我が軍が負ける...ですか?何故そう言い切れるのでしょう?」




湊「そんなの俺らが未来から来たからに決まってるじゃんか?史実通りだとこの戦いで今川は織田に奇襲されて負けちゃうんだよ。それで今川義元が討たれて負ける。つまりあんたはこのままだと死んじゃうってこと」




海「お兄ちゃん!?そこまではっきりいわなくても......」




美那乃の湊を見る目は相変わらず鋭い。だが同時にその未来から来たという湊と海に興味も出て来てたみたいで、唐突にこんなことを聞いていた。




美那乃「湊、海、あなたたちは未来から来たと言っていましたが、それでは今川の未来のこともご存知ですか?」




湊「聞きたい?」




美那乃「はい。お願いします」




今から言うことは少し酷な話だが、湊はそんなことも気する様子もなく軽く言った。




湊「簡単に言うと没落する」




美那乃「......」




海「はい。義元公が亡くなられた後、今川の勢力はみるみるうちに落ちていき、後を継いだ氏真様もそれを止める事は出来ずに松平衆などに攻め込まれて没落します。これが私たちの知っている今川家の未来です」




美那乃「......」




2人の口から聞かされた残酷な自分の家の未来に美那乃は言葉をなくしていた。




湊「これでわかったでしょ?何で駿府に帰ってって言ったのが」




海「歴史を変えることになっちゃうかもだけど、それでも2人は死んで欲しくないんです。だから......軍を退いてください......」




美那乃「先ほどのことは私たちのことを思って言ってくれたのですか?」




湊「?何言ってんの?当たり前じゃん」




何を今更?とでも言いたげな顔をしながら湊は言った。その様子に美那乃はまた少し微笑みを浮かべた。




美那乃「全く......本当に変わった人たちですね。......わかりました。あなたたちを信じましょう」




美那乃はそう言うと、陣幕の中を出て行った。そして、陣幕の外にずらりと並べられた今川兵たちに向かって一言下知を飛ばした。




美那乃「全軍!一旦駿府に帰還する!各隊の将は直ちに指揮をとり、帰還を開始せよ!」














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