気がつくと
今回から新たに小説を書かせていただきます。
戦国系は本当に好きなので選ばせてもらいました!
よろしくお願いします!
ときは戦国、今、日のもとに広がるは戦の数々。応仁の乱より始まった長きにわたる戦乱の世。それがのちに語り継がれる戦国時代。従来に語り継がれた歴戦の猛者、いわゆる武将もその中に数多く顔を揃えていた。それは史実と何ら変わりないものであった。
・・・・・・ある一点を除いては。
?「な、何なのここ?私たち一体・・・・・・」
?「さてな。俺らさっきまで家にいたんだけどな〜」
その戦国の世の森の中で2人の若者の声が響き渡った。2人は今自分がどのような状況なのか理解できていないようだった。
?「何呑気に言ってんのお兄ちゃん!まずはここがどこか分からないと何もできないよ!」
?「焦んなって〜。のんびり行こ〜ぜ」
?「全く、お兄ちゃんは相変わらずだね・・・・・・」
そんな口喧嘩?をしながら、場所を把握するために移動を開始した2人だった。だが、そんな折ーーー
兵士「進めー!!すぐに新手が攻めてくるぞーー!!本陣を危険に晒させぬためにも急ぐのだーー!!」
兵士一同「「「「「「おう!!!!」」」」」
2人から幾分か離れたところに馬に乗った兵士たちが疾走していく姿があった。戦国の世では馬に乗って移動するなど至極当たり前のことだ。だが、2人にとっては・・・・・・。
?「へ?・・・・・・いや、馬って・・・・・・しかもあんなに多くの・・・・・・。何?撮影?」
?「へ〜?今ってあんなに立派な鎧とか槍とか持って撮影するのな?」
このように、珍しいものでしか見えないようだった。2人はとりあえず、何かの手掛かりになるかもと考え、さっきの兵士たちの後を追うことにした。
しばらく後をつけていると、森を抜けることに成功し、だだっ広い平野が2人の目の前に姿を現した。だがそこにあった平野で行われていたのは2人の言う”撮影”などでは無くーーー
?「これ・・・・・・撮影にしては過激すぎない?思いっきり槍とか突き刺して相手討ち取ってるように見えるし・・・・・・」
本物の・・・・・・戦乱の世らしい戦だった。それを見た途端、2人は何か察したらしく、互いに目を見合わせた。
?「まさか・・・・・・?」
?「俺たち?」
2人「・・・・・・タイムスリップしてる?」
そう・・・・・・2人はこの戦乱の世よりも遥か未来から来た未来人だったのだ。
椎名湊ーーーそれが2人のうちの男の子の方の名前だ。歳は18。普段は高校に通いながら青春を満喫している普通の高校生だ。家が剣道の名家であり、小さい頃から竹刀を持って鍛錬に明け暮れていた。その甲斐あってか、剣道の全国大会で優勝するだけの実力を今は持っている。一見、性格も剣道をやっているだけあってしっかりしているのだろうと思うのだが、実際は全くの逆で普段は昼寝が大好きで何事もめんどくさがりな性格をしている。
椎名海ーーー女の子の方の名前だ。歳は16。湊の妹で同じ高校に通っている。同じく家が剣道の名家の為、港と同じように小さな頃から剣を握らされていた為、実力は折り紙付きだ。実を言うと、2人の父からは海が家を継ぐ方が良いと指摘されていたが、海はそれに猛反対した。『私では継ぐことはできない。お兄ちゃんが継ぐべきだ』と。兄の湊とは対照的にしっかりしていて、湊の世話をよく焼いている。でもそれを苦とは微塵も感じていないらしく、いつもだらしないな〜と蔑んではいても心では湊のことを慕っている。
そんな2人は、とりあえず危ないと判断し、一旦その場から離れ、状況を整理することにした。整理することは2つ。1つは今がいつでここはどこかを。2つ目は今後自分たちはどうするかだ。
さっきの場所まで戻ってきた2人は早速話し合った。
海「とりあえず、あれは本当の戦。嘘でも何でもない・・・・・・本物の戦だってことは断言できるね。本当に私達タイムスリップしてきちゃったのかな?」
湊「さてな。ま、しちまったらしちまったらでそれはそれで楽しそうだけどなー」
海「お兄ちゃんはぶれないなー・・・・・・。私達さっきまで家で稽古してたのに急にこんなとこに来ておかしいって思わないわけ?」
湊「こんな森、小さい頃しょっちゅう父ちゃんに連れてこられてただろ?修行の一環だって言って滝修行だの森の熊退治だの色々させられたの忘れたのか?」
海「う・・・・・・お、思い出したくもない・・・・・・」
2人の家は名家と言うこともあり、2人を鍛えるために小さい頃から厳しい修行を施していた。およそまだ小学生にもなってない子供にやらせるとは思えないような修行をだ。いつも先に音を上げる海を湊が励ましたり守ったりして何とかその修行をやり遂げることができたのだ。海にとってはそれは黒歴史に近く、思い出したくもないことの一つのようだった。今回も家で稽古の途中、休憩をしていたときに気がついたらこの森に来ていたと言うのだ。だから服装も道着のままで、それだけでは心細いと言わんばかりに竹刀まで一緒に来ていた。
湊「あんだけのこと経験してんだ。これしきのことじゃ、動揺なんてしねーよ」
海「そ、そうだね。とりあえずさ?これからどうする?」
湊「ふあ〜あ、とりあえず近くの村でも何でもいいから話でも聞こーぜ。話はそれからだ」
海「うん・・・・・・でも、村なんてあるかな?」
湊「何とかなるだろ」
いつものように気怠そうな湊の返事に内心溜め息をついた海は、湊とともに、とりあえずあてもなく森の中を彷徨うのだった。
その一方、ある集団が馬を走らせながら森の中を蹂躙していた。数は50ほどとそこまで多くはない兵を従え、森の中を走っていた。その先頭を走る武将は配下の者と何かを話していた。
?「香織、この先の村で少し休息をとるぞ。皆にもそう伝えよ」
香織「了解です。皆さん!すぐそこの村で少し休息をとります故、もう少し辛抱を!」
香織と呼ばれた配下と取れる人物は後ろにいる兵たちにそのことを伝えた。見る限り、兵たちは疲弊していた。大方遠くまで遠征に行っていて、今はその帰りなのだろう。無理をさせるのはいけないと踏んだのか、先頭の武将は休息を与えることにしたのだろう。
そのままその軍団は、村に向かって馬を走らせるのだった。
湊と海はあれから数刻の間、ひたすら森の中を彷徨っていた。一刻で約30分のため結構な時間彷徨っていることになる。とは言っても2人には地獄のような修行によって身についた精神力と体力と胆力があるため、これ式のことは何ら問題はなかった。いや、違う意味で問題が起こっていた。
湊「ふあ〜あ、睡い〜〜。寝ていいか?」
海「いやいや、こんなとこで寝ないでよ。まだ日も高いでしょ?村が見つかるまで頑張ってよ・・・・・・」
湊に眠気が襲いかかっていたのだ。湊は昼寝が好きなため、昼間でもよく寝ていることが多い。今回もその類に入る。
湊「こんな森の中で寝ることもまた新鮮でいい・・・・・・」
海「ち、ちょっとお兄ちゃん!?こんなとこで寝ないでってば!寝ないで・・・・・・ん?」
寝そうになってる湊を起こそうとしていた海だったが、視界に映った小さな屋根に目を奪われ、一旦手を止めた。よく見るとその他にも小さな屋根が見えた。
海「お兄ちゃん見てみて!村!村が見えたよ!ほら、起きて起きて!」
湊「んあ?村・・・・・・あったのか?」
海「うん!行こ!」
海は湊の手を引っ張りながら村に向かって歩き始めた。
その村は決して大きい物ではないが活気に溢れていて穏やかな雰囲気が漂っていた。
海「こうして見ると、みんな和服とかそんな服ばかり着てる。とても私たちの時代とは思えないね」
湊「なんか新鮮でよくないか?それに俺たちもそれに近い服装してるからそこまで怪しまれてないし」
この時ばかりは、道着で来ていて良かったと実感する海は湊とともに村の人に話を聞くべく行動を開始した。
早速近くを通りがかった村の人に話を聞くことにした。
海「すいませーん。ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど〜?」
村人A「ん?何じゃね?」
海「ここがどこで、今は何年でしょうか?」
海のいうことに最初は首を傾げていた村人だったが、すぐに何を聞きたいのか察せたようで再び口を開いた。
村人A「お主ら迷ったんじゃな〜はは!ここらはなーーー」
村人B「逃げろーー!!山賊が来たぞーー!!」
やっと場所が聞けると思った矢先に飛び込んできた急報に2人は顔を顰めた。
湊「何かあったの?山賊って?」
村人A「ああ、ここらの近くに潜んでる奴らのことじゃ。時々やってきてわしらの食料や水を片っ端から奪い取っていくんじゃ!ここにおったら命がいくつあっても足らん!お主らも早よ逃げるんじゃ!見ろ!もうすでにそこまで来とる!」
海「ふーん?どうする?お兄ちゃん?」
すぐそこに山賊が来ていることにもお構いなしに、海があることを確認するために湊に視線をずらした。先にも言ったが、2人は剣道の名家の跡取りだ。剣の腕も確かな物。それに加えて、やっと聞けるかもと思っていた情報を山賊に邪魔されたこともあって若干腹を立てていたのだ。懐には長年ともをしてきた愛刀。ここまで揃えば何を確認したかったのかはわかるだろう。
湊「人の昼寝のひと時を邪魔しやがって・・・・・・成敗してやるよ」
海「え?そこなの?・・・・・・まあ、とりあえずやっつけるってことでいいね?」
湊「ああ、やるぞ海!」
海「うん!」
いつもの眠そうな顔を一瞬にして戦う剣士の顔に変貌させた湊の激に海も答えた。そして、村人の静止も無視して、2人は数十人の山賊たちのもとに突撃するのだった。
時は少し遡り、先の軍団がもうじきその村に到着すると言ったところ、先頭の武将はある人物が目に止まった。
?「止まれ!」
武将の下知により兵たちはすぐに馬の速度を緩め、その場にとどまった。そして、その武将は目の前に現れた人物に声をかけた。
?「何者だ?」
村人C「おらはこの先の村のもんです。それよりも、お助けくだせぇ・・・・・・。横暴な山賊どもがおらたちの村を・・・・・・どうか!」
?「ほう?山賊か・・・・・・。我らが休息するためにも、排除しておくに越した事はない・・・・・・皆の者!」
武将が振り返ると兵全員が背筋を伸ばし、指示を待った。そして武将の下知が飛んだ。
?「これより我らはこの先の村におる山賊どもを打ち払いに行く!者共、準備は良いか!」
兵一同「「「「おう!!!」」」」
?「香織も良いな?」
香織「仰せのままに・・・・・・」
?「ふん!そういうわけだ。貴様は後からついてくるが良い。だが、山賊どもを打ち払ったら暫しの間、村で休息をとらせてもらうぞ?良いな?」
村人C「あ、ありがとうごぜーます!どうぞごゆるりとして行ってくだされ!」
確認を終えると、一目散に50人の精鋭たちは村に直行した。馬で全速力でかけたこともあり、半刻もしないうちに村に着くことができたのだが、武将たちは村の様子に違和感を覚えた。なぜなら、山賊に襲われていると聞いていたのにもかかわらず、どこも荒らされている様子がなく無傷そのものだったからだ。しかも何やら村の一部で騒ぎが聞こえている。もちろんそれは山賊に襲われていて悲鳴を上げているだとかそういうことではなく、何やら誰かを褒め称えているというか笑いが起こっているような和やかな騒ぎのように武将たちには聞こえたようだ。
香織「殿?山賊というのは何処に・・・・・・?」
殿「わからん。とりあえず、この騒ぎのする方へ赴いてみるとするか」
殿と呼ばれた武将は”長い髪”をかきあげながらそう言った。そのまま騒ぎの元凶のもとに向かって見ると、そこはちょっとした広場のようになっていて、そこに村人たちが何かを取り巻くようにして立っていた。気になり、もう少し近くまで来て見ると、その輪の中心にいたのは・・・・・・。
殿「何だ?あの2人は・・・・・・?」
数十人の山賊たちを傍に転がしてのんびりと村人たちと会話している湊と海だった・・・・・・。