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第3話

「やっほー来たよ翔太」


「いらっしゃい。愛美」


出迎えるとやはり怪訝な顔をする愛美。


「それ・・・ゴーグル?なんでそんなの着けてるの?」


やはりヴォムが見えているらしい。

そして愛美は俺の顔に手を伸ばし、ヴォムがあるらしき場所に手を触れる。


「それが、着けたはいいけど、俺には見えなくてね」


「そんなバカな話が――あったわね」


「もしかして愛美も見えなくなった?」


「うん、今は翔太の顔がちゃんと見えるよ」


やっぱり仮想現実っぽいな。それにしては愛美が愛美すぎる。でも触ったら認識されなくなる?しかも中の顔がわかるとかそんな技術――やりかねないんだよなぁ。


「実はまた教授に騙されたっぽいんだよね」


「ええっ!?あれからなにもされてなかったんだよね?」


「うん。ホントにアレ以来だなぁ」



アレ、とは過去のテストプレイのことだ。

愛美との出会いのキッカケでもあった。


給料のよい夏休みの泊まり込みのバイトとしてお互いに参加していた。


参加者同士説明後に話す機会があり、たまたま隣の席で説明を聞いていた愛美が声を掛けてきたのが最初だった。


そのゲームは所謂冒険ファンタジーで敵の魔物を倒して経験値を得て強くなっていく、というありがちなものだったのだが、何より中の世界がリアルすぎた。


本当に自分がそこにいるかのような感覚。

始めは感動すらしたのだが、戦闘をするとその感動も吹き飛んだ。


血が吹き出し、断末魔の叫びを上げる魔物。

こちらのダメージへの衝撃や痛みはほとんどカットされていたがないわけではなく、もし死んでしまった場合にはリスポーンまで「蘇生待ち」時間があり、魔物にやられた場合はその間に自分の死体を貪られる恐怖を見せられる。

蘇生魔法なんて使える者が何人もいないというのに。


しかもこのゲーム、回復アイテムが未実装だ。


そんなシステムだった為、誰も先に進もうとしない。

参加者全員が石橋を叩いて進むようになった。


入念にレベルを上げて格下を倒していく。

あっという間にそれが参加者の常識となった。


明らかに強そうな敵を見たらまず逃げて対策を練った上で、無理せず撤退も選ぶ。



そんな停滞状態になった頃、痺れを切らした運営、もとい教授はバトルイベントを始めた。


強制転移による全員参加のPvPイベントだった。


「そうそう!あの時はいきなり目の前にウィンドウが出て焦ったよね。戦闘中だったし。終わったら元の場所に戻すって書いてあって慌てて安全地帯まで走ったもんね」


「あの教授なら間違いなく魔物の目の前に戻してただろうな。ホントあの愛美の選択は正しかったよ」


「えへへ。もっと褒めて」


可愛いので頭を撫でる。



そしてイベントは予選から始まった。

予選はバトルロイヤル。

20人の参加者が4つのリングに分けられた。


ルールは2人勝ち抜けで制限なし。

ただし、HP、MPは最後まで持ち越しで、回復アイテムがないので、ヒーリングという座って回復する以外回復手段がない。

回復魔法が使えるやつもいたみたいだけど、バトルロイヤルというルールに殺された。

だが、ルールよりも組み合わせに教授の悪意があった。


このゲームではパーティを組むことができ、最大4人。

安全に狩りをする為、ほとんどの人が最大人数でパーティを組んでいた。


俺と愛美は2人パーティだった為、必然的にもう2人余りが出るが、その2人はソロで活動してたみたいだ。


そして、このバトルロイヤルの組み合わせはその4人パーティと余り一人の5人×4という明らかに一人が狙われるようにされていた。


事実、俺と愛美以外のリングでは余りの一人があっという間に倒され、脱落していた。


俺と愛美はというと、実は二人は割と早い段階で戦闘に慣れ、他の4人パーティと同等の効率で魔物を倒すことが出来ていた。


それはパーティメンバーで経験値が分散されるシステム上、倍の速度でレベルアップできるということであった。


なので、俺たちは逆に狙ってきた4人を返り討ちにして一人抜けすることが出来た。


だが、教授の悪意はそれだけではなかった。

まず、二人以外のリングでは血生臭い仲間割れが起きていた。

それもそうだ。

一人を倒したところで勝ち抜けるのは2人で、残りは倒されなければ終わらない。


制限なし。

それはなんでもできるように聞こえるが、誰かを倒して終わらせなければ永遠に続くということでもあった。

リングには結界が張られ、リングアウトもない。

終わらなければそこから出ることもできない。

そもそもこんなゲームのテストプレイで仲良しパーティなんていないわけで・・・


それを乗り越えると次はトーナメントだった。


しかも、組み合わせが2つのリングごとで分けられていた。

どういうことかというと、予選のリングを1〜4とすると、一回戦は1と2、3と4の勝ち抜け同士が戦い、1、2と3、4は決勝まで当たらない別の山になっていた。

最悪また同じパーティ同士の殺し合いだ。


俺と愛美は決勝まで当たらない組み合わせだったが、二回戦の相手は自分が一人抜けした為不戦勝で上がってくる。

一回戦の間ヒーリングできる相手とのハンデが大きい。


「まぁ、決勝は翔太とだろうとは思ってたけど、あれはやりたくなかったなぁ」


「俺もだよ。だからやる側かやられる側か選ばせてやったっしょ?」


「うん。ありがとね。ちなみに翔太が選んでたらどっちだった?」


「さすがに愛美を斬りたくはないなー」


ってか、AIがこんな質問できるのか?やっぱり本物の愛美なんじゃ・・・


「他の人ならともかく翔太なら全然気にしないよ」


「まぁ、ゲームの中なんだけど、あのリアルさがなければもうちょっと割り切り易かったんだけど」


「それね!あの時限イベントとか二度とやりたくないよ」


時限イベント。

PvPイベントからしばらくして教授が始めた第2回イベントだった。


強制ボスバトルで戦闘フィールドにガスが充満しているという設定で、耐性無視で行動時間が決められ、それまでに倒しきれないと麻痺して動けなくなり蹂躙されるという半分以上の参加者が発狂したテストプレイ終了の原因になったイベントだ。


耐性無視で行動時間制限という超鬼畜条件で、強敵ボスとパーティ戦を強制される。

まずソロの二人は単純な力不足でそもそも攻略自体が不可能。

それ以外のパーティもタンクとヒーラーがいないとほぼ無理という難易度だった。

ほぼ、というのは俺たち二人のような回避特化前衛なら行動可能時間と回避し続ける集中持続時間がほぼ同じくらいだったので、後は火力があればなんとかという感じだ。


俺たちは防御に一切振らない回避と攻撃の所謂忍者型だったから避けつつ攻撃してなんとか突破した。

もう一組は今言ったタンクとヒーラーのいたパーティでタンクがうまくタゲを取って攻略したらしい。


そして、このイベントの最も恐ろしいところ、それは「討伐制限時間」だ。

この時間中、討伐するまで強制再挑戦させられるのだ。

どんなに明らかに倒せないパーティだろうが関係なく、ひたすらバトルフィールドに放り込まれ、毎回無抵抗で蹂躙される様を見せられる。


この二つの時間制限により倒せなかった者達が発狂死することになった。



「あれは自由参加でようやく成り立つレベルだよ。耐性無視はないと攻略法確立に繋がってつまらなくなるからいいとしてさ」


「死にかけたのによくそんなこと言えるよね。教授が気にするわけだよ」


嗚呼、俺のゲーム脳に愛美が呆れてる・・・

確かに俺のこういうところが教授に気に入られた原因だよなぁ。


「でも愛美もあのバトル楽しんでたよな?」


「あれは――初見で倒せたからだよ。失敗してたらどうなってたかわかんないよ」


「まぁなぁ、だんだん麻痺してくる感覚は二度と味わいたくないもんな」


「ホントだよ。アレだけでも軽くトラウマレベルだもん」


「生きててよかった」


「うん・・・」


愛美と肩を寄せ合う。


はっ、イカンイカン。

コレが現実かどうかハッキリさせるまで何もしないと決めたんだった。


「愛美、俺は大学に行こうと思う。さっきまで見えてたゴーグル、ヴォムって言うんだけど、まずはこれをなんとかしたいんだ」


「そっか、見えないだけでまだ着けてるんだね」


「うん。こうやるとメニューは出るからあるのは間違いない」


指でなぞるメニュー表示の動作をして見せる。


「私も一緒に行ってもいい?」


「いいのか?またあの教授に会うことになるかもしれないんだぞ?」


「う・・・それはあんまり考えたくないんだけど、翔太の力になりたい」


ホントにこれがAIなのか?

未だに結論が出ないんだけど、やっぱり愛美がいてくれるのは心強い。


「わかった。ありがとう愛美」


「いえいえ、あなたの彼女ですから」


そう言った愛美をギュッと抱きしめた。

AIかもしれないけど、そんなの関係なく嬉しかった。


そして、俺は愛美と一緒に家を出た。

お読みいただきありがとうございます。


だいぶ間が空きました。プロットだけ用意してたんですがなかなか書き始められず・・・

今もミッドナイトで連載中の「転生することになったのでイキイキ生きていきます」をメインで書いています。

よかったらそちらも読んでみてください。あ、R18なのでご注意を。


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