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第2話

中盤から視点が翔太の一人称視点に移行します。

(真実を知ってから思えばヴォムのBanってそういうことか。それにしても、まさか完全リアルとはね)


翔太の言うリアルとは、ゲームが現実そのもの、ということもあるが、フルダイブならバーチャルなのに身体能力もそのまま、ということだ。


以前テストプレイでやったゲームはファンタジーだった為、体も軽く、ステータスを上げることで身体能力も向上させることができた。


だが、今回はそれがない。

現実の自分の動きそのままなのである。


唯一現実と違うのはメニューコマンドが出る、という一点のみ。

しかもそのメニューも特に何かができるわけでもない。

ファンタジーのゲームの時のようにアイテムなどの項目はあるが、暗転していて選択できない。

GM callももうシステムメッセージすら返ってこない。


(何が基本操作はテストプレイと同じだ、システムはあってもなにもできないじゃないか)


最初に飛ばされた仮想空間ではできた衣装チェンジも出来なくなっていた。


「これも全部現実とゲームの区別をつけなくさせるためだな」


そう呟く翔太だった。

これまでのことを思い返してみるが、郷原教授という存在が両方の可能性を否定させてくれない。


(ラスボスを倒すっつったって、どうすりゃいいんだよ。殺したら殺人罪で捕まる気がするし、そもそも教授がラスボスとは思えねぇ。そう考えさせてくるのも教授ってヤツだが・・・はは、もう発狂しそうだ)


頭をガシガシと掻きながら思案に更ける。



(そういや、仮にここが現実で認識できないだけでヴォムを装着してるとしたら、電源とかどうなってるんだ?ネットはあいつのことだから専用回線でも使われてるんだろうが・・・まさか、衛星給電実装してたりしないだろうな?)


衛星給電とは、将来的に導入を検討されている新しい給電方法で、衛星から地上のどこにいても給電されるという画期的なものだ。


だが、それはまだ構想だけで、十数年後に可能になる技術だったのだが、翔太としては教授ならやりかねないと思ってしまう。


そもそもフルダイブという今の技術では有り得ないものを生み出した教授とその仲間の研究者だ。

翔太にとって彼らは何を作り上げても不思議ではなかった。


そして翔太はバッテリー切れによる解決を候補から除外した。


(リアルロールプレイングかと思ったらリアルアドベンチャーかよ・・・いやサスペンスか?めんどくせぇ。ラスボス、ラスボスねぇ)


想定していたゲームとはジャンルが異なることに頭を抱える。


「そもそも、あいつの発言はいつも虚実混ざってるからな。思い出せる範囲で両方の可能性を探してみるか」






まず、ヴォムは俺にしか知らされていない、店に並んだのもサクラだと言った。


これはたぶん本当だ。

普通なら俺と同じようにアバター作成くらいしたいと思って本体だけでも買う奴はいるはず。

なのにみんな店にも入らずにすぐ帰っていたしな。

事前情報と仕様が違うのも合点がいく。


フルダイブを研究していた、というのも本当だろうが、作った、ということには研究者だから、と否定も肯定もしていない。

一応肯定ともとれるが、あいつが信用ならないのはそういうところだ。


クリアしたら出られるというのも本当だろう。

さすがにそれで嘘をつくことはないはずだ。

閉じ込め、出られる希望を与える、というのはありそうではある。

でも、あいつがそれをやっているようには見えなかった。

あるとすれば他のログアウト手段がある、ってことくらいだけど、あの教授がそんなもの用意してくれるとは思えない。


当面の目標はゲームクリアでいいだろう。


体をどうしたか、そこは両方可能性がある。

腕を抓ったら普通に痛い。痛覚までそのままだ。

前の経験からそれで現実と判断してしまいそうになるが、あれはマシンで痛覚をほとんど遮断していたからだ。

遮断しない、ということも当然できるだろう。


死なないで、と言っていたが、死ぬようなダメージを受けたらフルダイブだったとしても死んでしまうからだろう。


つまり、交通事故とかに気を付けろ、くらいの助言だったのだろう。



このゲームの難易度は難しめといっていたが、クリア条件のときは"単純"と言っていた。

正直引っかかっているのはそこだ。


確かにラスボスを倒せば終わり、という流れは単純だけど、このリアルな世界で難易度が高いのならラスボスを倒すこと自体簡単じゃないはず。

なのにあいつは"単純"と言った。


実は難易度は高くない?

それとも辿り着くまでの難易度が高い?海外とか?


さすがに海外まで出られるような資金力はないな。


しかもちゃんと準備しろ、と言っていたけど、何をどう、というアドバイスはなかった。


前と同じファンタジーだと思っていたから装備やアイテムのことだと思ったんだけど、この世界だとお金くらいしか準備するものはないよな。


やはり旅費?

いや、ちゃんとサイフ持って出ろ、くらいのニュアンスの可能性もある。

いくらなんでもほとんどリアルな世界か現実どちらだとしても大金を急に用意するのは難しい。

というか、無理だ。


サイフを確認するとヴォムの代金が戻っていた。

購入前に戻ったわけではなく、コンビニで支払った分が戻っていないあたりが細かい。


これがフルダイブなら現実の体の方にも戻しているんだろう。

まぁ、正規の商品じゃないしな。



なんとなく割と簡単な方法で終わるんじゃないかと思えてくる。

やはり難易度は難しめというのが嘘か?

難しく捉えようとするから複雑なゲームのように見えるけど、さっきから単純な方向で捉えると、現実の当たり前のことを言っているだけのように思える。

ラスボスを倒すというというのも転ばせたら終わりとかそういうことかもしれないな。


そうやって思考を誘導してくるのがあの教授の厄介なところでもあるんだが・・・


ゲームの企画したのが別人なら?そいつがラスボス?

一応あり得るし、可能性の一つとして頭の隅に置いておこう。



あとは・・・そうそう、どうクリアするか楽しみにしているとか言ってたな。

これは読めない。クリアルートやラスボスが複数用意されているように思わせるブラフの可能性もある。


俺がゲーム内か現実か気付いてクリアするかどうか、とういうことかもしれない。


まだそこは確証がない。

さっきも言ったが、現実で犯罪になる行為は避けておいた方がいいだろう。

どちらにせよ見られているだろうし。



他には、Rコードがないからイロイロできるんだっけか。

そもそもみんな俺を見るだけで変な奴を見るような目をしてるんだからそもそも無理だろ。


やっぱり俺だけ認識できないだけでヴォムを今も付けてるんだろうか。



あっ



確認してもらえばいい。


ゲーム内だとしてもAI搭載の彼女はいるはずだ。

そして、彼女なら俺と認識して話ができるはず。



というか、早く気付けばよかった。



スマホもちゃんとある。


うん、アプリも全部そのままだ。


彼女とのやりとりもそのまま。


これがゲーム内だとしたら相当嫌なんだが。


残念ながらスマホに現実と区別できそうなヒントはないな。

そもそも現実だったらそのままなのは当たり前だ。



これで彼女ーー愛美に連絡をとってみよう。


現実では今日このあとウチに来ると言っていた。

全く同じならゲームでも今向かっているだろう。



ーー今どこ?


ーー向かってるとこーさっき電車降りたからもうすぐ着くよ!


ーーわかった、待ってるよ!


ーーうん、1週間ぶりだからなんか楽しみ!


ーー俺も!




メッセのやりとりで向かって来てるのが確認できた。

文面もいつもの彼女だ。

やはり判断材料にはならないか。


愛美もテストプレイ被験者だ。

NPCはテストプレイ被験者を元にしたAIだと言っていたし、ゲーム内なら彼女には愛美のデータを使用しているんだろうな。


ソロ専用、俺専用と言っていたし、そこは疑っていない。

だから、彼女も巻き込まれて本人がプレイしている可能性はほぼない。

ないと断言出来ないのが悔しいところだが、彼女に手を出していないという言葉を信じよう。


愛美とはテストプレイのゲーム内にいた時から付き合っていたし、そういうデータが採られていてもおかしくはない。

ちょっとどころではなくムカつくけど。



会ったら彼女も最初は変な顔をするだろう。

でも、もしかしたらヴォムを外してくれるかもしれないな。


ん、ちょっとまて、外して平気か?


現実なら問題・・・ないな。

フルダイブならそもそも付けてるかどうかも怪しいけど、付けていたとしてもゲーム内なら外しても問題ないか。


あとはどう説明するか。

まぁ、教授に騙された、で通じるかな。

愛美も教授の面倒さは知っている。


ただ、彼女をAIかどうか疑わなきゃいけないんだよな。


うん、彼女には悪いが今日は何もしないことにしよう。

ヘンなコトしてフルダイブだったら教授から伝わりそうだ。


楽しみにして向かって来てる彼女が現実だったら本当に申し訳ないけど、これが解決すればまた会える。


正直自分でも楽しみにしてイロイロ我慢してたんだけど、それも仕方ない。


痛覚までそのままなんだから、もしフルダイブだったら向こうの俺が大変なことになるかもしれないし。


コンビニで買ったアレも無駄になっちゃったな。




そんなことを考えていたらドアホンが鳴った。

お読みいただきありがとうございます。


衛星給電でググったら篠原教授という方が出てきました。

名前が似ているのは全くの偶然で、実在の人物とは一切関係がありません。

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