八話
なんだかんだ一週間も続けた毎日投稿を止めるのはなんかもったいなくて書いてしまいました。
ですが少し文章量は少なめですのであしからず。
燕の過去回です。
「さて、優馬の言う通り目を覚ましたら病室だったわけだが……」
いったい今は何時ごろなのだろうか、急に妹のことが心配になり自分のスマホを探す。
「お、あったあった」
枕元の机に置いてあった。スマホを開いて時刻を確認すると、
「嘘だろ、午後十時って! 俺どんだけ寝てたんだよ……」
これは雀に土下座コースかな?
そんなことを考えながら取り合えず俺と妹の二人暮らしにマンションに電話を掛けるが出ない。
「おかしいな、まだ雀は寝る時間じゃないんだが」
ならばと、次は雀のスマホに電話を掛けると、『プルルルル』俺のスマホが置いてあった位置から電話の着信音が響いた。
「ん? 雀のスマホがここにあるってことか? ってことは……」
突如病室のドアがガラガラッと音を立てて勢いよく開かれた。
「お兄ちゃん、やっと起きたんだ!」
やはり雀だったか……。
「あ、ああ……、今ちょうど起きたところなんだよ」
苦笑いしながら雀に笑いかけるが雀の表情は優れない。
「お兄ちゃんの馬鹿!」
「ご、ごめん……。でも今回は茅野が危険で仕方なくて――ッ」
「関係ないよ!」
雀は俺の言い訳をバッサリと切り捨てた。
「お兄ちゃんがいなくなったら私は寂しくて死んじゃうんだよ!? お父さんもお母さんもいないし、家族はお兄ちゃんだけなんだよ? ……私のこと、もうどうでもよくなっちゃった?」
「そんな訳無いだろ!」
雀の一言に思わず声が大きくなる。雀は残った唯一の家族で、俺はどんな人間よりも愛しているし、大事にしている。
俺も雀がこんな状況になったら脚色なく死ぬほど心配するだろう。
でもそうか、俺は雀をそんな気持ちにさせていたんだな。
「本当に……?」
雀は心配そうにこちらを見た。
「ああ本当だ、俺は雀のことを世界で一番愛しているし、世界で一番大切に思ってるよ」
言うと雀は顔を赤くして、
「世界で一番愛してる……!?」
俺の言葉を咀嚼するように繰り返し俺に飛びついてきた。
「私もお兄ちゃんのこと大好きだよ!」
背中に手をまわして俺にしがみつく雀の頭を撫でながら俺は良心がいなくなった時のことを思い出した――。
両親とも仕事人間だった。
二人ともよく出張で家を空けていたし、長くて一か月も家を空ける両親の代わりに俺か雀がご飯を作るのは当然の流れだったんだろう。
最初は交代制だったが雀の料理が俺に比べて圧倒的に美味しいことに気付いてからは、自然と雀が料理、代わりに俺が掃除洗濯を担うようになっていった。
そんな生活が続いてつい二年前だっただろうか、両親が偶然同乗した飛行機が墜落したのは。
俺は中学二年生で雀は中学一年生だった、十二月のことだ。
その時両親は海外に短期の出張に行っていた。
まだ年端もいかない兄妹を二人で家に残すなんて普通ありえないが、そういう家庭だったのだからしょうがない。
俺と雀が両親の死を知ったのは親戚からの連絡だった。
『燕君、落ち着いて聞いてね……』
父親の妹のおばさんはこう切り出したっけか。
『お父さんとお母さんが亡くなったって……』
おばさんは電話口で号泣していたが、俺は一向に涙が出なかった。
ショックは受けたが、正直家を空けることが多かった両親が一生帰って来なくなりました、なんて聞いても「今までと変わらない」そのくらいにしか感情は動かなかった。
しかし妹は違った。当時十三歳だった雀は後から生まれた女の子と言うことで両親にたいそう可愛がられていたので、両親の訃報はかなり衝撃的だったようだ。
幸いなことに両親はどちらもかなりのキャリアで、生命保険や仕事で死んだことによる会社からのお金を貰ったことによって、俺と雀が私立の高校、大学に行っても学費を払って余りあるほどのお金が懐に入った。
しかし十六歳にもならない俺たち兄弟は一人暮らしなんて出来ず、そこから暫くおばさんの家に厄介になった。
あれは俺たち兄妹にとって大変に貴重な体験だった。
家に帰ればおばさんやその旦那さんが『おかえり』と言ってくれて、五つ下のおばさんたちの子供とは、本当の兄弟のように遊んだ。
その時俺は家族の温かさを初めて知り、両親が死んでから初めて泣いた。
「その時もこうしてたっけな……」
胸に抱く雀を見て思わず笑みが零れる。
俺はおばさんの家で俺たち兄妹に割り当てられた部屋のベッドで布団に包まって一人で泣いていた。
泣き顔は誰にも見せたくなかった。
しかしその時もドアをガラガラと大きな音を立てて開けた雀は、無言で俺に抱き着いて一緒に泣いた。
そこからだろうか、俺と雀の仲がより一層強くなったのは。
暫くして、俺が一人暮らしを始められる歳になり、無事高校も受かったのでおばさんの家を離れ、妹と二人暮らしを始めることになった。
おばさんと旦那さん、その息子も最後まで『家に居ていい』と言ってくれていたが、この決断は俺と雀が一緒に泣いた日に決めたことだったので丁重にお断りして、去年の春におばさんたちの家を出た。
その時にまた泣いてしまったのは秘密だ。
なるべく雀の中学校に近い物件を選んだので水野高校に行くのは少し時間がかかるが、後悔はしていない。
そのお陰で早く帰って来れる雀が美味しい晩御飯を作ってくれるから。
「はぁ……」
昔のことを思い出したせいで少し疲れた俺はもう寝ようと、思ったが「すぅすぅ……」と雀が寝息を立てて俺の胸の中で眠っていたので、起こさないようにベッドに直してから俺もそのまま静かに微睡みに落ちていったのだった。
そして俺はあのとき以来の兄妹の時間に、俺は大きな多幸感に包まれた。
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