十二話
ここまで頑張ってきた毎日投稿がッ!
終わってしまいました……
号泣する綾香を宥めた俺は優馬や、泣き止んだ綾香と共に一緒に病室に戻り、学校から帰ってきた雀も一緒に……えーっと何ていう名前だか忘れたが、とにかく綾香の捜索を手伝ってくれた刑事の方により昨日のことと、今日綾香が受けた被害のことに対する軽い事情聴取を行い、解散する運びとなった。
「三条さん、お荷物の忘れ物はありませんか?」
「ああ、はい」
目を覚ました時にも来てくれた看護師の女性が俺が退院するにあたり、荷物の忘れ物が無いか確認してくれる。
「ほら、お兄ちゃん。お家帰ろ」
「そうだな」
あれだけ来なくていいと伝えたはずの雀も迎えに来てくれて、二人して病院から出た。
「いやー、空気がおいしいな!」
二日しか入院していない上に、綾香を探すために脱走した俺はそんなこと言う資格は無いのかもしれないが、病院とは不思議なもので、一日居るだけでもかなり滅入ってしまう。
ルンルン気分で雀と並んで家路についていると、突然雀がピタっと立ち止まった。
「雀? どうかしたか?」
「……」
雀は二メートルほど先で俯いたままムスッとしている。
俺は何かやらかしてしまったのだろうか……。
正直思い当たる節が――、分かった! あれか!
「雀、ごめんな。俺が入院している間の風呂掃除、大変だったから怒ってるんだろ?」
「ええ!? どうしてそうなるわけ!?」
「え!? 逆に違うのか!?」
「違うにきまってるでしょ! お兄ちゃんのッ――ばかあ!」
すると雀は先程とは打って変わって競歩のように速い足取りで俺の前へ前へと歩き始めた。
「ちょ、待ってくれよ、雀。本当に風呂掃除のことじゃないのか?」
「はあ、もうお兄ちゃんのアホさ加減にはあきれるよ……」
諦めたような顔で普通のスピードに戻る雀。
「す、すまん……」
「ほんと、バカ。今回の件で私がどれだけお兄ちゃんのこと心配したと思ってるの!?」
そうか、そうだよな。雀は今回俺が事件に巻き込まれて怪我したことを怒っているんだ。
もし俺が逆の立場であれば雀のように怒っていただろう。
「そ、そうだよな。でもあれは仕方なかったんだ、大切なやつを犠牲にして一人だけ逃げるなんて俺にはできなかった」
「大切な人?」
「ああ、茅野綾香って言うんだけどな。お前も聴取の時に同席してたから見ていたはずだろ?」
「あの可愛い先輩のことか……」
すると再び雀は俯いた。今度は歩きながらっだので特に気にしなかったが、隣で「茅野綾香……」と小さく呟いたことだけは分かった。
「ねえねえお兄ちゃん」
「ん? どうした雀」
「その茅野綾香って人と私、どっちの方が大切?」
「ええ? そんなのは決められないだろう、俺からしたらどちらも同じくらい大切だ」
どうしてこんなことを聞くのか気になって、答えながら雀をチラッと見ればギリギリと歯噛みする雀の姿があった。
「でも付き合い的には私の方が長いもんね、私の方が大切に決まってる!」
「いやだから同じくらいって――」
「私もお兄ちゃんのこと、大好きだよ!」
雀は言いながら急にギュッと腕を絡めてくる。
「お、おう。ありがとな……」
俺は何かもやもやした気持ちのまま帰宅することになったのだが、途中何度も雀が「茅野綾香……」と呟きながら暗い笑みを湛えていたことには終ぞ気づかなかったのだった……。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けたのなら幸いです。
これからも頑張ります。




