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~コンテスト開催‼~後編~

休憩中、エルの姿を見つけ、傍に駆け寄る。

「ママ‼」

『あら、マオ、どうしたの?』

(…どうしたじゃないだろ…)

「ママこそどうしたの?なんでいきなり…」

『フフフ…マオの準備を手伝っていたら昔を思い出しちゃってね…ちょっと出てみようかな~と思って、村長さんの奥さんに相談したら出場することになっちゃって…』

「そうなんだ…」

『どう?まだまだ若い子たちには負けないと思うけど…』

(…まぁ、確かに…エルフは歳をとっても、見ため的にも肉体的にも若い時のまんまが続くからな…)

「うん、可愛いよ‼」

『フフフ…ありがとう。マオにも負けないわよ‼』

「私だって‼」

『それにしてもパパの顔見た?』

「驚いてたね‼」

『フフフ…あんな顔久しぶりに見たわ。それだけでも出場した甲斐があったわ。』

(…エルはなかなかイタズラ好きなのかな?)

『このままこんな日が続けばいいのにね…』

「…うん。」

(…戦争の事を言っているのか?…やっぱり今日コミナ王子がわざわざ来ているのは何か関係があるのか…?)

『皆さん、結果発表の準備ができましたので舞台にあがってください。』

スタッフが呼びに来た。出場者全員で舞台にあがる。

(いよいよ結果発表か…)

『皆様‼大変お待たせしました‼只今より、第一回マッカイ村美少女コンテストグランプリを発表いたします‼』

村の楽団がドラムロールし始める。

(…結果発表といえばこれだよな…)

『…第一回マッカイ村美少女コンテストグランプリに輝いたのは……。』

『…マッカイ村からのエントリー‼』

(…お、儂か‼)

『…エルフの‼』

(…お、おぉ?)

ドラムロールがとまる。

『エルさんです‼』

(…お、おぉ…)

会場から拍手がまきおこる。エルは驚き、少し恥ずかしそうな顔をしているが満更まんざらでもない様子だ。リリスはというと、こちらは分かりやすく不機嫌そうな顔をしている。

(…やはりエルが相手では分が悪かったか…向こうはどうやら村長の嫁が仕切る婦人部の協力もあったみたいだしな…まぁいいか…一応リリスとの約束では他の出場者が優勝しても儂の勝ちだったしな…)

審査員長の村長が舞台にあがる。どうやらグランプリの記念品の授与が行われるらしい。エルが呼ばれ、恥ずかしそうな、けれども神妙な面持おももちでそれを受けとる。最後に会場の観客の方を向き、笑顔で挨拶をする。会場から割れんばかりの歓声、拍手がまきおこる。他の出場者からも同様に拍手が贈られる。

(…エルが優勝なら儂の中でも異論はない…負けたがさっぱりとした気持ちだ…。これも順位を決める以上、ある種の戦いだが…戦いでもこんな清清すがすがしい気持ちになることがあるんだな…)

『では、続きまして…準グランプリの発表です‼』

(…‼準グランプリなんてあるのか…初めて知った。)

楽団がドラムロールをし始める。

(…儂、この音好き。)

『第一回マッカイ村美少女コンテスト‼準グランプリは…』

(…せめて…せめて準グランプリには…)

『…こちらもマッカイ村からのエントリー‼』

(…おぉ‼今度こそ儂か?)

ドラムロールがとまる。

『…マオちゃんです‼』

(…しゃあっ‼)

会場、出場者から拍手が贈られる。エルを見てみると、自分の事のように喜んでくれているのがわかる。アークに至っては今まで見たこともない位、興奮しているのがわかる。リリスは不機嫌そうな感じから、明らかに不機嫌になっている。

(…エルに負けはしたが…一応はリリスよりも上なわけで…格好はついたかな…?)

村長から準グランプリの記念品を貰う。

『では、ここでグランプリのエルさん、準グランプリのマオちゃんから一言コメントを貰いましょう‼まずは、グランプリのエルさん‼』

『…今まで生きてきた中で1番嬉しいです‼』

(…エルは何歳なんだろ…?)

『ありがとうございます。では続いて、マオちゃん‼』

『…ママには負けちゃったけど…嬉しいです‼』

(…上手いことを言おうと思ったけど…なんにも浮かばなかった…無自覚だが、予想以上に興奮しているらしい…)

『ありがとうございます。では以上をもちまして第一回マッカイ村美少女コンテストを終了します。どうぞ皆様、お帰りの際はお気を付けてお帰りください。また、まだまだ特産品や出店は販売致しておりますので、お帰りの際はお土産にどうぞよろしくお願いいたします。』

こうして、美少女コンテストはグランプリにこそなれなかったが終わった。村長の目論見もくろみ通り、普段の何倍もの人が訪れ、村おこしとしては成功したと思われる。

その夜、村人総出の打ち上げが行われた。

『え~、皆様のご協力の元に行われたコンテストですが、お陰さまで大成功しました。これをいわい、ささやかではありますが宴席を用意しましたので、皆様お楽しみください。それでは、乾杯‼』

『乾杯‼』

村長の挨拶をもって打ち上げが始まる。村人は大いに食べ、飲み、歌い、今日の成功を、日々の暮らしを祝った。その村人達の輪から少し離れたところには本日の来賓として来ていたコミナ王子の姿があった。テーブルを共にしているのはおそらく護衛としてきている兵士たちと、アークとエルの姿もある。談笑を交えながら打ち上げを楽しんでいるようだ。ちなみに、何か新しい情報をようと、この輪の中にくわわろうとしたら、存外に邪険に扱われた…。いつもは優しいアーク達にもだ。おそらく、戦争の事で何か話があっての事だろう。仕方がないのでリリスの姿を見つけ、先にリリスと話をつける事にする。

「リリムちゃん、お疲れ様。」

『あ‼マオちゃん、お疲れ様。』

「約束覚えてる?」

『覚えてるよ。じゃあ、ちょっとこっちへ…』

周囲に人気がないところに移動する。

『…まずは、準グランプリ、おめでとうございます。』

「ありがとう。」

『それで私は何をすればいいんですか?』

ちょっと態度が冷たい。

(…あれ?もしかしてふてくされてる?)

「特に今すぐ何かをしてほしいと言うような事はない。そう言えば…儂が倒れた後、魔界はどうなった?」

『…アムド様が新魔王に名乗りをあげましたが…それに反対する勢力が現れまして…』

「反対勢力‼一体誰だ?」

『…ソードナー様です。』

「ソードナー‼」

アムドが鎧から化身した魔物なら、ソードナーは先代魔王の剣から化身した。剣と鎧、その元々の用途からなのかはわからないがアムドは魔族にしては珍しく保守的な考えをしていて、儂と同じく、全ての種族、あらゆる垣根を超え、仲良く、平和に過ごしたいといった考えを持っていた。だからこそ儂が倒れた後の魔王に推したのだが…。一方、ソードナーはこれぞ魔族‼といった感じで攻撃的で、全ての種族、垣根を超え、魔族こそが頂点といった考えを持っていた。だから、儂が魔王として君臨していた間は反発しあい、対応に苦労したものだ。そもそも、アムドは儂の鎧から、ソードナーは先代魔王の、儂の父の剣から生まれた。先代魔王もソードナーと同じ性格、考えをしていたからそれもソードナーに影響しているのかもしれない。ちなみにソードナーの方が歳上で、儂が産まれるまでは、魔王につぐ実力の持ち主だった。

『それで?どうなったのだ?』

「…アムド様とソードナー様で何度か話し合いを持たれたようですが…結局まとまらず、最終的に武力をもって、ソードナー様が新魔王に即位しました。」

「…そうか…アムドは逝ったか…。」

『いえ、生きております。アムド様は腐っても魔界で指折りの実力者、ソードナー様も倒しきる事は出来なかったようです。』

(…腐っても?)

「では、アムドは今、何をしておるのだ?」

『…わかりません。噂では何処かに身を潜め、密かに反撃の機会をうかがっているとの事です。』

「…そうか…。他の者は、魔界の民やアムド側についていた者達はどうなったのだ?」

『魔界の民達は大丈夫です。不満こそあるものの、皆元気にやってます。アムド様に賛同していた者達については皆、バラバラです。私をはじめ、魔界を出たもの、あるいは戦いで散っていったもの…ソードナー様に鞍替えしたものと様々です。』

「民達は無事か…良かった。」

『でもそれは今のところと言うだけです。どうやらソードナー様は人間達に攻めこむ気でいるらしいのです。そうなれば人間達との全面戦争は避けられません。』

(…だろうな…ソードナーの性格だとすぐにでも攻めこむだろうな…)

「…ふむ…大体の事はわかった。とりあえずは魔界に行くしかないか…」

『魔界に行くのですか⁉』

「あぁ、ソードナーを止めないと。それに儂が行けばアムドも動き出すだろ。」

『行くのはちょっと…』

「なんだ?転生してようが儂の強さは変わらんよ。儂は負けん‼」

『いえ、そうではなく…』

(…なんか歯切れが悪いな…)

「…はっきり言え。」

『アムド様に会うのは少し危険かと…』

「え…なんで?ていうか、リリスはなんでアムドと別れたの?」

『それは…そのぅ…』

(…なんかまずい事なのか…?)

「今さら多少の事では驚かん‼はっきり申せ‼」

『実は…ご存じかもしれないですが…アムド様はロリコンなのです…』

(…oh…)

「…ご存知のわけないだろ‼どういう事だ‼」

『そのまんまの意味です。』

(…元部下のそんな事聞きたくなかった…)

「それが別れた原因か?」

『…そうですね。半分以上、9割位はそれが原因です。』

(…ほぼ、全部じゃねーか‼)

「…こんな話を聞かされて…こんな時どんな顔をすればいいかわからない…」

『笑えばいいと思うよ…。ですから、今のマオちゃんがアムド様に会いに行くのは少々危険かと…』

「…行動に移すタイプの奴か?」

『それはわかりません。ただ、そういったものが大好きでした。ちなみに今のマオちゃんはアムド様のストライクでございます。』

リリスが微笑む。

(…笑ってんじゃねーよ‼転生してから初めて感じる身の危険だ…)

「…それでも会いに、ソードナーを止めに魔界に行かなくては…。」

『…わかりました。この村の事などは私にお任せを‼』

「…え、一緒に行かないの?」

『2人で出かけてる間に何かあったらどうするんです?』

「………。」

『もし、人間達の戦争が始まったら?ソードナー様が攻めてきたら?』

「…アークがいるから大丈夫だろ?」

『アークさんだけでは対応しきれないかもしれないじゃないですか‼』

リリスがやや、語気を強める。

(…余程、アムドに会いたくないのか…それほどなのか?不安だ…)

「…わかった。魔界のほうは儂にまかせろ‼そのかわり人間達、この村や他の事は任せたぞ‼」

『わかりました‼』

リリスが笑顔で元気よくこたえる。

(…まぁ、リリスが魔界に行ってもいろんな意味で危険だからな…戦力的にもソードナーに勝てる訳もないし…)


村人達は、文字通りその身にせまる魔の手に気付く訳もなく、村おこし成功を祝い、宴は深夜まで続いたのであった…。


~人物紹介~

アムド~ 魔王亡き後、魔界を任されるがソードナーのクーデターにより三日天下に終わる。今回、元カノにより性癖をバラされた色んな意味で可哀想な奴。

ソードナー~ 武力をもってのクーデターにより新魔王に即位する。マオの父の剣が化身した魔族。魔族至上主義で力こそが全て‼という脳筋。

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