~コンテスト開催‼~
コンテスト開催です。
コンテストの準備が着々と進み、残すは細かい部分や色々な調整等になったある日の事、1人の兵士がマッカイ村を訪れた。遠巻きに眺めただけだったが、街にお使いに行ったときに会った兵士と違う格好をしていた。村長とアークが出迎え、村長はしきりに頭を下げ、恐縮していたようだった。兵士は村長とアークに何かを伝えると、足早に帰って行った。
(…遠くだったから何も聞こえなかったが…また、何かあるのか?)
そんな事があった数日後、特にトラブルもなく順調に準備が終わり、いよいよコンテスト当日の朝になった。
(いよいよか…今日は頑張らねば‼)
ベッドから起き上がり、リビングに向かう。アークの姿は既に無く、エルが朝食の準備をしている。
「ママ、おはよう。」
『おはよう。もうすぐ出来るから少し待っててね。』
「うん。」
朝食ができるまでの間、日課になっている新聞を読む。
(特に何もないな…だが、今日のコンテストの事が少し書いてある。村長、新聞にも広告出したんだな…)
(この様子だったら、もしかしたら思っている以上に人が集まるかもな…)
『マオ、ご飯が出来たから手伝ってちょうだい。』
配膳を手伝い、エルと2人で朝食をとる。
『ご飯食べたらマオはコンテストの準備しないとね。』
「うん。」
『今日はパパも朝早くから準備に出ちゃったし…マオの準備が終わったらママも色々準備しなくちゃ…』
(…大人は大変だなぁ。)
「ママも準備頑張ってね。」
食器を片付け、コンテストの準備をする。このあいだエルと2人で準備をしたからさほど手間がかからず支度が終わる。
(…これでよし‼あとは会場で受付するだけだ。)
「じゃあママ、先に会場にいってるよ‼」
『はぁい。ママも準備が終わったらすぐに行くからね‼ちゃんと受付するのよ‼』
靴を履き、玄関の扉をあける。すると、いつもとは違う景色が広がる。
(おぉ…人が一杯いる。)
扉を開けただけで分かるほど、人が増えている。
(…これなら村おこしとしても成功だろ。)
人混みをぬうように会場の受付に向かう。いつもは無い屋台などもあり、気分が高揚してくる。
(…何だか楽しくなってくるな…こういう賑やかなのも悪くない。)
会場は村の空地に設営されていた。まぁ畑しか無いような村だからどこもかしこも空地みたいなものだが…。受付に向かい出場登録をする。
『…ではマオさんですね?控え室にてお待ちください。何か準備などがありましたらそこでお願いします。』
「はい。」
案内された控室に向かう。向かう途中、審査員席とかかれたテーブルが目につく。その隣には来賓席、そこに見知らぬ青年とアークが座っていた。青年の脇には兵士が数人控えている。アークと目があったため笑顔で手を振り控室に向かう。
(…あの男は誰だ…?兵士に警護されてる雰囲気だったが…)
控室は会場のすぐ隣に設営されており、テントみたいな簡易的なものだ。中に入ると既に何人か待機しており、その中にリリスの姿もある。
『…おはよう。マオちゃん。』
「…おはよう。リリムちゃん。」
『今日は負けませんから。』
「…私も負けないから‼」
(…気合をいれねば‼…まぁいれたところでこれ以上美少女になるわけでもないが…)
暫く待機しているとスタッフらしき人が来た。
『そろそろ出番なので皆様、準備をお願いします。』
(…いよいよか…会場や村の様子を見るかぎり、儂の作戦もおそらく成功するだろ…大丈夫だ‼儂は可愛い‼)
外から司会の声が聞こえて来た。
『み~な~様~‼長らくお待たせ致しました‼只今より第1回マッカイ村美少女コンテストを開催いたしま~す‼』
(…司会もテンション高いな…緊張してきた…)
観客から歓声があがる。
「司会は私、アカーイと審査員席横にある実況席に座っているアリマがお送りします。」
『よろしく‼』
(…実況もあるのかよ…なんの実況するんだよ…)
『では出場者の紹介の前に本日の審査員の紹介をしたいと思います‼』
『まずは審査員長‼、嫁のワガママに振り回されっぱなしのドM男‼おらが村の村長‼イ~~サ~~‼』
村長が立って笑顔で観客に手を振り挨拶をする。観客が沸き上がる。
(…村長ひどい言われようだな…)
『続きまして…美人妻と美少女の娘を持ち、村の独身男性のヘイトを一身に集める元勇者‼ア~~クゥゥ‼』
アークも立って、ひきつった笑顔で手を振る。観客から歓声と、一部からブーイングが聞こえる。
(‼アークも審査員なの‼知らなかった‼てかアークもちょっとひどい言われようだな。)
『最後に……ここにいる皆が本日の審査員だぜぃ‼』
観客がまた沸き上がる。
(村長とアーク……正直いらなくない?)
『続きまして…本日の来賓の紹介にまいります。』
さっきまでの高いテンションとは違い、急に真面目な雰囲気になる。
『我が中央ブリギッド第3王子、コミナ殿下に本日はお越し頂いております。』
先程、アークと一緒にいた青年が立ち上がる。
(…あいつ王子だったのか…通りで兵士がいるわけだ…)
『…それでは殿下より一言、ご挨拶を頂戴いたします。』
観客が静まり返る。
『…今、紹介にあった通り、私がコミナだ。今日はこのような催しに来ることができ、大変嬉しく思う。どうかみんなも楽しんでいって欲しい‼』
観客から、ワァーっと割れんばかりの歓声がまきおこる。
(…無難な挨拶だな…)
『では、皆様お待ちかね‼出場者の紹介にいきたいと思います‼』
歓声が起こる。
『名前を呼ばれた方から順に舞台に登壇してください。』
『さぁ‼まずは1人目‼情熱的な人が多い獣人族からのエントリー、シリビ・ンタ・リカだぁ‼』
1人目が登壇する。見た目は綺麗なんだが…どう見ても少女ではない。スラッと伸びた手足、それに伴い女性にしては高い身長。身体は引き締まった筋肉質なボディをしているが出ているところは出ている。顔はキリっとした顔をしていてお姉さまタイプの顔だ。クールな顔立ちだとちぐはぐな感じになりそうな獣人族の特徴ともいえる猫耳とシッポもなかなか良い感じだ。
『それでは、会場の皆に一言お願いします。』
『シリビ・ンタ・リカだ。リカって呼んでくれ‼』
歓声があがる。たまにリカを呼ぶ声も聞こえる。
(…てか美少女コンテストじゃないの?リカちゃんどう見ても少女じゃないんだが…)
『今回はどうしてこのような催しに?』
『そうだな…なんとなくだな‼』
(…なんとなくかよ…)
『まぁ、しいて言うならば我々、獣人族はお祭りや楽しい事が大好きだからな‼』
『では、コンテストには興味は無いと?』
『そんな事は無い‼我々は競争することも好きだ‼だから頑張って1位を目指したい‼』
『ありがとうございました。ではまたのちほど…。』
リカが観客に笑顔で手を振りながら控室に戻って行く。
(…なかなかだったな…まぁ少女ではなかったが…その辺の基準は曖昧なのか…?)
『では、続きましては、皆様ご存知‼名家からの参戦‼かの有名なグラディウス家からの参加‼バイパー嬢です‼』
観客が今日1番の盛り上がりをみせる。綺麗な金髪の縦ロールの髪の女性が登壇する。
(…また少女じゃねぇし‼)
『皆様ごきげんよう。只今ご紹介に預かりましたグラディウス家が長女、バイパーです。以後、お見知り置きを。』
バイパーがスカートの裾を軽く持ちあげ、ぺこりと頭を下げる。
(…それにしてもグラディウスか…名家なんだろうが全然わからん。)
『バイパー嬢はどうしてこのような催しに?』
『そうですわね…やはり女性として美に関する事では1番になりたいじゃありませんか?それになかなかこういった催し自体がございませんからちょうどよい機会だと思いまして…。』
『よく、おうちの方が参加を許してくださいましたね?僕たち庶民のイメージだとなんかこういったものには厳しい感じのイメージがあるんですが…』
(なかなか突っ込んだ質問をする司会者だ。)
『…え、えぇ…父に話したら…』
なぜかバイパーの顔が紅くなっていく。
『話したら?』
『…嫁の貰い手がいないお前に、もしかしたら欲しいと言ってくださる方がいるかも知れないから是非、参加しろと言われまして…。』
なにやらゴニョゴニョと言っている。司会者のアカーイは少しひきつった顔をしている。
『…そ、そうですか…。あ、ありがとうございました。』
バイパーはまだ少し紅い顔のまま、下がっていく。
(…もしかしてバイパー嬢はもう結婚適齢期なの?)
『で、では続きましては、このマッカイ村からの参加‼』
(…お、儂か?)
『リリムちゃんです‼』
(なんだリリスか…)
リリスが登壇する。
(…なんか普段と違うような………あ‼)
リリスを凝視するといつもとは少し違う事に気付く。
(…む、胸がいつもより少しデカイ‼サキュバスの能力か…)
『なんと‼リリムちゃんはイーサー村長の娘さんなんですね~。』
『はい。』
審査員席にいる村長に目をやると満面の笑みで声援を送っている。
(…村長も親バカか…)
『リリムちゃんはどうしてこの催しに?』
『…友達に…マオちゃんに勝つために出場しました‼』
会場が盛り上がる。
(…それ、言っちゃうんだ…まぁ身体操作といい、それだけ本気って事なんだろう…だが、勝つのは儂だがな‼)
『なるほど~。では、ここでお父さんでもある村長から一言いただきましょう。どうですか?村長。今日のリリムちゃんは?』
『いつもより素晴らしいと思います。』
村長はとても満足げだ。
『それと1つ…』
先程とはうってかわり、急に真面目な顔になる。
『実は、リリムは実の娘ではありません。先の魔族との戦によって孤児になってしまったのを私が引き取りました。世の中にはまだまだリリムのような境遇の子供達が沢山います。この事を少しでも多くの方に知ってもらうためにリリムの出場を後押ししました。幸いにも、本日はコミナ殿下もいらっしゃいます。どうか皆様‼これ以上、リリム達のような子供達を増やさない為にもご協力をお願いします。』
観客から拍手がまきおこる。
(…村長なかなかいいやつだな…これでもしかしたら同情票がリリスに流れるかもしれん…)
『ありがとうございました。ではリリムちゃんものちほど…。』
『はい。』
リリムが下がっていく。
『では続きましては…』
司会がカンペを見ながら急に黙る。
(…ん?なんだ?)
『ゴホンッ‼失礼しました。では続きましては…経歴などは一切不明‼どこかのお姫様との噂もある覆面の令嬢‼エックス・エルちゃんです‼』
(…美少女コンテストで覆面ってどうなの?)
観客が盛り上がりをみせるなか、エックス・エルが登壇する。覆面と言われたから顔を見てみると、覆面ではなく、紙袋みたいな物に目と口の部分を開けただけの簡易的な物だった。身体的には前の2人とは違い、少女的な身体つきをしている。背格好的にはマオと同じ位だ。
(…一応、顔はわからないが…若い感じがする…)
『…えぇと…エックスちゃん?エックスちゃんはなぜこのような催しに?』
司会も少し困惑している。
『…過去を精算するためです。』
(…コエーよ‼美少女コンテストってもっと楽しいもんだろ‼)
『あ、ありがとうございます。しかし、なぜ覆面なんですか?』
『…フフ、秘密です。まぁこのあとのアピールタイムでは素顔を出します。楽しみにしていてくださいね。』
会場からオォッと歓声がわく。
(…今の質問の受け答えからすると、少し歳上の感じもするな…)
『ありがとうございました。ではこのあとのアピールタイムを楽しみにしています。』
『フフフフ…。』
エックスが不敵な笑みをこぼしながら下がっていく。
『え~続きましては、またしてもこの村からの出場‼正統派美少女‼マ~オ~ゥ‼』
(…やっと儂の出番だ‼直前の奴のキャラが濃かったから頑張らねば‼)
マオが登壇する。
『え~マオちゃんはこの村の出身で、なんと、お父さんは審査員席にいる元勇者のアークさんなんですよね?んで、お母さんはエルフのエルさんと…。』
『はい。』
『マオちゃんはなんでこの催しに?』
(…どうするか…?さっきのリリスに合わせて言っとくか…)
『…リリムちゃんに勝つためです。』
『おぉーぅ‼早くも火花が散っております。』
会場が先程の微妙な空気を打ち消すように沸く。
『では、ここでお父さんでもある審査員のアークさんから一言いただきましょう。どうですかアークさん?』
『…なんも言えねえ…。感無量です。』
(…まだ何もしてないのに、なんで感極まって泣きそうになってんだよ‼)
『…え~、アークさんは大変な親バカと言うことで…。』
司会も少し引いている。
『では、マオちゃんもまたのちほど…。』
『はい。優勝目指して頑張ります‼』
マオも下がる。
『以上をもちまして出場者の紹介を終わります。このあと出場者の準備、休憩を挟みまして皆様お待ちかねの水着審査‼そして、アピールタイムのあと優勝者の発表となります。どうぞお楽しみに‼』
コンテストはひとまず休憩となる。
(…さて…儂も色々と準備しないとな…。)
~人物紹介~
コミナ王子~中央ブリギットの第3王子。なんでコンテストに来ているのかは不明。
シリビ・ンタ・リカ~猫耳が似合うクール系お姉さん。ビキニと背中に背負う羽飾りが似合いそう。
グラディウス・バイパー~どこかの名家の出身らしい。行き遅れかけている。金髪縦ロールが似合うお嬢様。
エックス・エル~どこかのお姫様との噂がある。覆面をしているため顔はわからない。