~誤算~
リリス視点でのお話です。
~リリス視点~
『さて…と…』
ミドの号令を受け、1人離れた場所まで来たリリス。自身の気持ちを切り替えるように独り言を呟き、背中の翼をバサリと広げる。
(…まずは、今の状況を確認しますか…)
羽ばたき、空へと飛翔する。高度をグングンあげ、人々を眼下に見下ろす。蟻よりも少し大きい位のサイズだ。
(…フムフム…向こうが魔族…んで、こちらがエルグランドね…やっぱり、エルグランドがおされているようね…)
空中にて腕を組み、仁王立ちするような格好で戦線の辺りを見渡す。
(…でも、さすがはエルフ達ね…人間よりも優秀だわ…)
人、魔族、エルフを含めた亜人、それらを比較し、分析する。
(…並の人間の軍勢なら防戦一方だもの…それに比べれば、かなり善戦してるわ…)
戦況は一進一退と言ったところだ。
(…そろそろアークさん達も戦線に着く頃ね…)
戦線を注視していると、魔族達に動きがあった。どうやらアークが持ち場に着いたようだ。魔族達が右往左往する動きが見てとれる。
(…まるで砂糖に群がる蟻ね…)
餌に釣られ、強い魔族ほど最前線に、弱い魔族は後ろに追いやられる。ミドの予想通りとなる。
(…あとは…陛下が後ろから強襲すれば…)
魔族の軍勢の後ろに回り込む一団が見える。おそらくミドだろう。
(…これであとは時間の問題ね…同族の私が言うのもなんだけど…魔族って思ったよりも単純ね…これだったら私の出番も無いかもね…)
全てが予想通りにいき安堵するリリス。
(…それにしても…私に気づかないなんて…余程アークさんは餌として価値があるのね…それとも私も仲間だと思われているのかしら…)
リリスの今の格好は戦場が一望出来る場所にいる。空を見上げれば誰でも気づくだろう。
(…あるいは私など取るに足らない存在なのかしら…)
戦況を見守っていると、ある事に気づく。
(…アークさん達がおされ過ぎている?…まずい‼️今にも倒されそう…)
ミドの作戦ではアーク達は守りに徹する事になっている。それは戦線を維持しつつ、守ると言う事である。おされ過ぎず、おし過ぎず…。だが、今の状況は戦線を維持するのもままならず、おされ過ぎている。このままではアークが倒されてしまうのも時間の問題だ。
(…一体何があったの?)
直ぐにアークの元へと向かうリリス。
『アークさん‼️』
アークの背後に降り立ち、駆け寄りながら声をかける。
『リリスちゃん‼️』
『大丈夫ですか⁉️』
『なん…とか…』
魔族の猛攻を凌ぎつつ会話を続ける。
『リリスちゃん‼️コイツら魔王より強いよ‼️』
『そんなはず…』
否定の言葉を言いかけた時、リリスに1つの疑念が生まれる。
(…そういえば…アークさんがまともに戦っているのを見るのは初めてだわ…前に少し見たのは…あの時の親衛隊長と戦っているのを少し見た位だし…しかも私が駆けつけた時にはやられそうだったし…もしかして…アークさんはそんなに強くないの?)
歴代最強の魔王を倒した。その功績は魔王が手加減をしたから。その事は倒された魔王しか知らない。アークも少しは疑問に思ったが自分の実力だと思っていた。人間達をはじめ、エルフ達他種族、魔族もそれが勇者の実力だと思っていた。もちろん、リリスもそうだ。だからこそこの作戦は成功すると思っていた。だが、アークの実力が魔王以下だとすると作戦は瓦解する。魔族達を背後から強襲しているミドも倒されてしまうだろう。そうなれば敗北は必至で、もしかしたらエルグランドは滅亡してしまうかもしれない。
(…伝令などやっている暇はない‼️全力でアークさんを守らないと‼️)
アークの前に立ちはだかるリリス。
(…魔族の…それも上位の実力者に私の力がどこまで通用するか…)
『…リリスちゃん?』
『アークさんは自分の身を守る事だけに専念してください‼️』
『リリスちゃんはどうするの?』
『私は…』
そこまで言うと黙るリリス。口をギュッと結び、拳を固く握り締める。おそらく何かを覚悟したのだろう。
『私は…死んでもアークさんを守ります‼️』
そういうと1人敵陣に突っ込むリリス。
(…今ならあの時のマメの気持ちがわかる…。アイツもこんな気持ちだったのかな?…)
背後でアークが何か叫んでる。しかし、敵と味方が入り乱れる前線ではそれもリリスには届かない。
(…アークさんが…いや、私達が生き残るにはこれしかない‼️)
『うぉぉぉぉっ‼️』
裂帛の気合いとともに、魔族の先鋒に爪で斬りかかるリリス。その攻撃は薙ぎ払うような攻撃で1人より多数の魔族を倒すのを目的とした攻撃だ。
(…魔族が面食らっているうちに1人でも多く倒さないと…。)
魔族からしてみれば裏切るはずのない同族からの攻撃。不意をつくには充分だろう。強い者に従う。それが魔族の習性。言い換えれば弱い者には従わない。従う理由も無いし仲間になる理由も無い。全ての種族を下に見ている魔族にとっては強者である同族を裏切るような事をするやつは絶対にいないはずだった。だからこそリリスの不意討ちは絶大な効果を発揮した。先鋒の中でも比較的弱い者からリリスの爪擊により倒れていく。
(…早くミドさんに合流してもらわないと…)
段々と魔族達も動きが良くなってくる。弱い魔族をあらかた倒したのかリリスを裏切り者と認識したのか不意討ちに対処するようになってきた。
(…そろそろマズイわね…)
初めは荒れ狂ったように攻撃していたリリスだが、今は徐々に回避行動が増えてきた。魔族からの攻撃を防ぎ、かわし、隙を見て反撃する。そうした行動が増えてきた。このままではいずれ魔族の手数に圧され、被弾し、戦場に多数転がる魔族達の仲間入りするだろう。
(…あんな奴らの仲間入りなんてごめんだわ…だけどこのままじゃ…)
戦況は最早振り出しに戻った。
少しでもお楽しみいただけたなら幸いです。




