~いざ魔界~
久しぶりの更新です。ほとんど日常回ですがお楽しみ頂けたなら幸いです。
ミドを説得するため、アルが部屋を出ていった後、マオは考えていた。
(…魔界…今頃どうなっているかな…儂が死んでから…かれこれ十数年…アムドは今頃何をしているのやら…ソードナー政権はどうなったかな?)
魔界…それは魔族の住む、他種族に見捨てられた地。別に違う次元等にあるわけではなく、そこに魔族が住んでいるから魔界と呼ばれていた。見捨てられた地とは言ったが、おそらくは魔族が住んでいたから見捨てざるおえなかった地。それほどまでに魔族は他種族から畏れられていた。理由は定かではないが、おそらく魔族の気性の荒さ、戦闘能力の高さが理由の1つだろう。
(…それにしても遅いな…大方、ミドがごねてるんだろうけど…)
その頃、ミドの説得はマオの予想通り、難航していた。
『嫌だ、嫌だ‼マオちゃんと離れたくない‼』
王の執務室にミドの声が響く。
『ですが…マオ様は王から離れたいらしいですよ。』
アルが淡々と告げる。
『‼アルよ…。少し言い方を考えようか?』
ミドがしょんぼりする。
『失礼しました。では、改めまして、マオ様は一刻も早く魔界に向かいたいらしいです。』
『マオちゃんはなぜそれほど魔界に行きたがるのかのぅ…』
『…お爺様が嫌いだからじゃないですか?』
『………そんな事は絶対に無い‼』
『今は無くともこのままいけば…そうなる可能性も充分にございます。』
『…うぅ…マオちゃんに嫌われたくない…。』
ミドが頭を抱える。
『では、逆になぜマオ様を魔界に行かせたくないのですか?』
アルが事務的に尋ねる。
『え…だって危ないでしょ?魔界だよ?魔族と魔物一杯だよ?』
ミドがキョトンとした顔で、アルを見つめながら話す。
『だからこそ私が付いて行くのではないですか。それとも王は私では不服と仰有るのですか?』
アルがまたも事務的に、無表情で尋ねる。表情がないからか高圧的に感じる。
『…‼…そんな事は言っておらん‼』
『では、魔界に行ってもよろしいですね?』
アルが無表情から一転、ニコリと微笑む。
『…ぐぬぬ…。』
ミドが苦悶の表情を浮かべる。そのときだった。
~コンッコンッ‼️~
執務室の扉をノックする音がする。
『どうぞ。』
ミドが返事をすると扉が開く。中に入って来たのはエルフの兵士だ。
『物見からの急ぎの報告があります。』
『なんじゃ?』
『国境付近に謎の軍勢が集まっているとの事。』
『何っ‼️』
ミドが慌て、思わず席を立ち上がる。
『軍勢の中には魔族や魔物も見受けられるとの事。』
『なんだとっ‼️』
『いかがいたしますか?』
『ひとまずは様子を探れ。それと国境付近に兵を集めておけ。儂も支度をしたらすぐに行く。それまでは決して手を出すなよ。』
『はっ‼️』
ミドの下知を受け、兵士が急いで伝令に走る。
『…ふぅ…。アルよ。どう思う?』
一息つき、ミドの側で無表情で話を聞いていたアルに尋ねる。
『そうですね…まぁ、十中八九、魔族でしょうね。人間達が争っている間に、まずは魔族にとって面倒くさい相手のエルフ達を攻めてやろう、と言った感じですかね…。』
何故、魔族にとって面倒くさい相手なのかと言うと、それは戦闘能力の高さにある。この世界には、色んな種族が暮らしているが、戦闘能力別に並べると、先ずは魔族がダントツで一番にくる。その次にエルフや他の、いわゆる亜人と呼ばれる者達がくる。そして最後に人間達がくる。エルフは人間達よりも魔力が多く、ほとんどが魔法が得意。個体によっては俊敏性や力自慢といったように前線での活躍も期待出来る。では次に、数の順、人口順に並べると先ずは人間達がダントツで一番にくる。次にエルフ達、亜人。最後に一番数が少ないのが魔族。おそらく、魔族達の現在の王であるソードナーは、人間達の戦争という混乱に乗じて、魔族達の次に戦闘能力が高く、数の多いエルフ達を倒してしまおうと考えたのだろう。
『魔族め‼️農耕民族をなめるな‼️目にもの見せてくれる‼️』
ミドが居丈高な態度をとる。
『…それはよろしいのですが…こちらにはマオ様がいらっしゃいますよ?』
その言葉を聞いた瞬間、ミドの顔色がかわる。
『い、いかん‼️いかんぞ‼️マオちゃんを危険な目にあわせる訳にはいかん‼️』
ミドが狼狽え始める。それを見て、アルが冷静に提案する。
『では、マオ様には魔界に避難して貰いましょう。』
『避難だと?どういう意味じゃ?』
『そのままの意味でございます。今、ここ、多種族国家のエルグランドには数多くの魔族達が攻めて来ております。』
『うん。それで?』
ミドがコクコクうなずく。
『と、いうことは彼等が住む魔界は今は手薄、戦闘力が低いとも言えます。』
『うん。』
『さらに言い換えれば安全とも言えるはずです。』
『そうなの?』
『そうです。おそらくここを攻めるに当たってはそれなりの戦力を揃えて来ているはずです。ここよりはまだ魔界の方が安全だとは思います。』
『う~む。』
ミドが思案し唸る。
『さらに、エルグランドでも1、2、を争う実力者にして近衛兵、侍従長の私がついて行けば何ら問題はありません。』
どうやらアルはエルグランドでも最高戦力の1人だったようだ。
『ふむ………そう……かな……?』
『そうですとも‼️。』
なんとなく釈然としないミドを強引に圧しきるアル。
『では、さっそく準備してきます。』
『あっ‼️おい‼️』
まだ何か言いたげなミドを置いて、ペコリと頭を下げ、さっさと部屋を出て行くアル。
『……でも、魔界には魔王がいるかも知れないんだよ?』
~コンッコンッ~
マオの部屋の扉をノックする音がする。
「どうぞ~。」
マオが返事をすると、扉が開き、アルが部屋に入ってきた。
(…どうせダメだったんだろうな…)
「どうだった?」
ダメ元で聞いてみるマオ。
『大丈夫です。すぐにでも出発出来ます。』
アルが微笑を浮かべながら報告する。
「本当に‼️」
(…マジか…やっぱりあのじいさんはアルには弱いんだな…)
『本当でございます。』
「それじゃ早速準備して出発しよう。」
『そうですね。また、王の気持ちが変わるかもしれないですからね…。お手伝いします。』
あらかた準備はしてあったが、アルが支度を手伝う。
「でも、じぃじは何で急に魔界行きを許してくれたの?どんな手を使ったの?」
(…また、あのじいさんと交渉する機会があるかもしれん…後学の為に聞いておかねば…)
『ちょうど良いところに魔族の軍勢が攻めて参りまして…。それをダシに使いました。』
表情を変えず、サラリと言いのけるアル。
「ホントに‼️?」
『本当でございます。』
(…それってかなりマズいんじゃ…)
「大丈夫なの?」
『まぁ、なんとかなると思います。』
(…なんとかなるって…そうだ‼️)
「魔王は?魔王は来ているの?」
疑問に思い、アルに聞いてみる。
『どうですかね?物見からはまだそのような報告は来ていません。』
(…魔界に行ってもソードナーがいなければ意味がないからな…。)
「うーん。」
思案するマオ。
『どうかされましたか?』
アルが心配そうな顔で覗きこむ。
「魔界に行く前に魔王が来ているか確かめたくて…。」
『マオ様は魔王に用事があるのですか?』
「‼️‼️‼️」
(…ヤバい…無意識にポロっと口から出てしまった。なんて言おう…。)
アルの返答に困る質問に狼狽えるマオ。
「や、やっぱり、魔王の顔くらい見ておきたいじゃん!あ、あはは~。」
愛想笑いをし、誤魔化すマオ。
『…フッ…そうですね。魔王の顔くらいは見ておきたいですね。』
マオの愛想笑いに対応してか、鼻で笑うアル。
(…今、鼻で笑った?…まぁいい、うまく誤魔化せたかな?)
『では、準備がすんだらお祖父様に出発の挨拶に行きましょう。物見から新しい情報が入っているかも知れません。』
「そうだね。」
2人で急いで準備をする。
(…それにしても…エルフ達は何でこんなにも余裕なんだ?…今まであまり交流が無かったから、イマイチ生態がわからん。)
準備を終え、2人でミドの所に向かう。
(…コイツ…この格好で魔界に行くのか?…メイド服で?)
等と、考えているとミドの所に着く。ミドはすでに戦闘の準備を終え、鎧を着込み臨戦態勢だ。その周りをやはり戦闘の準備を終えた兵士が守っている。心なしか険しい表情をしているように見える。
『さぁ、マオ様。お祖父様にお別れの挨拶を。』
(…お別れって…)
「じぃじ、行ってきます。」
マオが元気に挨拶をする。
『うむ、気をつけてな。アルもよろしく頼んだぞ。』
マオが来てから数日のミドとは違い、これぞ王様!と言った感じで受け答えをするミド。
(…なんか違和感があるな。もっと、こう、マオちゃ~んみたいな感じで来ると思ったのに。)
『畏まりました。』
アルがまるで王様にでも接するかのように挨拶をする。
『あ~。うん。少しの間お前達は下がっておれ。』
『はっ‼️』
鎧をガシャガシャと音をたてながら兵士達が部屋を出て行く。
『マオちゃ~ん‼️本当に行っちゃうの?じぃじ寂しい‼️』
部屋から兵士の最後の1人が出た途端、ミドの態度が一変する。
(…さっきの態度は回りに兵士がいたからか…)
『王よ…もう少し、威厳を保たれてはどうですか?』
さっそく、アルのミド弄りが始まる。
『うるさい‼️孫と2人きりの時くらいよいではないか‼️』
(…2人きりじゃないけどな…まぁ、アルは家族みたいなもんなのか?)
『マオちゃ~ん、本当に行っちゃうの?』
「うん。それよりもじぃじ達は大丈夫なの?」
『じぃじの心配をしてくれるの?じぃじ嬉しい‼️』
(…ダメだコイツ…)
アルに目配せをするマオ。アルはヤレヤレと言った感じだ。
『マオ様は別にお祖父様の心配をしている訳ではありません。魔族が攻めて来ているけど、この国は大丈夫なの?と、心配しているのです。』
『そんな事は言われなくても分かっておる‼️お前はどうしてそう言う事をいつも言って儂をいじめるんだ‼️』
ミドがいじける。
「……じぃじ?大丈夫なの?」
(…とりあえず、じいさんは無視して話を進めよう。)
『おぉ、大丈夫だとも。我々エルフは戦闘能力は人間よりも高いからな。』
「そうなの?なんかエルフって言うと森の木陰で大人しく読書したりしてるイメージがあるんだけど…」
『まぁ、そう言うこともするけども、エルフ達は昔から皆、肉体派だよ。』
「そうなんだ。」
『そうだとも‼️大昔に人間達に苛められて、こんな森しかない僻地に追いやられてしまったからな。生きていく為には森を切り開き、畑を耕し、開拓するしかなかったからな。だから我々は皆ゴリゴリの肉体派になってしまった…。マオちゃんが思っているほど大人しくはないぞ‼️』
ミドがニッコリ笑う。マオもつられて笑う。
(…エルフは脳筋なのか…知らんかった。でもまぁ、このじいさんがこんだけ言うんだから、この国は大丈夫なんだろう。)
『マオ様、そろそろ出発いたしましょう。』
話が長くなりそうなのでアルが出発を促す。
「じゃあ、最後に1つだけ。じぃじ、魔王は来てるの?」
『ん?魔王?魔王は来てないようだぞ。』
「よかった。いくらじぃじ達でも魔王が来たらマズイもんね‼️」
『そうじゃなぁ…。それほどまでに儂を心配してくれるとは……なんと優しい孫よ…。』
ミドが泣きだす。呆れた顔をするアル。
(…まぁ、ソードナーが来てなければ大丈夫か…)
「…じゃあ、じぃじそろそろ行くね。じぃじも無理しないでね。」
『わかった。名残惜しいが…マオちゃんも気をつけるんじゃぞ‼️くれぐれも危ない事等しないでおくれよ‼️じぃじは心配で心配で…アルよ。くれぐれもよろしく頼むぞ‼️』
『畏まりました。では、マオ様。魔界に出発しましょう。』
こうしてマオとアルは、ミドに見送られながら魔界へと旅立った。
(…結局リリスからは連絡なかったな…まぁ、あっちはアーク達もいるし大丈夫かな…。)




